日仏国際共同研究CREST-ANR NARRABODY 1st International Conferenceが開催されました!
フランス・ボジョレーにて日仏国際共同研究CREST-ANR NARRABODY 1st International Conference “(Re)Integrating Selves” が開催されました。
本研究会は,日仏共同研究プロジェクト NARRABODY(CREST-ANR) の一環として開催されました。NARRABODYは,身体化された自己(embodied self)と物語的自己(narrative self) の関係を「ナラティブ・エンボディメント(narrative embodiment)」という概念から探究し,特にリハビリテーションへの応用可能性を検討する研究プロジェクトです。今回の会議では,このナラティブとエンボディメントの関係をより広い視点から捉え,自己統合(self-integration)というテーマのもとで議論が行われました。主な論点は以下の4つです。
自己の理論的統合:embodied self,narrative self,minimal self など,多様な自己概念をどう統合的に理解できるか
自己と他者の関係(間主観性):自己は孤立した存在ではなく,他者との関係の中で構成されるという視点
病理における自己の回復:脳卒中などの疾患によって分断された自己を,どのように回復・再統合するか
環境との相互作用:自己は環境に適応すると同時に,環境を取り込みながら拡張していくという視点
CREST:国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)による戦略的創造研究推進事業
ANR:The French National Research Agency (ANR)
NARRABODY:Narrative embodiment: neurocognitive mechanisms and its application to VR intervention techniques(ナラティブ・エンボディメントの機序解明とVR介入技術への応用)

会場の様子
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Day 1 THURSDAY 5
Welcome Session
Sotaro Shimada,Yves Rossetti
Opening remarks
Osamu Ogata
Consul of Japan
SESSION 1 Self Integration as Narrative Embodiment
Part 1: Narrabody – Recent Developments
Embodiment-Based Rehabilitation for Phantom Limb Pain
Michihiro Osumi
Effects of the Modulation of the Optical Flow During Walking on Self-Efficacy:
Preliminary Report of a Series of Experiments (FLY Study)
Sébastien Matteo, Yuanliang Zhu
Embodiment and Narrativity in Post-Stroke Walking – A Longitudinal Qualitative Study –
Shingo Mitsue
Part 2: Narrabody – Theoretical Framework
Toward a Conceptual Framework of Narrative Embodiment
Sotaro Shimada
Response: Narrative Embodiment and the Logic of Self Fragmentation
Jean-Michel Roy
Collective Discussion

大住 倫弘准教授

三枝 信吾氏
Jean-Michel Roy教授
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Day 2 FRIDAY 6
SESSION 2 Self Integration as Unification of Self Theory
Part 1: The General Issue
The Hermeneutics of Disordered Self-Narratives
Shaun Gallagher
The Self as “Aida” (Betweenness): Toward a Non-Reductive Framework of Self-Integration
Shogo Tanaka
Part 2: Focus
Integrating Levels of Selfhood: Ontological Lessons from Narrative Embodiment
Camille Lepingle
Anosognosia: A Multifaceted Phenomenon Probing the Unity and Plurality of Self-Consciousness
Hugo Ardaillon
SESSION 3 Self Integration as Intersubjectivity
Impersonal Memories and the Phenomenology of Quasi-Remembering
Pierre‑Jean Renaudie
From Action to Intersubjectivity: The Neural Roots of Self-Other Integration
Pier Francesco Ferrari
Ritualizing Intersubjectivity: A Xunzian-Enactive Account of Social Understanding
Jing He
Shaun Gallagher教授
Pier Francesco Ferrari教授
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Day 3 SATURDAY 7
SESSION 4 Self Integration as Self Restoration
The Self-Portrait as an Interaction between the Narrative Self and the Embodied Self
Gilles Rode
Beyond Restoration: Temporal Self-Reconstruction and Motor Ecology After Stroke
Shu Morioka
Time Experience and Sense of Self in Schizophrenia: New Therapeutic Pathways?
Anne Giersch
Self-Integration: Narrative Identity, Core Commitments and Epistemic Agency
Somogy Varga
SESSION 5 Self Integration as Environment Adaptation and Absorption
Restoration of Embodiment: Insights from Brain-Computer Interface Research
Junichi Ushiba
Adaptation and the Dialogue Between Bodily- and Narrative-Selves
Yves Rossetti, Yuanliang Zhu
Embodying Tools and (Rubber) Hands: What Does That Mean?
Alessandro Farnè
Many Plausible Paths: Beyond Optimality in Complex Systems
Atsushi Iriki
Gilles Rode教授
森岡 周教授
Yves Rossetti教授
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本会議には日仏を中心に多くの研究者が参加しました。特にゲストスピーカーとして,Shaun Gallagher教授(University of Memphis),Pier Francesco Ferrari教授(CNRS),Anne Giersch研究主任(INSERM),Somogy Varga教授(Aarhus University),入來 篤史特任教授(帝京大学),牛場 潤一教授(慶應義塾大学)らが招かれ,哲学,神経科学,リハビリテーション科学の観点から「自己統合(self integration)」に関する講演が行われました。
本会議を主催するNARRABODYプロジェクトのメンバーとして,日本側からは嶋田 総太郎教授(明治大学),森岡 周教授(畿央大学),田中 彰吾教授(東海大学)をはじめ,多くの共同研究者や大学院生が参加しました。また,畿央大学からは森岡 周教授に加え,大住 倫弘准教授,高村 優作研究員(Paris Brain Institute),林田 一輝客員研究員(宝塚医療大学助教),三枝 信吾氏(東海大学CREST特任研究員),大西 空氏(CREST特任研究員)が参加しました。フランス側からは,Yves Rossetti教授(Lyon Neuroscience Research Center),Jean-Michel Roy教授(ENS Lyon),Gilles Rode教授(Université Claude Bernard Lyon 1)など,多くの研究者および大学院生が参加しました。
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1日目
初日は「Self Integration as Narrative Embodiment」をテーマとしたセッションが開催されました。本セッションでは,大住 倫弘准教授が幻肢痛に対する身体化に基づくリハビリテーション研究を紹介し,三枝 信吾氏が脳卒中患者の歩行経験を対象とした現象学的研究など,身体経験とナラティブの関係を多角的に検討する研究が報告されました。
休憩後には,NARRABODYプロジェクトの理論的枠組みに関する講演が行われました。嶋田 総太郎教授はナラティブ・エンボディメントの概念的枠組みを提示し,続いて Jean-Michel Roy教授 がナラティブ自己と身体自己の関係について哲学的観点から応答を行いました。
2日目
2日目は,自己統合を自己理論および間主観性の観点から検討するセッションが行われました。
午前のセッションでは,Shaun Gallagher教授 が精神疾患などにおける自己ナラティブの変容について解釈学的観点から講演しました。また田中 彰吾教授 は,日本哲学の「間(Aida)」の概念を手がかりに,自己を関係性の中で捉える理論的枠組みを提示し,自己統合をめぐる理論的議論が展開されました。
午後のセッションでは,記憶の現象学に関する研究や,ミラーニューロン研究に基づく自己と他者理解の神経基盤についての講演が行われました。特に Pier Francesco Ferrari教授 は,感覚運動システムの共有が自己と他者理解の基盤となる可能性について神経科学的観点から議論しました。
3日目
3日目の午前は「Self-Integration as Self Restoration」をテーマとしたセッションが開催されました。Gilles Rode教授は神経心理学的症例における自己肖像画の分析を通して身体表象の障害と自己認識の関係を紹介しました。さらに,森岡 周教授は脳卒中後の回復過程を時間的自己の再構成として捉える枠組みを提示し,Anne Giersch研究主任は統合失調症における時間知覚と主体感の関係について講演しました。
午後のセッションでは,身体と環境の相互作用に焦点を当てた研究が紹介されました。牛場 潤一教授はブレイン・コンピュータ・インターフェース(BCI)研究の成果を報告し,Yves Rossetti教授らは身体自己とナラティブ自己の相互作用について議論しました。またAlessandro Farnè教授は道具使用に伴う身体表象の拡張について講演し,最後に入來 篤史特任教授が複雑系における因果関係の新しい枠組みとして Path-Integral Causality を提案しました。
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総括
本ワークショップでは,ナラティブと身体性の関係を基盤とした「自己統合(self-integration)」というテーマのもと,哲学,認知神経科学,神経心理学,リハビリテーション科学など多様な分野の研究者による学際的な議論が行われました。特に,身体経験とナラティブの相互作用を通じて自己がどのように形成・変容するのかという問題について,理論的・実証的な観点から多くの新しい視点が提示されました。その中でも,リハビリテーション科学の観点から身体経験と自己の再構成を探究する研究は国際的にも高い関心を集め,畿央大学の研究グループによる取り組みは,本テーマの発展に重要な示唆を与えるものとなりました。今後は、国際的な概念や定義の作成に向けて研究を重ね、国際共著として出版する予定です。
これまでのミーティングを通して議論が重ねられてきましたが,本カンファレンスではナラティブとエンボディメントの関係を「ナラティブ・エンボディメント」として捉える概念的枠組みについて,研究者間で一定の共有が形成されたことが大きな成果の一つとなりました。
本カンファレンスは,NARRABODYプロジェクトを通じた日仏研究交流をさらに深化させるとともに,自己研究と神経リハビリテーション研究を結びつける学際的研究の発展に向けた重要な一歩となりました。
歩行中の“身体軽量感”錯覚 -偶然発見された新たな錯覚現象-
PRESS RELEASE 2026.2.26
身体が重たいと感じることにより身体活動量が低下してしまい,心身の健康に悪影響を及ぼすことがしばしばあります.畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターの林田一輝 客員研究員(宝塚医療大学助教)と同センター長の森岡周 教授らは,偶然発見された特殊な視覚フィードバックを利用することによって,健常若年者において歩行中に身体軽量感の錯覚を誘発できる可能性について報告しました.この成果は,CREST(ナラティブ・エンボディメントの機序解明とVR介入技術への応用)の一環として行われ,Frontiers in Psychology誌(The illusion of a “sense of body lightness” while walking: A preliminary exploratory study)に掲載されています.
本研究のポイント
■歩行中の身体軽量感錯覚を誘発できる可能性について視覚遅延フィードバック課題を用いて行った.
■身体軽量感錯覚は,主観的先行フィードバックによって誘発できる.
■身体重量感などの不快な主観的経験に対する手立てになる可能性を秘めている.
研究概要
錯覚現象は歴史的に知覚過程に関する情報を明らかにするために用いられてきました.最近の研究では,予測される体性感覚フィードバックと比較してわずかに遅れた視覚フィードバックを与えられた実験参加者が身体の重さを感じたと報告されています.これはフィードバック間のわずかな誤差が身体知覚にネガティブな影響を与えるということがいえます.身体重量感というネガティブな身体知覚は,心身への悪影響を及ぼすことが知られていますが,その解決策はわかっていませんでした.畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターの林田一輝 客員研究員(宝塚医療大学助教)と同センター長の森岡周 教授らの研究チームは,歩行中に身体の軽さを感じるという新たな錯覚現象について報告しました.30名の実験参加者がトレッドミル歩行中に「主観的に先行するフィードバック」を経験した際,9名が身体軽量感の錯覚が誘発されたと報告されています.この報告では,主観的に先行するフィードバックの生成方法,身体軽量感錯覚を誘発するメカニズム,およびこの錯覚の応用可能性について記載しています.フィードバック間のわずかな誤差の知覚は,ポジティブな効果も生む可能性について論じています.この研究は予備的・探索的研究な段階ではありますが,この新たな錯覚は医療・リハビリテーション分野だけでなく,拡張現実技術やその他の学際分野にも貢献する可能性を秘めています.
研究内容
身体が重たいと感じるその原因に感覚運動不一致が挙げられています.感覚運動不一致とは,脳内で予測されたフィードバックと実際のフィードバック間のわずかなズレ(不一致)の認識を指します.感覚運動不一致を実験的に扱う方法に視覚遅延フィードバックを用いた研究があります.以前に畿央大学の林田一輝 客員研究員(宝塚医療大学助教)と同センター長の森岡周 教授らの研究チームは,視覚遅延フィードバックによって歩行中にも身体重量感を実験的に誘発できることを報告していました.しかし中には身体軽量感を報告する者が一定数存在することがわかっていましたが,その理由は不明なままでした.
ある日,研究チームが実験終了後に実験参加者の内省を聴取していると「遅れが大きくなりすぎると少し未来の自分を見ている状態になる.その時に身体が軽く感じる」という内容が報告され,研究チームが意図していなかった偶発的に作りだされた実験状況が身体軽量感錯覚に寄与する可能性が発覚しました.つまり身体軽量感の錯覚は,「主観的に先行するフィードバック」と予測されたフィードバック間の不一致によって誘発される可能性があると研究チームは提案しています.
歩行は周期運動であるため,1歩分に近い遅延を導入すると,先行する視覚フィードバックが生じ得ます.図1に示すように,ある実験参加者の1歩分の時間が約1000ミリ秒で,例えばリアルタイム(遅延時間:0ミリ秒)が立脚後期の場合,1000ミリ秒の遅延フィードバックは,前の歩行周期の立脚後期を見ている状況になります.また,わずかな遅延フィードバック(図1では立脚中期)によって身体重量感が誘発されることは以前の研究から明らかになっていました(例:200ミリ秒;現在の周期,青色).一方で,ほぼ1歩分の遅延(例:800ミリ秒;前の周期,オレンジ)により前遊脚期をフィードバックすると,実際は遅延フィードバックであるにも関わらず,わずかに先行する状況を主観的に経験することができます.この特殊な状況を「主観的先行フィードバック」と研究チームは呼んでいます.主観的先行フィードバックは,身体軽量感錯覚を引き起こす可能性があり,本研究の目的はこれを体系的に調査することでした.

図1.主観的先行フィードバックの誘発条件
ある実験参加者の1歩分の時間が約1000ミリ秒で,例えばリアルタイムが立脚後期の場合,遅延時間0ミリ秒および1000ミリ秒のフィードバックは,どちらも立脚後期に対応します.わずかな遅延フィードバック(ここでは立脚中期)では,身体重量感が誘発されます(例:200ミリ秒;現在の周期,青色).ほぼ1歩分の遅延(例:800ミリ秒;前の周期,オレンジ)により前遊脚期のフィードバックを提示すると,実際には遅延フィードバックであるにも関わらず,わずかに先行する段階を主観的に経験することができます.
実験により,30名中9名で先行フィードバック時に明確な身体軽量感の錯覚が誘発したという結果が報告されています.本報告は予備的・探索的な性質のものですが,このシンプルなアイデアは,感覚運動不一致によって引き起こされる不快な主観的体験への介入手段として役立つ可能性が秘められています.
本研究の臨床的意義および今後の展開
新たな錯覚現象の発見によって,身体知覚生起のメカニズムおよび発展可能性を展望することができました.
今後の研究では,身体軽量感を頑健に惹起する方法のさらなる探索をする必要があります.
論文情報
Hayashida K, Nishi Y, Osawa K, Inui Y and Morioka S (2026)
The illusion of a “sense of body lightness” while walking: a preliminary exploratory study.
Front. Psychol. 17:1741215.
・関連する先行研究
Hayashida, K., Nishi, Y., Inui, Y., & Morioka, S. (2025). Sensorimotor incongruence during walking using delayed visual feedback. Psychological research, 89(5), 139. https://doi.org/10.1007/s00426-025-02170-9
問い合わせ先
畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
客員研究員 林田 一輝
教授 森岡 周
Tel: 0745-54-1601
Fax: 0745-54-1600
E-mail: s.morioka@kio.ac.jp
【Web開催】運動学習の神経メカニズムとリハビリテーションへの応用
【Web開催】特別企画シンポジウム 運動学習の神経メカニズムとリハビリテーションへの応用
【主催】畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
【日時】2026年2月5日(木)19:00-20:30(ライブ配信のみ)
【開催方法】Web(Zoomウェビナー)
【対象者】リハビリテーションに関わる専門職者
※本研究会はリアルタイム配信(オンライン)のみとなります.オンデマンド・アーカイブ配信はございません.

運動の学習や再学習の背景には,筋や関節といった身体の働きだけでなく,脳の可塑的変化や神経活動のダイナミクス,さらには感覚情報と運動出力の相互作用が深く関与することが明らかになってきています.近年では,脳波計測やニューロモジュレーション技術の発展により,運動学習を神経活動の側面から捉え,介入へとつなげる研究がリハビリテーション領域においても広がりを見せています.さらに,視覚や体性感覚の操作によって生じる感覚運動の不一致に着目し,歩行中の運動制御や学習過程を明らかにしようとする研究も進展しており,これらの知見は歩行再建やリハビリテーション介入の新たな視点として注目されています.
今回の研究会では,まず 運動学習の神経メカニズム(脳活動ダイナミクス・誤差学習・ニューロモジュレーション等) について,東京大学の濵田 裕幸先生 にご講演いただきます.続いて,歩行を含む運動課題における感覚運動の不一致と運動学習に関する最新の知見について,宝塚医療大学の林田 一輝先生にご講演いただきます.両講演を通して,運動学習の神経メカニズムを基盤として,それがどのように運動制御やリハビリテーションへとつながり得るのかを,参加者の皆さまと共に議論を深めていきたいと考えております.
皆さまのご参加を心よりお待ちしております.
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【プログラム】
◆19:00-19:45
「運動学習を支える脳内メカニズムとリハビリテーションへの展開」
東京大学 大学院新領域創成科学研究科 人間環境学専攻 特任講師
濵田 裕幸 先生
◆19:45-20:30
「歩行を含む運動課題における感覚運動不一致と運動学習」
宝塚医療大学 和歌山保健医療学部 助教
林田 一輝 先生
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【参加申込】Peatixを利用して参加して頂きます.本ページにある「チケットを申し込む」をクリックし,お名前,ご所属,メールアドレス等をご入力した上で,お支払いのお手続きをお願いします.はじめてPeatixを利用される方は,アカウントを取得(新規登録)して頂く必要があります.Peatixのご利用方法について詳しくはこちらをご確認下さい.
【参加方法】Peatixチケット購入時に届いたPeatixメールの中の「イベント視聴ページに移動」をクリックして,「イベントに参加」ボタンをクリックすると,Zoomウェビナーに繋がり,参加できるようになります.
*ご参加には,Zoomを利用できる環境が必要です.各自でご準備下さい.
【キャンセルについて】こちらをご参照ください.
【参加される皆様へのお願い】スクリーンショットあるいは録画はなさらないよう強くお願い致します.
【お問い合わせ】
s.ohnishi@kio.ac.jp
大西 空(畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター)
【Web開催】第4回 痛みのニューロリハビリテーション研究会
【Web開催】第4回 痛みのニューロリハビリテーション研究会
【主催】畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
【日時】2026年2月18日(水)19:00-21:00(ライブ配信のみ)
【開催方法】Web(Zoomウェビナー)
【対象者】リハビリテーションに関わる専門職者
※本研究会はリアルタイム配信(オンライン)のみとなります.オンデマンド・アーカイブ配信はございません.

