[Journal Club]運動学的指標に基づいた腰痛者のサブグループ分析

Robert A Laird, Jennifer L Keating, Peter Kent

Subgroups of lumbo-pelvic flexion kinematics are present in people with and without persistent low back pain.

BMC Musculoskeletal Disorders. (2018) 19:309

 

運動機能障害は持続的な腰痛と関連があると報告されているものの,最適な介入は不明なままです.腰痛のサブグループでは運動の特徴が異なり、介入への反応も異なる可能性が示唆されています.腰痛者では座位,前屈,持ち上げ動作などの腰椎屈曲に関連した活動が特に問題であるとされており,屈曲運動時の腰椎-骨盤の運動異常が特徴的であると報告されていますが,その特徴によってサブグループ化が可能であるかは報告されていませんでした.

今回紹介する論文では,1.屈曲に関連した腰椎-骨盤運動指標のパターン(サブグループ)が存在するのか,2.腰痛の有無でそのパターンの頻度が異なるのかを明らかにし,3.そのパターンが臨床的所見と関連しているのか調査することを目的にしています. 対象は非腰痛者124名と腰痛者140名であり,第12胸椎・第3腰椎・第2仙椎にモーションセンサーを取り付け,第3腰椎の両側に表面筋電図センサーを取り付けて,立位および座位での前屈動作時の運動指標と筋活動指標の評価を行い,潜在クラス分析を行いました.

その結果,立位屈曲運動時の体幹角度・腰椎角度・骨盤角度・腰椎骨盤リズム・屈曲弛緩比率・最大屈曲までの時間・体幹屈曲0度と20度時の腰椎もしくは骨盤の運動遅延の指標がサブグループ化に有用であることが明らかになりました.一方で,座位での運動指標はサブグループ化には有用ではなく用いられませんでした.立位での運動・筋活動指標を用いてサブグループ化を行うと,サブグループ1:標準,サブグループ2:腰椎主体の運動,サブグループ3:骨盤主体の運動,サブグループ4:防御戦略,の4タイプに分類できることが明らかとなりました.特にサブグループ4:防御戦略をとるグループには腰痛者しか属しておらず,他のグループと比較しても痛みや活動制限が有意に大きいことが明らかになりました.なお,サブグループ4の特徴は最大屈曲角度までの時間も最も遅く,屈曲弛緩現象も最も少なかったことも明らかにされました.

今回の結果より,腰椎-骨盤の運動指標に着目した腰痛者の分類が可能であり,その分類に基づいた治療介入が良好な治療反応を示す可能性があると著者らは述べています.