[Journal Club]腰痛有訴者は実生活において腰部運動の自由度が減少する

People with low back pain show reduced movement complexity during their most active daily tasks

Gizzi L, Röhrle O, Petzke F, Falla D

Eur J Pain. 2019 Feb;23(2):410-418. Doi: 10. 1002/ejp. 1318. Epub 2018 Oct 11.

 

腰痛が運動の自由度や適度な変動性を減少させることが明らかにされています.しかしながら,腰痛有訴者の身体運動を分析した先行研究の多くは実験室内での計測であるため,実生活における運動学的異常はこれまで分析されていません.近年,長時間にわたって脊椎の運動学的データを記録できる加速度計が開発されました.この研究では,その機器を用いて日常生活活動中の胸椎と腰椎の運動を24時間記録し,運動の自由度を分析しました.

対象は,慢性の非特異的腰痛を有する17名と18名の腰痛のない健常者とし,脊椎運動の評価にはEpionics SPINEというデバイスが用いられました.Epionics SPINEは,2本の細長いテープに12個の加速度計が連なるような形状をなしています.対象者の胸椎〜腰椎の棘突起を挟むように貼付されました.実験室にてEpionics SPINEをセッティングした後,対象者はそれぞれ通常の日常生活を過ごすことを求められました.その際の24時間のデータを記録し,運動学的に分析しました.また,対象者は,計測中の24時間をどのように過ごしたかを日記で記すことを求められました.

分析の結果,腰痛有訴者と健常者で1日の過ごし方に違いはないことが明らかとなりました(活動内容の内訳:座位,立位,歩行,サイクリングなど).運動学的分析について,24時間の平均的な腰部運動の自由度に違いはありませんでした.しかし,活動度の違いに着目して分析した結果,腰痛有訴者は,健常者と比較してより活動性の高い時間で腰部運動の自由度が減少していることが明らかとなりました.

今回の結果に対し,筆者らは腰部運動がより要求される日常生活動作において,痛みを緩和させるための代償動作として,このような腰を固めて動く戦略を選択しているのではないかと述べています.