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国保中央病院「緩和ケアホーム飛鳥」での見学実習!~看護医療学科「終末期ケア論」

2019年6月5日(水)

看護医療学科3回生の履修科目である「終末期ケア論」では、毎年磯城郡田原本町宮古にある国保中央病院に併設される「緩和ケアホーム飛鳥」をたずねて見学実習を行っています。国保中央病院緩和ケアホーム飛鳥は平成17年5月に奈良県で初めての緩和ケア病棟として開設されました。田園風景に囲まれ、豊かな自然と澄んだ空気が心地よいこの施設は、昨年公開された映画「かぞくわり」のロケ地にもなった場所です。

今年は見学希望者7名と担当教員が飛鳥をたずねて施設内の見学や、看護師長からホスピスケアの実際についてお話をうかがいました。今回は多くの学びがあった見学実習の様子をレポートします。

 

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▲見学に参加した7名の学生はホスピスケアに強い関心を持っています

 

緩和ケアホーム飛鳥を訪れた2019年6月1日(土)は真夏を思わせるような気候でしたが、飛鳥の庭には、目にもまぶしい緑の木々がそよ風に揺られる景色がひろがり爽やかさを感じました。この庭園の木や花はボランティアさんが、心を込めて手入れをされています。

 

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▲バリアフリーでベッドや車いすでも出入りができるガーデン

 

この日は、4月から緩和ケアホーム飛鳥の病棟師長に着任された牧野真弓師長が、ホスピスでのケアについて事例を用いて詳しく講義してくださいました。牧野師長は、緩和ケア認定看護師として多くの患者さんや家族そして遺族ケアに携わって来られています。

 

国保中央病院「緩和ケアホーム飛鳥」の見学実習3-1-side

▲牧野師長より講義をいただく様子

 

緩和ケアホーム飛鳥は、医師や看護師を中心としたチーム医療のもと、積極的な治療に対して反応しなくなった末期がんの患者さんへの身体的・精神的ケアや家族も含めたQOL向上を目指した全人的ケアを展開されています。それらは、次のような基本理念に基づいて実践されています。

 

・あなたの人格のすべてを受け入れます

・あなたの思いや考えを大切にします

・あなたの生活を尊重します

・あなたの苦痛、その他の不快な症状を緩和します

・ご家族に対して心の安らぎが得られるよう支援いたします

 

学生は、基本理念を頭にいれて、牧野師長が紹介してくれた事例に聞き入っていました。

 

事例の中では、昭和20年8月6日に広島での被爆経験をもつ患者さんが、歩くことができなくなり徐々に弱っていく中で、「もう一度広島に行きたい」と言う希望をかなえられた経過が紹介されました。その希望を聞いたとき、飛鳥の医師や看護師はまず「家族の協力を得て広島に行くことが可能かどうか」について慎重に話し合ったそうです。ご家族の賛同が得られて、いよいよ出発というときに備えて、疼痛や呼吸困難などの終末期に出現する身体症状をコントロールするための方法を考え、万が一訪問中に体調不良になった場合に、訪問先で診療や入院ができるような態勢を整えられたそうです。移動に欠かせない車いすも院内から貸し出しができるように手配して、患者さんは無事に広島を訪問されたそうです。満足そうな笑顔で戻ってこられた患者さんは、「被爆者は亡くなったら、ネームプレートが慰霊碑に刻まれることになっている。自分の名がどこに刻まれるのかを見ておきたかった」と訪問の目的を語られたそうです。それからほどなく患者さんは逝去されましたが、遺族から、慰霊碑に刻まれたネームプレートの写真を見せてもらったときに、医師や看護師は、この訪問が患者さんや家族のQOL向上につながったことを感じられたそうです。

 

このほかにも多くの、末期がん患者さんと家族が繰り広げた物語を聞かせていただき、学生は大きく心を動かされたようです。

 

しかし、緩和ケア病棟に入院したからといって、事例の患者さんのように自分が希望したことができるわけではないのが現状です。それについて牧野師長よりテレビドラマで放映された一つの場面を用いて説明がありました。

 

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▲講義では、テレビドラマでの場面から考える機会も!

 

緩和ケア病棟に入院したからと言って、必ずしも何かしたいことを見つけて実現するのがすべてではなく、患者さんが「今を生きる」その時間が苦痛から解放されて、日常生活に必要な援助が過不足なく提供されることが大切なことです。そのために、緩和ケアホーム飛鳥では「残り少ない時間を大切に過ごされている皆さんが、よく生きることにできる限りの援助をしています」とむすばれました。

 

また、講義の最後には牧野師長が大好きな言葉「医師に直せる患者は少ない。しかし、看護できない患者はいない。息を引き取るまで、看護だけはできるのだ」という引用文を紹介していただきました。

この言葉を聞いた学生たちはあらためて、看護の奥深さを感じたようです。

 

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講義のあとは、施設内を見学しました。

一般病棟では、見慣れないファミリーキッチンや瞑想室などホスピスに特徴的な空間を見せていただきました。瞑想室は、患者さんの傍にずっといることで気持ちに閉塞感を感じたり、多くの課題や考えが頭をもたげてストレスフルな状況にある家族が、ひと時何もない空間で緊張を解くための空間です。学生も瞑想室に体験入室させていただきました。

 

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▲瞑想室に体験入室し「無になれました」と話す学生

 

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▲ファミリーキッチンで、自分で作った小豆を家族に調理してもらっていた患者さんのエピソードを聞く

 

施設内を見学した後は、年に一度開催されている遺族会で上映される映像を見せていただきました。ホスピス・緩和ケアにおいて「遺族ケア」は大切なプログラムであり、患者さんが旅立たれたあとの喪失感や悲しみを理解し、家族がまた自分の新しい生活にむけて進んでいくことを支援するための取り組みとなっています。見学実習を終えた学生は終末期にある対象や家族と自身の向き合い方について新たな学びを得たようでした。

 

国保中央病院「緩和ケアホーム飛鳥」の見学実習9-1

▲遺族会の映像を見て、遺族から故人にあてたメッセージを見せていただく

 

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▲牧野師長さんと記念撮影「ありがとうございました」

 

わが国の、緩和ケア病棟入院料届け出受理施設(認可されたホスピス・緩和ケア病棟)数は415施設、病床数は8423床となっています(2018年)。一方がんで死亡する人の総数は年間370,000人を超えていることから、私たち看護師は、一般病床や在宅でも終末期がん患者のケアを担っていかなければなりません。学生のみなさんが社会に出たとき、今回の見学実習での学びや自身の心に響いたことを忘れずに対象と向き合ってくれることを願っています。

 

最後になりましたが、お忙しい中、貴重な学びの機会を下さった牧野看護師長様はじめ国保中央病院皆様に感謝いたします。

 

看護医療学科 終末期ケア論担当 對中百合・大友絵利香

 

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