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大学院生の神経リハビリテーション研究大会が開催されました!
令和7年1月25-26日に信貴山観光ホテルにて,神経リハビリテーション研究大会が開催されました.この研究大会は,合宿形式であり今年で16回目を迎えることができました.
本年度は,ニューロリハビリテーション研究センターの教員と大学院博士課程・修士課程メンバー総勢29名が参加しました.また,大学院修了生の佐藤剛介さんと西祐樹さんをお招きし,それぞれ現在取り組まれている研究や活動について紹介して頂きました.
森岡教授の開会の挨拶から始まり,修士課程2年の最終諮問会に向けた予演会と博士後期課程2年の中間発表会に向けた予演会,および上記修了生の研究紹介が行われ,様々な視点から質疑応答や意見交換が繰り広げられました.
修士課程2年は5名が発表を行い,研究内容に関する質問はもちろん,スライド構成やプレゼンテーション時の話し方といった聴講者に研究内容を伝えやすくするためのアドバイスが活発にされていました.博士課程2年は3名が発表を行い,レベルの高いデータ解析やスライドの表現方法に並々ならぬ努力を感じ,心惹かれる研究内容ばかりでした.
また,修了生の方は,大学院で実践された研究や現在進行形で進めている研究を紹介していただきました.臨床現場に還元する形で研究に取り組まれており,今後の大学院生が目指していくべき姿を見させていただき,身が引き締まる思いでした.
夕方には,7グループに分かれて,修士課程1年の研究計画に対するディスカッションが行われました.各グループともに,研究計画の内容はもちろんのこと,論点を整理した発表方法などに力を注いでおり,活発に議論が行われていました.
1日目終了後の夕食時,入浴時,懇親会においても,それぞれが研究に関する白熱した議論を継続し,また自分の将来の展望についての話し合いも活発に行われていました.2日目は畿央大学に戻り研究室で修士課程4名が発表を行い,最終諮問会に向けたディスカッションが行われました.森岡教授からは,主体的に研究に取り組む必要性や研究を行う上で重要な要素について説明されました.
現状では,博士課程・修了生の方々の研究を深く理解して意見を述べることは困難でしたが,あの土俵に自分も立てるように成長していきたいと思いました.
最後になりましたが,このような機会を与えてくださった森岡教授をはじめとする研究センターの皆様,神経リハビリテーション研究大会の開催にご尽力頂きました関係者の方々に深く感謝を申し上げます.
M2 福留広大
顕著な前屈姿勢を示すパーキンソン病患者の歩行不安定性と代償戦略の解明
PRESS RELEASE 2025.1.5
パーキンソン病(Parkinson’s disease: PD)患者は,顕著な前屈姿勢(Camptocormia)を示すことがあります.しかし,そのような前屈姿勢が歩行不安定性にどのような影響を与えるのか,またそれをどのように代償しているのかについて客観的に十分明らかにされていませんでした.畿央大学大学院博士後期課程の浦上英之氏と岡田洋平准教授らは,三次元動作解析装置を用いて実験的検証を行うことにより,顕著な前屈姿勢を示す患者は,歩行中の垂直方向の不安定性が高く転倒リスクが高いこと,また重心位置を後方に位置させ,側方への重心移動を増加させる代償戦略をとることを初めて明らかにしました.本研究の知見は,前屈姿勢を示すパーキンソン病患者の歩行安定性を最適化するためのリハビリテーションにおける介入戦略を検討する上で有益な知見となることが期待されます.この研究成果は,Journal of Movement Disorders誌(Gait instability and compensatory mechanisms in Parkinson's disease with camptocormia: An exploratory study)に掲載されています.
研究概要
畿央大学大学院博士後期課程の浦上英之氏と岡田洋平准教授らは,三次元動作解析装置を用いて実験的検証を行うことにより,顕著な前屈姿勢を示すパーキンソン病患者は,歩行中の垂直方向の不安定性が高く,転倒リスクが高いこと,また重心位置を後方に位置させ,側方への重心移動を増加させる代償戦略をとることを初めて明らかにしました.
本研究のポイント
・顕著な前屈姿勢(camptocormia)を示すパーキンソン病患者と顕著な姿勢異常を示さない患者の歩行の不安定性とそれを代償するための戦略について,三次元動作解析装置を用いて実験的に検証した.
・ 顕著な前屈姿勢を示す患者は,歩行中の垂直方向の不安定性が高く,転倒リスクが高いことと,重心位置を後方に位置させ,側方重心移動を増加させながら歩く代償戦略をとっていることを明らかにした.
・ また,パーキンソン病患者は前屈姿勢が強くなるにつれて,これらの歩行不安定性と代償戦略が強くなることも示した.
研究内容
本研究では,顕著な前屈姿勢であるCamptocormiaを示すPD患者10名,CamptocormiaがないPD患者30名および健常高齢者27名を対象に,三次元動作解析を用いて歩行不安定性の検証を行いました.対象者には快適歩行速度で5mの歩行路を歩行してもらい,歩行安定性指標(図1)と時空間歩行指標,運動学的指標を計測しました.実験環境における歩行安定性と代償戦略は,個人の特性や心理状況によって異なる可能性があります.したがって,健常高齢者群と比較して顕著に異なる歩行不安定性の傾向を有する患者を確認したうえで,その者を除外し,3群間比較を実施しました.また,PD患者全体で前屈角度と各歩行指標との関連を検討しました.
