[Journal Club]リハビリテーションの目標設定におけるシェアードディジションメイキング

Rose A, Soundy A, Rosewilliam S.

Shared decision-making within goal-setting in rehabilitation: a mixed-methods study.

Clin Rehabil. 2019 Mar;33(3):564-574.

リハビリテーションの目標設定は、患者と医療者が関わる重要な機会とされています.しかし,多くの報告から患者がその過程に関与できていないことが分かり,近年では意思決定への患者参加を保障するシェアードディジションメイキング(以下,SDM)という方法に焦点が当てられています.この研究では,リハビリテーションの目標設定会議の中で、(1)スタッフがどの程度SDMを実践しているか,(2)目標設定過程の中で患者とスタッフ間の認識に違いがあるか,(3)目標設定に関与するための要因を患者視点で調査することを目的に調査されました.
対象は,リハビリテーションを受けている60歳以上の虚弱高齢者とし,入院患者20名と地域患者20名でした.研究に参加したスタッフは,リハビリテーション助手13名,理学療法士6名,作業療法士5名でした.この研究で定義された目標設定会議は,入院では患者とチームメンバーで行われる45~60分の体系的な会議とし,地域では自宅での最初の治療・評価の間に療法士と患者間で行われた会議でした.評価は,目標設定会議の後にSDMの実践程度を測定するMultifocal Approach to Sharing in Shared Decision Making (MAPPIN’SDM)という質問紙に患者,スタッフ,観察者が回答した.その後,MAPPIN’SDMの項目のうち1つ以上で不十分と回答した患者15名に追加のインタビューの同意を確認し,最終的に 9名の患者に半構造化面接を行いました.また,この研究に参加した全スタッフは、SDMに関する半日の勉強会に参加していました.結果,MAPPIN’SDMではスタッフがSDMの多くの項目を順守していました.ただし,リハビリテーションの『選択肢』やそれらの『長所と短所』に関する項目では不十分と回答する割合が多くなっていた.また,『患者の問題の議論』という項目では,患者とスタッフ間で齟齬が生じており,スタッフはしていると認識する一方,患者の一部はされていないと認識していました.次に,インタビュー結果から目標設定への関与に影響する要因として3つのテーマが抽出されました.

(1)素因:会議の中で発言する動機や自信は,目標設定に関与する能力と関係し,会議に家族が参加することや過去の目標設定経験などはその能力に影響する.
(2)SDMにおけるスタッフとの相互作用:会議中のコミュニケーションでは,スタッフは傾聴しているかもしれないが,それを患者に分かりやすく表現しないため,患者自身は理解されていないと感じていた.また,スタッフの父権主義的な対応は受身的な役割を強いられ関与に影響する.
(3)SDMへの事前準備:会議前の準備として,議題の設定や選択肢に関する情報を知っておくことは,関与の促進につながる.また,目標の意味や患者の役割,長期目標からどのように短期目標を設定したかなどの説明は有用である.

この結果から,患者が目標設定に関与するには,選択肢に関する情報提供や傾聴していることを明確に表現するなどの行動が必要かもしれません.また,患者が自信をもって発言しやすいように,会議場所や家族の参加なども考慮することが有用であると筆者らは述べています.