SNS
資料
請求
問合せ

理学療法学科の新着情報一覧

理学療法学科の新着情報一覧

2022.05.30

慢性腰痛患者の筋活動分布には痛みの性質と疼痛部位が影響する~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター

痛みは筋活動を変化させますが、慢性腰痛患者では屈曲位から体幹を伸展させる(おじぎをした状態から体を起こす)時に、痛みにより腰の筋肉の活動が増強もしくは減弱することが報告されています。しかしながら、痛みの強さと部位が筋活動にどのように影響するかは明らかにされていませんでした。 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター客員研究員 重藤 隼人らは、慢性腰痛症例を対象に、痛みの性質に着目して痛みの強さ・部位と筋活動分布の関連性を調査し、痛み強度が増すにつれて、痛みを感じている部位周囲の筋活動を抑制する運動適応が痛みの性質に依存することを明らかにしました。 この研究成果は、Pain Research and Management誌 (The pain intensity/quality and pain site associate with muscle activity and muscle activity distribution in patients with chronic low back pain: Using a generalized linear mixed model analysis)に掲載されています。 研究概要 慢性腰痛患者の筋活動の特徴として、立位で体幹を屈曲した時に、屈曲位から体幹を伸展させる時に背筋群の筋活動が増強もしくは減弱することが報告されています。また、痛みによって筋活動分布を変化させることも報告されています。しかし、疼痛強度と部位が筋活動にどのように影響するかは明らかにされておらず、そして疼痛の性質による筋活動への影響も検証されておらず、疼痛強度・部位および疼痛の性質と筋活動分布の関連性は明らかにされていませんでした。 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター客員研究員の重藤隼人らの研究チームは、疼痛の性質・強度・部位と筋活動分布の評価を行い、一般化線形混合モデル分析を用いて、疼痛の性質に着目して疼痛強度と部位がどのように筋活動分布に影響するかといった関連性を検証しました。 その結果、神経障害性疼痛の強度が増すと体幹屈曲位から伸展する時の背筋群の筋活動は抑制されることが明らかになりました。また、持続痛・間欠痛・神経障害性疼痛・感情表現に該当する疼痛の性質に依存して疼痛強度が増すにつれて、疼痛部位周囲の筋活動を抑制する運動適応が存在することを明らかにしました。 本研究のポイント ■ 疼痛の性質に着目して、疼痛強度・部位と筋活動分布の関係を調査した。 ■ 神経障害性疼痛の強度が増すと、屈曲位から伸展する時の背筋群の筋活動が抑制されることが明らかにされた。 ■ 疼痛強度が増すにつれて、疼痛部位周囲の筋活動を抑制する運動適応が痛みの性質に依存することが明らかにされた。 研究内容 慢性腰痛患者を対象に、疼痛部位・性質の評価と筋活動の評価を行いました。痛みの性質はSFMPQ-2を用いて評価しました。筋活動は表面筋電図を用いて、立位体前屈課題時(図1)の脊柱起立筋の筋活動を測定し、主動作筋の筋活動として体幹屈曲位から伸展させる時の筋活動と筋活動分布の重心を算出しました。また、疼痛部位と筋活動分布の重心との間の距離を算出しました。   図1.立位体前屈課題 © 2022 Hayato Shigetoh   一般化線形混合モデル分析という解析方法を用いて、疼痛強度・性質、疼痛部位および筋活動の関係を検証しました。