2015.12.08 

「第1回身体運動制御学とニューロリハビリテーション研究会」が開催されました~ニューロリハビリテーション研究センター

2015(平成27)年12月5日(土)に、第1回身体運動制御学とニューロリハビリテーション研究会が開催されました。
 
記念すべき第1回には、招待講演として、野村泰伸先生(大阪大学大学院基礎工学研究科機能創成専攻 教授)と花川隆先生(国立精神・神経医療研究センター 先進脳画像研究部 部長)にご登壇いただきました。
 
野村先生からは、「ヒト静止立位と歩行運動の安定性と揺らぎの定量化と数理モデルシミュレーション」と題したご講演をいただきました。 直感的には、ヒトは綱引きをするように、直立姿勢から変位すると、直立姿勢に引き戻すための制御を常に持続的に行っていると考えがちですが、実際には重力に身を任せて、常に揺らいでおり、卓球をするかのような間欠的制御を行っていることを、例を示して頂きながら、詳細な解析に基づいて、解説して頂きました。 またパーキンソン病患者さんの立位姿勢制御についても、分かりやすく説明して頂き、参加者にとっては、日ごろ臨床で目にしている現象の中身について理解する素晴らしい機会になったと思います。
 
花川先生からは、「歩行の神経制御機構」と題したご講演をいただきました。 先生ご自身の研究バイオグラフィーにおけるデビュー作が「歩行の神経制御機構」とのことで、少々気恥ずかしいと仰られながらも、膨大な研究成果について解説頂きました。 リハビリテーションにおける大きな関心事の一つが、歩行ですが、大脳皮質-基底核ループ、基底核-脳幹系による制御機構、パーキンソン病における歩行制御機構の病態、代償的メカニズムについて、非常に分かりやすく解説して頂きました。
 
両先生とも、基礎の立場におられながらも、実際の患者さんを対象にした研究を行われておられ、リハビリテーションにとって非常に有益な情報を発信し続けてくださっています。 今後は、リハビリテーション側からも、臨床研究・症例研究を発信し、双方向性に繋がり、コラボレーションしていくことが望まれています。
 
今回、指定演題では、日頃臨床に従事しておられ、臨床で得た疑問や問題について、研究を通じて検証する作業を実践しておられるお二人の先生にご登壇いただきました。
奥埜博之先生(摂南総合病院リハビリテーション科)からは、PSP患者さんにおける狭い間口通過時に生じるすくみ足は、前頭葉の過活動に起因するのではないかという仮説を、脳波を使用したケーススタディで検証した内容を発表して頂きました。
石垣智也先生(畿央大学大学院健康科学研究科)からは、臨床で散見されるライトタッチ効果について、その神経メカニズムに関する脳波とtDCSを使用した研究成果を発表して頂きました。
どちらのご発表も臨床に関わりが深く、有意義なディスカッションであったと思います。
 
ポスターセッションには、17演題の発表がありました。 自覚的身体垂直位から立位姿勢制御、歩行制御といった身体運動制御に関連の深いものから、疼痛、半側空間無視、身体性まで非常に幅広い内容となりました。 発表して頂いた皆さん、ありがとうございました。
 
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来年も7月に第2回の身体運動制御学とニューロリハビリテーション研究会を開催する予定です。 今回と同様に、第1線の先生方からのご講演に加え、臨床現場からの症例報告・臨床研究報告を行い、リハビリテーションにおいて最も関心のあるヒトの身体運動制御について、それがどのように成り立っており、どのようにして回復させることが可能かについて、おおいに議論できる場にしたいと考えております。 皆さま、どうぞ奮ってご参加頂きますよう宜しくお願い申し上げます。
 
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末筆になりますが、今回ご講演・ご発表頂いた先生方に深く感謝申し上げます。 そして、参加して頂いた皆様に厚く感謝いたします。 ありがとうございました。今後とも宜しくお願い致します。
 

畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
特任助教 大住倫弘

 
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