[Journal Club]複合性局所疼痛症候群の運動特性

Schilder JC, Schouten AC, Perez RS, Huygen FJ, Dahan A, Noldus LP, van Hilten JJ, Marinus J.

Motor control in complex regional pain syndrome: a kinematic analysis.

Pain. 2012 Apr;153(4):805-12.

様々な疾患において「指先の運動障害」が出現します。しかしながら、臨床現場でみられる「指先の運動障害」のパターンは非常に多岐にわたるため、それに対するリハビリテーションアプローチもその都度変えていかなければなりません。しかし、「指先の運動障害」の質的な部分を評価することにはちょっとした困難さがあると思います。
以下の論文は、そのような質的な部分を明確にするための検査方法を紹介してくれています。

この論文で対象にしているのは、パーキンソン病患者75名と複合性局所疼痛症候群(CRPS患者)80名です。
評価方法は非常に簡単で、15秒間「親指と人差し指を出来るだけ大きく速く開いたり閉じたりする」だけです。この様子を上からビデオ撮影するだけです。
この論文では、この後の分析方法がユニークです。
ビデオ撮影した映像をもとに、ビデオトラッキングシステムを使って、親指と人差し指の運動軌跡を数値化します。
その数値から、総軌跡長、親指と人差し指の運動速度、距離シグナルから算出されるパワースペクトラル密度、親指と人差し指の開口幅、それらが15秒の間でどれほど変化が生じたのか・・・・などなどを分析します。
このような分析を経て、
パーキンソン病患者では、親指と人差し指の開口幅が狭いこと(hypokinesia)、経時とともに段々と開口幅が小さくなっていくという特徴が検出されました。一方で、CRPS患者では開口幅は健常者と同等なのに、運動速度の低下、低い周波数成分のパワー値が高い(運動緩慢)という特徴が検出されました。
少しだけ分析方法を工夫するだけで、臨床現場で何となく分かっている質的な特徴を明確にすることが出来ます。このような分析を加えることによってリハビリテーション効果も明確になります。