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サーマルグリル錯覚を過敏にさせる脳損傷領域の探索

PRESS RELEASE 2023.11.17

サーマルグリル錯覚は温かいモノと冷たいモノを同時に触ることで灼熱痛に似た痛みや不快感を経験する錯覚です.サーマルグリル錯覚は中枢神経系の感覚情報処理の過程で生じるといわれており,最近では中枢性感作の有用な指標として提案されています.畿央大学大学院 博士後期課程 松田総一郎,大住倫弘 准教授を中心とする研究グループは,サーマルグリル錯覚が視床外側周囲の損傷によって過敏になることを明らかにしただけでなく,その過敏さは脳卒中患者における中枢性感作の症状と相関していることを明らかにしました.この研究成果はJournal of pain research誌(Thermal Grill Illusion in Post-Stroke Patients: Analysis of Clinical Features and Lesion Areas)に掲載されています.

研究概要

サーマルグリル錯覚は温かいモノと冷たいモノを同時に触ることで灼熱痛に似た痛みや不快感を経験する錯覚です.サーマルグリル錯覚は中枢神経系の感覚情報処理の過程で生じるといわれており,最近では中枢性感作と呼ばれる脳の問題による痛みの治りにくさを測るツールとして提案されてきています.しかしながら,そのメカニズムは不明なところが多く,多方面からの研究が求められている真っ只中にあります.畿央大学大学院 博士後期課程 松田総一郎,大住倫弘 准教授を中心とする研究グループは,サーマルグリル錯覚のメカニズム解明の一端を担うために,脳卒中後患者にを対象に「どのような脳の損傷によってサーマルグリル錯覚に過敏になるのか」を探索しました.その結果,サーマルグリル錯覚の過敏さは視床外側周囲の損傷と有意に関連していることが明らかになりました.また,興味深いことに,サーマルグリル錯覚の過敏さは,中枢性感作症状の1つであるワインドアップ現象(繰り返される痛み刺激によって徐々に痛みをつよく感じる現象)と相関していることが示されました.このことは,サーマルグリル錯覚が中枢性感作症状を安全に測ることのできる臨床ツールとなり得ることを示唆しています.

本研究のポイント

■ 脳卒中後患者におけるサーマルグリル錯覚と臨床的特徴・損傷領域の関連性を検証した.

■ サーマルグリル錯覚によって経験する痛みや不快感が脳卒中後患者の中枢性感作を反映している可能性が示唆された.

■ サーマルグリル錯覚によって経験する不快感は視床外側の損傷と有意に関連していた.

研究内容

サーマルグリル錯覚を惹起するためには温刺激と冷刺激を同時に触る必要があります.そこで,本研究では直径 1 cm の銅の棒とプラスチックのチューブに水を流し、患者の接触面に温 (40 °C) と冷 (20 °C) の刺激を与えるように水温を調整しました.4本の温かい銅棒と 4本の冷たい銅棒を交互に配置することで,被験者が銅棒に触れるとサーマルグリル錯覚を生じるように設定しました(1).

図 1.サーマルグリル刺激の実験条件

 

サーマルグリル錯覚の検査では,健側→患側の順番で銅棒の上に手のひらを最大30秒間置きました.その後,検査中に経験した痛みと不快感の強度をそれぞれ0(痛みなし)10(想像できる最大の痛み)0(不快感なし)10(想像できる最大の不快感) で回答させました.その結果,サーマルグリル錯覚による痛みとワインドアップ比の間に有意な関連性を認めました.

また,脳画像解析は(voxel-based lesion–symptom mapping)の結果,サーマルグリル錯覚による不快感は内包後脚および視床外側核周囲の病変と有意に関連していることが明らかになりました(図2).

図2.サーマルグリル錯覚と損傷領域の分析

サーマルグリルによる不快感は内包後脚および視床外側核周囲の病変と有意に関連していました.

研究グループは,この結果について,内包や視床を損傷することで脳内での痛みや温度感覚情報処理の問題が生じ,サーマルグリル錯覚が過敏になると考えています.

本研究の臨床的意義および今後の展開

本研究成果は,脳卒中後患者の中枢性感作を「痛くない刺激」を用いて安全に定量評価することを示しているだけでなく,サーマルグリル錯覚のメカニズム解明および脳卒中後疼痛の病態解明の一助となると考えられます.