図1.歩行安定性指標
前方・側方・垂直方向の歩行安定性指標の算出方法を示す.いずれも歩行中の踵接地時に算出した.速度が考慮されたCOMであるXCOMが支持基底面内に位置する場合はMOS>0,支持基底面から逸脱し物理的に不安定な状態はMOS<0となる.
CamptocormiaがあるPD患者のうち1名は,顕著な前方への歩行不安定性を示しました.異質であったこの1例を除き,解析を行った結果,CamptocormiaがあるPD患者はCamptocormiaがないPD患者と比較して,COMが低位であり,垂直方向の歩行不安定性が高いことが示されました.また,CamptocormiaがあるPD患者は,歩行中のCOMを後方に位置させ,矢状面上の下肢関節運動範囲が減少し,COM側方速度,骨盤側方傾斜の運動範囲,歩隔が増加することが示されました(図2).
図2.Camptocormiaがあるパーキンソン病患者の歩行の特徴
Camptocormiaがあるパーキンソン病患者はCamptocormiaがないパーキンソン患者と比較して,COM位置は低かった.また,歩行時にCOMを後方に位置させ,矢状面上の運動範囲を減少し,前額面の運動やCOM移動を増加させることも示された.
顕著な前方への歩行不安定性を示した1名は,CamptocormiaがあるPD患者群の特徴であったCOM後位や矢状面上の関節運動範囲の減少,歩隔の拡大を認めませんでした.また,この症例は頻回な前方への転倒歴を認め,転倒恐怖心が乏しく,歩行時の安全性を優先しない発言や行動を認めました.
これらの結果は,Camptocormiaを示すPD患者はCamptocormiaがないPD患者と比較して,垂直方向の歩行不安定性が高く,前屈角度の増加に伴い転倒リスクが高まることを示しています.一方で,Camptocormiaを示すPD患者は,前方への歩行不安定性が生じないように後方重心姿勢をとり,矢状面上での関節運動を減少させ,側方の関節運動を増加させることで,体幹屈曲の慣性モーメントを減少させる代償戦略をとっていると考えられます.
本研究の臨床的意義および今後の展開
本研究の知見により,顕著な前屈姿勢を示すパーキンソン病患者は,垂直方向の歩行不安定性による転倒リスク増加と歩行不安定性の代償戦略について,初めて客観的に解明しました.また,一部の前屈姿勢を示す患者は,実験環境下でも顕著な前方への歩行不安定性を示すことが確認されました.本研究の知見は,前屈姿勢を示すパーキンソン病患者の歩行安定性を最適化するためのリハビリテーションにおける介入戦略を検討する上で有益な知見となることが期待されます.今後は,実際の日常生活場面の歩行不安定性の検証や個人の代償戦略の適用に及ぼす要因についても検証する予定です.
論文情報
Urakami Hideyuki, Nikaido Yasutaka, Okuda Yuta, Kikuchi Yutaka, Saura Ryuichi, Okada Yohei.
Journal of Movement Disorders, 2025.
問い合わせ先
畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
准教授 岡田洋平(オカダヨウヘイ)
Tel: 0745-54-1601
Fax: 0745-54-1600
E-mail: y.okada@kio.ac.jp
脳卒中患者への定量的上肢活動量評価を用いた行動変容介入の効果
PRESS RELEASE 2025.1.5
脳卒中患者は,中枢神経系の損傷により上肢機能障害を呈し,麻痺側上肢の使用頻度が低下することで社会参加が妨げられ,生活の質に不利益をもたらします.麻痺側上肢の使用頻度には,性格特性や脳卒中後に生じる心理的要因(自己効力感や結果期待)も影響することが分かっています.しかし,心理面や性格特性による麻痺側上肢活動の低下に着目した長期的な支援を実施した報告は散見されません.畿央大学大学院博士後期課程の南川勇二氏と森岡周教授らは,心理的要因によって麻痺側上肢の上肢活動量が低下している脳卒中患者1例に対し,上肢活動量の長期的なモニタリングに基づいた行動変容介入を行いました.その結果,上肢機能に加えて,日常生活の上肢活動量が改善しました.さらに,自己効力感が先行して改善し上肢活動量が改善することも明らかにしました.この研究成果は学術誌『作業療法』(心理的要因による脳卒中後麻痺側上肢使用に対する定量的上肢活動量評価を用いた行動変容介入の効果-症例報告-)に掲載されています.
