術後患者の予後予測を行うために開発された新たな解析手法

PRESS RELEASE 2020.5.9

術後患者の入院期間は短縮され,術後痛管理が不十分に陥りやすくなっており,術後痛の遷延化や慢性化が非常に大きな問題となっています.大阪河﨑リハビリテーション大学 今井亮太 助教と畿央大学 森岡 周 教授は,畿央大学 大住倫弘 准教授,県立広島大学 西上智彦 教授,名古屋学院大学 石垣智也 助教,東大阪山路病院 米元佑太らと共同で,術後痛の予後予測が可能になりうる新たな解析手法を考案しました.この研究成果は,Pain Practice誌(Development of more precise measurement to predict pain 1 month postoperatively based on use of acute postoperative pain score in patients with distal radial fracture)に掲載されています.

研究概要

術後痛の管理不足は,痛みを遷延化,慢性化させます.術後痛の評価は,一般的に,Visual Analogue Scale(VAS)やNumeral Rating Scale(NRS)が使用されています.しかしながら,これらの代表的な評価データは患者間のばらつきが非常に大きいため,特定の1時点(術後1日目や術後7日目など)の痛み強度から症例の予後予測を行うことは非常に難しい現状にあります.
そこで,大阪河﨑リハビリテーション大学 今井亮太 助教と畿央大学 森岡 周 教授らは,術後1週間の疼痛強度の経過からPain trajectory(傾き・切片=痛みの改善程度・術直後の痛み強度)を算出し,術後1ヵ月の痛み強度の予後予測が可能かどうか,構造方程式モデリング(Structural Equation Modeling:SEM)を用いてモデルの検討を行いました.さらに,Pain trajectory(傾きと切片)から類型化を行い,それぞれのグループの特徴を調査しました.その結果,特定の1時点(術後1日目や術後7日目など)やPain trajectoryの傾きのみ,切片のみでは,予後予測の精度が低かったが.“傾き”と“切片”の両方を使用することで,優れた予後予測の精度を示すことができました.また,サブグループ化を行った結果,4つのグループに分けられました.なかでも,正の傾きを示すグループと,負の傾きが小さいかつ切片が高いグループは,術後1ヶ月後の痛み予後が悪いことが明らかになりました.

本研究のポイント

■ 術後痛は,Pain trajectoryの“傾き”と“切片”の両方を使用することでを使用することで,予後予測が可能になった.
■ なかでも,正の傾きになっている患者,あるいは負の傾きが小さく切片が大きい患者は,1ヶ月後の痛み予後が悪いことが明らかになった.

研究内容

術後痛患者の痛みの程度を,術後1日,3日,5日,7日に評価し,それらの値を一次関数に近似させ(X:日数,Y:疼痛強度VAS),得られた近似式の傾き(=疼痛強度の改善程度)と切片(=術直後の疼痛強度)を算出しました.これがPain trajectoryです(図1).

図1

 

術後1ヶ月後の痛み強度を使用して,どういったモデルが最も優れた精度で予後を予測できるかSEMを使用して検討しました.そして,Pain trajectoryで算出される“傾き”と“切片”の両方を使用すると,痛みの予後を予測できることが明らかになりました.

このPain trajectoryの傾きと切片をつかってサブグループ化しました.その結果,安静時痛,運動時痛ともにグループが4つに分けられました(図2).

図2

 

これらのクラスターの特徴として,正の傾きをもつグループと,負の傾きが小さく切片が高いグループは,術後1ヶ月後の痛みがつよいことが示されました.

本研究の意義および今後の展開

近年,術後患者の入院日数は減少しているため,疼痛管理が非常に難しくなっています.そのため,早期に患者の予後予測が示すことができれば,それに応じたリハビリテーションを提供できます.本研究は,術後1週間のデータで予後を予測することが可能であることを明らかにしました.今後は,様々な疾患で特徴を明らかにすることと,術後慢性疼痛と言われる術後6ヵ月や術後1年の評価を実施し,検討を行います.さらには,痛みに関連する心理面との関連性も検討していきます.より多くの術後患者が遷延化せず,日常生活に戻れるように貢献できればと考えています.

無料公開:Pain Trajectoryの解析シート

下記URLより無料でダウンロードが可能です.

https://t.co/Crl5QYDNO0?amp=1

論文情報

Imai R, Osumi M, Ishigaki T, Nishigami T, Yonemoto Y, Morioka S.

Development of more precise measurement to predict pain 1 month postoperatively based on use of acute postoperative pain score in patients with distal radial fracture.

Pain Pract. 2020.

問い合わせ先

大阪河﨑リハビリテーション大学 

助教 今井亮太 (イマイ リョウタ)

ryo7891@gmail.com

 

畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
センター長 森岡 周(モリオカ シュウ)

Tel: 0745-54-1601
Fax: 0745-54-1600
E-mail: s.morioka@kio.ac.jp