JST CREST領域内研究交流を行いました ― 身体と自己をつなぐ新たな視点へ ―

先日、JST CREST「生体マルチセンシングシステムの究明と活用技術の創出」領域の研究交流として、名古屋大学・大平英樹教授の研究室を訪問し、研究発表と討議を行いました。大平教授は、「多様な迷走神経情報から創発する内受容感覚の脳統合(代表・佐々木拓哉 東北大学教授)」(JST CREST「生体マルチセンシングシステムの究明と活用技術の創出」領域)を推進されており、内受容感覚(身体の内部状態を感じ取る感覚)や予測的処理を軸に、脳・身体・心の統合メカニズムを探究されています。

大平教授のresearchmap

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本学からは、森岡周教授、大住倫弘准教授、佐々木遼JSPS特別研究員、大西空CREST特任研究員、産屋敷真大(大学院修士課程)が参加しました。

当日は、身体の変化がどのように「自己の変化」へとつながるのかという視点から、以下の発表を行いました。

まず、森岡教授(大西研究員と共同)が、脳卒中患者における運動機能回復とナラティブ(語り)の変容との関連について報告しました。運動機能の改善は単なる動きの回復ではなく、「自分はどのような存在か」という自己理解の再構築と深く関わります。特に、内受容感覚の変化をどのように患者さん自身の語りの変化と結びつけるかという点について、活発な議論が交わされました。

次に、佐々木研究員は、サーマルグリル錯覚を用いた研究を紹介し、「痛みの質」がどのように生じるのか、またそれが日常生活や活動にどのような影響を及ぼすのかを報告しました。身体感覚の予測誤差という観点から、主観的な痛み体験をどのように理解できるかについて重要な示唆が得られました。

続いて、産屋敷さん(修士課程)は、脳卒中患者が自身の身体に抱く感情について発表しました。身体への否定的感情や再受容の過程が、回復プロセスとどのように関連するのかが議論され、評価方法や測定枠組みについても建設的な意見交換が行われました。

さらに、大住准教授は、慢性疼痛患者における脳内ネットワークの特徴について報告しました。異なる役割をもつネットワーク間の結合の変化が、痛みの持続や症状の多様性に関与する可能性が示されました。

今回の研究交流を通して、内受容感覚、予測的処理、ナラティブ、脳ネットワークといった多様な視点が結びつき、身体の変化を「自己の時間的再構築」として捉える新たな理論的展開(Narrabody)への可能性が広がりました。

今後もこのような領域横断的な対話を重ね、身体と自己を統合的に理解する研究をさらに発展させていきたいと考えています。

 

 

畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター