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健康科学専攻(博士後期課程)の新着情報一覧

2018年の健康科学専攻(博士後期課程)の新着情報一覧

2018.12.25

第23回日本基礎理学療法学会学術大会で大学院生が発表&修了生が奨励賞を受賞!

平成30年12月15日(土)・16日(日)に京都で開催された第23回日本基礎理学療法学会学術大会で宮脇裕さん(博士後期課程)と私(林田一輝 博士後期課程)が演題発表をしてきましたのでここに報告させていただきます。     本大会は分科学会が独立して行う最初の開催であり、テーマは「身体運動学を極める」とされ、基礎理学療法学会が研究領域とする領域のうち特に身体運動学に焦点を当てられて講演が企画されていました。大会長の市橋教授からは「筋の運動学-筋の機能とトレーニング-」と題されたテーマで話題提供があり、臨床におけるトレーニングにおいて非常に示唆に富むものであり、興味深く拝聴しました。     私は「運動課題に伴う予測が運動主体感および運動パフォーマンスに与える効果」という題で身体性に関する発表をさせていただきました。私自身、理学療法学会での口述発表は数年ぶりで、口述発表において方法論を伝えることの難しさを改めて痛感しました。また、会場からはいくつか的確な質問をしていただきました。頂戴した意見も含めて、今回発表した内容を早く論文化していきたいと思います。 また、本研究室の修了生である西勇樹さんが第52回日本理学療法学術大会において発表した内容が奨励賞を受賞しました。今年度、本研究室からは神経分野、地域分野、基礎分野の3つの分科学会で受賞することになります。同研究室のメンバーが受賞されることは非常に嬉しく励みにもなっています。私自身、後に続けるよう努力していきたいと思います。   奨励賞  西 勇樹(修了生) 「慢性疼痛患者における交感神経変動と内受容感覚の関係性」   宮脇 裕(博士後期課程) 「感覚の自他区別が運動制御に及ぼす影響-自他区別課題開発のための予備的研究-」   林田一輝(博士後期課程) 「運動課題に伴う予測が運動主体感および運動パフォーマンスに与える効果」   健康科学研究科 博士後期課程 林田一輝   【関連記事】 教員・大学院生が2nd International symposium on EmboSSで発表!~ニューロリハビリテーション研究センター 大学院生が第42回日本高次脳機能障害学会学術総会で発表! 第11回日本運動器疼痛学会で大学院生が発表! 第16回日本神経理学療法学会学術集会で教員・大学院生など5名が発表!~健康科学研究科 平成30年度運動器リハビリテーションセミナー「臨床実践編 (膝関節)」を開講しました。 大学院生が第19回認知神経リハビリテーション学会で最優秀賞を受賞!~健康科学研究科 大学院生6名が日本リハビリテーション学会学術大会で発表!

2018.12.19

最適難易度での知覚運動学習中には運動主体感が増幅が明らかに~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター

身体性の科学において、この運動を実現しているのは、自分自身であるという主体の意識を運動主体感(sense of agency)と呼びます。この運動主体感は主観の意識であるため定量的評価が難しいと考えられていたものの、近年、intentional binding(IB)課題が開発され、運動主体感を測定する試みがされはじめています。IB課題とは、被験者がキーを押した後、音が鳴るように設定された実験手続きにおいて、キー押し後、音が鳴るまでの時間を主観的に被験者に回答させ、実際の時間とそれの差分をみるものです。先行研究では自らの意志によって随意的にキーを押した場合は、音が鳴るまでの時間を実際よりも短く感じることが明らかになっています。つまり、時間知覚の短縮は「自分がキーを押したから音が鳴った」という運動主体感の強さを反映していると考えられています。この時間短縮をみることで運動主体感の程度をみることができるわけです。畿央大学の森岡 周 教授らの研究グループは、林田一輝さん(博士後期課程)のアイディアをもとに知覚運動学習型のintentional binding課題を新たに開発し、知覚運動学習の程度と運動主体感の関係性を調べました。その結果、知覚運動学習が徐々に進むグループでは運動主体感が増幅することがわかりました。その一方で、知覚運動学習が停滞(天井効果)するグループでは運動主体感が増幅しないことがわかりました。つまり、学習効果と運動主体感の間には密接な関係性があることが示されました。この結果は、知覚運動学習課題における誤差修正過程において、徐々に学習効果が起こっていることを潜在的に捉えている時期においては、運動主体感が高まっていることをあらわしています。この結果は、学習プロセスおいて課題の難易度が重要であることを示唆しています。この研究成果はPeer J誌(Changes in intentional binding effect during a novel perceptual-motor task)に掲載されています。   本研究のポイント ■ 知覚運動学習の進行と運動主体感の程度には関係がある。 ■ 知覚運動学習課題の難易度が運動主体感に影響を与える。   研究内容 大学生を対象に、今回新たに独自に開発した知覚運動学習型intentional binding課題(図1)を用いて実験が行われました。課題は、左右に動く円形の赤い球をPC画面中心のターゲット内にあわすようにタイミング良くキーを押すといった時間的精度を学習させる知覚運動学習課題です。この際、ターゲットと赤い球の間に発生する空間的な誤差値(pixel)を知覚運動パフォーマンス効果の指標としました。一方、キー押し後、ランダムな時間遅延(200、500、700ms)後に音が鳴り、キー押しから音が鳴るまでの時間を被験者に主観的に回答させました(被験者は200、500、700msであることは知りません)。実際の時間と主観的に感じる心理的時間の差をintentional binding効果(ms)とし、運動主体感の指標としました。     図1:知覚運動学習型intentional binding課題   練習課題、コントロール課題(個人の時間感覚の違いを是正する目的)を経て、実験課題が行われました。実験課題は18試行を1セットとし、計10セット行われました。1セットと10セットの誤差値を用いてクラスター分析を行ったところ、2つの説明可能なクラスターに分けることができました。クラスター2はクラスター1と比べ知覚運動学習が有意に起こっていました。10セットを2セット毎の5ブロックに統合して、知覚運動学習の変化を観察したところ、クラスター1は5ブロックを通じてわずかな誤差値の減少にとどまり、ほぼ天井効果を示した(図2水色)のに対して、クラスター2は1ブロック目の誤差値が大きく、その後ブロックを重ねるごとに誤差値が大きく減少することが確認されました(図2オレンジ)。     図2:知覚運動学習型intentional binding課題 一方、intentional binding効果の結果に関しては図3に示しました。時間(縦軸)がマイナスにいけばいくほど、時間短縮をあらわしておりintentional binding効果が増幅した、すなわち運動主体感が高まったことを示しています。クラスター2(図3オレンジ)において2ブロックから徐々にintentional binding効果が高まっていることがわかります(2ブロックと5ブロックの間に有意差)。すなわち、知覚運動学習効果が明確にみられたクラスター2のみ運動主体感が増幅したことが確認されました。一方、クラスター1(図3水色)は著明な変化が見られませんでした。     図3:ブロック毎のintentional binding効果の比較(運動主体感の指標)   本研究の臨床的意義および今後の課題 本研究によって知覚運動学習の進行と運動主体感の程度の間には関係があることがわかりました。運動主体感の増幅には目標設定のみならず、目標が徐々に達成されていくプロセスが重要であることを本研究は示しており、学習者あるいはリハビリテーション対象者に対する知覚運動学習課題において、その難易度の設定・調整が重要であることを本研究は示す結果になりました。今後はこれに関係するメカニズム(例:報酬、注意)を明らかにすることや、実際のリハビリテーション対象者の課題中の時間短縮を記録する必要があります。   論文情報 Morioka S, Hayashida K, Nishi Y, Negi S, Nishi Y, Osumi M, Nobusako S. Changes in intentional binding effect during a novel perceptual-motor task. Peer J 2018   問合せ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 教授/センター長 森岡 周(モリオカ シュウ) Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.morioka@kio.ac.jp

2018.12.19

確率共鳴(Stochastic Resonance: SR)現象による視覚-運動統合の向上~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター

感覚-運動統合は、運動学習や運動制御において欠かせない脳機能です。発達性協調運動障害や視覚性運動失調、そして失行は、その病態に感覚-運動統合の困難さを有しています。したがって、感覚-運動統合を促進する効果的な介入手段の開発が求められています。確率共鳴(Stochastic Resonance: SR)とは、感覚閾値下の機械的あるいは電気的ノイズを生体に印加すると、感覚入力シグナルが増幅し、運動反応が向上する現象です。SR現象は、健常成人のみならず、健常高齢者、脳卒中後片麻痺、糖尿病性神経障害、パーキンソン病などでも観察されています。しかしながら、SR現象の提供によって、感覚-運動統合が促進されるか否かについては明確になっていませんでした。そこで畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターの信迫悟志助教らの研究グループは、SRが視覚-運動統合に与える影響を調査し、SRが若年健常成人の視覚-運動統合を向上することを明らかにしました。このSR現象の提供は、感覚-運動統合障害を有する疾患に対する介入手段として期待されます。この研究成果は、PLOS ONE誌(Stochastic resonance improves visuomotor temporal integration in healthy young adults)に掲載されています。 研究概要 視覚-運動統合の時間的側面、すなわち視覚-運動時間的統合機能は、遅延視覚フィードバック検出課題によって客観的・定量的に測定することができます。一方で、遅延視覚フィードバック下での運動課題は、視覚-運動統合を阻害し、運動に拙劣さを与えることができます(仮想的な視覚-運動統合障害)。 そして感覚閾値下の振動触覚ランダムノイズ刺激は、SR現象を引き起こすことが可能です。 そこで信迫助教らの研究グループは、若年健常成人を対象に、SRが遅延視覚フィードバック検出課題と遅延視覚フィードバック下での運動課題に与える影響を調べました。その結果、SRが遅延視覚フィードバック検出課題で測定される視覚-運動時間的統合機能を向上することを明らかにしました。しかしながら、SRは遅延視覚フィードバック下での運動課題の成績に影響しませんでした。   本研究のポイント SRの提供によって若年健常成人の視覚-運動時間的統合機能が向上した。したがって、SRデバイスは、感覚-運動統合障害を有する疾患の症状改善に効果的で有り得る。しかしながら、SRの提供は、267ミリ秒の遅延視覚フィードバック下での運動に正の効果を与えなかった。したがって、感覚-運動統合障害が重度である場合には、SRは有効でない可能性がある。   研究内容 本研究には、若年健常成人30名が参加しました。SRは手首に取り付けた振動触覚デバイスによる感覚閾値の60%の強度の振動触覚ランダムノイズ刺激によって提供されました。参加者は、SRあり条件とSRなし条件において、遅延視覚フィードバック検出課題と遅延視覚フィードバック下運動課題を実施しました。遅延視覚フィードバック検出課題は、自己運動に対するその視覚フィードバックに33-500ミリ秒までの15遅延条件が設定され、参加者は視覚フィードバックが遅れているか否かについて回答しました。遅延視覚フィードバック検出課題で抽出される検出閾値と検出確率曲線の勾配が、視覚-運動時間的統合機能を反映する定量的指標でした。検出閾値の短縮と勾配の増加は、視覚-運動時間的統合機能が高いことを表します。遅延視覚フィードバック下運動課題における遅延時間は267ミリ秒に設定しました。参加者は267ミリ秒の遅延視覚フィードバック下で、Box and Block Test(BBT)とNine Hole Peg Test(NHPT)の2つの手運動課題を実施しました。BBTにおいては得点が高いほど、NHPTにおいては実施時間が短縮するほど、手運動課題の成績が高いことを表します。SRあり条件・なし条件は、振動触覚デバイスの電源をオンまたはオフにすることにより調整しました。感覚閾値未満の振動触覚ランダムノイズ刺激であったため、参加者はSRについて盲検化されました。     図1. 実験課題 左:遅延視覚フィードバック検出課題 右:遅延視覚フィードバック下での運動課題     図2. 結果 SR(+)、SRあり条件;SR(-)、SRなし条件;**、p<0.01;N.S.、有意差なし 上:視覚-運動時間的統合機能を反映する検出閾値(左)と勾配(右)の比較結果 下:遅延視覚フィードバック下運動課題(左、BBT;右、NHPT)の比較結果 結果、SRあり条件の検出閾値は、SRなし条件と比較して、有意に短縮しました(図2)。このことは、SRの付与が、視覚-運動時間的統合を促進することを意味しました。しかしながら、遅延視覚フィードバック下運動課題の成績には有意差はありませんでした(図2)。SRあり条件における視覚-運動時間的統合の向上効果は、平均検出閾値で約20ミリ秒の短縮でした。したがって、遅延視覚フィードバック下運動課題で設定した267ミリ秒の外乱効果が上回ったものと考えられました。このことは、視覚-運動時間的統合障害が重度な場合には、SRによる効果がない可能性を示唆しました。   本研究の臨床的意義および今後の展開 本研究結果は、SRの提供が感覚-運動統合障害を有する疾患に対して有効である可能性を示唆しました。介入研究を実施することで、SRの有効性を検証する必要があります。   論文情報 Nobusako S, Osumi M, Matsuo A, Fukuchi T, Nakai A, Zama T, Shimada S, Morioka S. Stochastic resonance improves visuomotor temporal integration in healthy young adults. PLoS One 13(12): e0209382.     問合せ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 畿央大学大学院健康科学研究科 助教 信迫 悟志(ノブサコ サトシ) Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.nobusako@kio.ac.jp