論文情報

Soichiro Matsuda, Yuki Igawa, Hidekazu Uchisawa, Shinya Iki, Michihiro Osumi

Thermal Grill Illusion in Post-Stroke Patients: Analysis of Clinical Features and Lesion Areas

Journal of pain research, 2023

問い合わせ先

畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター

畿央大学大学院健康科学研究科

博士後期課程 松田総一郎

准教授 大住倫弘

E-mail: m.ohsumi@kio.ac.jp

痛みを難治化させる脳波ネットワーク異常

PRESS RELEASE 2023.10.20

複合性局所疼痛症候群(Complex Regional Pain Syndrome:CRPS)は,比較的小さな外傷や手術などが契機となって激しい痛みが生じます.これまでの研究の中で,CRPSの脳機能を調べた研究は多くありますが,日常診療で使われる脳波を活用してCRPSの脳機能異常を明らかにした報告は少ないです.畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターの 大住倫弘 准教授らは,名古屋大学医学部 平田 仁 教授,岩月克之 講師,東京大学附属病院 住谷昌彦 准教授らと共同で,CRPSにおける脳波ネットワーク異常の特徴を明らかにしました.この研究成果は,Clinical EEG and Neuroscience(Resting-state Electroencephalography Microstates Correlate with Pain Intensity in Patients with Complex Regional Pain Syndrome)に掲載されています.

研究概要

複合性局所疼痛症候群(Complex Regional Pain Syndrome:CRPS)は,比較的小さな外傷や手術などが契機となって激しい痛みが生じます.これまでの研究で,何らかの脳機能異常によってCRPSが増悪・長期化することが明らかになっています.特に,何もしていない“安静時”の脳活動の異常について多く報告されています.しかしながら,多くの研究ではfMRIやMEGなどの大掛かりな機器を使っており,日常診療で使われている脳波データではどのような異常があるのかは明らかになっていませんでした.畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターの 大住倫弘 准教授らは,名古屋大学医学部 平田 仁 教授,岩月克之 講師,東京大学附属病院 住谷昌彦 准教授らと共同で,CRPSにおける脳波マイクロステートを分析し,安静時のデフォルトモードネットワークがCRPSの痛みのつよさと密接に関連していることを明らかにしました

本研究のポイント

■ CRPSにおける安静時の脳波活動を測定した.
■ マイクロステート解析を活用して脳波ネットワークの異常を観察した.
■ その結果,デフォルトモードネットワークの異常がCRPSの痛みのつよさと密接に関連していることが明らかになった.

研究内容

CRPSを有する者を対象に,安静時の脳波活動を計測して,脳波マイクロステート解析をしました(図1).そして,それぞれのトポグラフパターンにおけるパラメータ(Mean Duration, Time coverage etc…)とCRPSによる痛みのつよさとの相関関係を調べました.その結果,デフォルトモードネットワークで構成されていると考えられているトポグラフパターンのパラメータと痛みのつよさとの間に有意な相関関係がありました(図1).つまり,デフォルトモードネットワークの異常がCRPSの痛みを増悪させている可能性が明らかになりました.加えて,初回の脳波測定日の6ヶ月後にも脳波を計測し,デフォルトモードネットワークの改善とともに痛みが緩和していることも確認されました.このことからデフォルトモードネットワークの改善がCRPSの痛みの緩和と密接に関連していることが考えられました.

内容

図1:安静時脳波マイクロステート解析によって計算されるトポグラフパターンと痛みとの相関

本研究の臨床的意義および今後の展開

日常診療で使われている脳波データを活用すればCRPSに生じている脳波ネットワーク異常を観察できる可能性を示唆しました.今後は,これらの脳波ネットワーク異常を改善させるためのリハビリテーションを検討していきます.

論文情報

Osumi M, Sumitani M, Iwatsuki K, Hoshiyama M, Imai R, Morioka S, Hirata H.

Resting-state Electroencephalography Microstates Correlate with Pain Intensity in Patients with Complex Regional Pain Syndrome.

Clin EEG Neurosci. 2023

その他の情報

本研究は以下の助成を受けて実施したものです.

