痛みが予測通りに回復しない症例の特徴~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター

2020/11/11更新

「痛み」という症状は、ひとによって回復度合いにバラつきがあり、症状が悪化する場合もあることが報告されています。畿央大学大学院博士後期課程の重藤 隼人氏と森岡 周教授らは、病院やクリニックに通われている筋骨格系の痛みを有する患者を対象に“痛み回復予測モデル”を作成し、「中枢性感作症候群の改善度」が痛みのリハビリテーション予後を悪くすることを明らかにしました。この研究成果は、Pain Research and Management誌(Central Sensitivity Is Associated with Poor Recovery of Pain: Prediction, Cluster, and Decision Tree Analyses)に掲載されています。

 

研究概要

中枢性感作は、心理的因子とともに痛みを修飾する1つの因子であることが報告されています。しかし、心理的因子と痛みとの関係に中枢性感作が媒介して関与するかどうかは明らかにされていませんでした。本研究では、痛み回復予測モデルを作成し、痛み回復予測値と実測値に基づいた階層的クラスター分析を用いて、①痛みが悪化するグループ、②痛みが予測よりも回復しないグループ、③痛みが予測よりも回復するグループに分類しました。そして、多重比較および決定木分析を用いて、痛みの回復予測に適合する症例と適合しない症例に影響する要因を検証しました。その結果、痛みが予測通りに回復しないグループの特徴として、「中枢性感作症候群の改善度」が抽出されました。

 

本研究のポイント

■ 痛み回復予測値と実測値に基づいたクラスター分析から、①痛みが悪化するグループ、②痛みが予測よりも回復しないグループ、③痛みが予測よりも回復するグループに分類されました。

■ 痛みが予測通りに回復しないグループの特徴として、中枢性感作症候群の改善度が抽出されました。

 

研究内容

入院・外来受診患者を対象に、中枢性感作の評価としてCentral Sensitization Inventory (CSI-9)、疼痛評価としてShort-form McGill Pain Questionnaire-2 (SFMPQ-2)、認知情動因子としてPain Catastrophizing Scale-4 (PCS-4:破局的思考)、Hospital Anxiety and Depression Scale (HADS不安、抑うつ)を評価しました。1-2カ月後の再評価が可能であった患者の結果を用いて、段階的な統計解析を行いました。

 

<段階的な解析手順> 

1.痛みの改善がみられた対象者を抽出する。

2.痛みの改善がみられた対象者のスコアに基づいて、回帰式を作成する(痛み回復モデル)。

  痛みの変化量 = −0.52×痛みの初期スコア − 3.34 

3.痛み回復モデルから痛み回復の予測値と実測値を算出する。

4.痛み回復の予測値と実測値に基づいた階層的クラスター分析を実施する(図1)

5.クラスター分析で分類したサブグループについて、各変数の多重比較を行う。

6.各変数の変化量の関連性に着目して、相関分析を行う。

7.痛み回復モデルに適合するグループと適合しないグループの特徴を抽出するために決定木分析を行う。

 

 

重藤さん図1 

図1:従属変数をクラスター番号,独立変数を痛み関連因子とした決定木分析

クラスター 1:痛みが悪化するクラスター

クラスター 2:痛みが予測より回復しないクラスター

クラスター 3:痛みが予測より大きく回復するクラスター

 

決定木分析の結果、各クラスターに分類に関する予測変数として、中枢性感作症候群初期スコアと中枢性感作症候群スコア変化量が抽出されました。特に、中枢性感作症候群スコア変化量は、全てのクラスター分類に関する予測変数として抽出されました。つまり、痛みが予測通りに回復するかどうかに中枢性感作症候群の変化が関連することが示唆されました。

 

本研究の意義および今後の展開

本研究成果は、従来の研究で報告されていた初期の認知・情動因子および中枢性感作症候群の状態のみならず、中枢性感作症候群の変化が痛みの回復に影響することを示唆するものです。そのため、今後は中枢性感作症候群をはじめとした、痛み関連因子の変化量と合わせて痛みの変化も検討していくことで、サブタイプ分類を行いサブタイプに応じたハイブリッドアプローチを提唱する臨床研究を進めていく予定です。

 

論文情報

Shigetoh H, Koga M, Tanaka Y, Morioka S

Central Sensitivity Is Associated with Poor Recovery of Pain: Prediction, Cluster, and Decision Tree Analyses

Pain Research and Management 2020

 

問い合わせ先

畿央大学大学院健康科学研究科 

博士後期課程 重藤隼人 E-mail: hayato.pt1121@gmail.com

 

畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター

畿央大学大学院健康科学研究科

教授 森岡 周

Tel: 0745-54-1601

Fax: 0745-54-1600

E-mail: s.morioka@kio.ac.jp

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