2018.12.18

教員・大学院生が2nd International symposium on EmboSSで発表!~ニューロリハビリテーション研究センター

平成30年12月5日、6日に大阪で開催された”2nd International symposium on Embodied-Brain System Science (EmboSS)”に森岡周教授、信迫悟志助教、大住倫弘助教、片山脩(博士後期課程)、林田一輝(博士後期課程)と私(宮脇裕、博士後期課程)が参加発表してきましたのでここに報告させていただきます。     EmboSSでは、脳科学とリハビリテーション医学の融合をシステム工学が仲介することで「身体性システム科学」という新たな学問領域を創出することを目的としており、本シンポジウムでも運動制御やロボティクス、そして主体感などに関する研究について、非常に高いレベルで活発に議論されていました。私たちも2日間にわたり主体感に関する研究を発表し、多くの基礎研究者と貴重な情報交換をすることができました。本シンポジウムへの参加は今後の研究にも繋がる大変有意義な時間となりました。 本シンポジウムにおいて特に印象的だったことは、基礎研究者がその基礎的知見のリハビリテーションへの応用を見据え研究を進めているということでした。主にロボティクスに基づくリハビリテーション手法の提案は、私たちにとって刺激的でありつつも、セラピストとして何をしていかなければならないのか、そしてどういった研究をしていかなければならないのか、といったことを改めて見つめ直す良い機会にもなりました。 私自身、修士時代にNTTコミュニケーション科学基礎研究所での研究活動をきっかけに身体性の基礎研究に携わるようになりましたが、本シンポジウムを通じて、身体性の基礎研究を臨床に還元するということの意味と検証すべきポイントをよりいっそう深く考えるようになりました。 今回発表させていただいた「運動制御における自他帰属」に関する研究については、近々論文投稿を行い、その後は臨床研究にも積極的に取り組んでいきたいと思います。   このような貴重な経験ができたのは森岡教授をはじめとする研究室の仲間の日頃のご指導およびご支援と、畿央大学の手厚いバックアップがあったからであり、この場をお借りして、深謝申し上げます。   <発表演題> ・信迫悟志 ”Stochastic resonance improves visuomotor temporal integration” ・大住倫弘 “The relationship and difference between delay detection ability and judgment of sense of agency” ・片山脩 “Neural mechanism of distorted body perception caused by temporal sensorimotor incongruence” ・林田一輝 “Noticing the skill in a motor task enhances sense of agency: Employing intentional binding task” ・宮脇裕 “Confusion within feedback control between cognitive and perceptual cues in self-other attribution: optimal cue integration in motor control”   健康科学研究科 博士後期課程 宮脇裕

2018.12.10

大学院生が第42回日本高次脳機能障害学会学術総会で発表!

12月6日、7日に神戸国際会議場で開催された第42回日本高次脳機能障害学会学術総会に院生4名が参加し、演題発表をしてきました(以下)。   ① 藤井慎太郎(博士後期課程)「半側空間無視における反応時間の空間分布特性―机上検査と日常生活場面の乖離を埋める新たな評価の視点―」 ② 高村優作(博士後期課程)「半側空間無視の諸症状とその回復過程―データベースから抽出した典型症例の症状と回復過程の分析―」 ③ 大松聡子(博士後期課程)「著明な右視線偏向を呈した半側空間無視症状の病態メカニズム―情動喚起画像を用いた評価と介入―」 ④ 大松聡子(博士後期課程)「運転動画視認時における半側空間無視症例の視線特性の定量的評価」 ⑤ 寺田萌(修士課程)「自動詞ジェスチャー模倣時の視覚探索特性と失行重症度の関連性~模倣障害を呈した脳卒中症例における検討~」   本学会のテーマは「Neuropsychological Rehabilitationの原点とトピック」となっており、幅広い症状の症例を通じたディスカッションが活発にされていました。ここ5、6年は毎年のように参加していますが、今年は特に我々が取り組んでいる半側空間無視症状に関する報告が多かった印象です。     私たちは、半側空間無視の研究チームで1つのセッション5演題並びで発表しました。無視症状に関する病態特性や回復過程、介入の視点、3D空間の評価、自動車運転…と臨床に即した流れで聞いて頂けたのではないかと思います。発表時間はもちろんですが、終わった後でも多くの方とディスカッションし大変有意義な時間でした。特に、最近取り組み始めた自動車運転動画の視線分析に関して、脳卒中後の自動車運転再開に長年取り組まれている方々に興味を持って頂き、内容について意見交換できたことが非常に有難かったです。 今後も研究チームの一員として、ますます研究活動に取り組んでいき、セラピストや症状に悩まれている方々に貢献していきたいと思います!   大学院(健康科学研究科 博士後期課程) 大松聡子

