[Journal Club]壊れたミラーニューロン仮説の行動学的指標

Cook J, Swapp D, Pan X, Bianchi-Berthouze N, Blakemore SJ.

Atypical interference effect of action observation in autism spectrum conditions.

Psychol Med. 2014 Mar;44(4):731-40.

手を左右に反復横運動を行っている他者を観察しながら,自身は手を上下に反復縦運動を行うと,自身の運動軌道が歪むことが知られており(Kilner, 2003),これを運動観察干渉効果と呼びます.これはミラーニューロンシステム(MNS)において,自己運動と他者運動がお互いに干渉をきたすことによるものと考えられています.

この研究では自閉症スペクトラム障害(ASD)を持つ被験者と定型発達被験者に対して,運動観察-運動実行課題を一致条件(自己と他者が同じ運動)と不一致条件(自己と他者が異なる運動)で実施しています.その結果,定型発達被験者では,不一致条件の干渉効果(運動軌道の歪み)が大きかったのですが,ASDを持つ被験者では,干渉効果が生じませんでした.これは,一つの可能性として,ASDではMNSの障害があることを示唆する結果であり,それを脳イメージング技術ではなく,行動学的な指標を使用して明らかにした研究になります.