Japan Agency for Medical Research and Development (AMED)

研究代表者 平田仁 教授(名古屋大)「神経科学を活用する複合性局所疼痛症候群に対するintelligent neuromodulation system の開発」

問い合わせ先

畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター

畿央大学大学院健康科学研究科

准教授 大住倫弘

E-mail: m.ohsumi@kio.ac.jp

発達性協調運動障害における行為と結果の規則性の知覚感度

PRESS RELEASE 2023.10.13

発達性協調運動障害(DCD)は,脳の適応的な運動制御・運動学習システムである内部モデルの働きの先天的・発達的問題として生じるとされています.一方で,定型発達(TD)乳児は生後の発達早期に,自己の運動とその結果の繋がり,すなわち行為と結果の規則的な関係性を知覚できるとされており,この行為と結果の規則性の知覚学習は,運動の多様性や内部モデルの発達に貢献すると考えられます.したがって,DCD児においては,行為と結果の規則性の知覚にも問題が生じている可能性がありますが,DCD児における行為と結果の規則性の知覚感度を調べた研究は皆無でした.そこで,畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターの信迫悟志 准教授らは,温文(Wen Wen) 准教授(立教大学),中井昭夫 教授(武庫川女子大学)らと共同で,DCD児における行為-結果の規則性の知覚感度について調査しました.この研究成果は,Journal of Autism and Developmental Disorders(Action-outcome Regularity Perceptual Sensitivity in Children with Developmental Coordination Disorder)に掲載されています.

研究概要

DCDとは,協調運動技能の獲得や遂行に著しい低下がみられる神経発達障害の一類型であり,その症状は,字が綺麗に書けない,靴紐が結べないといった微細運動困難から,歩行中に物や人にぶつかる,縄跳びができない,自転車に乗れないといった粗大運動困難,片脚立ちができない,平均台の上を歩けないといったバランス障害まで多岐に渡ります.DCDの頻度は学童期小児の5-6%と非常に多く,自閉症スペクトラム障害,注意欠如多動性障害,限局性学習障害などの他の神経発達障害とも頻繁に併存することが報告されており,近年では脳性麻痺ともリスクファクターを共有する連続体である可能性も指摘されています.またDCDと診断された児の過半数が青年期・成人期にも協調運動困難が残存するとされており,DCDの病態理解と有効なハビリテーション技術の開発は,ニューロリハビリテーション研究における喫緊の課題の一つとされています.
自分の行為と外部刺激との間の規則的な関係性を検出する能力のことを,行為と結果の規則性の知覚と呼びます.この行為と結果の規則性の知覚は,コンパレータモデル以外の運動主体感(Sense of Agency: SoA)を生成する重要な情報源として注目されており,また適応的運動学習パフォーマンスにも関与することが示されています.行為と結果の規則性の知覚は,まだ内部モデルにおける正確な順・逆モデルを持ち合わせていない生後2カ月児にも存在することが明らかとなっており,子どもは行為と結果の規則的な関係性を知覚学習することにより,運動の多様性を獲得している可能性が示唆されています.また最近の研究で,この行為と結果の規則性の知覚感度は,6~15歳と年齢が増加するのに伴い発達向上すること,そして手先の器用さが低下した児では,行為-結果の規則性の知覚感度が低下していることが明らかになっていました.したがって,発達早期からの運動の不器用さを主な特性とするDCD児においては,行為と結果の規則性の知覚にも問題が生じている可能性がありますが,それを調べた研究はありませんでした.そこで畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターの信迫悟志 准教授らは,DCD児における行為-結果の規則性の知覚感度を調べました.その結果,DCD児では,年齢と性別が一致したTD児と比較して,行為と結果の規則性の知覚感度が低下していることが明らかになりました.

本研究のポイント

■ DCD児の行為-結果規則性の知覚感度は低下しており,特に低年齢(6~10歳)DCD児で知覚感度が著しく低下していた.
■ DCD児とTD児の両グループにおいて,年齢の増加に伴い行為-結果規則性の知覚感度は発達向上していた.
■ DCD児における行為-結果規則性の知覚感度の低下は,いくつかの協調運動技能の低下と相関関係にあった.
■ DCD児では発達早期の段階で行為-結果規則性の知覚感度が低下しており,そのことが運動の多様化や内部モデルの発達を阻害し,結果として協調運動技能の低下に陥っている可能性が示唆された.

研究内容

6~15歳までのDCD児20名と年齢と性別を揃えたTD児20名は,行為-結果規則性検出課題(図1)を完了しました.この課題において,子どもたちはタッチパッド上で10秒間自由に指を動かし,モニターに表示された3つのドットのうち,自分がコントロールすることができる/自分の指の動きを最も反映していると感じられたドット(検出目標ドット)を検出することが求められました.1つの検出目標ドットには,子どもが制御できる/指の動きを反映する割合に応じて,7制御条件(0, 20, 40, 50, 60, 80, 100%)が設定され,それぞれ6試行,合計で42試行ありました.他の2つのドットは0%制御のディストラクタードットになっていました.この課題の成績から,規則性検出閾値(Regularity Detection Threshold: RDT)を算出し,行為-結果の規則性の知覚感度の定量指標としました.