筋活動に対する疼痛強度・性質の影響を検証した結果、「神経障害性疼痛」・「軽く触れるだけで生じる痛み」の疼痛強度が増すと背筋群の筋活動が抑制される関係が認められました。疼痛部位と筋活動分布の重心との間の距離に対する疼痛強度・性質の影響を検証した結果、「間欠痛」・「ずきんずきんする痛み」・「割れるような痛み」・「拷問のように苦しい」・「軽く触れるだけで生じる痛み」の疼痛強度が増すと距離が増大する関係が認められました。筋活動分布の重心は筋活動が高い部位を示していることから、疼痛強度が増大すると疼痛部位に近い部位の筋活動が抑制される反応が、疼痛性質に依存しているということを示しています(図2)。   図2.疼痛強度・部位と筋活動の相互作用を説明したモデル © 2022 Hayato Shigetoh   特定の疼痛性質の強度が増大すると、主動作筋の筋活動が抑制された。疼痛部位と筋活動分布の関係性に着目すると、特定の疼痛性質の強度が増大することによって疼痛部位近くの主動作筋の筋活動が抑制された。 研究グループは、この結果について、疼痛による主動作筋の筋活動の抑制を示す疼痛適応モデル(pain adaptation model)のメカニズムが反映された結果であり、疼痛性質に依存した筋活動の変化は、腰痛関連組織に由来した疼痛性質が筋活動に影響した結果であると考察しています。 本研究の臨床的意義および今後の展開 本研究成果は、疼痛の性質によって疼痛強度・部位による筋活動分布の変化が異なることが示され、痛みの性質に着目して痛みと運動制御の関連性を捉える重要性が示されました。今後は慢性腰痛患者の運動制御のメカニズムについて研究される予定です。 論文情報 Shigetoh H, Nishi Y, Osumi M, Morioka S The pain intensity/quality and pain site associate with muscle activity and muscle activity distribution in patients with chronic low back pain: Using a generalized linear mixed model analysis Pain Research and Management, 2022 関連する先行研究 1. Shigetoh H, Nishi Y, Osumi M, Morioka S. Combined abnormal muscle activity and pain-related factors affect disability in patients with chronic low back pain: An association rule analysis. PLoS One. 2020 Dec 17;15(12):e0244111. 2. Shigetoh H, Nishi Y, Osumi M, Morioka S. Temporal associations between pain-related factors and abnormal muscle activities in a patient with chronic low back pain: A cross-Lag correlation analysis of a single case. J Pain Res. 2020 Dec 3;13:3247-3256. 問い合わせ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 客員研究員 重藤 隼人 センター長 森岡 周 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 Mail: s.morioka@kio.ac.jp

