畿央大学現代教育研究所 プロジェクト研究について

現代教育研究所は、平成25年度より「教師としての資質や能力を育てる」を主テーマに取り組んできましたプロジェクト研究は、第1期には4研究課題、第2期には「ポスト現代教育の在り方についての戦略的研究」を副テーマとして基礎研究2課題、実践研究2課題に取り組みました。2017年度には香芝市教育委員会との連携協定を締結し、2018年度には香芝市教育委員会との連携を基にした「校内研修プログラム開発」として(独)教職員支援機構の委嘱事業に採択、香芝市内の開発拠点校に研究リソースを集中し研修支援に始まるプログラム開発を推進することで連携事業の具体化が進みました。

これまでの研究成果は本研究所が年度末に発刊しております「成果報告書」にて公開しており、下記リンクからもダウンロードできます。今後も年度末に研究成果を報告いたしますので、ぜひお読み下さい。

令和5年度成果報告書

令和4年度成果報告書

令和3年度成果報告書

令和2年度成果報告書

令和元年度成果報告書

平成30年度成果報告書

平成29年度成果報告書

平成28年度成果報告書

平成27年度成果報告書

平成26年度成果報告書

平成25年度成果報告書

平成24年度成果報告書

 

第三期プロジェクト研究テーマ

2020年度以降もこれまでの研究成果を基に学校現場に則した実践的・臨床的な研究の継続発展を目指していきます。

第三期は「教師としての資質や能力を育てる」の主テーマは継続し、今期テーマとして「学校の教育力向上のための戦略的研究~」として取り組んでいきます。

 

研究の背景

中央教育審議会は2018年3月の第3期教育振興基本計画において、2030 年以降の教育を取り巻く社会状況の変化として、人口減少・高齢化の一層の進展とそれらに伴う児童・生徒数の減少と学校の小規模化、IoT やビッグデータ、AI 等をはじめとする急速な技術革新と労働環境の変化 、グローバル化の進展と国際的な地位の低下、子供の貧困など社会経済的な課題、地域間格差など地域の課題、等を指摘し、2030 年以降の社会を展望した教育政策の重点事項の中に以下を上げている。

 

AI の発展によって近い将来多くの職種がコンピュータに代替されるとの指摘がある時代だからこそ、ICTを主体的に使いこなす力だけでなく、他者と協働し、人間ならではの感性や創造性を発揮しつつ新しい価値を創造する力を育成することが一層重要になる。これからの教育は、こうした人間の「可能性」を最大化することを幼児期から高齢期までの生涯にわたる教育の一貫した理念として重視しなければならない。

 

これは先の見えない社会の変化を危惧するのではなく、変化のありのままに受け止めることで可視化できる教育の方向性を示す言説と解釈できる。またこれは、教育に関わる研究組織が取り組むべき課題でもあろう。

教育は短い期間で成果が見えにくい営みであるといわれる。本研究所では、大きな視点としてこれから起こる10年の社会及び教育の変化を見通しつつ、小さな視点として学校など教育現場及び教職員に皆様を連携し教育力の向上を目指して研究に取り組むことが必要と考えている。

 

プロジェクト研究の紹介

現代教育研究所指定課題研究Ⅰ 「大学・公立学校・教育行政の連携に基づく特別支援教育に関わる専門的知見の普及を標的とした研修プログラムの開発と効果検証」

現代教育研究所指定課題研究Ⅱ 「教科学習におけるプログラミングに関する事例研究」

公募研究Ⅰ 「生涯教育段階からみた幼大連携と変容する教育者の役割」

公募研究Ⅱ 「図画工作科授業における導入の在り方」

公募研究Ⅲ 「箏の指導のための教師教育プロジェクト」

公募研究Ⅳ 「ダイバーシティ教育を視野に入れた外国籍児童に関わる教育の基礎的研究」

 

各プロジェクト研究の研究組織と目的

現代教育研究所指定課題研究Ⅰ「大学・公立学校・教育行政の連携に基づく特別支援教育に関わる専門的知見の普及を標的とした研修プログラムの開発と効果検証」 

■研究代表者 現代教育学科 准教授 大久保賢一

本研究は大学と公立学校と教育行政の連携に基づき、特別支援教育に関わる専門的知見の学校現場に対する普及を標的とした研修プログラムを開発し、その効果と社会的妥当性を検証することを目的とする。具体的には、1)実態調査とニーズ調査、2)研修プログラムの開発、3)実践と効果検証という3部構成の研究計画を遂行する。学校現場に適合した研修内容と研修体制を明らかにした上で、その効果と社会的妥当性を検証し、研修内容と研修体制をさらに洗練させることを目的としている。さらに、本研究プロジェクトを通して、学校や教育行政によって自立的に校内研修を運営できる仕組みづくりを行うことも目指し、大学と自治体の連携におけるモデルケースとして発信することを目的としている。

 

現代教育研究所指定課題研究Ⅱ「教科学習におけるプログラミングに関する事例研究」

■研究代表者 現代教育学科 教授 西端律子

■研究分担者 客員研究員 鴨谷真知子、客員研究員 伊丹市立鴻池小学校 主幹教諭 塩家崇生

2020年度より初等教育におけるプログラミング教育が始まる。文部科学省では、「小学校プログラミング教育の手引き」や「小学校プログラミング教育に関する研修教材」などを公開し、実施に向けての準備を整えているが、残念ながら、実践事例はまだそれほど多くはなく、学校外の団体などの力を借りて行っている事例も少なくない。

よって、本研究課題では、小学校が本来持っている「教科指導」の力を活かしつつ、従来の教科活動に「プログラミング的思考」を位置づけるとともに、低学年~高学年のプログラミングを軸としたカリキュラムを開発することを目的とする。

