歴史・沿革

70周年記念式典

冬木智子

 新緑の古都、奈良市の名勝庭園では、燕子花の紫色の美しい花が咲きそろっております。本日は多数のご来賓の皆様方のご列席を得まして、高席からまことに恐縮ではではございますが、まず厚く感謝申し上げます。
 私自身、無から有を生じて参りましたこの長い年月、100歳近い人生を、無事に歩んで来られたことに大きな感動を覚えております。教育に尽瘁されております皆様方、行政の責任ある皆様方、社会の皆様方のご支援があってこそでございます。今日までの御礼と本日の御礼とあわせまして、今後とも変わらぬご支援を最初にお願い申し上げる次第でございます。

 冬木学園創設以来の70年の歴史のどの場面においても、私の求め続けてきた思いは一点に集約できます。「社会の役に立ち、社会から受け入れられ、この世に生を受けたことを感謝でき、社会の一員として真に幸多い人生を送ることのできる人材の育成」であります。
 70年前の日本は、物資の十分ではない時代でした。しかし、勤勉さと日本人本来の繊細な美意識を兼ね備えた生徒達は、着物の布から洋服を作る複雑な作業も会得していきました。着物布の光沢が立体裁断と一体化した様は誠に美しく、新しい文化の息吹が感じ取れました。持ち寄った布から服を手作りし纏った時の生徒達の輝いた表情は、自身の創意工夫により世の中を美しくできるのだという自信を持ちつつあることを物語っておりました。生徒達の作っているものは、衣に止まらず日本の新しい希望であると感じられました。そして「教育とは世の中をつくることである」の感を改めて深く致しました。
 桜井高等女学校で教鞭を取っていた時の教え子達3人の希望を受け入れ、自宅を開放して、座敷の畳に机を並べ洋裁の指導を始めたのが冬木学園の始まりです。あり合わせの衣服の更正から始めた洋裁教室も、十数年経過する間には華やかなファッション界の隆盛の波にのって生徒数も増加し、その後桜井キャンパスとの出会いがあり、高校・短大設置が実現しました。無から有を産む出発でしたが、私の脳裡に去来していたのは「建学の精神」の追求であり、一人の女性として、妻として母として、そして更に教育者としての生き様のすべてをかけた夢と理想を高く掲げたいと思ったのです。世界中からの様々な情報と日本古来の価値観が大きく混合し、日本人のあるべき姿が揺れ動く時期に、日本人としての美徳を守りつつ世界に通ずる感性を育成する教育方針の軸として、建学の精神「徳をのばす、知をみがく、美をつくる」と定めました。

「徳をのばす」― 全ての力を備えた人間性  

 まず、「徳をのばす」。昔から日本で受け継がれてきております言葉、「徳」という言葉を心に刻み込んでまいりましたので、建学の精神の第一は、幼い3歳の物心つき始めた幼児から高齢の方まで、年齢を問わぬ社会の方々すべてに、まず徳のある人物を養成したいと考えたわけでございます。徳とは人に情けを与えられる人生、教養、全ての力を備えた人間性でございます。私自身の学生生活を通じて、まず小学校時代から教えていただいた先生から、徳ということは人間として最も大切な条件であるということを言葉、行動すべてにおいて授けていただきました。これは全く感謝に堪えない次第でございます。

「知をみがく」― 知識を繰り返し実践する  

 次は「知をみがく」。教室においては先生、社会においては社会の皆様方、家族、人間から授けていただく知識、それを繰り返し実践していく、身につけていくこと、すなわち「みがく」ことです。いくら立派な意見であり言葉であっても、一回きりではやはり実行に移すことはできないし、力が無いと思います。徳を基本にして知を繰り返し授けていく、これが学校ではないか、社会ではないかとそういう意味で「知をみがく」という言葉に重きを置かせていただきました。

「美をつくる」―感動を与える  

 そして3番目には「美をつくる」。美しいと感動する、その感動性を社会の皆様方、家族の父親、母親、祖父母からも、そのような心の美しさというものを授けていただき、「つくる」、創造する。私はこれも世界中の人たちが心得て実施していると思うのですが、立派な絵画や素晴らしいスポーツ選手、そういう人たちについてもやはり本当に「美」というものが伴ってこそ、皆さんの心に大きな影響を与えることができます。年齢を問わず「美」ということに憧れる、この3つを建学の精神として最初に考えさせていただきましたのが、冬木学園でございます。

 建学の精神を掲げて開設以来、女子の教育に力を入れてまいりましたが、その後男女共同参画がますます重要となる社会を迎え、男女がお互いの特性を理解し合い、力を合わせてより活動出来るための教育の場として、男女共学にし、関西中央高等学校、畿央大学と校名も変更致しました。真理を求め、繰り返し学習し、習得し、世の幸せを願って行動し、人の心の憂いを感じ取れる美意識を兼ね備えてこそ、社会に役立てる人材になれることは、老若男女を問いません。お互いに認め合い、譲り合い、助け合える「徳・知・美」を会得してこそ、現在の男女共同参画社会が実行力を持ち、次の時代の確実な発展へと繋がっていきます。

