2014年度プロジェクト研究中間報告会 報告

本報告会の趣旨は、プロジェクト研究2年次の進捗状況の報告と学識経験者による助言により、来年度以降の研究活動の内容や方向性を確認しようとするものである。学部長挨拶、西尾所長の開会挨拶、指導助言者の堺市立東三国丘小学校野村俊文学校長、本学現代教育学科島恒夫教授の紹介の後、各プロジェクトの報告が行われた。 

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プロジェクト1報告「小学校現場における図画工作科教科書活用のあり方の研究」
小学校図画工作科の資質や能力を働かせる活動過程における学習指導のあり方について検討された。はじめに、西尾代表より、学校現場での教科書教材の扱いについての現状と第1年次の成果及び課題が報告された。永井氏の題材「感じたことを伝えたい」の事例では、活動過程において資質や能力を働かせるために「対話の組織」「材料や表現方法の選択」「表したいことを見つける時間の保障」「活動過程における交流の場の設定」を行うことによって自分の表したいことを作品としてつくりあげることができた。特に、表したいことをみつけた場面、表したいことに合った材料や方法の選択の場面、活動過程における交流の場面での言語活動が有効に働いたと述べられた。言語活動による発想や構想の継続的な働きかけや視覚資料、ICT機器の活用、活動状況に応じた「話す」「書く」などの言語活動の方法の工夫が今後の課題であると報告された。討議では、写実にこだわるのではなく、子どものニーズに応じて材料・用具、表現方法を支援していく必要性や学習指導要領に示されている「共通事項」が話題にあがった。 

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プロジェクト2報告「初等中等教育の情報化および情報教育の実践開発研究」
はじめに、西端代表より「情報」の小中高での導入時期についての話題提供があり、引き続き杉崎氏より「情報教育」の現状および課題について報告された。プロジェクト2ではそれらの課題を踏まえて、情報教育の活性化、小中高の接続を見通した初等中等教育における「教育の情報化」を目指して昨年度より継続研究が進められている。その中の情報教育の活性化を目指した「情報チューズデイ」の取り組みが紹介された。この教育情報交換会は、平成26年度に奈良県の高校情報科教員を中心とした奈良県情報教育研究会の正式活動として承認された。活動としては奈良県内の各高校や本学を活動場所とし、実践報告会やワークショップを行っている。昨年度に比べ回数が少なくなったものの参加者が倍増し、幅広い立場で参加してもらうことができるようになってきている。
 将来展望としては、Webページを開設し、活動を通じて蓄積された実践の共有化を図ることとともに、ActiveLearningなど次の学習指導要領を視野に入れた情報教育の活性化を図る取り組みを拡げることである。討議では、ワークショップなどで扱われた内容について参加者のフィードバックがあったかどうか質問がなされ、それらを数値化していくことで研究がさらにすすむのではないかとの示唆があった。 

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プロジェクト3報告「CEAS/Sakaiを媒介とした教師、学習者、学習教材の相互関係づくりを目指した英語授業創造のための実証的研究」

中学生を対象としたCEAS/Sakai導入による円環型学習モデルを実践し、その効果検証を目的としたプロジェクトである。深田代表より研究の背景および目的が述べられた後、ムース氏より第1フェーズと第2フェーズの成果と進捗状況について報告がなされた。今年度の成果としては、掲示板を活用したライティング作品の掲示と相互交流の機会の提供、授業内で作成したビデオ作品の掲示や活用、リサーチアシスタントによる遠隔英作文支援、授業支援が挙げられた。研究計画は5フェーズで構成され、現在は第2フェーズから第3フェーズへの移行に取り組まれている。次に古川氏より、中学校現場からの成果と課題について報告がなされた。成果としては、生徒のチャレンジ回数が増え学習意欲の向上につながる、教員が苦手生徒のサポートに回ることができる、リサーチアシスタントの学生は生徒の英語力を実感することにより英語教諭へのモチベーションがあがるといったことが挙げられた。しかしながら、中学校においてはCEAS/Sakaiの活用に限界があることから、CEAS/Sakaiを媒介として授業の質をいかにあげるかが今後の課題となる。そのためには、リサーチアシスタントの活動範囲の拡大とCEAS/Sakai上にラーニングパスおよびティーチングパスを作姿勢、授業教材や成果物を蓄積していくことの2つが示された。出席頂いたCEAS/Sakaiの開発者である冬木副学長は,プロジェクト3の課題である中学生のCEAS/Sakaiの活用について,今後の開発の可能性について示唆を示された。 

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プロジェクト4報告「教員養成系大学・学部における地域貢献の取り組みに関する事例研究」

はじめに石川氏より、文部科学省の「大学改革実行プラン」や「地(知)の拠点整備事業」に基づき、大学における「地域の課題解決」が期待されていること、学生の参加を前提とした地域貢献活動が近年重視されていることが述べられた。それを踏まえてPBL(Project-Based Learning)の事例検討と本学における実現の可能性の課題検討について報告された。つづいて宮村代表から、前期「地域教育課題演習A」の授業で取り組まれた事例について紹介があった。奈良県が募集した「県内大学生が創る奈良への未来事業」へ応募した学生の提案「地域と学生でつなぐ防災組織『ならぼう』」の取り組みである。学生の提案した「ならぼう」は最終審査(公開コンペ)では結果を残せなかったものの地域の方から「ならぼう」を実際に展開できないかと連携を要請された。しかしながら、教育としての責任の所在、「連携→教育・研究→貢献」の連続の難しさから連携には至らなかった。PBLは全学的な取り組みが必要であり、連絡調整や情報発信が盛んに行われる。また、学生につけたい「力」を設定し主体的な学びを育成することが求められる。教員養成系場合における「学生参加&地域課題解決」型の地域貢献の可能性を探っていくことが今後の課題となる。 

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指導助言では、島・野村両先生が各プロジェクトの講評と助言を行った。島先生は、中央教育審議会の諮問を引き合いに出しながら、「自立」と「協働」をキーワードにインクル—ジョンの考え方をしていくことが必要であることに言及された。野村先生は、学校長の視点から大学の研究がどの方向に向けられているのかを明確にすること、この研究をすることによってどんな子どもが育つのかビジョンをもって進めていくという今後の展望について言及された。 

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最後に学部長挨拶。どういう学生を育てたいかという教育学部の研究の方向性の確認についてふれた上、労いの言葉をもって閉会となった。