慢性疼痛の背景には,身体だけでなく脳の機能に異常が生じていることが分かってきています.近年の脳波技術の進歩は目覚ましく,認知科学やスポーツ科学,精神医療など,多様な分野で活用が広がっています.自らの脳活動を可視化し,その状態を調整するトレーニング(ニューロフィードバック)などの試みも実用化が進んでいます.今回の研究会では,まず痛みに関連する脳機能異常について大まかに整理した上で,慢性疼痛に特徴的な脳波活動について,森ノ宮医療大学の上野慶太先生にご講演いただきます.その内容を踏まえ,慢性疼痛に対するリハビリテーションとしてどのようなアプローチが創造できるのか,参加者の皆さまと一緒に考えていきたいと思います.皆さまのご参加を心よりお待ちしております.
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【プログラム】
◆19:00-19:30
「痛みにおける脳科学の基本的知識」
畿央大学 大住倫弘(30分)
Researchmap
◆19:40-20:40
「慢性疼痛に特徴的な脳波活動」
森ノ宮医療大学 上野慶太(60分)
Researchmap
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【参加申込】Peatixを利用して参加して頂きます.本ページにある「チケットを申し込む」をクリックし,お名前,ご所属,メールアドレス等をご入力した上で,お支払いのお手続きをお願いします.はじめてPeatixを利用される方は,アカウントを取得(新規登録)して頂く必要があります.Peatixのご利用方法について詳しくはこちらをご確認下さい.
【参加方法】Peatixチケット購入時に届いたPeatixメールの中の「イベント視聴ページに移動」をクリックして,「イベントに参加」ボタンをクリックすると,Zoomウェビナーに繋がり,参加できるようになります.
*ご参加には,Zoomを利用できる環境が必要です.各自でご準備下さい.
【キャンセルについて】こちらをご参照ください.
【参加される皆様へのお願い】スクリーンショットあるいは録画はなさらないよう強くお願い致します.
【お問い合わせ】
m.ohsumi@kio.ac.jp
大住 倫弘(畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター)
入院中の脳卒中者はなぜ歩行を重要と認識しているか-歩行に関する語りから重要性を探索-
PRESS RELEASE 2026.2.22
脳卒中を発症すると,多くの人が歩行能力の低下を経験し,日常生活や社会参加にさまざまな影響を受けます.しかし,入院中の脳卒中者が,どのような理由で歩行を重要と捉えているのかについては,これまで十分に明らかにされていませんでした.畿央大学大学院博士後期課程の三枝 信吾 氏と森岡 周教授らは,回復期リハビリテーション病棟に入院中の脳卒中者19名を対象にインタビュー調査を行い,歩行の重要性に関する認識を質的に分析しました.この研究成果は Frontiers in Neurology誌(Perceived importance of walking among hospitalized patients with stroke: A thematic analysis)に掲載されています.
本研究のポイント
■回復期リハビリテーション病棟に入院中の脳卒中者を対象に,歩行の重要性について半構造化インタビューを行い,質的に分析した.
■歩行は,日常生活の再開や健康の促進および機能低下の予防に加え,歩行に伴う不安,他者との関係性,歩行能力低下のラベリング,さらに社会環境とも深く結びついていることが明らかとなった.
研究概要
脳卒中を発症すると,多くの人が歩行能力の低下を経験します.歩行は移動手段としてだけでなく,日常生活の自立や社会参加,健康維持にも深く関わる重要な活動です.しかし,入院中の脳卒中者が,どのような理由で歩行を重要と捉えているのかについては,これまで十分に明らかにされていませんでした.畿央大学大学院博士後期課程の三枝 信吾 氏と森岡 周 教授らの研究チームは,回復期リハビリテーション病棟に入院中の脳卒中者19名を対象に,歩行の重要性について半構造化インタビューを実施し,質的分析を行いました.その結果,歩行は発症前の生活を再開するための重要な要素として強調されていました.一方で,歩行は健康を維持するために重要ではあるが,環境への適応に対する不安も示されました.そして,参加者は歩行能力低下が他者との関係性に悪影響を及ぼすことを懸念していることや,他者からの視線を通じて脳卒中者として捉えられることを避けたいという思いも示されました.さらに,歩行の重要性は経済的負担や交通手段,外部支援の必要性といった,より広範な社会的課題にまで及んでいました.本研究は,入院中の脳卒中者が歩行を重要と捉える理由を質的に明らかにした初めての研究です.
研究内容
本研究では,回復期リハビリテーション病棟に入院中の脳卒中者19名を対象に,歩行の重要性に関する対面での半構造化インタビューを実施しました.インタビューに先立ち,Community Integration Questionnairを用いて,発症前の生活状況や社会参加の背景を把握しました.次に,歩行の自立性,バランス,質,距離,速さの5つの歩行要素の中から,参加者が最も重要と認識している要素を選択してもらい,その理由について詳しく語ってもらいました.インタビューはすべて音声録音され,逐語録として文字起こしされた後,体系的にコーディングされてテーマを生成するための分析が行われました(図1).