 私はもう100歳近くなっております。しかし自分に対する皆様の瞳、目の輝きを大変恐縮でございますが壇上から拝見しつつ、「生けるしるしあり」といった感動を全身で受け止めている次第でございます。山辺の道から大和三山を眺めながら、夢を描いた幼い頃、その頃をまた思い描きながら、これから後の尊い人生、尊い時間というものを過ごしてまいりたいと、皆様方の温かい、熱い瞳を拝見しながら、身に染みて感じています。
 冬木学園の最初は自宅の座敷で、手作りの黒板、手作りの教卓、すべて心をこめて、生徒のために日本の教育のためにという、まことにささやかな力であったにも関わらず、おこがましくも出発したのです。今では幼稚園、高等学校、そして大学、大学院と学問研究の場を擁しながら、とにかく命の続く限り、皆様方の温かい瞳にお応えしたい気持ちでいっぱいでございます。
 建学の精神を修めて下さった卒園児・卒業生の皆様の社会でのご活躍、そして在園児・在校生・在学生の皆さんの健全な成長を嬉しく拝見しております。求め続けてきた「社会に役立ち、社会に受け入れられ、真に幸多い人生」の教えとは、「徳・知・美」であると、古今東西を問わず広げていける精神であると、確信できておりますことは、90歳を超えた今日であってこそ万感の思いでございます。そして幾多の時代にあっても、教育者の真実を求め続けてきた経験を今後もお伝えし続けることをお誓いし、ごあいさつと致します。ありがとうございました。

冬木 正彦

 冬木学園理事長の冬木正彦です。平成28年4月から畿央大学の学長も拝命しております。冬木学園70周年式典にあたり、お忙しいなか各界のご要職の方々のご出席を賜り、誠にありがとうございます。本日は学園創立以来ご尽力いただいた学園関係者の方々にもご出席いただいております。重ねて御礼を申し上げます。

 学園創立の原点は、名誉学園長の桜井高等女学校教員時代の教え子のさらに学びたいという学びのニーズから始まり、社会のニーズ、女性のニーズに応える先進的な教育プログラムを展開してきました。現在では、畿央大学、関西中央高等学校、畿央大学付属幼稚園の3校にまで発展しています。
 1966年に開学した桜井女子短期大学は、2003年に新しく真美ヶ丘の地に4年制共学の畿央大学に改組転換し、大学院研究科、専攻科の開設にまで至っています。
 1964年に開校した桜井女子高等学校は、1999年に男女共学化と共に関西中央高等学校に名称変更し、すでに50周年を迎え、高校刷新計画を踏まえ、新たな充実した取り組みを進めています。
 1979年に開設した付属幼稚園は大学の付属幼稚園という特色を生かし、魅力的・個性的な教育を行ってきました。

 創立70周年という節目を迎え、私は、これまで本学園を築きあげてこられた名誉学園長をはじめ関係の皆様方のご苦労に思いをはせ、そのご尽力に感謝しつつ、教育への情熱を受け継ぎ、さらなる冬木学園の飛躍に向けて邁進する所存です。どうぞよろしくお願い致します。

 冬木学園はこれからも生徒・学生の学びのニーズに応えながら、「徳」「知」「美」の建学の精神を体得した社会のニーズに応えられる有為な人材育成を行います。今後ともより一層のご支援ご協力をお願い申し上げます。

学校法人冬木学園70年の歩み      祝辞 大路 正浩様

 今日の大学は、地域社会が直面する課題解決への貢献、イノベーションの創出、グローバル人材の育成など、様々な役割を社会から期待されています。私立学校においては、それぞれの学校法人が、建学の精神に基づき、強みや特色を十分に生かしつつ、教育研究活動の充実を図っていくことが今後一層重要となります。
 畿央大学におかれては、卒業生の国家試験や教員採用試験では目覚ましい実績を残されており、大学院教育では、社会人に学びやすい研究環境を提供し、業界で求められる人材の輩出に寄与されてこられました。
 特に、畿央大学が平成二十七年度に文部科学省の「私立大学戦略的研究基盤形成支援事業」に採択されたプロジェクトにおいては、地元の広陵町と協働して、地域密着型研究のモデルケースとなるべく、地域住民の健康増進及び介護・認知症予防に寄与できる人材育成の取り組みを推進していると承知しております。
 社会のニーズに応える専門的能力を持つ有為な人材の育成を進めておられる冬木学園に対する社会からの期待は、今後、ますます大きくなるものと考えております。引き続き、学園全体で、様々な分野で活躍し、社会の発展に貢献できる優れた人材を育成されることを願っております。

荒井 正吾様

 冬木学園の70周年にあたり、設立以来、ここまで成長され、奈良県で大きな学園事業をしていただいていることに感謝とともにお慶びお祝いを申し上げます。
 冬木学園は経営も業績も私学の活動も大変優秀で、奈良県の教育の誇りです。智子先生が長年建学の精神に基づき努力されてきた成果が今、目に見え輝いていると感じます。
 今年3月、奈良県教育振興大綱を策定しました。重点は就学前教育、実学教育、女子教育、障害者教育、生涯学習などです。公教育のみならず私学も一致団結して、奈良県の教育を良くしていきたいと願っております。奈良県の公教育の弱点は規範意識と学習意欲、体力という、教育の根本的な部分です。奈良県の労働者の自己啓発努力は全国4位、教育投資に向けられる支出は全国トップクラスという統計もありますが、生徒の気持ちに反映していない。生涯学び続けたいという気持ちを幼い頃からしっかり持ってもらえるよう取り組んでいきたいと思います。
 現場では、私学の皆様と公教育が改善をめざし努力されており、冬木学園はその模範となる学園活動をしていただいています。学園が今後とも建学の精神をさらに発展させ、ご健闘されますことを、また関係の皆様の努力で、奈良県の教育を良くしていただきますようにお願いしまして、お祝いの言葉とさせていただきます。


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