平成29年度在外研究~フィンランドからの現地レポート

2017/11/22更新

本学には教育研究水準の向上および国際交流の進展に資するため、学術の研究・調査等のため外国に在外研究員を派遣する制度があります。平成29年6月1日から平成29年11月30日までの期間、フィンランドのUniversity of Helsinki(ヘルシンキ大学)看護医療学科の乾富士男准教授が、閉じこもり症候群及びその関連疾患(症状)を明らかにするために、双生児研究法による国際比較により研究を進めています。フィンランドから現地レポートが届きましたので、ご紹介します。

 

 

私は6月よりヘルシンキ大学社会科学部社会学科に招へい研究者として滞在しております。

 

▼ヘルシンキ大学HPより

 

helsinki

 

社会学と健康科学とどういう関係があるのかと思われる方もあるかもしれませんが、ヨーロッパの大学では医療や健康に関するテーマは社会学の主要テーマの一つです。ヘルシンキ大学はヨーロッパでも最古の大学の一つで、設立は1640年です。現在の場所に移転したのは1828年頃だそうです。街の中心にメインキャンパスがあります。街のシンボルともいえるヘルシンキ大聖堂とその前の元老院広場を取り囲む主要な建物の一つが、ヘルシンキ大学の本館です。その周辺に各学部の建物が点在しています。このことは、大学は街の主要な機能の一つであることを具体的に表していると思います。

 

私は社会科学部の中でも新しい建物にデスクを提供してもらっています。写真のように窓が大きく角部屋なので非常に明るいです。

 

乾先生1

 

こちらでは、学科のセミナー(教員と博士課程の学生対象、こちらのセミナーはディスカッションが中心)に参加しています。社会学にはいろいろな専門分野があるので、内容も多岐にわたっていて大変に興味深いです。 ディスカッションすることで多面的に物事を検討でき、研究にも磨きがかかるものだと改めて感じます。ちなみに、外国人が参加していてもいなくても、使用言語は英語だそうです。

 

社会科学には社会心理、社会政策、人口統計、社会学、など多岐にわたる分野があります。このセミナーでは健康に関するテーマという点では共通していますが、それぞれ異なったバックグラウンドを持つ専門家が議論するので大変に興味深いです。日本では、健康に関するテーマはどちらかというと医学系が中心ですが、ヨーロッパでは社会科学系での健康の研究も盛んです。今回の滞在を通して、社会科学系の知識を増やす必要性を実感できたことは一つの収穫です。

 

フィンランドはIT大国で、いろいろな活動がオンラインでできます。携帯電話の通信料も安いですし、WiFiもいたるところでアクセスできます。大学も例外ではなく、ほぼすべての手続き、連絡などがオンライン化されています。学生の試験もオンラインです。好きな時に受けられるようです。

 

▼社会学部の建物

 

IMG_20171031_1124325

 

さて、生活していて少し感じたことも書いてみたいと思います。6月に来た時に驚いたのは、鳥(ホオジロガン、カナダガン、そして白鳥など)の行動です。

 

乾先生2

 

公園などにたくさんいるのですが、人が近づいても逃げません。道の真ん中を我が物顔で群れをなして歩いています。自転車が来ても、犬が来ても逃げません。人が避けて歩かなければいけません。これらの鳥は完全に野生です。誰も餌をあげませんし、鳥も餌をねだりません。この鳥たちは、私と同じように夏の間だけここに滞在しているわけですが、なぜか人を怖がりません。自分たちが危害を加えられないことを知っているのだと思います。ちなみに同じ種類の鳥を他の国でも見ましたが、人が近づくと飛び去りました。写真は白鳥の子どもですが、すぐ近くまで近寄っても逃げません。近くにいる親鳥も知らん顔をしています。このような鳥たちがいることが、この街の様子をよく表していると思います。この街の人たちは、多様性に対して非常に寛容で、他人にあまり干渉しません。それでいて、とても親切です。成熟した大人の都市だと感じています。

 

最後にここで行っている研究の話をしたいと思います。こちらでは、滞在期間も短いので、既存のデータの解析を中心に、新しいプロジェクトのアイデアを具体化する作業をしています。双生児研究に関して、フィンランドは世界の最先端を行く国の一つです。なので、こちらの研究者とのディスカッションは示唆に富んでいて大変有益です。

 

最新の研究成果を少し紹介します。日本の双生児の方たちに協力いただいて集めているデータを解析し、性格(自己効力感)と身体症状(疲労感)との遺伝相関を明らかにしました。また、うつ症状も加えて解析したところ、異なる2つの遺伝要因がそれぞれの形質に影響を与えていることが分かりました。このことは、私の主要な研究テーマである、「病は気から」のメカニズムの解明のための一つの手がかりだと考えています。この結果は、11月にマドリッドで行われた国際双生児研究学会で発表し、現在論文にまとめているところです。今後は、このような日本での研究成果をフィンランドなどの他国と比較することにより、病気や症状に関係する遺伝の影響だけでなく環境の影響を明確に解明していければと考えています。

 

▼学会でのハンガリーのチームと大阪大学のチームの記念写真(一番左が乾准教授)

 

madrid

 

最後の写真は、10月末頃のヘルシンキの様子です。少し前までこの芝生の広場はホオジロガンであふれていましたが、どこかに旅立ってしまいました。今はすっかり雪に覆われています(ちなみにこの時期の雪は“普通ではない”そうです。念のため)。私もそろそろと帰国の準備を始めなければいけない時期のようです。

 

乾先生3

 

 

看護医療学科 准教授 乾富士男

 

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