図1.インタビューの手順と内容
結果,6つの主要なテーマが抽出されました.(1) 日常生活の再開:歩行は,発症前に行っていた活動や生活習慣に戻るために不可欠な要素として認識されていました.(2) 健康の維持および機能低下の予防:参加者は,歩行は健康を維持し,身体機能の低下を防ぐために重要であると捉えていました.(3) 歩行に伴う不安:参加者は,歩行時に生じる身体的および環境的な困難について語っていました.(4) 他者との関係性:歩行の困難さが,家族や周囲の人々との関係性に影響を及ぼす可能性について懸念が示されていました.(5) 歩行能力低下のラベリング:参加者は,自身の歩き方が他者からどのように見られているかを強く意識していました.(6) 社会環境:歩行は,仕事や交通手段といった,より広範な社会的要因と結びついていました.
研究グループは,これらの結果から,入院中の脳卒中者にとって歩行は,発症前の生活の再構築や健康の維持,人間関係および社会環境への再適応と深く関わる行為であると考えています.一方で,歩行は他者からの視線をはじめとする周囲との関係性といった心理社会的側面からもその重要性が形づくられており,今後の歩行リハビリテーションでは,身体機能や移動能力といった視点に加えて,個々人が認識する歩行観を踏まえた包括的な支援が必要であると考察しています.
本研究の臨床的意義および今後の展開
本研究の臨床的意義は,理学療法士等が歩行リハビリテーションを行う際に,脳卒中者自身が歩行に見出している意味や価値に着目する必要性を示しています.今後は縦断データを使用し,時間の経過に伴歩行の捉え方の変化を検討する必要があります.なお、本研究は科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業CREST研究領域「生体マルチセンシングシステムの究明と活用技術の創出」における研究課題「ナラティブ・エンボディメントの機序解明とVR介入技術への応用」の支援を受けて実施しました.
論文情報
Mitsue S, Ogawa T, Minamikawa Y, Shimada S and Morioka S (2026)
Perceived importance of walking among hospitalized patients with stroke: a thematic analysis.
Front. Neurol. 17:1742132.
・関連記事
本研究の出版報告は、NARRATIVE EMBODIMENT PROJECT(NARRA BODY)のウェブサイトにも掲載されています。
問い合わせ先
畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
博士後期課程 三枝 信吾
教授 森岡 周
Tel: 0745-54-1601
Fax: 0745-54-1600
E-mail: s.morioka@kio.ac.jp
JST CREST領域内研究交流を行いました ― 身体と自己をつなぐ新たな視点へ ―
先日、JST CREST「生体マルチセンシングシステムの究明と活用技術の創出」領域の研究交流として、名古屋大学・大平英樹教授の研究室を訪問し、研究発表と討議を行いました。大平教授は、「多様な迷走神経情報から創発する内受容感覚の脳統合(代表・佐々木拓哉 東北大学教授)」(JST CREST「生体マルチセンシングシステムの究明と活用技術の創出」領域)を推進されており、内受容感覚(身体の内部状態を感じ取る感覚)や予測的処理を軸に、脳・身体・心の統合メカニズムを探究されています。
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本学からは、森岡周教授、大住倫弘准教授、佐々木遼JSPS特別研究員、大西空CREST特任研究員、産屋敷真大(大学院修士課程)が参加しました。
当日は、身体の変化がどのように「自己の変化」へとつながるのかという視点から、以下の発表を行いました。
まず、森岡教授(大西研究員と共同)が、脳卒中患者における運動機能回復とナラティブ(語り)の変容との関連について報告しました。運動機能の改善は単なる動きの回復ではなく、「自分はどのような存在か」という自己理解の再構築と深く関わります。特に、内受容感覚の変化をどのように患者さん自身の語りの変化と結びつけるかという点について、活発な議論が交わされました。
次に、佐々木研究員は、サーマルグリル錯覚を用いた研究を紹介し、「痛みの質」がどのように生じるのか、またそれが日常生活や活動にどのような影響を及ぼすのかを報告しました。身体感覚の予測誤差という観点から、主観的な痛み体験をどのように理解できるかについて重要な示唆が得られました。
続いて、産屋敷さん(修士課程)は、脳卒中患者が自身の身体に抱く感情について発表しました。身体への否定的感情や再受容の過程が、回復プロセスとどのように関連するのかが議論され、評価方法や測定枠組みについても建設的な意見交換が行われました。
さらに、大住准教授は、慢性疼痛患者における脳内ネットワークの特徴について報告しました。異なる役割をもつネットワーク間の結合の変化が、痛みの持続や症状の多様性に関与する可能性が示されました。
今回の研究交流を通して、内受容感覚、予測的処理、ナラティブ、脳ネットワークといった多様な視点が結びつき、身体の変化を「自己の時間的再構築」として捉える新たな理論的展開(Narrabody)への可能性が広がりました。
今後もこのような領域横断的な対話を重ね、身体と自己を統合的に理解する研究をさらに発展させていきたいと考えています。

畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
【開催報告】第4回 痛みのニューロリハビリテーション研究会
2月18日,第4回「痛みのニューロリハビリテーション研究会」をオンライン開催しました。
今回は森ノ宮医療大学の上野慶太先生を講師にお迎えし,「慢性疼痛と脳波(EEG)」をテーマに深掘りしました。
—–主なトピック——
脳波のパワーとコネクティビティの違い
注目の「マイクロステート」解析とデータベース活用の利点
前頭θ波やサリエンスネットワークの機能的意味
ニューロフィードバックや疼痛再認識の可能性
————————-
「脳波を操作して痛みは変わるのか?」という問いに対し,最新の知見から臨床応用のヒントまで,非常に濃密な議論が交わされました。ハンス・ベルガーによる脳波発見から約100年。脳活動を可視化し,それを痛みのリハビリに活かす未来がすぐそこまで来ていることを実感する2時間でした。
上野先生、ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました!

