[Journal Club]錯視を利用した運動学習

Chauvel G, Wulf G, Maquestiaux F.

Visual illusions can facilitate sport skill learning.

Psychon Bull Rev. 2015 Jun;22(3):717-21.

 

「エビングハウス錯視」をご存じでしょうか?図の2つのオレンジ色の真ん中の円は両方とも同じ大きさなのですが,周りに大きい円があると小さく,逆に小さい円があると大きく見えてしまうという錯視図のことです。今回はゴルフパットのスキル学習に有効利用されている報告を紹介します。

36名の大学生にゴルフパットの練習の際,ゴルフカップの周りにこの錯視を投影させ,練習によるパッティングの「うまさ」を検証しています。
実験方法は,まず通常にパッティングを実施した後,ゴルフカップよりも大きい円を投影して練習する群(ゴルフカップが小さいと感じる群)と,ゴルフカップよりも小さい円を投影して練習する群(ゴルフカップが大きいと感じる群)に分類しています。そして,練習は両群ともに10試行を5セット実施し,学習されたスキルの保持効果をみるために24時間後に周りの円の投影なしで1セット実施しています。「うまさ」はゴルフカップから外れたボールまでの距離とし,短い方が「うまい」と判断しています。

そして,その結果,ゴルフカップよりも小さい円を投影した群では,大きい円を投影した群と比較して明らかにゴルフカップが大きいと知覚し(1〜2cmも大きく感じている!),なんと,カップとボールの距離も明らかに短く,その効果が24時間後も認められたというのです。このように錯覚を利用した運動学習が少しずつ報告されてきております。