2012.09.12 

畿央大学院生の国際疼痛学会への参加レポート!

2012年8月26日~31日、イタリア・ミラノ市で開催された第14回国際疼痛学会(14th World Congress on Pain)に、理学療法学科の前岡浩助教と共に参加させて頂きました。
ミラノ市は美術館・博物館が数多くあり、建築もロマネクスからルネサンス、ゴシックまで各時代のさまざまな名建築が残っていることで有名な街です。
国際疼痛学会は、痛みに関しての様々な方面で活躍する研究者や医療スタッフが一堂に集まる大規模な学会です。基礎医学、臨床医学、心理学、看護学といった多様な学問的・臨床的観点から痛みを考えようとする学際的な学会でもあります。歴史的には、1975年のフィレンツェを第1回に始まり、今回で第14回を迎えています。今回も2000演題以上ものポスター発表が行われ、連日にわたって活発な議論が交わされました。なお、次々回の第16回大会(2016年)は、横浜で開催される予定です。
私がこの学会に参加した目的は、畿央大学開学10周年記念事業の一環である健康科学研究所プロジェクト研究「心豊かな生活をおくるための健康科学(研究統括:森岡周教授)」部門の一つである社会的相互作用における神経メカニズムの解明(研究代表者:松尾篤准教授)」の成果の一部を発表することでありました。このような学問領域は、痛みの臨床においても注目を集めています。大会の中でも「Doctor-Patient Communication」とテーマでPhyllis Butow教授の講演が設けられており、慢性疼痛患者さんとのコミュニケーションの重要性が説かれていました。その他にも、痛みに関する表情の研究や、痛みとのコーピングについての研究などの興味深い研究もいくつか報告されていました。
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▲会場は、写真のように広々としており、非常に心地良く有意義な時間が過ごせました。また、学会場ではワインを飲み交わしながらディスカッションをされる先生も多いことなど、国内の学会との違いに驚く場面もありました。講演もいくつか聴かせて頂きましたが、非常に明るい雰囲気でのトークが多かったように感じます。そのためかどうかは分かりませんが、講演後にも質問や意見交換が非常に盛り上がり、マイクの取り合いのような印象もありました。これも国内の学会ではあまり見ることのできない場面でした。

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▲今回、私が発表したのは「痛みの共感システム」についての脳波研究でした。この研究領域は、アメリカ合衆国のJean Decety教授やドイツのTania Singer教授などが世界をリードしています。特にDecety教授は社会神経科学の第一人者であり、痛みの共感体験は「他者と自己の情緒的共有」「自他意識」「自己制御」の3つの異なる要因から構成されているという独自のモデルを提唱したことでも有名です。私は今回、Decety教授のモデルの痛みの共感においての「自己制御」という部分の研究内容を発表しました。私自身の英語能力のなさにも関わらず海外の研究者4名の方々に意見を頂けたことが最大の報酬でした。さらに調査を進めて、今度は論文を通じて国際的に発信していこうという想いもさらに強くなりました。
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▲せっかくの機会なので、半日だけミラノ市内を観光する時間をいただきました。
街は繊細で華麗なミラノ大聖堂を中心として、それを囲むように高級ブランドショップが数多く並んでいました。その他にも、「最後の晩餐」があるグラツィエ教会や、レオナルド・ダ・ヴィンチの功績が展観できる科学技術博物館などがあり、様々な芸術に触れることができました。特に「最後の晩餐」は、キリストやその使徒たちの人間関係が表情や身体の振る舞いなどに細かく表現されており、非言語的なコミュニケーションの重要性を改めて感じさせられました。
最後になりましたが、今回の学会参加は畿央大学の研究費で行かせて頂きました。また、森岡教授をはじめとする多くの方々のご指導や、ご協力の上に可能となりました。貴重な体験をさせて頂いたことをここに記し、心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

畿央大学大学院健康科学研究科
博士後期課程 大住倫弘

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