[Journal Club]Motor Neglectは注意の問題?運動意図の問題?

Punt TD, Riddoch MJ, Humphreys GW.

Motor extinction: a deficit of attention or intention?

Front Hum Neurosci. 2013 Oct 16;7:644.

 

運動能力は残存しているにも関わらず麻痺側を動かそうとしない症状はMotor Neglectと呼ばれており,このような症状が出現する原因は「運動意図の損失」なのか「注意の損失」なのかは明らかにされておりませんでした.この研究では,注意と運動意図のどちらがMotor neglect症状に影響を与えているのかを実験的に検証しています.

示指で円を描く課題を「左手のみ」・「右手のみ」・「両手同時に」で,「患肢側をみる」・「正面を見る」・「健肢側をみる」の合計9条件で実施した.示指にマーカーをつけて運動軌跡を3次元カメラで記録する.そして,描かれた円の直径・円を描く時間・速度・時間的干渉の度合いを算出した.

その結果,同時に円を描くと「患肢の円の直径の縮小」・「運動速度」が認められました.このことは,両手運動を行うことによって左手の運動意図が損失してしまった結果を示すものであり,Motor Neglect症状には「運動意図の問題」が関与していることを意味しているものです.一方で,「患肢側をみる」条件では空間的エラーが少なくなり,逆に患肢をみない条件では空間的エラーが生じやすいことから,少なくとも「注意の影響」という影響も考えられるという結果となっています.

この研究結果から,Motor Neglectは「運動意図の問題」と「注意の問題」もどちらも有しているという結論となっています.この実験では,患肢側へ注意を喚起している時には,Motor neglect症状が少なくなったことから,麻痺肢を動かそうとしない症例に対しては,できるだけ注意を患肢へ向けていく介入も良いであろうと報告されておりました.