脳卒中後の体幹機能の構造を解明:4つの因子と難易度階層に基づく新しい評価モデル
PRESS RELEASE 2026.2.13
脳卒中者において,体幹機能の低下は座位保持や歩行,日常生活動作(ADL)の自立を妨げる主要な要因となります.これまで多くの体幹機能検査が開発されてきましたが,それぞれが評価する要素や難易度が異なり,統合的な解釈が困難でした.畿央大学大学院博士後期課程の田上 友希 氏と森岡 周 教授らは,既存の4つの体幹機能検査を統合的に分析し,脳卒中後の体幹機能が「静的座位」「基本動作」「動的座位(より挑戦的な課題)」「動的座位(挑戦的ではない課題)」の4つの因子で構成され,明確な難易度階層構造を持つことを明らかにしました.この研究成果はArchives of Physical Medicine and Rehabilitation誌(Integrated Structural Analysis of Trunk Function Assessment After Stroke – New Evaluation Model Based on Multiscale Factor Analysis and Rasch Analysis)に掲載されています.
本研究のポイント
■急性期脳卒中者200名を対象に,既存の4つの体幹機能検査(TIS-V, TIS-F, FACT, TCT)を用いて,体幹機能の構成要素を検証しました.
■探索的因子分析とRasch分析を用いた結果,体幹機能は「静的座位」「基本動作」「動的座位(より挑戦的な課題)」「動的座位(挑戦的ではない課題)」の4つの因子に分類され,それぞれの難易度が段階的に高くなる階層構造を持つことが明らかになりました.
研究概要
脳卒中後の体幹機能障害は,ADLや歩行の予後を予測する重要な因子ですが,臨床現場では複数の評価尺度が混在しており,「どの検査がどの能力を測っているのか」が不明確なままでした.畿央大学大学院 博士後期課程 田上 友希 氏,森岡 周 教授らの研究チームは,発症早期の脳卒中患者200名を対象に,代表的な4つの体幹機能検査(計38項目)を実施し,得られたデータを高度な統計手法(探索的因子分析およRasch分析)を用いて解析しました.その結果,脳卒中後の体幹機能は単一の構造ではなく,明確に異なる4つの因子から構成されていることを突き止めました.さらに,これらの因子間には難易度の順序性(静的座位<基本動作<動的座位[挑戦的ではない]<動的座位[より挑戦的])が存在することを証明しました.本研究は,脳卒中後の体幹機能の構造と階層性を初めて統計的に明らかにしたものであり,より個別化されたリハビリテーション介入への道を開くものです.
研究内容
本研究では,脳卒中後の体幹機能評価の構造を解明し,新しい統合的な評価モデルを構築することを目的としました.発症から48時間以内に離床が可能となった脳卒中患者200名を対象に,Trunk Impairment Scale (TIS-V, TIS-F),Functional Assessment for Control of Trunk (FACT),Trunk Control Test (TCT) の4つの評価尺度を用いて評価を行いました.

図1. 本研究で統合解析した体幹機能評価
収集したデータに対し,探索的因子分析(EFA)を行った結果,体幹機能は以下の4つの因子に分類されることがわかりました.
1,静的座位(Static sitting):座位姿勢の保持能力
2,基本動作(Basic movement):寝返りや起き上がりなど,支持基底面内での基本的な体動
3,動的座位・難易度低(Dynamic sitting – Less Challenging):支持基底面内での重心移動を伴う動作
4,動的座位・難易度高(Dynamic sitting – More Challenging):支持基底面外へのリーチや体幹回旋を伴う高度な制御
さらに,ラッシュ分析を用いて各因子の難易度を検証したところ,これらは並列な関係ではなく,静的座位や基本動作が容易で,動的座位(特に回旋や大きな重心移動を伴うもの)が最も困難であるという階層性を持つことが示されました.

図2.体幹機能の4因子と難易度階層
研究グループは,従来の評価法ではこれらの異なる要素が混在してスコアリングされていたため,患者の特異的な課題(例:静的保持はできるが,回旋を含む動的動作だけができない等)が見過ごされていた可能性があると考察しています.本研究で示された4因子モデルを用いることで,患者が「どの段階の」「どの因子」に問題を抱えているかを正確に把握することが可能になります.
本研究の臨床的意義および今後の展開
本研究成果は,脳卒中後の体幹機能を「静的」「基本動作」「動的(低難度・高難度)」という4つの視点から整理し,その難易度順序を明確にした点にあります.これにより,リハビリテーション専門家は,単なる合計点での評価ではなく,患者の回復段階に応じた適切な目標設定(例:静的座位が確立したら,次は支持基底面内での動的課題へ進むなど)が可能になります.今後は,このモデルに基づいた短縮版の評価票(Keyform)の臨床応用や,各因子にターゲットを絞った介入プログラムの効果検証を進める必要があります.
論文情報
Tagami Y, Fujii S, Inui Y, Takamura Y, Nakao S, Takase K, Tomotake A, Shinbori N, Kitahara R, Morioka S.
Arch Phys Med Rehabil. 2026 Feb 5
問い合わせ先
畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
博士後期課程 田上 友希
教授 森岡 周
Tel: 0745-54-1601
Fax: 0745-54-1600
E-mail: s.morioka@kio.ac.jp
平地の歩きから不整地の不安定さを予測 -ウェアラブルセンサーと機械学習で解析-
PRESS RELEASE 2026.2.10
脳卒中者は,不整地を含む屋外の地域社会での歩行で安定性が低下し,転倒リスクが上昇します.ただし,脳卒中者の不整地での安定性に関する知見は不足しており,臨床的には平地歩行パラメータから予測できることは重要です.畿央大学大学院博士後期課程の乾 康浩 氏と森岡 周 教授らは,脳卒中者の不整地歩行に特徴的な安定性指標を腰部に取り付けたウェアラブルセンサーから特定し,さらにそれらを平地歩行パラメータから予測できるかについて機械学習を用いて検証しました.脳卒中者は不整地歩行中に,上下の動揺,前後の規則性,前後のリズムに課題を抱えることが明らかとなりました.また,平地歩行速度0.8m/s未満になると不整地での上下の動揺が大きく,平地歩行での足関節の動きが不整地歩行での前後の規則性に影響を与え,平地歩行でのリズムが不整地歩行でのリズムに影響を与えることが示されました.この研究成果はScientific Reports誌(Identifying and predicting gait stability metrics in people with stroke in uneven-surface walking using machine learning)に掲載されています.
本研究のポイント
■腰部に取り付けたウェアラブルセンサーから脳卒中者の不整地歩行に特徴的な安定性指標を抽出した.
■脳卒中者は,健常者と比較して不整地歩行で上下の動揺の増加,前後の不規則性の増加,前後のリズムの低下を示すことが明らかとなった.
■平地歩行速度0.8m/s未満になると不整地歩行での上下の動揺が大きく,平地歩行での足関節の動きが不整地歩行での前後の不規則性に影響を与え,平地歩行でのリズムが不整地歩行でのリズムに影響を与えることが示された.
研究概要
脳卒中者は,不整地を含む屋外の地域社会での歩行で安定性が低下し,転倒リスクが上昇します.ただし,脳卒中者の不整地での安定性に関する知見は不足しており,臨床的には平地歩行パラメータから予測できることは重要です.畿央大学大学院博士後期課程の乾 康浩 氏と森岡 周 教授らの研究チームは,自作の予測困難な摂動が生じる不整地路を用いて脳卒中者の不整地歩行に特徴的な安定性指標を腰部に取り付けたウェアラブルセンサーから特定し,さらにそれらを平地歩行パラメータから予測できるかについて機械学習を用いて検証しました.脳卒中者は不整地歩行中に,上下の動揺,前後の規則性,前後のリズムに課題を抱えることが明らかとなり,平地歩行速度0.8m/s未満になると不整地での上下の動揺が大きく,平地歩行での足関節の動きが不整地歩行での前後の規則性に影響を与え,平地歩行でのリズムが不整地歩行でのリズムに影響を与えることが示されました.本研究は,脳卒中者の不整地歩行に特徴的な安定性指標を特定し,平地歩行パラメータから予測した初めての研究です.
研究内容
脳卒中者は,不整地を含む屋外の地域社会での歩行で安定性が低下し,転倒リスクが上昇します.ただし,脳卒中者の不整地での安定性に関する知見は不足しており,臨床的には平地歩行パラメータから予測できることは重要です.
本研究では,腰部にウェアラブルセンサーを装着して自作の不整地路を歩行し(図1),得られた加速度データから線形・非線形指標19項目を算出した.これらの指標を入力として複数の機械学習分類モデルを構築し,脳卒中者と健常者の分類を行った.さらに,SHAP(SHapley Additive ExPlanations)分析により,分類に寄与する指標を特定した.さらに特定された安定性指標を平地歩行パラメータか予測できるかについて機械学習回帰モデルを用いて検証しました.