図1 行為-結果規則性検出課題

その結果,DCD児のRDTは,TD児と比較して高値を示し,DCD児では行為-結果の規則性の知覚感度が低下していることが明らかになりました(図2).またDCD児とTD児の両グループにおいて,RDTの低下と年齢の増加との間には有意な相関関係が示され,DCD児においてもTD児においても,年齢の増加に伴い行為-結果の規則性の知覚感度は発達向上することが示されました.そこで,年齢を細分化して検討した結果,低年齢(6~10歳)のDCD児のRDTは,低年齢(6~10歳)および高年齢(11~15歳)のTD児と比較して,有意に高値であることが示され,特に低年齢のDCD児の行為-結果の規則性の知覚感度が低下していることが明らかになりました(図3).またDCD児においては,RDTといくつかの協調運動技能との間に有意な相関関係が示され,行為と結果の規則性の知覚感度の低下とボールスキルなどの協調運動技能の低下との間に関連性があることが示されました.

図2 両グループにおける規則性の知覚感度

図3 年齢を細分化した規則性の知覚感度の比較結果

本研究の臨床的意義および今後の展開

本研究は,DCD児における行為-結果の規則性の知覚感度が低下していることを初めて明らかにし,特にDCD児では低年齢の段階で規則性の知覚感度が著しく低下していることを示しました.このことは,DCD児では低年齢の段階で行為-結果の規則性の知覚感度が低下しており,そのことが運動の多様化や内部モデルの発達を阻害し,結果的に協調運動技能の低下に至っている可能性を示唆しました.今後,本研究で使用した行為-結果規則性検出課題と運動の多様性や内部モデルの働きを定量化する課題を併用し,縦断的に調査することで,この可能性を検証していく必要があります.

論文情報

Nobusako S, Wen W, Osumi M, Nakai A, Morioka S.

Action-outcome Regularity Perceptual Sensitivity in Children with Developmental Coordination Disorder.

J Autism Dev Disord. 2023

問い合わせ先

畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター

畿央大学大学院健康科学研究科

准教授 信迫悟志

E-mail: s.nobusako@kio.ac.jp

2023年度 CREST採択 「ナラティブ・エンボディメントの機序解明とVR 介入技術への応用」

CREST について

CRESTとは,我が国が直面する重要な課題の克服に向けて,独創的で国際的に高い水準の目的基礎研究を推進し,社会・経済の変革をもたらす科学技術イノベーションに大きく寄与する,新たな科学知識に基づく創造的で卓越した革新的技術のシーズ(新技術シーズ)を創出することを目的としています.そのために,研究総括が定めた研究領域運営方針の下,研究総括が選んだ,我が国のトップ研究者が率いる複数のベストチームによる研究を推進するトップダウン型研究であり,国内の競争的科学研究費としてはトップに位置するもので,研究期間は5年6ヵ月以内の総額1.5~5億円程度の研究費が与えられます.

生体マルチセンシングシステムの究明と活用技術の創出(通称マルチセンシング)

今回応募した領域は,生体マルチセンシングシステムの究明と活用技術の創出(通称マルチセンシング)であり,研究領域統括は,自治医科大学 永井良三学長,研究総括は,理化学研究所 未来戦略室上級研究員の入來篤史博士です.また,国際領域運営アドバイザーにはAnil Seth博士(サセックス大学 工学情報学部 教授),Karl Friston博士(ロンドン大学 神経科学研究所 教授)と著名な研究者が配属され,国際研究を牽引する意図があります.

ナラティブ・エンボディメントの機序解明とVR 介入技術への応用

私たちの研究グループは,明治大学理工学部(認知科学)の嶋田総太郎教授(代表者)のグループ,東海大学文学研究科(哲学・現象学)の田中彰吾教授のグループとチームを編成し,「ナラティブ・エンボディメントの機序解明とVR 介入技術への応用」というテーマ(図1:Graphic Abstract)で応募し,毎年採択数は4件程度(2023年度は64件応募中4件採択/採択率6.3%)の厳しい審査の中,書類審査に次いで面接審査を通過し,結果として,2.74億円(5年6ヵ月)の研究費(3研究室合同)を取得することができました.

