[Journal Club]変形性関節症における身体活動を干渉する痛み
Murphy SL, Schepens Niemiec S, Lyden AK, Kratz AL.
Pain, Fatigue, and Physical Activity in Osteoarthritis: The Moderating Effects of Pain- and Fatigue-Related Activity Interference.
Arch Phys Med Rehabil. 2016 Sep;97(9 Suppl):S201-9.
定期的な身体活動(physical activity; PA)は,循環器系,気分,内臓系などにポジティブな影響を与えると広く認識されています.しかし,骨関節炎(OA)患者では,健常者と比べて日常生活で不活動傾向にあることが報告されています(OA患者の男性40%,女性で57%が国際的PA条件を満たしていない).こうしたOA患者の毎日のPAパターンに対する調査は,定期的な身体活動量を向上させるための知見として重要です.加えて,低い活動レベルと関係している要因として「痛み」は最も認知されているOA徴候です.また最近の調査では,PAと否定的に強い結びつきがある要因として「疲労」を報告しています.今回紹介する論文では,OA患者を対象に痛みと疲労関連の生活干渉とPAの関係性を調査することを目的としています.
対象は膝または股関節痛を有するOA患者で,地域で生活を送っている162名が参加しました.事前評価として6分間歩行やOAのグレード評価,身体部位の評価,自己記載の質問紙を使用して,痛みと疲労関連の活動干渉を評価した後に,7日間にわたって毎日計5回(起床時,午前11時,午後3時,午後7時と就寝時)の痛みおよび疲労強度の評価と,身体活動量計を使用して身体活動量の評価を行いました.
結果,PAは午前中が高く,昼から夕方にかけて減少していくという身体活動パターンを示しました.また,午前中において,その時の痛みが強く,痛みによって生活に支障が出ているという意識が強い者はPAが少なくなっていることが明らかとなりました.つまり,痛みは「朝~昼過ぎ」の生活へ干渉してPAを少なくすることがわかりました.
今回の調査のポイントとして痛みによる生活干渉がありますが,痛みにより生活に支障が出ているという意識が高い者は,痛みを避ける手段として「不活動」を選択してしまいやすいのかもしれません.一方で,支障がでているという意識が低い者は,(痛みから気をそらす手段として)身体活動を選択しているのかもしれません.
今回の結果より,特に午前中の活動において個々の痛みによる生活干渉の高/低に合わせることと,個人が持っている疼痛への対処戦略を考慮して,指導的介入を行っていくリハビリテーションが重要であると著者らは述べています.