[Journal Club]痛みへの恐怖は身体的動作に影響を与える
Thomas JS, France CR.
Pain-related fear is associated with avoidance of spinal motion during recovery from low back pain.
Spine (Phila Pa 1976). 2007 Jul 15;32(16):E460-6.
痛みの慢性化の重要なリスクファクターの一つとして,痛みに関連した恐怖が挙げられており,痛みの慢性化モデルとして恐怖回避モデルが提唱されています.実際に,痛みに関連した恐怖が高い人は,回避行動を引き起こし,日常生活にも支障が生じると言われています.
今回紹介する研究は,慢性腰痛患者が有する痛み関連の恐怖が,どのような運動行動に影響を与えているか不明であったため調査したものです.
36名の慢性腰痛患者に対して,高さの異なる3つのターゲットを用いてreach課題を実施しました.高さは,股関節0°,股関節30°,股関節60°屈曲するとreach可能な高さとしています.リーチする高さが低くなるほど,腰椎の可動性が求められます.
実験の結果,痛みへの恐怖心が強い群は,ターゲットが低くなればなるほどreach課題時の,著明な運動速度の低下と腰椎可動性の低下が認められました.
つまり,痛みへの恐怖が高い人は,reach課題時に腰椎の可動を避けるように,股関節や膝関節を用いた代償戦略となっていたということです.また,運動速度の低下も認められたことから,円滑に動作が行えていなかったことも明らかになりました.
この研究では慢性腰痛を対象にしていますが,痛みの慢性化防ぐためにも,急性期から痛みへの恐怖に関連した動作を評価することが重要になるかもしれません.