図1:研究概要

日本 - フランス 共同提案型

今回は日仏共同提案型による応募をとり,日仏で研究グループを構成し,共同研究提案書(CREST-ANR共通書式)を作成し,フランス国立研究機構(Agence Nationale de la Recherche; ANR)の審査も通過しなければならないという難易度の高い課題に挑戦し,結果として,フランス側も採択されるに至りました(図2:日仏チーム編成).フランス側の共同研究者には,natureにも多数論文を持つフランス国立衛生医学研究所(INSERM),フランス国立科学研究センター(CNRS)のYves Rossetti教授(認知科学),世界ニューロリハビリテーション連盟の組織委員会のメンバーであるリヨン大学病院医学部長のGilles Rode教授(リハビリテーション医学),そして神経現象学の父と称されるFrancisco J Varelaの継承者の哲学者であるリヨン高等師範学校(ENS-Lyon),パリ高等師範学校(ENS-Cachan)のJean-Michel Roy教授です.これから5年半にわたり,相互に往来しながら議論を重ねて,ブレークスルーにつながる研究成果を公表できるように進めていきます.

図2:フランスー日本の共同研究メンバー

共同研究メンバー

■ 明治大学 理工学部 教授 嶋田 総太郎(https://researchmap.jp/sshimada

■ 東海大学 現代教養センター 教授 田中 彰吾(https://researchmap.jp/read0207870

■ フランス国立衛生医学研究所 教授 Yves Rossetti (https://www.crnl.fr/en/user/397

■ リヨン大学病院医学部 教授 Gilles Rode(https://lyon-est.univ-lyon1.fr/la-faculte/actualites/gilles-rode-doyen-de-la-faculte-de-medecine-lyon-est

■ リヨン高等師範学校 教授 Jean-Michel Roy(https://ihrim.ens-lyon.fr/auteur/roy-jean-michel

 

 

 

森岡 周 教授(ニューロリハビリテーション研究センター センター長)

大住倫弘 准教授 が RehabWeek2023 でポスター発表をしました.

2023年9月24-27日にシンガポールで開催されたRehabWeek2023に,ニューロリハビリテーション研究センター 大住倫弘 准教授が「Tele-VR rehabilitation alleviated phantom limb pain – Single case study using experimental designs -」というタイトルでポスター発表をしました.リハビリ工学についての話題が多かったようで,最先端のリハビリツールやその研究結果の情報収集ができたようです.技術,規模,そして臨床に展開するスピードなど,日本のリハビリ工学が少しずつ遅れてきていることを認識せざるを得ない機会になったようです.その充実ぶりが分かる写真をこのブログにいくつか掲載しておきます!

【WEB開催】第3回 発達科学と小児リハビリテーション研究会-Third GIG-

最新の発達科学の知見を吸収し,小児リハビリテーションを取り巻く諸問題を共有しディスカッションする場として機能すべく立ち上げられた本研究会も3回目を迎えました.第3回では,乳幼児期の感覚運動発達についてシミュレーションと実計測を融合した構成論的発達科学研究を実施されている金沢星慶先生(東京大学)と神経発達障害のある子どもたちの協調運動技能障害(発達性協調運動障害)に対する実践的なリハビリテーション研究を実施されている東恩納拓也先生(東京家政大学)から話題提供いただきます!当センターの信迫からも最近の研究成果を情報提供します.一見,無関係にも思える発達科学の最新知見と実践的リハビリテーション,本研究会は―Third GIG―と称し,それらの調和と融合から新たな研究と実践の創発を試みたいと思います.

畿央大学 ニューロリハビリテーション研究センター
信迫悟志

 

 プログラム

【日時】2023年12月2日(土)13:00-16:00(WEBライブ配信のみ)

【開催方法】WEB開催*ご参加には,Zoomを利用できる環境が必要です.

13:00-13:30「発達性協調運動障害における行為-結果規則性の知覚と探索運動の多様性」

畿央大学 ニューロリハビリテーション研究センター/大学院健康科学研究科 信迫悟志

Researchmapリンク

13:40-14:30「赤ちゃんの自発運動における身体性と感覚運動ワンダリング」

東京大学大学院 情報理工学系研究科 金沢星慶

Researchmapリンク

14:40-15:30 「神経発達障害を有する児における協調運動障害に対する実践的アプローチ」

東京家政大学 健康科学部 リハビリテーション学科 東恩納拓也

Researchmapリンク

参加申し込み

Peatixを利用して参加して頂きます.以下のURLからPeatixチケットページをご確認下さい.

https://kionrcpain2023.peatix.com

問い合わせ先

E-MAIL:s.nobusako@kio.ac.jp(畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター)

第21回日本神経理学療法学会学術大会で発表してきました!