図1.不整地路とウェアラブルセンサー
機会学習分類モデルの結果からは,複数のモデルで95%以上の識別精度があり(図2),SHAP分析の結果,脳卒中者は不整地歩行中に,垂直方向の動揺を示すRoot Mean Squareの高さ,前後の不規則性を示すSample Entropyの高さ,前後のリズムを示すHarmonic Ratioの低さの寄与度が高いことが明らかとなりました(図3).

図2.不整地歩行における脳卒中者と健常者の分類性能(ROC曲線)
GAN1000: Generative Adversarial Network(GAN)を用いてデータ数を 1000 に拡張したモデル; ctGAN200: Conditional Tabular GANを用いてデータ数を200に拡張したモデル;
ctGAN1000: Conditional Tabular GANを用いてデータ数を10000に拡張したモデル.

図3.機械学習分類モデルにおける特徴量の寄与(SHAP分析)
各安定性指標が脳卒中者と健常者の分類にどれだけ貢献しているかを示すSHAP値をプロットしており,横軸がSHAP value(寄与度)を表してます.
また,機械学習回帰モデルの結果からは,平地歩行速度0.8m/s未満になると不整地歩行での垂直方向のRoot Mean Squareが大きく,平地歩行での足関節の動きが不整地歩行での前後のSample Entropyに影響を与え,平地歩行でのHarmonic Ratioが不整地歩行でのHarmonic Ratioに影響を与えることが示されました(図4).