研究概要
脳卒中患者は,中枢神経系の損傷により上肢機能障害を呈し,性格特性や心理的側面(手に対する自己効力感や結果期待)への影響から日常生活で麻痺側の上肢を使用することが困難になることがあります.これは,日常生活活動や社会参加を妨げ,生活の質の低下にもつながります.そのため,リハビリテーション専門家にとって,脳卒中患者の性格や心理的側面を考慮した上肢活動に対する包括的なアプローチが重要です.しかしながら,上肢機能に加え,心理面や性格特性による麻痺側上肢活動の低下に着目して長期的な支援した報告は散見されません.畿央大学大学院博士後期課程の南川勇二氏および森岡周教授らの研究チームは,脳卒中患者1症例に対し,入院中から退院後まで長期的にリストバンド型の加速度計を用いて日常生活にける上肢活動を分析,可視化することで麻痺側上肢の使用状況をモニタリングしました.加えて,上肢活動量の経過や症例の性格,心理面を考慮した行動変容介入を行いました.その結果,上肢機能や心理機能だけでなく,上肢活動量が改善し,日常生活活動や趣味活動の再獲得に繋がりました.また,脳卒中患者の長期的な心理的側面が先行して改善し,上肢活動量が改善することも明らかにしました.本症例報告は,入院中から退院後まで上肢活動を長期的にモニタリングして支援した報告であり,1症例ながら重要な知見といえます.
本研究のポイント
・心理的要因によって麻痺側上肢使用頻度が低下していた脳卒中患者に対し入院中から退院後まで長期的に支援した.
・上肢使用のモニタリングにリストバンド型加速度計を用いた定量的上肢活動量評価を用いた行動変容介入を試みた結果,上肢活動量の長期的な改善を認めた.
・1症例の介入効果を時系列分析することで,麻痺側上肢に対する主観的な認識の改善が後の上肢活動量改善に寄与した可能性が示唆された.
研究内容
本研究では,脳卒中患者1症例に対して入院中からリストバンド型の3軸加速度計を用い,日常生活にける上肢活動量を分析するとともに性格や心理面を考慮した行動変容介入を行いました.
上肢活動量は活動時間を表す各上肢の活動時間やその左右比からなる両側の使用率と,活動強度(加速度の大きさ)を表す両上肢活動強度の和,両側活動強度比を算出し,可視化することで(図1)麻痺側上肢の使用状況をモニタリングと症例へフィードバックを行いました.入院中から上肢機能と心理的側面に加えて,日常生活の上肢活動量をモニタリングしながら支援し,退院後には訪問リハビリテーションスタッフと連携することで,発症後約1年6ヶ月まで長期的な支援を行いました.その結果,Fugl-Meyer Assessmentの上肢項目やAction Research Arm Test,Motor Activity Logといった上肢機能評価や自己効力感や結果期待などの心理評価に加え,上肢活動量が長期的に改善し(図2),日常生活活動や趣味活動の再獲得に繋がりました.加えて,本症例の上肢活動量と各上肢関連評価の時系列的関係を検証するために相互相関分析を実施しました.その結果,両上肢活動強度の和は1時点前のMALと自己効力感,両側の使用率は1時点前のARAT,自己効力感,結果期待と相関関係を認めました.つまり,脳卒中患者の長期的な上肢活動量の改善には上肢活動に対する主観的な認識や心理的側面が先行して改善することを明らかにしました.
本症例報告は,麻痺側上肢活動の向上には,心理評価と加速度計による定量的な上肢活動量のモニタリング結果による適切なフィードバック介入が重要であったことを示唆しています.一方,本報告は1事例を対象とした後方視的な検討であり,心理機能と上肢活動量評価との因果関係を明確に示す結果ではなく,解釈には注意が必要です.
図1.症例へのフィードバックに用いた図示化された上肢活動量評価と各指標の算出方法
横軸が両手動作時の麻痺側および非麻痺側の活動強度比率を表した両側活動強度比,縦軸が麻痺側と非麻痺側の活動強度を合計した両上肢活動強度の和を示し,それぞれの指標の関係が1秒毎にプロットされた症例の1日の上肢活動量を図示化したものである.プロット数が多く重なると,寒色から暖色へとプロットの色が変化する.縦軸は両上肢の活動強度を合計した値の大きさを示す.横軸は正の値(右側)にプロットされると麻痺側上肢の活動が優位であることを示し,負の値(左側)にプロットされると非麻痺側上肢の活動が有意であることを示す.横軸上の「7」と「−7」のバーは片側の加速度のみが反応した単肢での活動量を示す.縦に記載された黒線は両側活動強度比がプロットされた中心の位置を示す.
図2.上肢活動量長期的な変化
両側活動強度比:0に近付くほど左右上肢の活動強度が均等であることを示す.
両上肢活動強度の和:数値が高くなるほどより大きな両側上肢活動を行っていることを示す.
本研究の臨床的意義および今後の展開
本研究成果は,1症例ながら,上肢活動量の向上に時間前後関係として自己効力感が先行して改善していたことは1症例ながら重要な知見であると考えます.この報告は,リハビリテーション専門家が脳卒中患者の日常生活における麻痺側上肢使用の行動変容を考える際に着目すべき点として心理的側面が重要であることを示しています.今後は,その他の要素を含めた脳卒中患者内における上肢活動量の特徴を横断的に調査していくことや,心理的要因と上肢活動量の関係を縦断的に調査する必要があります.