 

公募研究Ⅰ「生涯教育段階からみた幼大連携と変容する教育者の役割」

■研究代表者 現代教育学科 教授 前平泰志

■研究分担者 現代教育学科 教授 粕井みづほ、現代教育学科 教授 ムース・ランディ、現代教育学科 准教授 永渕泰一郎、現代教育学科 准教授 横山朋子

本研究では、教師という概念を広く捉え、子どもに向きあう大人はすべて教育者の側面を持っていることを考慮に入れることとする。そのうえで、乳幼児期の子どもの教育において、大学は何が可能かを様々なアプローチから検証する。乳幼児教育の研究は発達論の観点からは少なくない蓄積がなされており、教員養成の観点からの研究も数多く見受けられる。しかしながら、個人が実践する生涯教育や学習の過程としてとらえる研究はそれほど多くはない。本研究では以下のように研究の照準を定め、全体として新たな教育者像を提示することを目的とする。

ⅰ)幼児教育理論と実践との接合の可能性と課題

ⅱ)子どもを取り巻く環境の変容による子どもの理解の新たな視座

ⅲ)幼児の多文化への導入のあり方

ⅳ)幼児にとっての言語と美の学習のあり方

ⅴ)幼児教育施設の大学への開放と大学の幼児教育施設への開放の具体的あり方

Ⅵ)乳幼児を持つ保護者にとっての生涯学習の可能性

 

公募研究Ⅱ「図画工作科授業における導入の在り方」

■研究代表者 現代教育学科 教授 西尾正寛

■研究分担者 客員研究員 御所市立掖上小学校 教諭 岡本卓也、客員研究員 橿原市立鴨公小学校 教諭 永井麻希子、客員研究員 桜井市立大福小学校 教諭 松井泰子、客員研究員 橿原市立鴨公小学校 教諭 金石孝弘

学習指導要領実施状況調査(平成24年.国立教育政策研究所)で、発想に当たる「想像したことから表したいことを見付けて表しているか」の通過率は79.7%で一部課題が見られるが、その児童の99%以上が、構想して表すことができているという結果が公開されている。発想の能力を働かせることができた子どもはどの後の活動を子ども自身の力で展開することができるということである。一方、近年の筆者の研究(平成28〜30年.図画工作科におけるタブレットを活用した相互交流システムの開発と学習支援.科研費 基盤(C))では、教職を学んでいる過程の学生でも、発想できている状況の児童が対象であればその構想の能力や技能を働かせることに寄与できる可能性が高いが、その逆は困難であるという結果を得ている。これらにより図画工作科の表現の活動の授業では児童が表したいことを発想する導入部に指導の工夫を重点的に行うことが必要であることは明白である。本研究は、図画工作科の授業づくりを導入部に焦点化し、その在り方のモデル化を目的とする。

 

公募研究Ⅲ「箏の指導のための教師教育プロジェクト」

■研究代表者 現代教育学科 教授 衛藤晶子
■研究分担者 現代教育学科 講師 渡邊真一郎

平成10年改訂学習指導要領から中学校では和楽器演奏が必修になった。小学校でも平成20年改訂の学習指導要領において高学年で和楽器の旋律楽器を扱うことが示され、平成29年改訂の学習指導要領では中学年でも取り上げるよう示された。しかし、和楽器、なかでも旋律楽器を扱える教師が少ないことや楽器を調達するのが難しいことから、和楽器の旋律楽器を活用した音楽科授業が学校現場で実践されることが少ない。そこで、本研究では箏の指導ができる教師を育成することを課題とし、和楽器を学校教育に広めるための教師教育プログラムを開発することを目的とする。

 

公募研究Ⅳ「ダイバーシティ教育を視野に入れた外国籍児童に関わる教育の基礎的研究」

■研究代表者 現代教育学科 教授 竹下幸男

■研究分担者 現代教育学科 講師 生野勝彦、現代教育学科 教授 ムースランディ、理学療法学科 教授 福森貢、客員研究員 京都ノートルダム大学国際言語文化学部 教授 石川裕之、客員研究員 神戸学院大学グローバル・コミュニケーション学部 准教授 深田將揮、客員研究員 生駒市立上中学校 英語科教諭 出井義雄

本研究は日本の公立学校に在籍する外国籍児童生徒が①どのような指導・支援体制において成長・発達し自己実現していくのか、②いかなる言語や文化的障壁が存在するのか、③ダイバーシティ教育の観点がどのような様相にあるのか、明らかにし、外国籍児童徒の教育の在り方を提言していくことを目的としている。第二期のプロジェクト研究の一環で研究所員が全国の集住地区のうちの何か所の小学校や教育委員会への訪問調査を行っている。調査の内容については、すでに現代教育研究所の年次報告や学会誌への論文の掲載を通じて公表してきた。これらの調査から、集住地区における外国籍児童への指導の実態が地域によって異なり、全国的な対応がなされていないこと、外国籍児童への教育は日本語指導だけでは十分といえず、文化的・慣習的な適応指導も必要であることがわかった。同時に、外国籍児童が在籍することで、同じ学校に在籍するほかの児童にとっても、有益な学びの機会となっていることもわかった。

そのような状況におかれた児童生徒のみならず、対応に苦慮する学校や自治体、ひいては日本の公教育にとっても有益な調査結果を得ることになると考えられ、また本学における教員養成課程の教育にも寄与するのではないかと考えられる。

なお、本プロジェクトでは、ダイバーシティ教育について「ダイバーシティ教育とは、①児童の多様性に配慮した教育を行うこと、②多様性を認め互いに尊重し合う態度や行動を児童に醸成すること」と定義している。