図4.機械学習回帰モデルにおける特徴量の寄与(SHAP分析)
不整地歩行における各安定性指標の予測に対して平地歩行パラメータがどれだけ貢献しているかを示すSHAP値をプロットしており,横軸がSHAP value(寄与度)を表してます.RMS: Root Mean Square; EMG: Electromyography; BF: Biceps Femoris; HR: Harmonic Ratio; SampEn: Sample Entropy; BBS: Berg Balance Scale: IC: Initial Contact; RQA: Recurrence Quantification Analysis; sLE: short-time Lyapunov Exponent
研究グループは,これらの結果から,機械学習を用いて, ウェアラブルセンサーの計測結果から不整地歩行の安定性を多面的に評価できる可能性を示唆しています.また,平地歩行パラメータから不整地歩行での安定性を予測できる可能性があることは,屋外歩行獲得に向けた個別化されたリハビリテーションの開発に貢献すると考察しています.
本研究の臨床的意義および今後の展開
本研究成果は,予測困難な摂動が生じる不整地を歩く際の脳卒中者の安定性低下について,健常者との違いを明らかにしており,リハビリテーション専門家が屋外歩行での安定性を捉える際に着目すべき点を示しています.さらに,不整地を安定して歩行するための平地歩行パラメータを明らかにしたことで,屋外歩行獲得のための個別化支援に貢献します.今後は,より高精度なモデルの構築や縦断研究へと発展する必要があります.
論文情報
Yasuhiro Inui, Yusaku Takamura, Yuki Nishi, Shu Morioka
Scientific Reports. 2026
・関連する先行研究
問い合わせ先
畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
博士後期課程 乾 康浩
教授 森岡 周
Tel: 0745-54-1601
Fax: 0745-54-1600
E-mail: s.morioka@kio.ac.jp
人工膝関節全置換術後早期には疼痛強度と運動が相互に関連し合う
PRESS RELEASE 2026.1.27
急性疼痛を経験した後,疼痛,運動恐怖,運動機能は互いに影響し合い,たとえ創傷や外傷といった痛みの原因が治癒した後であっても,これらの要素がネットワークを形成することで疼痛や運動機能低下が慢性化すると考えられています.畿央大学大学院健康科学研究科 博士後期課程の古賀優之 氏(川西市立総合医療センター)と森岡周 教授らは,人工膝関節全置換術(Total Knee Arthroplasty:TKA)を受けた患者を対象に,術前・術後1週・術後2週の縦断データを用いて,疼痛,運動恐怖,運動機能の時間的関係を交差遅延効果モデル(Cross Lagged Panel Model:CLPM)により分析しました.その結果,術後1週における運動の狭小化が術後2週の安静時痛強度を予測し,同様に術後1週における安静時痛強度が術後2週の運動の不規則さを予測するという双方向の関係が明らかになりました.本研究成果はEuropean Journal of Pain誌(Temporal relationship between pain/fear and knee movement disorder after total knee arthroplasty)に掲載されています.
本研究のポイント
■TKA患者を対象に術前,術後1週,術後2週の3時点で,「痛み」や「動かすことへの恐怖心」,「膝関節の動かしにくさ」が測定されました.
■解析の結果,術後1週時点における膝の曲がる角度(屈曲角度)が小さいほど,2週時点の安静時の痛みが強くなることや,術後1週時点での安静時の痛みが強いほど,2週時点の膝の動きが不規則でぎこちない(滑らかでない)ものになることが明らかになりました.
■TKA術後1〜2週という極めて早い段階において,痛みと運動機能がそれぞれ異なる経路で互いに影響し合っていることが科学的に裏付けられました.この「悪循環」を断ち切るためには,術後1週から痛みを適切に管理しつつ,運動機能の改善を図る具体的な介入が不可欠です.
研究概要
人工膝関節置換術(Total Knee Arthroplasty:TKA)は,膝の痛みを軽減し,生活の質を向上させる有効な治療法です.しかし,手術を受けた患者の約20%では,術後も痛みが長引いたり,運動機能の回復が十分に得られなかったりするという課題が残されています.「痛み」「動くことへの恐怖心」「運動機能(膝の動き)」といった要素は互いに関連しており,疼痛が遷延化する要因となります.しかし,術後早期において,「動かないから痛くなるのか」,「痛いから動かなくなるのか」といった時間的な順序や関係性については,十分に明らかにされていませんでした.畿央大学大学院健康科学研究科 博士後期課程の古賀優之 氏(川西市立総合医療センター)と森岡周 教授らの研究グループは,TKAを受けた患者を対象に,手術前,術後1週,術後2週の時点で,痛み,動くことへの恐怖心,そして膝の運動機能を縦断的に調査しました.研究では,ベッド上で膝を曲げ伸ばしするシンプルな運動課題を実施し,膝の曲がる角度や動作の速度,動きの滑らかさといった運動の量と質の両面を詳細に分析しました.
解析の結果,術後1週時点で膝の曲がる角度が小さい(十分に動かせていない)ほど,術後2週の安静時の痛みが強くなることが予測されました.また,術後1週時点で安静時の痛みが強いほど,術後2週の膝の動きが不規則でぎこちないものになることが示されました.一方で,術後早期における「動くことへの恐怖心」は,術後2週の運動機能には直接影響していませんでした.この結果は,恐怖心が重要であるとされてきた従来の知見を踏まえつつも,術後早期においては「痛み」と「実際の動き」がより強く相互に影響し合っていることを示しています.多くの先行研究が,術後数ヶ月から数年といった長期的な経過に注目してきましたが,本研究は手術直後のわずか1週間の変化が,その後の回復過程に影響を及ぼす可能性を示しました.また,単に動きの速さや大きさだけでなく,「動きの滑らかさ(不規則性)」という目に見えにくい運動の質を数値化して評価に取り入れた点も,これまでにない新しいアプローチです.
これらの知見は,術後早期から痛みに配慮しつつ,適切に膝を動かすことが,その後の痛みの悪化を防ぎ,よりスムーズな動作の獲得につながる可能性を示唆しており,リハビリテーション戦略の改善に貢献することが期待されます.
研究内容
本研究は,術後早期における「疼痛強度」「動くことへの恐怖心」「運動機能(膝の動きの質)」といった要素が,時間の経過とともにどのように影響し合っているのかを明らかにすることを目的に行われました.評価は術前,術後1週,術後2週の3つの時点で行われました.運動機能については,ベッド上で膝を最大限速く大きく曲げ伸ばしする運動課題を動画撮影しました.この映像を解析し,膝が曲がる角度や動かす速度,動きの滑らかさ(ぎこちなさ)といった指標を数値化しました(図1).また,課題直後に疼痛強度(運動時痛,安静時痛)と運動恐怖がVisual Analog Scaleにて評価されました.

図1.運動学的データの抽出と解析手順
下肢にマーカーを貼付して撮影された動画データをトラッキングし,角度変化の時系列データから速度,加速度が算出されました.経過良好例では速度変化で滑らかな曲線を示し,加速度変化でもほぼ乱れがありませんでした.一方,経過不良例では速度変化が不規則になり,加速度変化では細かなノイズが観察されました.
統計的な解析(Cross-Lagged Panel Model:CLPM)の結果,術後1週時点で膝の屈曲角度が小さい(十分に曲げられていない)ほど,術後2週の安静時の痛みが強くなることが予測されました.また術後1週時点での安静時の痛みが強いほど,術後2週の膝の動きが不規則でぎこちないものになることが示されました.一方で,今回の研究の範囲内(術後2週間まで)では,動くことへの恐怖心がその後の運動機能の低下に直接つながるという因果関係は見つかりませんでした(図2).

図2.疼痛,恐怖,運動学的データの時間的関連性
交差遅延効果モデル(CLPM)の解析結果から,術後1週の角度が術後2週の安静時痛を予測し,術後1週の安静時痛が術後2週のエントロピー(円滑さ)を予測していることがわかりました.
これらの結果から,手術直後の極めて早い段階において,「動きの制限」と「痛み」が互いを悪化させ合う特有の経路が存在するということが明らかとなりました.この知見は,リハビリテーションにおいて術後1週という「超早期」から,痛みを適切にコントロールしつつ,膝を動かす範囲をしっかりと確保する介入を行う重要性を示唆しています.単に歩けるようになることだけでなく,早期に「質の高いスムーズな動き」を取り戻すことが,痛みの慢性化を防ぐ鍵になるかもしれません.
本研究の臨床的意義および今後の展開
本研究では,術後1週という「超早期」の運動制限がその後の痛みを予測し,逆に痛みが動きの質(不規則性)を悪化させるという具体的な相互作用の経路を特定しました.この知見は,遷延化リスクがある患者の早期特定や標的を絞った早期介入の検討につながるものであると考えられます.今後はより大規模なサンプルを長期間追跡することにより,慢性疼痛へ移行しやすい患者の特徴を明らかにし,「精密なリハビリテーション(Precision Rehabilitation)」戦略の策定に繋げていく予定です.
論文情報
Koga M, Fujii S, Nishi Y, Koyama K, Maeda A, Fujikawa K, Morioka S.
Eur J Pain. 2026 Jan;30(1):e70210.
問い合わせ先
畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
博士後期課程 古賀 優之
教授 森岡 周
Tel: 0745-54-1601
Fax: 0745-54-1600
E-mail: s.morioka@kio.ac.jp










