[Journal Club]一見すると上手にみえる、でも少しぎこちない不全脊髄損傷患者の到達把握運動
Stahl VA, Hayes HB, Buetefisch CM, Wolf SL, Trumbower RD.
Modulation of hand aperture during reaching in persons with incomplete cervical spinal cord injury.
Exp Brain Res. 2015 Mar;233(3):871-84.
不全脊髄損傷患者では上肢機能が低下することは明らかでありますが、到達・把握運動などの合目的的動作が損なわれているかどうかの調査はまだ不十分な現状です。
本日紹介する論文は、合目的運動時の手指の空間制御&手指運動に関わる筋活動を計測して、不全脊髄損傷患者の到達・把握動作の特徴を調査してものです。
不全脊髄損傷患者に対して、4種類の大きさのボールに対しての到達・把握運動を実施し、運動軌跡を2台のoptical motion analysis system (Optotrak 3020 and Certus;sampling 100Hz)で計測し、手指運動に関わる筋活動を筋電計で計測しました.
その結果、不全脊髄損傷患者でも健常者と同様にそれぞれのボールの大きさに対応した手指の空間的制御が可能でした。つまり、外部環境に合わせた運動調整ができていたということです。
しかしながら、不全脊髄損傷患者では伸筋と屈筋を「同時収縮」させているという筋活動パターンが特異的に認められました。つまり、一見すると上手く手指の運動調整ができるているようでも、その中身は健常者とは異なるものとなっていたということです。このことから、リハビリテーションにおいても、協調的あるいは効率的な運動制御に着目したリハビリテーションが必要であろうということが主張されてきています。