[Journal Club]自由な選択は運動主体感を高める
Barlas Z1, Obhi SS
Freedom, choice, and the sense of agency.
Front Hum Neurosci. 2013 Aug 29;7:514. doi: 10.3389/fnhum.2013.00514.
「この身体を動かしたのは自分自身である」といった意識を運動主体感と言います.運動主体感は主観的な意識経験ですが,運動主体感を定量的に測定する手法の一つにintentional bindingがあります.
この実験方法は被験者にキー押し(action)をさせ,キー押しの数100ms後に音を提示(effect)し,遅延時間を推定させる課題です.自発的な行動をとると,行為の知覚時間(action)とその結果の知覚時間(effect)がお互いに向かってシフトすることがわかっており,actionとeffectの間の時間が短く感じる程, 運動主体感が高くなると想定されています.運動主体感には行為を実行する前段階(predictive)と行為実行後の後段階(postdictive)により修飾されると考えられており,両者はintentional bindingの実験課題を操作することでそのメカニズムを調べることができると考えられています.
本研究では,predictiveな要素を操作し運動主体感への影響を調査しています.
この研究は行為の自由な選択が運動主体感に影響するかどうかを検討することを目的としており,キー押しの「数」を変えることでbinding効果が変化するかを検証しています.実験はキーの数を7,3,1とし,それぞれ選択の自由度を high,medium,no choiceと条件を定義し,被験者はそれぞれの条件で自由に一つのキーを選択してintentional binding課題を行います(no choice条件は一つのキーしか選択できない).結果は,high条件で知覚時間が最も短くなり運動主体感が高くなりました.
このことから,運動主体感と行為の自由な選択には潜在的な関連性があることが示唆されると著者らは述べています.