パーキンソン病の前屈姿勢に対する直流前庭電気刺激の即時効果について
PRESS RELEASE 2015.7.3
パーキンソン病の姿勢異常は歩行や食事動作など日常生活に与える影響が大きい重大な問題です.パーキンソン病の姿勢異常には多くの要因が関連すると考えられていますが,近年,前庭系の機能障害の関連についても報告されています. 岡田助教は,前庭系を刺激し,前後あるいは左右方向への姿勢傾斜反応を引き起こす直流前庭電気刺激(Galvanic Vestibular Stimulation, GVS)を一定時間行うことによりパーキンソン病の姿勢異常が即時的に改善する可能性があるのではないかと考えました.
前屈姿勢を呈するパーキンソン病患者7名を対象に,GVSあるいは偽刺激を1週間の間を空けて無作為な順序で,被験者には刺激条件を伏せて実施しました.
今回実施したGVSは後方への姿勢傾斜反応を誘発可能な刺激方法で,0.7mA以下という非常に弱い直流電流を20分間,仰向けの状態で通電しました.
その結果,GVS後,目を開けている状態でも,閉じている状態でも立っている際の前屈角度が,効果量は小さいものの有意に減少することが明らかになりました.
偽刺激でも前屈角度が減少する傾向が認められましたが,有意な変化は認められませんでした.
刺激前後の前屈角度の変化量について検討すると,GVSは偽刺激よりも目を閉じた状態で立っている際の前屈角度を減少させることが明らかになりました.
写真はGVS後前屈姿勢が顕著に改善した例を示しています.GVSによる前屈角度の変化量には個人差があり,適応やその効果の機序などについて今後検討する必要があると考えています.
本研究の臨床的意義
現在パーキンソン病の姿勢異常に対する有効な治療法は現在も確立されていません.本研究結果は,直流前庭電気刺激がパーキンソン病の前屈姿勢に対する新しい介入となる可能性を示唆しています.今後は神経生理学的手法や行動評価などを用いて姿勢異常の病態を評価した上で介入し,その適応や効果のメカニズムについても検討する必要があると考えています.
論文情報
Okada Y, Kita Y, Nakamura J, Kataoka H, Kiriyama T, Ueno S, Hiyamizu M, Morioka S, Shomoto K. Galvanic vestibular stimulation may improve anterior bending posture in Parkinson’s disease. Neuroreport 26(7): 405-410, 2015.
問い合わせ先
畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
岡田 洋平(オカダ ヨウヘイ)
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