研究活動の分野
本学は「健康」をテーマに運動・看護・栄養・環境・発達のさまざまな分野において日々研究に取り組んでいます。人間の健康は研究分野ごとの断片の集まりとして成り立っているわけではありません。各器官・各機能の複雑な協調の中で人間の健康は維持されているのです。したがって、健康に関する研究も各分野の成果を統合した視点からのアプローチが必要です。本学の規模は決して大きいとは言えませんが、健康に関しては多彩な研究陣がそろっており、社会のニーズに合ったシーズが提供できます。研究所はそのためのコーディネーターであり、同時にプロジェクトの推進役として機能します。
リハビリテーション・運動科学分野
神経系
「運動制御」「姿勢制御」「行為のための認知機能」および「学習機能」に焦点を当て、それらを司る脳・神経機能について運動および行動の観点から探究するとともに、ヒトの認知過程である「知覚」「注意」「記憶」「言語」といった高次脳機能の障害に対する神経リハビリテーションについて考究しています.また、他者の心を読みとる能力を育成する教育プログラムの開発を発達科学分野の研究者と、「美しい」や「おいしい」と感じる五感の情報処理過程について総合栄養分野や人間環境科学分野の研究者と共同研究しています。
骨・関節系
解剖学、生理学、組織学、運動学を基盤とした運動生理学を中心に、主に骨、筋、神経に対する運動の影響を基礎分野から研究しています。また、基礎研究から得られたデータを臨床研究分野に応用し、予防・治療のエビデンスを解明することも試みています。具体的には、年齢の違いによる脱神経横隔膜の変化と過負荷された横隔膜のトレーナビリティ、骨量減少モデル動物による運動介入による骨特性の変化や骨量減少を引き起こす際の骨微細構造の変化などについて研究しています。
内部障害系
呼吸循環は、臓器、筋肉、骨、皮膚など体のあらゆる部分に酸素や栄養を送り、各細胞で使われた後の二酸化炭素、老廃物を体外に排出するといった生命を営む上で重要な役割を担っています。運動をするためには、エネルギーが必要であり、それを供給する呼吸循環系の働きは重要な生体の機能です。ここでは、生体システムにおいて、どのように酸素がからだの中に取り込まれ、使われていくのかを明らかにしていくとともに、実際の呼吸トレーニングの効果的な方法を検証しています。
物理療法
物理医学的治療は種々の疾患や障害に対して使用されています。ここでは、その最新の理論、新たな治療方法とその可能性について考究しています。その中でも、リハビリテ-ション医学はもちろんのこと、痛み、形成外科学、美容外科、再生医学における治療方法についても検討しています。また、リハビリテーションにおける運動療法の組み合わせについての実際的適応技術、その評価方法、ならびに効果的な物理療法の治療機器・技術について臨床研究をしています。
看護学分野
看護教育
看護学は実践の科学であり、人間あるいは人間の生活を対象とした学問であるという認識に立ち、看護教育のあり方について探求し、より質の高い看護実践に貢献できる理論、技術の開発を目指します。看護技術のエビデンス、看護教育における実践と教育の統合、看護教育におけるHidden Curriculum(隠れたカリキュラム)、卒後教育とキャリア開発等看護教育に関する課題を研究しています。また、これらは臨床看護師や施設スタッフと連携し、共同で進めます。
臨床看護
成人期にあり慢性の経過をたどる呼吸器疾患、代謝異常、循環器疾患の患者・家族のQOLの向上を目指した看護や救急看護、手術療法を受ける患者・家族のQOLの向上を目指した看護を研究しています。また、精神疾患の予防としての精神的健康のあり方や、臨床における処遇や離院ならびに精神に障害を持ちながらも地域で自立した生活を営むために、再発予防を踏まえた看護援助について研究しています。さらに、患者に対する有効なリラクゼーション法の開発と評価のための基礎研究にも取り組んでいます。
地域看護
地域での生活において、人々の暮らしやライフスタイルと環境問題、人口問題との関係、生物的な特性とともに文化や社会の特性にも目を向け、さまざまなレベルでの社会問題と人間の生存「生き方の問題」までを関連づけ、幅広い分野を視野に入れた包括的な研究をしています。
総合栄養科学分野
健康栄養科学
栄養は、人間の健康を維持し、回復し、増進することに大きく寄与しています。本学では生活の質(QOL)の向上の一環として位置づけ、栄養と健康のそれぞれの科学的立場から研究を進めながら交流をしあい、共同研究という形で実社会を反映した研究への道を模索しています。
食料環境機能学
食べ物の機能について研究し、機能性食品の役割から特別用途食品・サプリメントなどの開発普及にも取り組んでいます。また、昨今話題の食の安全性に関しても、衛生・品質管理の技術と理論、有害物質混入や微生物汚染の分析・判定の方法論の研究を進めています。
人間環境科学分野
環境デザイン学(建築・設計)
超高齢社会の到来や環境問題への対応など、時代の要請に応じた将来の住宅やまちづくりのあるべき姿を追究し、その一環として伝統的木造住宅の空間構成の調査研究と再利用計画、景観形成誘導のための方法論の研究などに取り組んでいます。
環境計画学(住環境)
高齢者が安全で快適に暮らすための住環境計画、地域コミュニティの再生をはじめ、ユニバーサルデザインの視点から色彩など視知覚情報に基づく環境計画、昼間独居世帯に係わる生活支援、アパレル分野の心理学的アプローチなどに関して研究しています。
発達科学分野
行動発達学
人間の行動の発達と社会適応の過程について把握し、その行動発達に影響を及ぼし行動自体を制約する、個人的・社会的要因について研究しています。また、性格や行動発達の個人差、生理的心理的側面についても追究しており、リラクゼーションスキルが生理心理面に与える影響の研究などに取り組んでいます。
心理学
豊かな人間性とコミュニケーション力を育むため、本学は心理学の教育に力を入れており、心理学分野の研究者がそろっています。教育心理学、発達心理学、臨床発達心理学、家族心理学、心理療法、心理検査、臨床心理身体運動学などの分野で研究が進められています。
教育学
教育学、教育社会学、幼児教育学、健康教育学、教育行政学、社会教育学、生涯学習情報学、教育情報学など幅広い分野における研究に取り組んでいます。