2018.12.10

第5回日本地域理学療法学会学術大会で本学教員・客員講師が表彰されました!~理学療法学科

同学会で、2年連続で本学理学療法学科教員および卒業生が受賞!     【教員レポート】 平成30年12月8日~9日(土・日)にパシフィコ横浜で第5回日本地域理学療法学会学術大会が開催されました。今回のテーマは「地域理学療法学の構築に向けて」であり、約200の演題・講演、1000名以上の参加があったようです。   学会では、日本理学療法士協会の半田会長や元厚生労働大臣の方の講演もあり、地域での理学療法士の活躍が期待されていることがわかる内容でした。また、調査研究だけでなく、たくさんの実践報告があり、それぞれの地域に合わせた取り組みを知ることができました。 また、パネルディスカッションでは、高取克彦准教授から「地域包括ケアシステムにおける住民主体型介護予防の自助と互助の客観的な効果について」の講演もありました。   そこで、松本大輔助教が第52回日本理学療法学術大会(第4回地域理学療法学会学術大会)での発表「後期高齢者におけるフレイルとソーシャルキャピタルとの関係性:小学校区レベルでの検討」(共同演者:高取克彦准教授)が優秀賞として選ばれ、表彰されました。  本演題は、地域在住高齢者約6000名を対象に、近年注目されているフレイルが一つの市内でも小学校区別でみると約2.3倍の地域間格差があり、ソーシャル・キャピタル(地域のつながり)が高い地域ではフレイルの割合が少ないことを示したものです。この結果からフレイル予防のためには社会参加を促すような関わりが重要であることが予想されます。  この結果を踏まえ、今後も継続して地域の健康増進・介護予防をめざし、地域住民の体力測定や運動指導・啓発を行っていくとともに、地域理学療法学のエビデンスにつながる研究を進めていきたいと思います。 この場を借りて、ご協力いただいた市町村の担当者および住民の方々に感謝申し上げます。どうもありがとうございました。 理学療法学科 助教 松本大輔 【客員講師(卒業生)レポート】 第5回日本地域理学療法学会学術大会での発表演題「訪問リハビリテーションにおける2ステップテストを用いた定量的な歩行能力評価-信頼性・妥当性の検討および屋外歩行自立に関する基準値の作成-」(共同演者:松本大輔 助教、尾川達也 博士後期課程)が大会長賞(調査研究部門)として選ばれ、表彰していただきました。     本演題は、在宅環境で行われる訪問リハビリにおいても実施可能な歩行能力評価として、「2ステップテスト(安定して行える最大2歩幅を測定するもの)」が有用ではないかという臨床疑問を解決しようと試みたものです。本研究の実施にあたって、数多くの訪問リハビリ施設(10施設)にご協力頂き、約230名もの訪問リハビリ対象者の歩行について分析を行いました。その結果、2ステップテストは個々で異なる在宅環境においても、簡便に行える歩行能力評価として、その信頼性・妥当性が確認され、屋内歩行や屋外歩行自立に対する基準値を見出すことが出来ました。この結果は、訪問リハビリにおいても対象となることの多い「歩行」について、2ステップテストの臨床的有用性を示すものといえます。今後は、この結果を踏まえ、訪問リハビリのさらなる質向上に資する臨床活動を継続するとともに、地域理学療法学の構築につながるエビデンスの創出を進めてまいります。 改めまして、今回の研究にご協力頂きました協力施設および対象者の方々に感謝申し上げます。なお、本研究は本学の卒業生である尾川達也(理学療法学科3期生・博士後期課程)、岸田和也(理学療法学科3期生)、竹村真樹(理学療法学科3期生)、市川雄基(理学療法学科4期生)、知花朝恒(理学療法学科5期生)、平田康介(理学療法学科6期生)が研究協力施設の代表者として関わっています。 卒業生が現場に出て、このように臨床課題を共有し、研究という解決手法を通して得られた成果が認められたことは、個人の枠組みを超えた喜びがあると感じています。   畿央大学大学院健康科学研究科 客員講師 畿央大学健康科学部理学療法学科 4期生 川口脳神経外科リハビリクリニック 石垣智也

2018.12.03

第11回日本運動器疼痛学会で大学院生が発表!

