2015.02.12 

「養護教諭のための発達障害児の学校生活を支える教育・保健マニュアル」をご紹介!

本学教育学部の古川恵美先生が編著者を務められ、そして岡本啓子先生と小野尚香先生が分担執筆されている「養護教諭のための発達障害児の学校生活を支える教育・保健マニュアル」という本を読ませていただきました。

発達障害児の学校生活

昨今、特別支援教育や発達障害支援に関わる書籍はそれこそ無数に出版されているのですが、本書には大きな特色があります。それは学校における「養護教諭」の役割や機能にフォーカスされていることです。

平成19年度からスタートした特別支援教育ですが、当初は学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、自閉症スペクトラム障害(ASD)といったいわゆる発達障害のある子どもたちをいかに理解し、支援するかということに大きな注目が注がれました。また、そのような時勢の中で特別支援学級や特別支援学校の在り方、そして特別支援教育コーディネーターの役割についても検討が深められてきました。さらに近年では、発達障害特性に配慮した通常学級における授業づくりや学級経営を見直そうとする「ユニバーサル・デザイン」を志向する言説も現れてきています。しかし、間違いなく重要なキーパーソンとなる養護教諭を、発達障害支援と直接結びつけて解説する書籍はこれまでほとんどなかったのです。

本書においては、養護教諭の職責である保健管理、保健教育、健康相談、保健室経営、保健組織活動を通して、「保健室登校」、「虐待」、「いじめ」、「給食場面における配慮」、「席替え」、「修学旅行・遠足」、「運動会」、「クラブ活動」などの発達障害特性のある児童生徒の困難性と密接に関連する具体例について実践的な解説が行われています。

また、発達障害者支援法の施行、障害者権利条約への批准、障害者差別解消法の成立と合理的配慮、アメリカ精神医学会の診断マニュアルであるDSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)の第5版への改訂など、現在まさに発達障害支援の重要事項となっている話題についても解説されています。

本書は現在養護教諭として仕事をされている先生方や養護教諭を志す学生さんには必読の書であるといえます。また、今や発達障害支援に無関係でいられる教師はいないという実情においては、本書は管理職も含めた全ての先生方に是非ともお勧めしたい一冊です。

学校における養護教諭の専門性やコーディネート機能がますます発揮され、困難性を抱える児童生徒の支援が充実されていくことを願っています。

教育学部現代教育学科 准教授 大久保 賢一

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