大学院生の研究成果がHand surgery & Rehabilitation誌に掲載されました~健康科学研究科

2018/05/10更新

運動恐怖と「運動の躊躇」の関係性について新たな発見

 

術後痛を慢性化させる要因は痛みの強度だけでなく、心理的要因が大きく関与していることは周知のこととなってきています。その中でも、“運動恐怖(=患肢を動かすことへの恐怖心)”は、日常生活動作の悪化や運動障害に起因し、慢性疼痛発症の危険因子とされています。畿央大学大学院健康科学研究科の今井亮太らは、橈骨遠位端骨折後患者を対象に、ビデオカメラ(sampling rate 30Hz)で記録した手指タッピング動作解析(母指と示指の反復開閉運動)によって、運動恐怖を運動学的に定量化することを試みました。その結果、運動への恐怖心が強い症例ほど、運動方向を切り替える時間が長くかかっていることを明らかにし、このような運動学的異常を「運動の躊躇」と定義しました。この研究成果から術後患者が示す恐怖を客観的にセラピストが把握できる可能性が考えられます。この論文は、(Hand surgery & Rehabilitation誌(Relationship between pain and hesitation during movement initiation after distal radius fracture surgery: A preliminary study)に掲載されています。

 

研究概要

整形外科疾患術後患者の主とする問題は痛みであることが多く、その術後痛の遷延化は日常生活動作(ADL;Activity Daily of Life)を制限します。術後遷延痛の発生率は約50%といわれており、その中でも約10%が重度な痛みを有すると報告されています8)10)。つまり、多くの術後患者が痛みの慢性化を発症する可能性を秘めています。そのため、術後急性期では、炎症症状に伴う痛みを遷延化させず、慢性疼痛の発症を予防することが求められます。また、慢性化させる要因は痛みの強さだけでなく、痛みに対する心理的要因が大きく関与しています。中でも、“運動恐怖”(=患肢を動かすことへの恐怖心)は、患肢の不動化に続くADL障害の悪化、さらなる術後遷延痛をもたらすと考えられます。 

そこで、本研究では術後患者が示す心理的要因の運動恐怖を客観的に定量化が可能かどうか試みました。橈骨遠位端骨折術後患者が示す手指の屈伸運動をビデオカメラで撮影し、記録された映像を1枚1枚のフレームに切り分け、速度が0になる時点(最大伸展位・最大屈曲位)のフレーム数を測定しました(Firure。1)。その結果、速度が0になる点、つまり運動を切り替える時間が経時的に改善(短縮)していく様子が観察されました。また、術後5日目より痛みや心理面と有意な相関関係が認められました。我々は、この運動を切り替えるといった現象を「運動の躊躇」と定義しました。

 

本研究のポイント

 術後急性期に示される“運動恐怖”を、動画解析により定量化し運動の躊躇を定義しました。

 

研究内容

橈骨遠位端骨折術後患者の痛み強度の評価(安静時痛、運動時痛)、心理的評価、関節可動域と手指のタッピング運動との関係性を調査しました。評価期間は術後1日目、3日目、5日目、7日目、2週間後、3週間後、1ヵ月後まで継続的に実施しました。タッピング運動の評価方法は、橈骨遠位端骨折術後患者が示す手指の屈伸運動をビデオカメラで撮影し、記録された映像を1枚1枚のフレームに切り分け、速度が0になる時点(最大伸展位・最大屈曲位)のフレーム数を測定しました。(=運動を切り替える際にかかる時間)(図1)

結果、痛み強度や心理面はフレーム数と術後1日目、3日目と有意な相関関係が示されませんでした。しかし、術後5日目から有意な相関関係が認められました。(図2)

 

imai1 (002)

図1:手指タッピング動作の映像

手指の屈伸運動をビデオカメラで撮影し、映像をフレームに切り分け、速度が0になる時点(最大伸展位・最大屈曲位)のフレーム数を測定した。

 

imai2 (002)

図2:術後5日目の痛みとフレーム数との相関関係

 

本研究の臨床的意義および今後の展開

本研究結果から、臨床で簡便に実施可能なタッピング運動から客観的に痛みや痛みの心理面を評価できる可能性を示すことができました。痛みや心理面の紙面評価も重要ですが、紙面評価は主観的でありバイアスが大きく影響します。そのため臨床上、患者示す運動から客観的に定量化し評価することが重要であると考えます。今後は術後急性期から恐怖を著明に示す患者に対する介入研究を実施していく予定です。

 

論文情報

Imai R, Osumi M, Ishigaki T, Morioka S.

Relationship between pain and hesitation during movement initiation after distal radius fracture surgery: A preliminary study.

Hand Surg Rehabil. 2018

 

問合せ先

畿央大学大学院健康科学研究科

客員講師 今井 亮太(イマイ リョウタ)

Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600

E-mail: ryo7891@gmail.com

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