[Journal Club]求心路遮断患者のメンタルイメージ
ter Horst AC, Cole J, van Lier R, Steenbergen B.
The effect of chronic deafferentation on mental imagery: a case study.
運動イメージが想起できているのかを客観的に評価するツールとして「メンタルローテーション課題」が臨床現場ではよく使われていると思います。色んな角度の手の写真に対して「右手!」「左手!」と答えている時に、頭の中で自分の手を回転させているという脳内プロセスを利用したものです。
しかし、中にはメンタルローテーション課題の正答率や反応時間の成績は良好にも関わらず「この患者さん、本当に運動イメージをする能力あるの??」という印象を持つことも多くあると思います。
上記の論文はそのような時の解決策を1症例の検討で示してくれています。
この研究で紹介されている症例は慢性的に感覚が脱失しているにも関わらず、メンタルローテーションの成績が健常者よりも良好でした。しかも、この成績は「手を背中の後ろで組む」状態でも良好でした。
ちょっと不思議ですよね?
通常であれば、メンタルローテーション課題は「現在の姿勢」の影響を受けやすいという特徴があります。ですから、背中の後ろで手を組んだりしたら正答率も反応時間も遅くなるはずです。実際に、この論文でも健常者では背中の後ろで手を組むと成績が悪くなっています。
つまり、この感覚脱失している症例に関しては「頭の中で自分の手を回転させる」という心的プロセスとは異なるプロセスでメンタルローテーション課題を実施していたということです。
ということで、この症例には「運動イメージ能力がある!」とは言い難いですね。
この論文では「背中の後ろで手を組む」という些細な工夫ですが、こういった1つの工夫で、臨床評価の精度が上がることは大変意味のあるものだと思いました。