2012.09.18 

「学校現場に学ぶ 学習・生活・安全」~大阪教育大学附属池田小学校を訪問~

報告が遅くなりましたが、6月14日(木)、現代教育学科1回生による大阪教育大学附属池田小学校(以下、「附池小」)訪問のレポートです。これは、必修科目である「ベーシックセミナー」および「現代教育論」の拡大授業として、大学の外に出て学ぶ機会として設けられたものです。

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今回の訪問目的は、まず、教育に関わる仕事を志す学生として学校現場の児童の学習や生活の様子に触れ、プロの先生方による児童への関わり方や指導のあり方を学ぶことでした。そして、WHOのInternational Safe School に認証された附池小における安全で安心な学校づくりを学ぶことでした。

附池小では、平成13年6月8日に刃物を持った男が校内に侵入し、児童8名が亡くなるとともに教師を含む15名が負傷するという殺傷事件が起こりました。あの事件から丸11年となり、同小で追悼式典「祈りと誓いの集い」が営まれた翌週に、今回私たちが訪問させていただくこととなりました。最も安全であるべき学校においてそれらが根底から覆されたこと、そして二度とこのような事件を起こさないという安全で安心な学校づくりにどのように取り組んでおられるのかについて、本学の学生にもぜひ考えてほしいというのが教育学部としての願いでした。

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梅雨の合間の好天のもと、附池小に集合した学生たちは、「来校者」としての名札をしっかりと身に付けてから少し緊張した面持ちで校内に入りました。午前中は、数人ずつ各教室に分かれて授業を見学しました。まず驚かされたのが校舎内の教室のあり様でした。普通教室にはドアや壁が無く、廊下側から児童の姿が見え、他学級の様子も分かるようになっています。また、職員室とは別に廊下に「先生コーナー」が設けられていたり、職員室や体育館をはじめとして校内随所で見通しのよさが確保されていたりと、安全・安心のための様々な工夫を見ることができました。ちょうど、同校ならではの「安全科」の授業が行われている教室もありました。ネイティブの先生を交えた外国語活動の授業や、水泳の授業、低学年での図工の授業もあり、学生たちは、教師の発問や目線、児童の発言や作品等、一つ一つを聞き逃すまい、見逃すまいと耳を傾けメモを取りながら、真剣な眼差しで授業を見学しました。

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授業見学後は子どもたちと一緒に昼食をとりました。児童は給食ですが、学生は弁当を持参。すっかり打ち解けて楽しそうに話に花が咲く様子があちこちで見られました。児童と話すときは学生も腰を落とし、目線を合わせて一生懸命コミュニケーションを図ろうとする姿が印象的でした。また、昼休みは運動場に出て、児童と一緒に体を動かして遊ぶ学生もいました。

午後からは、「私たちは何を学ぶか―附池小事件から―」というテーマで、本学の安井・現代教育学科長から講義がありました。安井先生は、当時から現在に至るまで事件の対応に関わっておられ、そこで得られた教訓を学生たちに伝えていただきました。「学校安全」が現在なぜ叫ばれるのか、附池小の現在の校舎における様々な工夫等に加え、事件の主な現場となった旧校舎での当日の様子についても説明がありました。さらに全員で校舎の外へ出て、まず「祈りと誓いの塔」に献花して黙祷を捧げました。その後、犯人が侵入した旧正門から校舎への経路を実際に歩き、事件の悲惨さや命の尊さ、そしてこれからの安全・安心な学校づくりについて考えました。今回の訪問によって、学生たちは将来広く教育に関わる者として、子どもの安全を守り安心できる環境をつくることの重要性を改めて認識したことでしょう。

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最後に、大人数にもかかわらず本学の訪問を受け入れていただいた附池小の校長先生はじめ、全教職員の皆様の多大なるご厚意に感謝を申し上げます。そして、真剣な学習態度と元気な笑顔で学生を迎えてくれた附池小の素晴らしい児童たちにも心からの「ありがとう」を伝えたいと思います。

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以下に学生が書いたレポートの一部を紹介します。

先生は、基本的なあいさつを全員がしっかりとできるまで何度もやり直していました。今、あいさつのできない子どもたちが増えているなか、人としてあたりまえのことを指導することは、教師としてとても大切な事だと感じた。

学校全部を変えてしまうのではなく、事件が起こったこと、それによって亡くなった子どもへの思い、忘れてはならないという責任を乗せたつくりになっていました。残酷な事件を二度と繰り返してはならないと痛感し、私たちも本来の安全で安心できる、楽しい場所を作っていかなければならないと思いました。

先生は児童の関心をひいたりして楽しい授業を行ったり、友達の発表に付け足しが必要か、違う考えはあるかなどを考えさせたりすることで、自然と友達の考えに対して「そうか!」などの声が児童から発せられるような授業づくりをしていた。

二つの学年の授業を見学して気が付いたことは、先生は子どもが自分自身で考える事案を作っていると感じました。また、男子にも「さん」と呼んでいることが印象的でした。教室の先生の机は廊下の様子が見える場所にあることも特徴であると感じました。

保護者は子どもたちを学校に預けているのである。学校に絶対的な信頼を置いている。教員は子どもたちの健康を、命を守らなければならない。いざ、自分があの事件のような状況に置かれたとき、どうするだろうか。何ができるだろうか。子どもたちの命を自分の身に代えて守れるだろうか。そして事件が起こる前に防げる方法は何だろうか。自分に問いかけることが多かった。教員を目指す者としてもう一度その自覚をしなくてはいけないと思った。

すべての学校が、附属池田小学校のように安全に特化した設備・環境に対応できるかどうか、それは資金の問題だけではなく、私たちの意識にもある。私自身、今回この事件の内容を深く知ったものの一人であり、授業見学や給食指導、休み時間の子どもとの触れ合いを通して、子どもの笑顔を守り続けたいと思ったものの一人である。多くの子どもたちの思いを無駄にしないため、この残酷な事件を風化させないためにも、再度、学校安全について考え直すべきだと痛感した。

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