論文情報
南川 勇二,西 祐樹,生野 公貴,森岡 周
心理的要因による脳卒中後麻痺側上肢使用の低下に対する定量的上肢活動量評価を用いた行動変容介入の効果-症例報告-
作業療法, 2024
問い合わせ先
畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
教授 森岡 周(モリオカ シュウ)
Tel: 0745-54-1601
Fax: 0745-54-1600
E-mail: s.morioka@kio.ac.jp
パーキンソン病患者の移動支援に新たな可能性—足こぎ車椅子の有効性を確認
PRESS RELEASE 2024.12.19
畿央大学の岡田洋平准教授らの研究グループは,すくみ足のあるパーキンソン病患者に足こぎ車椅子を導入し,従来の手動車椅子に比べてスムーズかつ十分な速度で駆動できることを明らかにしました.この研究成果は,Movement Disorders Clinical Practice誌に掲載されました(The Cycling Wheelchair as a New Mobility Aid for Individuals with Parkinson's Disease).
研究概要
パーキンソン病患者は,疾患の初期段階から歩行能力が低下し,進行に伴いその傾向が顕著になります.その結果,日常生活で車椅子が必要となることがあります.しかし,手動車椅子を使用する際にも駆動能力が制限される場合が多いことが課題です.一方で,パーキンソン病患者は自転車のペダル操作能力が比較的保たれていることが知られています.本研究では,ペダル操作で駆動する足こぎ車椅子に着目し,その有効性を手動車椅子と比較しました.その結果,手動車椅子の駆動能力が著しく低下している患者でも,足こぎ車椅子ではスムーズかつ十分な速度で移動可能であることを確認しました.
本研究のポイント
・パーキンソン病患者に足こぎ車椅子を導入し,駆動能力を比較検証した.
・手動車椅子の駆動が困難な患者でも,足こぎ車椅子でスムーズかつ十分な速度での移動が可能であることを実証した.
研究内容
本研究では,すくみ足を有するパーキンソン病患者2名を対象に,足こぎ車椅子(図1)と手動車椅子による10m直進路の駆動能力を比較しました.
症例1では,手動車椅子の約6倍の速度で足こぎ車椅子を駆動できました.
図1 足こぎ車椅子(COGGY,TESS)
症例2は強い前屈姿勢があり手動車椅子では途中で停止しましたが,足こぎ車椅子では十分な速度で完走可能でした.
図2 主な結果:車いすの駆動速度の比較(手動車椅子 vs 足こぎ車椅子)
これらの結果から,足こぎ車椅子は移動能力が低下したパーキンソン病患者にとって新しいモビリティエイドとしての可能性を示しています.
本研究の臨床的意義および今後の展開
本研究の結果,パーキンソン病患者の足こぎ車椅子の駆動能力は,従来の手動車椅子と比較して非常に高いことが明らかにされました.パーキンソン病患者にとって,日常生活で自由に動けることの意義は大変大きく,生活の質の向上への寄与が期待されます.今後は,方向転換や狭いスペースでの操作性など,より実用的な検証を進め,施設環境などでの有効性も調査できればと考えています.
論文情報
Okada Y, Narita M, Okamoto M, Osumi M, Morioka S.
The Cycling Wheelchair as a New Mobility Aid for Individuals with Parkinson’s Disease.
Mov Disord Clin Pract. 2024 Dec 5. doi: 10.1002/mdc3.14292.
問い合わせ先
畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
准教授 岡田 洋平(オカダ ヨウヘイ)
Tel: 0745-54-1601
Fax: 0745-54-1600
E-mail: y.okada@kio.ac.jp
【Web開催】緊急シンポジウム 歩行障害の理解とリハビリテーション
畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
大住 倫弘
参加申し込み
Peatixを利用して参加して頂きます.以下のURLからPeatixチケットページをご確認下さい.
https://kioneurorehagait.peatix.com/
プログラム
【日時】2025年 1月24日(金曜)19:30-21:15(WEBライブ配信のみ)
【開催方法】WEB開催*ご参加には,Zoomを利用できる環境が必要です.
19:30-20:15「脳卒中後の歩行障害とリハビリテーション」
日本福祉大学 健康科学部 リハビリテーション学科 助教
畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 客員研究員
水田直道
20:30-21:15「日常生活環境における歩行制御の可視化」
長崎大学 生命医科学域 保健学系 助教
畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 客員研究員
西 祐樹
問い合わせ先
E-MAIL:m.ohsumi@kio.ac.jp(畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター)
脳卒中後の運動主体感:定量化と上肢使用量への影響
PRESS RELEASE 2024.11.26
脳卒中後の運動障害は,「自分が自分の運動を制御している」という感覚である運動主体感を奪う可能性があります.しかし,運動障害は麻痺肢の重たさやぎこちなさといった不快感も招くため,運動主体感それ自体が患者の行動変容にどのような影響を及ぼしているのかは明らかではありませんでした.国立研究開発法人産業技術総合研究所の宮脇裕氏と本学の森岡周教授らは,脳卒中後運動障害が招く様々な不快感から運動主体感を分離し評価した上で,運動主体感が上肢使用量に影響することを明らかにしました.この研究成果は,Cortex誌(Diminished sense of agency inhibits paretic upper-limb use in patients with post-stroke motor deficits)に掲載されています.