多くの大学院生が第21回日本神経理学療法学会学術大会で発表をしてきました.以下,大学院生のおふたりにブログを書いて頂きました!

 

2023/9/9(土), 10(日)に開催された第21回日本神経理学療法学会学術大会にて 私,木下栞(修士課程)を含めた大学院生,修了生数人が演題発表をしてきましたのでここに報告させていただきます.
本大会は「臨床知へのあゆみ―学際性への架け橋―」というテーマで開催され,半側空間無視研究でご著明なYves Rossetti先生も来日されご講義していただきました.本大会はテーマにもあります「臨床知(Clinical Pearl)」が大事なキーワードでしたが,多数例研究はもちろん,シングルケースでも1例1例の評価を丁寧に行うことで「臨床知(Clinical Pearl)」を捉え,今後はさらなる臨床と研究の連携促進が重要になるのではと感じる,大変有意義な学術大会でした.
ニューロリハ研究センターからは,特別企画「臨床知の定量化は可能か?」,公募型シンポジウム「身体拡張技術と理学療法―ロボットとバーチャルリアリティー」では 森岡 周 教授がご登壇され,公募型シンポジウム「小児理学療法における課題志向型アプローチによる運動学習の支援」では 信迫 悟志 准教授がご登壇されました.私は「腕神経叢損傷症例と健常者におけるMirror Visual Feedback中の脳-筋コヒーレンスの違い」という題で口述発表(セレクション演題)をさせていただきました.発表時間が限られている中,聴講していただいている方々に自身の研究内容を理解していただけるか不安もありましたが,ありがたいことに発表後には会場から貴重なご助言もいただくことができました.私は今回発表させていただいた演題を修士論文として提出するため,頂戴した貴重なご意見も踏まえた上で作成していきたいと思います.

修士課程 木下 栞

 

9月9日(土)~10(日)に第21回日本神経理学療法学術大会(横浜)で,私,成田雅(博士後期課程)と藤田大輝(修士課程)がポスター発表を行って参りました.本学会のテーマは「臨床知へのあゆみ -学際性への架け橋-」というテーマで開催されました.昨年の第20回大会から現地開催が再開され,本学会も現地参加で開催されました.今回のシンポジウムの1つに「神経難病者における Unmet Rehabilitation Needs からのアウトカムの再考」というテーマで行われました.脊髄小脳変性症やパーキンソン病,筋委縮性側索硬化症の3つの疾患に関して各演者の先生がアンケート調査の結果や症例提示を行ってくださり,現状の問題点や今後の課題について提示されていました.私たち理学療法士をはじめ医療提供者側からの視点ではなく,患者さんのニーズをより詳細にとらえていくことの重要性を改めて認識させて頂きました.私は「パーキンソン病患者のベッド上動作の自立に関連する要因の検討」というタイトルでポスター発表をさせて頂きました.本大会では1時間のフリーディスカッションでしたが,1時間の間多くの方に質問を頂くことが出来ました.パーキンソン病のベッド上動作に関しては報告が少ないですが,皆さんが興味を持ってくれ,また共通した臨床での課題であると認識されていることなどを討論出来てうれしく思いました.また,藤田さんからは「健常若年者の頭部傾斜時の垂直認識と様々な感覚条件での立位姿勢制御能力との関係」とのタイトルで発表を行いました.他の学会で発表を見て,今回の発表を見に来てくれた方もいたということもあり,色々なご意見などを伺うことが出来,1時間がとても短く感じられました.

