2019.07.16 

患者モデルを通して学ぶ手術後の看護~看護医療学科「急性期看護学援助論Ⅱ」

看護医療学科の3回生前期に開講している「急性期看護学援助論Ⅱ」では、102名の受講生を対象に、救急看護や周手術期看護の実践場面を想定した演習を取り入れた授業を行っています。
これまで、実習先の病院で受け持つ機会が多い疾患を対象に、8つの事例を用いた看護過程の展開を続けてきました個人で患者情報を抽出し看護過程の展開を進めるだけでなく、7~8名のグループで一つの事例を掘り下げていくのがこの授業の特徴です。6月末には、それぞれの学習成果の発表会が行われ、活発な質疑応答や議論を交わしています。
今回は、自分たちが取り組んだ事例の患者を想定したモデルを作り、術後の状態を全員で共有できるように説明するという総仕上げの演習の様子をレポートします。
 
患者モデルを通して学ぶ手術後の看護~急性期看護学援助論Ⅱ~1-1
▲事例の患者を想定したモデルづくりに真剣な学生
 
この授業の学習目標は、「術後看護の基本技術が修得できること」「手術を受けた患者の個別性を考慮した計画立案と実施ができること」で、この日の演習では、学生が術後の患者の状態をつくり、その状態に応じた全身清拭を計画するという内容でした。
 
授業では、後期から始まる臨地実習を見据えて、受け持ち患者さんをイメージしたうえで、手術を受けた患者さんが順調な回復過程を辿るために必要なケアの手段を考えることをめざしています。4月からグループワークを続けてきたメンバーが力を合わせて、自分たちの患者さんについて紹介していきます。
 
患者モデルを通して学ぶ手術後の看護~急性期看護学援助論Ⅱ~2-1
▲胸部の骨を外して狭心症の手術を受けた患者さんを想定したモデルについて解説する様子
 
学生は、患者役と看護師役を演じてシミュレーションをしますが、即席で設けた「ランウェイ」に登場しモデルのように振舞います。全身麻酔で手術を受けた直後の患者さんには、複数の血管から点滴がされ、手術部位にドレーンとよばれる「排液用の管」が挿入されています。また、膀胱内にカテーテルが留置された状態で排尿の管理がなされます。
このように、患者役の学生も実際にドレーンや点滴を入れているかのように、患者モデルをつくりあげました。
 
患者モデルを通して学ぶ手術後の看護~急性期看護学援助論Ⅱ~3-1
▲人工股関節置換術後の患者に留置されているドレーンのメカニズムについて解説する
 
演習の中では、ドレーンから出てくる排液の色も、実際の手術後に近い色合いになっています。これは、学生がドレーン挿入部位と挿入目的を正しく理解するためにも大切ですが、実習が始まったときに、手術後の患者さんが挿入しているドレーン排液の異常を早期発見するためでもあります。写真の事例では、股関節の手術後、自分で歩けない患者さんへの看護を考えましたが、片足が使えず、普段通りの生活ができない患者さんのつらさや手術後の痛みを適切に軽減して、手術後におこる肺炎などの合併症予防における看護師の役割を学ぶことができました。
 
膝関節に人工関節を置換した事例では、一般にも広く知られているエコノミークラス症候群(下肢に形成された静脈血栓が肺に移動して肺梗塞を引き起こす症状)を予防する目的で、下腿に包帯を巻きます。学生は、包帯法についてすでに学んでいますが、膝に大きな手術創があり痛みを伴っている状態の患者さんへの包帯巻きは、簡単ではないようでした。
 
患者モデルを通して学ぶ手術後の看護~急性期看護学援助論Ⅱ~4 -1
▲人工膝関節術後には、深部静脈血栓予防のため、弾力のある包帯をしっかりと巻きます
 
9月になると「急性期看護学実習」が始まり、手術を受ける患者さんを実際にケアすることになります。手術を受けるということは、身体的な侵襲だけにとどまらず精神的な不安や仕事に支障をきたす、家事ができないなど社会的な問題も発生します。そのような対象を全人的に捉え少しでもお役に立てること、また、手術後の回復過程を促進するための看護について実践の場で学びを深めてくれることを教員一同願っています。
 
患者モデルを通して学ぶ手術後の看護~急性期看護学援助論Ⅱ~5-1-down
 
3回生の皆さん、学習の成果を実習で十分に発揮できるようにしっかり準備を整えていきましょう。 

 

看護医療学科教員(急性期看護学) 林田麗・大友絵利香・大島恵子・菊谷美代子

 
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