研究概要
脳卒中後運動障害は身体運動の制御を困難にし,「自分が自分の運動を制御している」という感覚,すなわち運動主体感(Sense of Agency)を奪う可能性があります.運動主体感は,運動制御だけでなく,行為の動機付けや注意分配に関与し,この感覚が伴わない行為は実行されにくくなることが示唆されています.これらの知見に基づけば,運動主体感の低下は行為頻度の減少を招き,身体活動量,特に上肢の使用量を減少させる可能性が考えられます.しかし,運動障害は麻痺肢の重たさやぎこちなさなどの不快感も招くため,運動主体感それ自体が上肢使用量に影響するのかは明らかではありません.この検証のためには,不快感から運動主体感を分離し,運動主体感それ自体を定量化する必要があります.
そこで,国立研究開発法人産業技術総合研究所の宮脇裕氏(畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター客員研究員)と森岡 周 教授らは,不快感と運動主体感の分離を実現する質問紙を独自に開発し,患者の運動主体感を縦断的に評価することで,運動障害が招く運動主体感の低下が上肢使用量に及ぼす影響を精査しました.その結果,不快感ではなく運動主体感の低下が上肢使用量の減少に関連することが示され,運動障害が運動主体感を阻害することで,上肢使用量が減少するという運動主体感の媒介効果が明らかになりました.さらに,運動主体感が低下していた場合,これが向上することで,上肢使用量の改善が大きくなることが示されました.
本研究のポイント
・脳卒中後の運動障害が招く様々な不快感から運動主体感を分離し評価する質問紙を開発した.
・運動障害が重度なほど,運動主体感が低下することを示した.
・不快感ではなく運動主体感の低下が,上肢使用量の減少に関連することを示した.
・運動主体感の向上が,上肢使用量の改善と関連することを示した.
研究内容
独自に開発した質問紙と,Fugl-Meyer Assessmentなどの臨床評価尺度を用いて,脳卒中後患者156名の運動主体感と,感覚運動機能および認知機能を縦断的に評価しました.質問紙には,運動主体感の関連・非関連項目を含み,因子分析後の因子パターンに基づき項目が選定されました.その後,適合度指標に基づき,運動主体感と不快感を分離した2因子モデルと分離しない1因子モデルを比較しました.これらを経て抽出した因子を用いて,構造方程式モデリング(SEM)により臨床アウトカムとの関連を分析し,voxel-based lesion-symptom mapping(VLSM)により損傷部位との関連を分析しました.さらに,縦断的変化を反映する回帰直線の傾きを推定した上で,多母集団同時分析により運動主体感の向上が上肢使用量の改善に関連するかを精査しました.
その結果,適合度指標から2因子モデルが支持され,運動主体感と不快感が因子として分離・抽出されました.SEMおよびVLSMの結果,運動主体感は認知機能や損傷部位ではなく,上肢運動障害の重症度に応じて有意に低下することが示されました(図1).
図1:運動障害が不快感および運動主体感に及ぼす影響
興味深いことに,上肢使用量は不快感ではなく,運動主体感に有意に関連することが明らかになりました(図2左).そして,運動障害が運動主体感の低下を介して上肢使用量を減少させるという運動主体感の有意な媒介効果を認めました(図2右).
図2:運動主体感が上肢使用量に及ぼす影響
さらに,多母集団同時分析の結果,中等度から重度の運動障害を有する患者では,低下していた運動主体感が向上した場合に,上肢使用量の改善が有意に大きくなることが示されました(図3).
図3:運動主体感の向上が上肢使用量の改善に及ぼす影響
本研究の臨床的意義および今後の展開
これまでの臨床現場では,運動主体感は単一の質問項目によりスクリーニング的に評価されることが多く,不快感などのバイアス混入が懸念されてきました.これに対し本研究は,不快感から運動主体感を分離するための質問紙を開発し,運動主体感それ自体が上肢使用量に影響することを明らかにしました.本成果は,運動主体感という臨床において新たに評価すべき指標を提案するとともに,その評価ツールの臨床実装に向けた基礎的知見を提供します.今後,本質問紙の臨床実装に向けて,その妥当性の検証をさらに進めていく予定です.
論文情報
Yu Miyawaki, Takeshi Otani, Masaki Yamamoto, Shu Morioka, Akihiko Murai
Cortex, 2024
問い合わせ先
畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
センター長 森岡 周(モリオカ シュウ)
客員研究員 宮脇 裕(ミヤワキ ユウ)
Tel: 0745-54-1601
Fax: 0745-54-1600
E-mail: s.morioka@kio.ac.jp
横断性脊髄炎1症例の異常感覚および上肢運動に対するしびれ同調経皮的電気神経刺激の効果
PRESS RELEASE 2024.11.19
脊髄炎は3例/10万人の稀な炎症性神経障害であり,脊髄炎由来の疼痛や異常感覚は治療抵抗性があることが知られています.脊髄炎による神経障害性疼痛・異常感覚に対するリハビリテーションの効果は,希少疾患ゆえに十分に検証されず,症例報告の蓄積は臨床的意義があります.畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターおよび長崎大学生命医科学域(保健学系)の西祐樹らは,横断性脊髄炎1症例に対してしびれ同調経皮的電気神経刺激を行うことで異常感覚および上肢活動量が改善したことを明らかにしました.この研究成果はFrontiers in Human Neuroscience誌(Case report: A novel transcutaneous electrical nerve stimulation improves dysesthesias and motor behaviors after transverse myelitis)に掲載されています.