 

博士後期課程 成田 雅

 

==ニューロリハ研究センター大学院生の発表演題==

蓮井 成仁(博士後期課程):歩行条件に基づく障害構造の理解と臨床意思決定過程(基幹シンポジウム)

乾 康浩(博士後期課程):脳卒中患者の不整地歩行の特徴-歩行速度変化による分類-

赤口 諒(博士後期課程):振動を用いた接触タイミング知覚生起が脳卒中後感覚障害症例の把持力調節に及ぼす影響

成田 雅(博士後期課程):パーキンソン病のベッド上動作の自立に関連する要因の検討

松田総一郎(博士後期課程):脳卒中後患者におけるサーマルグリル錯覚の臨床的特徴と病変部位の分析

本川剛志(修士課程):急性期Wallenberg症候群患者の歩行獲得に影響を及ぼす要因

佐藤悠樹(修士課程):Effects of γ-wave transcranial alternate current electrical stimulation to the cerebellum on standing posture control -a preliminary study-

三枝信吾(修士課程):歩行能力向上が脳卒中患者のアイデンティティに与える影響:事例研究からの示唆

木下 栞(修士課程):腕神経叢損傷症例と健常者におけるMirror Visual Feedback中の脳-筋コヒーレンスの違い

藤田大輝(修士課程):健常若年者の頭部傾斜時の垂直認識と様々な感覚条件での立位姿勢制御能力との関係

 

(写真 上)岡田 准教授 ゼミ (左下)ディスカッション中の藤田大輝さん (右下)成田 雅さん

第3回痛みのニューロリハビリテーション研究会を開催しました

2023.8.23 に 第3痛みのニューロリハビリテーション研究会を開催しました.

今回のテーマは「痛みを有する症例の身体知覚・認知にかかわる脳機能とリハビリテーション」でした!

当日は以下の内容で進みました!

 

「痛みを有する症例に生じる身体知覚・認知の特徴」畿央大学 大住倫弘

「身体知覚・認知の異常をもたらす脳メカニズム」 名古屋大学 吉田彬人

「身体知覚・認知の異常に必要なリハビリテーション手続き」甲南女子大学 壬生 彰

臨床症状,その脳メカニズム,そしてリハビリテーション手続きまで系統立ってディスカッションできたのではないでしょうか.特に,巷で実施されている触覚識別タスクについての実際と効果を生み出す要因について細かくディスカッションできたのは嬉しかったです.単なる体性感覚のトレーニングではなく,痛みからの注意そらし,外的刺激への暴露というのは非常に重要な要素ということもとても理解できました.

 

次回以降の開催も予定していますので,またアナウンスできればと思います^^

今後ともどうぞ宜しくお願い致します.

 

畿央大学 大住倫弘

リハビリテーショントークセッション#リハセッションを開催しました

2023.7.29 土曜日に,畿央大学 開学20周年 記念としてニューロリハビリテーション研究センター主催の「リハビリテーショントークセッション#リハセッション」を開催しました.

これまでの“ニューロリハビリテーションセミナー”とは異なるスタイルで進めようと意図したところがありまして,さまざまな知見の背景にある部分を大いに語り合いました.今回は,コロナ前に実施していたニューロリハセミナーよりも少なかったですが(参加人数:70名),むしろそれが功を奏して,参加された方々と非常に密接な関係を築くことができたと思います!何より,参加された方同士が徐々に交流していく雰囲気があって嬉しく思いました.スタッフとして頑張ってくれた大学院生も参加された皆さんと交流できて良い経験になったと思います.有難うございました!(次はいつになるか分かりませんが)今後もこのような機会を設けたいと考えていますので,その時はよろしくお願いしますm(__)m

① 10:00-10:45 共生するリハビリテーション(同センター 教授 松尾 篤 )

② 10:45-11:30 感 じ るリハビリテーション (同センター 准教授 大住倫弘)

③ 11:30-12:15 ゆ ら ぐリハビリテーション (同センター 准教授 岡田洋平)

④ 13:30-14:15 繋 が るリハビリテーション (同センター 教授 冷水 誠)

⑤ 14:15-15:00 鍛 え るリハビリテーション (同センター 准教授 前岡 浩)

⑥ 15:15-16:00 映 す リハビリテーション (同センター 准教授 信迫悟志)

⑦ 16:00-16:45 奏 で るリハビリテーション (同センター センター長・教授 森岡 周)

理学療法の意思決定場面における患者関与の実態とSDMの有用性

PRESS RELEASE 2023.7.28

近年,患者の価値観を治療の意思決定に考慮するShared Decision-Making(SDM)が注目されている一方,理学療法領域では理論的な背景が不足している状況です.畿央大学大学院博士後期課程 尾川 達也 さん(西大和リハビリテーション病院) と 森岡 周 教授ら は,日本で理学療法を受けている患者を対象に意思決定への関与の状況とその要因について検証しました.結果,意思決定に関わる患者の希望を満たせていない実態とともに,理学療法領域においてもSDMが患者関与の一要因であることを明らかにしました.この研究成果はBMC Medical Informatics and Decision Making 誌(Shared decision-making in physiotherapy: a cross-sectional study of patient involvement factors and issues in Japan)に掲載されています.

