「学びを結ぶワークショップⅤ」を開催しました。

畿央大学現代教育研究所では、教育現場における教育力向上の一助となることをねらいに2013(平成25)年から毎年ワークショップを開催して参りました。5回目となる今年は2017年8月9日(水)、新しく学校で行われる内容を2つといつの時代にも大切にしないといけない内容を1つ用意し、「学びを結ぶワークショップⅤ」として行いました。

 

ワークショップ1

 

ワークショップ1及び2は、午前と午後にそれぞれ1回ずつ、ワークショップ3は午後のみの開催となりました。先生方の日頃の課題に沿って選択いただいた結果、実人数で77名の参加をいただきました。当日の様子を紹介します。

 

 

ワークショップ1【聴き上手になろう!話を引き出すコミュニケーションの基本】

細越寛樹(教育学部 准教授)

 

ブログアップ2

 

基本的な会話の原則や技法について、相手の話を「聴く」ためには、言語的なやりとり以前に、まず非言語的な要素が重要であることが説明されました。会話する際の着席する配置について検討する「座り方」のワークが行われ、受講者の皆さんは、座る位置によって話しやすさや圧迫感が変化することを体験されていました。また、ラポールの形成に関連して「ぶつかる」と「受け止める」の違い、そしてそこから形成される関係性の違いについて実践的な例をまじえながら解説が行われました。

 

後半部分は「会話の積み重ね」や「話す内容の順番」に焦点を当て、「オープンな質問」、「共感的な反応、ラポール形成」、「臨床的、探索的な質問」、「意思決定支援」の段階があることが解説されました。最後に認知行動モデルに基づいた「こころの仕組み図」について解説が行われ、受講生の皆さんは、「行動」、「考え」、「感情」、「からだ」ごとに情報をマッピングして整理することの有効性について学ばれていました。

 

 

ワークショップ2【始まる!小学校でのプログラミング教育~Scratch体験~】

竹中章勝(現代教育研究所客員研究員)、西端律子(教育学部 教授)

 

ブログアップ3

 

現代教育研究所客員研究員の竹中章勝氏によるプログラミング教育に関する内容や動向に関する概説が行われ、知識を覚え込むのではなく、論理的に問題解決を進めるための「プログラミング的思考」の習得の重要性について説明がなされました。

次に「Scratch」というプログラミング環境で、受講生の皆さんが実際にコマンドを入力し試行錯誤しながらオブジェクトを動かす演習を行いました。演習を進めながら、児童生徒に仮説検証に基づく問題解決を促すためのポイントについても解説がなされました。

最後に、プログラミング教育におけるカリキュラムマネジメントの重要性、そしてファシリテーターとしての教師の役割の重要性についてディスカッションをまじえながらまとめられました。

 

 

ワークショップ3【みんなでつくろう!「特別の教科 道徳」】

島恒生(教育学部 教授)

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2018年度から道徳が「特別の教科」として位置づけられることになります。そこで求められる「考え、議論する道徳」のあり方は、「主体的・対話的で深い学び」を目指す次期学習指導要領を先取りしたものといえます。ワークショップ3では、「ブランコ乗りとピエロ」(小学校高学年)と「スイッチ」(中学校)を教材の例にとって、子どもたちを主体的・対話的で深い学びへと導く問いの立て方や授業の進め方について参加者とともに考えました。今回のグループワークと講義を通じ、子どもたちが自ら進んで話し合い、考え合いたくなるような問いを投げかけつつ教材レベルや読解レベルを超えて道徳的価値レベルの深い学びにまで子どもたちをいざない、子どもたち自身の経験や心の中に「すでにある・育ちつつある」道徳的価値に気づかせるための環境づくりの大切さや難しさについて実感しました。

 

 

つづいて開催された昼食交流会は、教育学部学部長 前平泰志教授の研究所の紹介とこれまでの経緯を含めた挨拶で始まりました。参加者同士で話したり、講師に質問されるなど、午前中のワークショップの成果を深められている様子が見られました。

ブログアップ5

 

 

ここで、参加者にお書きいただいたアンケートの内容を抜粋して紹介させていただきます。

 

【ワークショップ1について】

・臨床心理の視点から教育へのアプローチをしてくれたおかげで、ふだん考えることのない事を学ぶことができました。

・知っていて実践していることもあったが、聞かされた質問の使い方はとても参考になりました。自分のやり方に取り込んでいきたいと思います。

・今まで、コミュニケーションや心理的な内容を詳しく授業等で聞いたことがなく(ラポール等初めて聞きました)自分の経験や自分に置きかえて生徒の気持ちを考え接するばかりだったので、本当にこれで良いのか不安でした。基本やテクニックを教えていただき安心できた部分があり、今後に活かそうと思えました。

 

【ワークショップ2について】

・「プロミング的思考のできる教育」という辺りがよく理解できた。

・プログラミングをどう活用したらよいのか、他の先生の意見などを聞けてよかった。

・たいへん、興味深く、有益でした。苦手な分野で心配していましたが、サポートも丁寧で助かりました。

 

【ワークショップ3について】

・グループで中心発問を先生方といろいろ話し合う時間が、様々な見方があってとても勉強になりました。

・道徳の評価についての話が聞けて良かった。もっと詳しく知りたいです。

・とても実践的で現場で生かせるものでした。中心発問の深さ、難しさにいつも悩まされています。参考にしたいです。

 

次回以降に希望する内容として、特別支援学級の児童の保護者との教育相談、「新指導要領における各教科等の教科の見方・考え方、情報モラル等、教育の現代的、今日的な課題」に関わるものが多く、参加の先生方の教育への意識の高さと熱意の強さが伝わってくるものでした。

 

幼児教育、初等中等教育、高等教育が今後の10年、20年を見据えた改善を具体化する今後を見据え、畿央大学現代教育研究所では、現職の先生方を対象とするワークショップを継続して実施いたします。不易の面と現代的な面との双方から教育課題の研究に取り組み、その成果をもとに充実した研修の場を提供できるよう努力いたしますので、今後ともよろしくお願いいたします。

 

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