研究概要
脊髄炎は3例/10万人の稀な炎症性神経障害であり,予後は一定せず,60%以上の患者に軽度から重度の後遺症がみられます.また,脊髄炎由来の疼痛や異常感覚は治療抵抗性があることが知られています.しびれ感に対して我々はしびれ感と一致したパラメーターの電気刺激を行うしびれ同調経皮的電気神経刺激(TENS)を開発し,その有効性を報告しています(Nishi et al., 2022).脊髄炎による神経障害性疼痛・異常感覚に対するリハビリテーションの効果は,希少疾患ゆえに十分に検証されず,症例報告の蓄積は臨床的意義があります.そこで,畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターおよび長崎大学生命医科学域(保健学系)の西祐樹らは,しびれ感およびアロディニアによりADLが阻害されている横断性脊髄炎1症例に対して,しびれ同調TENSを行いました.その結果,しびれ感,アロディニア,上肢活動量が即時的に改善しました.また,しびれ感での長期効果を示しましたが,アロディニアでは観察されませんでした.上肢活動量や上肢ADLにおいては持続効果を認め,しびれ同調TENSはしびれ感やアロディニアのみならず,ADLの改善に寄与する可能性を示しました.
本研究のポイント
・しびれ感やアロディニアを呈する横断性脊髄炎1症例に対するしびれ同調TENSの効果を検証した.
・しびれ同調TENSによりしびれ感やアロディニアが改善したが,アロディニアに対する持ち越し効果がみられなかった.
・主観的および客観的な上肢使用は持ち越し効果が確認された.
研究内容
本研究では,しびれ感およびアロディニアによりADLが阻害されている横断性脊髄炎1症例に対して,しびれ同調TENSを行い,その効果を検証しました.
症例はC4からTh2領域の横断性脊髄炎を診断され,左C8領域にしびれ感とアロディニアを呈していました.常に左手に手袋を着用し,左手の使用に恐怖心があり使用を避けていました.そのため,家事や仕事であるタイピングが左手で十分に行えないことに苦悩していました.介入は,A-B-A-B-Aデザインを使用し,各期は1週間としました.A期はTENS行わず,B期ではしびれ同調TENSを実施しました.しびれ同調TENSは1時間/回を2回/日行いました.症例は週2回の外来理学療法でストレッチや有酸素運動,疼痛教育を各期共通して行いました.評価項目として,しびれ感やアロディニアのNumerical rating scale(NRS),主観的な上肢使用としてMotor Activity Log(MAL),客観的な上肢使用として両手関節部に慣性センサを装着し,上肢活動量の左右比を算出しました.
その結果,Tau-Uおよびベイジアン未知変化点モデルにより,しびれ同調TENSのしびれ感やアロディニアへの即時効果およびしびれ感の持ち越し効果が明らかとなりました.一方,アロディニアの持ち越し効果はみられませんでしたが,主観的および客観的な左手の上肢使用は改善し,家事や仕事での左手の使用頻度が向上しました.難渋していたしびれ感やアロディニアがしびれ同調TENSによりコントロールできるようになったことが,ADLの向上に寄与したと考えられます.
図1.しびれ感やアロディニア,上肢活動量の経過
A期はTENSなし,B期はしびれ同調TENSを行った期間を示す.介入前,介入後,介入後1時間はB期のおける評価を示し,A期では同一時刻のNRSを評価した.
本研究の臨床的意義および今後の展開
しびれ同調TENSは服薬治療への抵抗性が高い異常感覚においても効果を示す可能性があり,新たな治療選択の一つとなる可能性があります.今後は,他の疾患におけるしびれ感やアロディニアに対する効果のみならず,ADL等への波及効果を検証していく予定です.
論文情報
Yuki Nishi, Koki Ikuno, Yuji Minamikawa, Michihiro Osumi, Shu Morioka
Frontiers in Human Neuroscience, 2024
関連論文
Nishi Y, Ikuno K, Minamikawa Y, Igawa Y, Osumi M, Morioka S.
Front Hum Neurosci, 2022.
問い合わせ先
畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
センター長 森岡 周(モリオカ シュウ)
客員研究員 西 祐樹
Tel: 0745-54-1601
Fax: 0745-54-1600
E-mail: s.morioka@kio.ac.jp
大学院生が日本小児理学療法学会学術大会で受賞しました!
大学院健康科学研究科修士課程の橋添健也です.2024年11月2-3日に福島県立医科大学(福島県)において,第11回日本小児理学療法学会学術大会が開催されました.
本学術大会において,私たちの発表演題が大会長賞を受賞いたしました!