平成30年12月1日(土)、2日(日)に、びわ湖ホール:ピアザ淡海(滋賀県)にて開催された「第11回日本運動器疼痛学会」に参加してきました。   今回の学会では「新時代への挑戦ー日本人にあった専門性の融合と共有ー」をテーマに、医者や看護師、臨床心理士も含めた様々な職種の方が一堂に会し、医療現場、社会において疼痛に関わる問題点や今後必要とされるべき取り組みについて情報交換が成されました。 私も博士研究の内容を発表させて頂き、同じリハビリ職種だけではなく医師や看護師の方との意見交換を行う中で、自分がやろうとしている研究を疼痛医療の集学的な取り組みの中で考えることができ、非常に有意義な時間となりました。 我々の研究室からは以下の発表が行われ、いずれも活発に議論が成されていました。     <口述発表> ・佐藤剛介(客員研究員)「経頭蓋直流電気刺激とペダリング運動との併用介入が疼痛閾値および気分に及ぼす影響」 ・重藤隼人(博士課程在籍)「中枢性感作と心理的因子の疼痛強度に対する関係性」   <ポスター発表> ・今井亮太(客員講師)「術後1週間の疼痛改善度が1ヶ月後の疼痛強度を決定する」 ・西 祐樹(博士課程在籍)「慢性膝痛患者の日常生活における歩行の詳細分析」 ・田中陽一(博士課程在籍)「日中の活動が慢性疼痛の日内変動に及ぼす影響ー腕神経叢損傷後疼痛を有する1症例での検討ー」 ・藤井 廉(修士課程在籍)「腰痛を持つ労働者の痛み関連恐怖による重量物持ち上げ動作の動作特性」   今回の学会を通して改めて、疼痛医療にかかわる職種間連携の必要性を再認識することができました。一つの職種だけでは複雑な慢性疼痛には立ち向かっていけません。各職種が横のつながりを意識し、自分の専門性をチームの中で発揮しくことが重要なことだと感じました。 今後も疼痛研究に関わる研究室間のつながりも大切にしていきながらチームとして社会に貢献できる活動を行っていきたいと思います。 最後になりましたが、このような機会を与えて頂きました森岡周教授、畿央大学に深く感謝申し上げます。   畿央大学大学院健康科学研究科 神経リハビリテーション学研究室 博士後期課程1年 田中 陽一

2018.11.28

第16回日本神経理学療法学会学術集会で教員・大学院生など5名が発表!~健康科学研究科

平成30年11月10・11日(土・日)に大阪国際会議場にて第16回日本神経理学療法学会学術集会が開催されました。本学会は「次代を担う」をテーマに開催され、2000名以上の方が参加されました。   本研究室からは信迫助教をはじめ、植田さん(客員研究員)、高村さん(博士後期課程)、藤井さん(博士後期課程)、水田さん(博士後期課程)が発表を行いました。   演題名は以下の通りです。   <口述発表> ・信迫悟志「脳卒中後失行症と視覚‐運動統合障害に共通した責任病巣―映像遅延検出課題とVoxel‐based lesion‐symptom mappingからの証拠―」 ・植田耕造「Pushingの出現に付随して自覚的姿勢垂直位の傾斜を認めた重度左半側空間無視の一症例」 ・高村優作「空間性/非空間性注意の包括的評価による半側空間無視の回復過程の把握」 ・水田直道「脳卒中後症例における運動麻痺と歩行速度からみた歩行障害の特性―運動学/筋電図学的な側面からの検討―」   <ポスター発表> ・藤井慎太郎「脳卒中患者における静止立位時の側方重心偏倚の特徴に着目した重心動揺特性分析」     たくさんの方が参加されており、フロアでは活発な議論がされておりました。   また、特別公演「私らしさを取り戻すということ―身体性システム科学の視点から―」と、シンポジウム「中枢神経障害の歩行再建を担う」では森岡周教授が情報提供をされました。どちらの講演もSynofzikの論文から、感覚運動表象、概念的表象、メタ表象という3つの階層を軸に、社会的人間としての役割も含めた「私らしさ」の重要性について、行為主体感・身体所有感の視点から説明をされていました。     2日目には第52回日本理学療法学術大会と第15回日本神経理学療法学会学術集会の表彰式が行われました。 前者の最優秀賞で森岡教授,後者の学術集会長賞で信迫助教がそれぞれ表彰されました!     近年、装具療法や電気刺激療法に加え、経頭蓋磁気刺激やロボティクスなど、様々な視点からの介入が注目されており、講演や演題発表においてもその効果やメカニズムに触れた内容がたくさんあったように思います。また、再生医療の治験に関する講演もあり、今後ますます神経理学療法の分野が広がっていくであろうことを感じました。   どの介入も有効性が報告されており、臨床応用されていくことが期待される一方、介入ありきではなく、病態特性を考慮した適応と限界についても考えていく必要があるのではないかと思いました。こういった場で時間を共有し、たくさん議論する中で、研究と臨床がつながるように方向付けしていくことが、より良い医療を提供するために重要であると感じた二日間でした。   最後に、学会運営や準備、発表や参加をしたみなさまに、貴重な時間を提供していただいたことを深く感謝いたします。   畿央大学大学院 健康科学研究科 修士課程 古賀 優之

2018.11.22

感覚運動の時間的不一致による身体性変容の神経メカニズムが明らかに~ニューロリハビリテーション研究センター

脳卒中や脊髄損傷、慢性疼痛患者において、患肢を自己身体の一部と認識できないといった身体性の変容が生じることが報告されています。こうした身体性変容の要因の1つには、運動指令と実際の感覚フィードバックとの間に生じる不一致(感覚運動の不一致)が考えられています。しかしながら、感覚運動の不一致による身体性の変容が、①どれくらいの時間的不一致により生じるのか? あるいは、②その神経メカニズムは? については明らかになっていませんでした。畿央大学大学院 博士後期課程 片山脩と森岡周教授らは、感覚運動の時間的不一致が、150ミリ秒では身体に対する奇妙な感覚のみが惹起され、250ミリ秒以上の不一致では身体の喪失感や重さの知覚変容が生じることを明らかにしました。また、350ミリ秒以上の不一致で運動の正確性が低下することを明らかにしました。さらに、これらの身体性変容と運動制御への影響には、補足運動野と頭頂連合野の神経活動が関わっていることを脳波のネットワーク解析にて明らかにしました。この知見は、脳卒中や脊髄損傷、慢性疼痛患者の病態解明に貢献し、新たなニューロリハビリテーション技術開発に向けた基礎的知見になるものと期待されます。この研究成果は、Frontiers in Behavioral Neuroscience誌(Neural mechanism of altered limb perceptions caused by temporal sensorimotor incongruence)に掲載されています。   本研究のポイント  ■ 感覚運動の時間的不一致は、身体性の変容(「奇妙な感覚」「身体の喪失感」「重さの知覚変容」)を生じさせるだけでなく、運動制御にも悪影響を与える。  ■ 身体性の変容と運動制御への影響には、補足運動野と頭頂連合野の神経活動が関わっている。   研究内容 健常大学生を対象に、映像遅延システム(図1)の中で手首の曲げ伸ばしを反復させます。映像遅延システムでは、被験者の手の鏡像をビデオカメラで捉えて、そのカメラ映像を「映像遅延装置」経由でモニターへ出力させます。出力されたモニター映像を鏡越しに見ることによって自分の手を見ることができるものの、映像遅延装置によって作為的に映像出力が時間的に遅らされるため、被験者は“あれ?自分の手が遅れて見える” “自分の手が思い通りに動いてくれない” “自分の手のように感じない”という状況に陥ることになります。     図1:映像遅延システムを用いた実験 自分で動かした手が時間的に遅れて映し出される細工がされることによって、ヒトの感覚運動ループを錯乱させることができ、“身体性の変容”という状況を仮想的に設定することができます(技術提供:明治大学 理工学部 嶋田総太郎 教授)。 実際の実験では、① 0ミリ秒遅延、② 150ミリ秒遅延、③ 250ミリ秒遅延、④ 350ミリ秒遅延、⑤ 600ミリ秒遅延の5条件で手首の反復運動を被験者に実施してもらいました。運動中の手関節の運動を電気角度計で計測し、身体に対する「奇妙さ」「喪失感」「重さ」についてアンケートで定性的に評価しました。 実験の結果、動かした手の映像を150ミリ秒遅延させて視覚的にフィードバックすると、“自分の手に奇妙な感覚がする”といった変化が生まれました。さらに250ミリ秒以上遅延させると“自分の手のように感じない” “手が重くなった”という身体性の変容が生じました。遅延時間をさらに長くするとそれらの変化が増大することも確認されました(図2)。一方で、手関節の反復運動は、動いている手の映像を350 ミリ秒遅延させると、正確性が低下することが確認されました。これらの結果から、身体性の変容だけでなく運動制御までをも変容させてしまうということが明らかにされました。     図2:感覚運動の時間的不一致による身体性の変容と運動の正確性の乱れ さらに、身体に対する「奇妙さ」においては、150ミリ秒遅延では両側の腹内側前頭前野の神経活動性(図3)、600ミリ秒遅延では左の補足運動野と右の背外側前頭前野および右の右上頭頂小葉の神経活動性が関わっていることが明らかとなりました。「喪失感」および「重さ」においては、左の補足運動野の神経活動性が関わり、運動制御には右の下頭頂小葉の神経活動性が関わることが明らかとなりました。     図3:150ミリ秒遅延条件での「奇妙さ」に関わる神経活動領域     図4:600ミリ秒遅延条件での「運動の正確性」に関わる神経活動領域   本研究の臨床的意義および今後の課題 本研究成果は、脳卒中や脊髄損傷、慢性疼痛患者の身体性変容や運動制御への影響に補足運動野と頭頂連合野の神経活動性が関わっていることを示唆するものです。そのため、感覚運動の不一致を最小限にしながらリハビリテーションを進めることの重要性を提唱する基礎研究となります。今後は、実際に身体性の変容が生じている患者を対象に神経メカニズムの検証を行い、ニューロモデュレーション技術などを用いて、特定された脳領域の神経活動性に修飾を与えるニューロリハビリテーションの効果を検証していく予定です。   論文情報 Katayama O, Tsukamoto T, Osumi M, Kodama T,Morioka S. Neural mechanism of altered limb perceptions caused by temporal sensorimotor incongruence. Front. Behav. Neurosci. Vol 12. 282   問合せ先 畿央大学大学院健康科学研究科 博士後期課程 片山 脩(カタヤマ オサム) Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: b6725634@kio.ac.jp   畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 教授/センター長 森岡 周(モリオカ シュウ) Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.morioka@kio.ac.jp