研究概要

Evidence-Based Medicine(EBM)を実践する際,医療者が患者の価値観を十分に考慮していない実態が指摘されています.近年,医療者と患者が共同で治療の意思決定を進めるSDMが推奨されるようになり,理学療法領域でも注目されています.しかし,既存の情報は医師を主とした研究や数名の患者による質的研究の結果であり,理学療法領域におけるSDMの有用性に関しては理論的根拠が乏しい状況です.畿央大学大学院博士後期課程 尾川 達也 氏(西大和リハビリテーション病院),森岡 周 教授ら の研究チームは,日本で理学療法を受けている患者を対象に意思決定への関与の状況とその要因について検証しました.その結果,治療の決定を「理学療法士が行っている」と認識している患者の割合が多く,意思決定に関わる患者の希望を満たせていない実態が明らかとなりました.また,意思決定への関与に関連する要因として,理学療法士によるSDMの実施状況が選択され,理学療法領域においてもSDMが患者関与の一要因であることが明らかとなりました.

本研究のポイント

■ 実際の意思決定方法とともに,患者が希望する意思決定方法も同時に評価することで,患者の希望を満たせていない実態を明らかにした.
■ 患者の意思決定への関与に理学療法士によるSDMの実施程度が関連することを明らかにした.

研究内容

日本の入院環境や地域で理学療法を受けている277名の患者に対し調査を行いました.患者の意思決定への関与を評価するためにControl Preference Scaleを使用しました.これは実際の意思決定方法(Actual Role)希望する意思決定方法(Preferred Role)の両方を5つのイラスト(A:most active,B:active,C:collaborative,D:passive,E:most passive)から1つ選択する評価で,今回はこの一致度を算出しました.また,SDMの評価には患者が医療者の言動を採点する9-item Shared Decision Making Questionnaireという質問紙評価を使用しました.

図1 実際の意思決定方法と希望する意思決定方法の一致度
実際と希望する意思決定方法は有意な一致度(一致率:49.8% 重みづけκ係数=0.38)を認めたもののκ係数は低かった(灰色).また,希望よりも受動的な関与であった割合は36.5%(青色),希望よりも能動的な関与であった割合は13.7%(赤色)であった.

 

図2 SDM-Q-9の投入有・無におけるロジスティック回帰分析の比較
意思決定への関与と有意に関連した要因として,1)治療環境が地域である 2)患者が意思決定への関与を希望する 3)理学療法士がSDMを実施することが選択された.一方,年齢や教育年数,歩行能力は,意思決定への関与と有意な関連を認めなかった.

 

結果,実際の意思決定方法と希望する意思決定方法が一致した割合は49.8%(図1の灰色)であり,希望よりも実際が受動的な関与となっていた者は36.5%(図1の青色)もいました.また,意思決定への患者関与に関連する要因として,1)治療環境が地域である,2)患者が意思決定への関与を希望する,3)理学療法士がSDMを実施することが選択され,理学療法領域においてもSDMが患者関与の一要因であることが明らかとなりました(図2).このことから,日本の理学療法領域においても意思決定に関わる患者の希望を満たせていないといった “患者関与の問題点” を明確に示すことができました.また,他の関連要因を調整したとしても,理学療法士によるSDMの実施程度が患者関与と関連した本研究の結果は,理学療法領域におけるSDMの有用性を支持する重要な発見となりました.

本研究の臨床的意義および今後の展開

本研究の結果から,理学療法領域の中でSDMの臨床実践を推進していく理論的根拠を示すことができました.今後は理学療法領域で頻繁に生じる意思決定場面に焦点を当て,患者側の視点を明らかにするとともに,それらの情報を統合した理学療法士に対するSDMの教育的支援も必要になると考えています.

論文情報

Tatsuya Ogawa, Shuhei Fujimoto, Kyohei Omon, Tomoya Ishigaki and Shu Morioka
Shared decision-making in physiotherapy: a cross-sectional study of patient involvement factors and issues in Japan.
BMC Medical Informatics and Decision Making, 2023

問い合わせ先

畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター

畿央大学大学院健康科学研究科

センター長/教授 森岡 周

博士後期課程 尾川達也

Tel: 0745-54-1601

Fax: 0745-54-1600

E-mail: s.morioka@kio.ac.jp