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演題名:発達性協調運動障害を有する児における運動イメージ能力-2種類の運動イメージ課題を用いた検証-
演者:橋添健也,中井昭夫,信迫悟志
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本研究は,大学院健康科学研究科の信迫悟志准教授によるご指導の下で進められた研究であり,この場をお借りして心より感謝申し上げます.
[本研究の内容]
発達性協調運動障害(DCD)を有する児の運動イメージ能力は,定型発達児と比較して低下していることが知られております.現在までDCDを有する児における運動イメージ研究では,主にHand Laterality Recognition(HLR)課題が使用されてきましたが,本研究では,HLR課題に加え,より明示的な運動イメージが必要なBimanual Coupling(BC)課題の2つの運動イメージ課題を用いて,DCDを有する児の運動イメージ能力を調査しました.その結果,DCDを有する児では,両課題において運動イメージ能力が低下していることが示されました.また,HLR課題とBC課題で測定された運動イメージ能力の間には重要な関係性があることも示されました.
本学理学療法学科出身の峯耕太郎さん(2011年度卒,6期生)も優秀賞を受賞されました.また,信迫准教授が「神経発達障害の病態理解と重要な評価」というテーマで教育講演をおこなわれました.
今後も神経発達障害分野の研究に力を注ぎ,小児理学療法のさらなる発展の一助となれるよう,引き続き研鑽を重ねてまいりたいと思います.
健康科学研究科修士課程 橋添健也
挑戦と革新:第22回日本神経理学療法学会学術大会での輝かしい成果
先日開催された[第22回日本神経理学療法学会学術大会](https://www.gakkai.co.jp/jsnpt22/) が2100名以上の参加者を集め,大きな成功を収めて閉幕しました.本学関係者の活躍が光る素晴らしい大会となりましたので,その成果をご報告いたします.
大学院修了者ならびに在学生の輝かしい受賞
本学大学院健康科学研究科の修了生および在学生が,666演題の中から,見事に受賞の栄誉を手にしました.
最優秀賞(1名)
– 宮脇 裕 氏(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 人間拡張研究センター,畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター;2021年3月本学大学院博士後期課程修了,森岡周研究室)
– 演題名:運動主体感の減少が脳卒中後の上肢使用量にもたらす影響とは?
優秀賞(3名のうち2名)
– 藤井 慎太郎 氏(西大和リハビリテーション病院;2024年9月本学大学院博士後期課程修了予定,森岡周研究室)
– 演題名:パーキンソン病患者における歩行障害の特徴―重心追尾型歩行計測システムを用いた運動学的特徴に着目して―
– 三枝 信吾 氏(東海大学文明研究所,畿央大学大学院博士後期課程在籍,森岡周研究室)
– 演題名:回復期脳卒中患者はなぜ歩行を重要と認識しているか―半構造化インタビュー法を用いた質的研究―
奨励賞(5名のうち2名)
– 奥田 悠太 氏(公益財団法人脳血管研究所美原記念病院;2023年3月本学大学院修士課程修了,岡田洋平研究室)
– 演題名:脊髄小脳変性症患者の歩行中における転倒発生状況の検討
– 赤口 諒 氏(摂南総合病院;2024年9月本学大学院博士後期課程修了予定,森岡周研究室)
– 演題名:脳卒中症例の物体把持動作の特徴-予測制御の成否と過剰出力・動作不安定性との関連に着目して-
これらの受賞は,本学の教育・研究プログラムの質の高さを示すとともに,修了生たちの継続的な努力と成長を表しています.
セレクション演題選出者
博士後期課程(森岡周研究室)に在籍中の乾 康浩 氏と立石 貴樹 氏(武蔵ヶ丘病院;2024年3月本学大学院修士課程修了予定)は,惜しくも受賞には至りませんでしたが,666演題の中から25題しか選ばれないセレクション演題に選出されたことは,大きな評価に値します.特筆すべきは,乾氏が2年連続でこの選出を受けたことです.
新たな研究の潮流
今大会では,最優秀賞に「脳卒中後片麻痺患者の身体性(運動主体感)の変容」に関する研究が,優秀賞に「脳卒中後片麻痺患者の主観的意識経験に関する質的研究」が選ばれました.これは,[新学術領域研究](https://www.kio.ac.jp/information/2015/07/7-14.html)および[CREST研究](https://www.kio.ac.jp/topics_press/81710/)から進展している神経理学療法学の分野の新たな方向性を模索していることを示唆しています.
未来への展望
本学では,これらの最新の研究動向を踏まえ,より革新的かつ包括的な理学療法教育・研究を目指してまいります.学生の皆さんには,この分野の無限の可能性に挑戦し,自らの「粘り」で,こうした先輩たちに続くように,新たな知見を切り開いていってほしいと思います.
最後に,今回の成果を支えてくださった全ての関係者の皆様に心からの感謝を申し上げます.皆様の継続的なサポートが,本学の研究者たちを大きく後押ししています.
今後も本学は,理学療法学,ならびに世界の科学の発展に寄与し,社会に貢献できる人材の育成に全力を尽くしてまいります.高校生の皆さん,現場で働いている皆さん,研究者の皆さん,ぜひ本学の取り組みにご注目ください.
畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター長
森岡 周
写真:向かって左 宮脇氏
写真:向かって左から2番目が藤井氏,右端が三枝氏
写真:向かって左端が赤口氏,そのとなりが奥田氏
第22回日本神経理学療法学会学術大会へ参加しました!
2024年9月28・29日に福岡県(福岡国際会議場)で第22回日本神経理学療法学会学術大会(以下,第22回学術大会)が開催されました.
日本神経理学療法学会は,森岡 周教授が副理事長,私(客員准教授 佐藤剛介)(現 奈良県総合医療センター)が理事を務めており,毎年の学術大会参加者が2000人を超える大規模な学会になります.神経理学療法学会では,脳卒中や脊髄損傷,パーキンソン病をはじめとした神経筋疾患,脳性麻痺といった疾患に対する理学療法についての議論が様々な事業を通して行われています.
第22回学術大会の参加者は,2000人を超えており,畿央大学大学院,ニューロリハビリテーション研究センターからも多くの大学院生や修了生,研究員,教員が参加しました.今回は,第22回学術大会での畿央大学大学院,ニューロリハビリテーション研究センター関係者の活躍をご紹介したいと思います.
第22回学術大会では,「創始 次代への超克」をテーマとして,特別講演やシンポジウム,特別企画等が企画されていました.特別講演では,「人機一体の時代に知性はどこへ向かうのか」というテーマに理化学研究所の入來篤史先生を講師に迎え,森岡 周教授が司会として深い議論が行われました.最近では,PCやAI,スマートフォン,他の電子機器を使いこなすことが当たり前になっている背景をふまえ,人間の知性がどのように進化していくのか,非常に興味深い内容でした.特別企画1の「感覚障害に対する新たな理学療法研究」では,客員研究員の西 祐樹さん(現 長崎大学生命医科学)が講師,信迫 悟志准教授が座長を務められ,異常感覚に対する介入について畿央大学大学院での研究成果を紹介されていました.特別企画2では森岡 周教授が登壇され,「間主観性と身体同調:患者と療法士の共同経験による自己の再構築」をテーマに講演されました.基幹シンポジウムでは,大住 倫弘准教授が司会を務め,ニューロリハビリテーション研究センターの高村 優作研究員がシンポジストとして「神経理学療法の高精度化に向けて」というテーマで情報提供が行われました.
また,複数の企画シンポジウムも準備されており,テーマは異なりますが修了生の脇田正徳さん(現 関西医科大学),林田 一輝客員研究員(現 宝塚医療大学),修了生の尾川 達也さん(現 西大和リハビリテーション病院),大学院博士課程の乾 康浩さんがシンポジストとして情報提供を行い,宮脇 裕客員研究員(現 国立研究開発法人産業技術総合研究所)が司会をされていました.モーニングセミナーでは,平川 善之客員准教授(現 福岡リハビリテーション病院)が司会,私(佐藤剛介)が「神経障害性疼痛に対するリハビリテーション」というテーマのもと,これまでの畿央大学が公表してきた多くの疼痛関連の研究成果を含めて講演し,立ち見が出るほどの盛況ぶりでした.
また,公募型シンポジウムや一般演題発表でも畿央大学の活躍は目覚ましく,岡田 洋平准教授をはじめ,大学院生,修了生,客員研究員も研究成果を公表し,非常に活発な議論が行われていました.表彰対象となるセレクション演題では,大学院生の乾 康浩さん,三枝 信吾さん,修了生の藤井慎太郎さん(現 西大和リハビリテーション病院),赤口 諒さん(摂南総合病院),宮脇 裕客員研究員の演題が選出されました.そして,宮脇 裕客員研究員が最優秀賞に選ばれる,大変喜ばしい結果になりました.さらに優秀賞や奨励賞も複数名が選ばれています(表彰については別記事をご覧ください).この他にもスキルアップレクチャーでは大松聡子研究員が海外よりリモートで講演され,植田 耕造客員准教授も司会をされていました.ランチョンセミナーでも企業と連携して培ってきた成果を修了生の藤井 慎太郎さん,赤口 諒さん,脇田 正徳さんが講師を務め公表されていました.どの会場も満席で本当に多くの方が参加していました.
教育講演では,岡田 洋平准教授がパーキンソン病,私が脊髄損傷に関して講演を行い,研究成果の報告だけではなく,現役理学療法士の方々への教育目的の企画にも携わっていました.
第22回学術大会では,森岡研究室,ニューロリハビリテーション研究センター関係者の多くの素晴らしい活躍を目にすることができました.これも学生の間だけでなく,修了してからも継続的に患者さんの回復,神経理学療法分野を発展させるために,日々努力しているからこそだと思いました.神経理学療法には幅広い分野がありますが,それぞれの分野で意義のある情報発信ができることは本当に貴重であり重要なことだと実感しました.今後も,畿央大学大学院とニューロリハビリテーション研究センターが神経理学療法,そして社会に貢献できるよう,臨床・研究・教育ともにさらに発展していくことを楽しみにしています.
畿央大学大学院
客員准教授 佐藤剛介