2018.11.05

平成30年度運動器リハビリテーションセミナー「臨床実践編 (膝関節)」を開講しました。

平成30年10月28日(日)、平成30年度「畿央大学運動器リハビリテーションセミナー(臨床実践編 膝関節)」が開催されました。   「畿央大学運動器リハビリテーションセミナー」は明日の運動器リハに使える『エビデンス編』、部位ごとに基礎から臨床応用まで学べる『臨床編』、今年度からの新たな取り組みで膝関節をメインに実践的に理解する『臨床実践編(膝関節)』、臨床で得られたデータの分析方法について学ぶ『臨床研究編』の4つで構成しています。   今年の臨床実践編は理学療法士として触診や動作分析を行う中で体表解剖の知識が非常に重要であるということで、午前と午後に分けて実践的な実習形式で行いました。大学院2名によるレポートです。   午前:超音波エコーの仕組みと使い方、超音波エコーを用いた膝関節の観察 私は、超音波エコーを用いた実習の補助スタッフを担当しました。まず、福本先生に超音波エコーの仕組みや、取り扱いや読影方法についてご講義いただきました。     普段、臨床現場で超音波エコーを扱っている先生も全く扱ったことがない先生も、仕組みからもう一度学ぶことが出来てより深い理解が得られたと思います。また、エコーの読影方法も普段見慣れていないと難しいですが、イメージが持ちやすくなったと思います。     その後は、3班に分かれて実際に超音波エコーを用いて膝関節内部を観察していきました。最初はプローブの扱い方に苦戦していた先生方も、扱いに慣れてくると色々と条件を変えて読影をしてみたり、ディスカッションを交えたりしながら和気藹々とした実習となりました。スタッフとして参加していた私自身も、実習形式で行うことでエコーについてより深い理解を得られたなと感じました。   畿央大学健康科学研究科 修士課程 加納希和子       午後:膝関節の機能解剖学実習①、② 私は膝関節の機能解剖学実習の補助をさせて頂きました。この講義では実際に食用の豚の膝関節を用いて膝関節の構造や動きを勉強しました。豚の膝関節は比較的人の膝関節と類似していると言われています。私もそうですが、実際に学校で学んだ解剖学は教科書での勉強がほとんどであり、どこからどこに伸びているとなんとなく知っているだけで、3次元でのイメージが完全に理解できていません。今回は実際に臨床で運動器疾患を担当されている先生方が参加して頂いたので、膝を曲げ伸ばししながら関節内の半月板の動きを観察して『本当にこんなに動いているのか』、靭帯の付着部を見て『こんなところから付着していたのか』と興味深く観察して頂きました。言葉ではなく実際に目で見て観察できたということは今後の臨床で非常に役立つのではないかと思います。   畿央大学健康科学研究科 博士後期課程 岡田圭祐     次回の臨床研究編では、臨床ですぐ使える機器やソフトを紹介し、統計手法と得られた結果の分析方法について学んでいただくといった内容となっております。研究って何からやって良いのか分からない…といった疑問をお持ちの先生方、ぜひご参加ください。     【関連記事】 平成30年度 運動器リハビリテーションセミナー「エビデンス編」を開講しました。

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