2022.05.16

手先の不器用な子供は物体把持における空間的安定性が低下している~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター

発達性協調運動障害(DCD)は「運動の不器用さ」を特徴とし、字を書くことやボールを使うスポーツ等、協調的な把持制御が要求される日常生活動作に障害をきたします。畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター客員研究員の西祐樹らは、手先が不器用な子どもは、物体を持ち上げ、保持する際に把持位置のずれや物体の傾き、指の滑り・転がりといった空間的安定性が低下することを明らかにしました。この研究成果はBrain Sciences誌の特集号(New Insights in Developmental Coordination Disorder (DCD))Spatial Instability during Precision Grip–Lift in Children with Poor Manual Dexterityに掲載されています。 研究概要 発達性協調運動障害(DCD)は「運動の不器用さ」を特徴とし、字を書くことやボールを使うスポーツ等、協調的な把持制御が要求される日常生活動作に障害をきたします。このような把持制御障害は思春期から成人期まで続くため、臨床的問題となっています。一般的に物体を持ち上げ保持する場合、物体の傾きを最小限にするために、物体の中心近くを把持し、物体が滑らないように十分な把持力を発揮する必要があります。また、物体の重さによって把持力を調整する必要があります。このような複雑な把持制御は内部モデルにおける感覚―運動統合が基盤となっています。DCDでは内部モデルが障害されていることが知られており、物体把持における把持力の変動が大きくなることが報告されています。しかしながら、把持制御の重要な構成要素である空間的安定性については明らかになっていませんでした。 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 客員研究員 西 祐樹ら の研究チームは、手先が器用あるいは不器用な子どもにおける物体を持ち上げ、保持する際の把持制御を調査しました。その結果、手先が不器用な子どもは、把持位置のずれや物体の傾き、指の滑り・転がりといった空間的安定性が低下していることが明らかになりました。 加えて、不器用な子どもは物体の重さの違いによって、柔軟に把持力を調整していましたが、空間的安定性は適応できないことも明らかになりました。 本研究のポイント ■ 手先が器用あるいは不器用な子どもを対象に物体把持課題における空間的安定性を評価した。 ■ 手先が不器用な子どもは把持位置のずれや物体の傾き、指の滑りといった空間的安定性が低下していた。 ■ 手先が不器用な子どもは重量の違いによっても空間的安定性は変化した。 研究内容 6-12歳の子どもたちは、M-ABC2のよって手先が器用・不器用な群に分けられ、物体(不透明の箱を取り付けた特注の6分力フォースプレート)を持ち上げ、保持する課題を行いました(図1)。箱の中に重錘を入れることができ、重量条件(計800g)および軽量条件(計300g)をそれぞれ10試行行いました。計測されたデータから、平均把持力、変動性、圧中心(COP)の軌跡(指の滑り、転がりを反映)、把持位置、物体の傾きを算出しました。   図1.本研究における計測データ (A)計測機器.(B)物体把持課題中の把持力、負荷力、物体の傾きの経時的データ。(C)物体把持課題中のCOPデータ     その結果、手先が不器用な子どもは把持力の変動性に加え、把持位置のずれや物体の傾き、指の滑り・転がりといった空間的安定性が低下しました。 また、不器用な子どもは物体の重さの違いによって、柔軟に把持力を調整していましたが、軽量条件ではCOPの軌跡が延長しました。また、平均把持力とCOPの軌跡は有意な負の相関関係を、物体の傾きと把持位置は有意な負の相関関係を示しました。内部モデルにおいて運動予測(握力など)と実際の感覚フィードバック(重さ、摩擦、トルクなどの触覚情報、物体の滑りや転がりなどの視覚情報)の不一致により誤差信号が発生し、把持制御をリアルタイムで修正しています。一方、手先が不器用な子どもは内部モデルにおけるフィードバック情報と運動指令の統合が損なわれており、触覚情報を効果的に運動に利用する能力が低下していることが知られています。したがって、本研究の結果において、手先が不器用な子どもは感覚―運動統合の欠損によるオンライン運動制御の障害によって、空間的安定性が低下している可能性があります。 本研究の臨床的意義および今後の展開 本研究は、手先の不器用さに関して、空間的不安定性の観点から明らかにした点で臨床的意義があります。今後は、触覚の感度が向上し感覚―運動統合を改善させる介入研究を行う予定です。 論文情報 Nishi Y, Nobusako S, Tsujimoto T, Sakai A, Nakai A, Morioka S Spatial Instability during Precision Grip–Lift in Children with Poor Manual Dexterity Brain Sciences 2022 関連する先行研究 1. Nobusako, S.; Sakai, A.; Tsujimoto, T.; Shuto, T.; Nishi, Y.; Asano, D.; Furukawa, E.; Zama, T.; Osumi, M.; Shimada, S.; et al. Deficits in visuo-motor temporal integration impacts manual dexterity in probable developmental coordination disorder. Front. Neurol. 2018, 9, 114. 2. Nobusako, S.; Sakai, A.; Tsujimoto, T.; Shuto, T.; Nishi, Y.; Asano, D.; Furukawa, E.; Zama, T.; Osumi, M.; Shimada, S.; et al. Manual Dexterity is a strong predictor of visuo-motor temporal integration in children. Front. Psychol. 2018, 9, 948. 3. Nobusako, S.; Osumi, M.; Matsuo, A.; Furukawa, E.; Maeda, T.; Shimada, S.; Nakai, A.; Morioka, S. Subthreshold vibrotactile noise stimulation immediately improves manual dexterity in a child with developmental coordination disorder: A single-case study. Front. Neurol. 2019, 10, 717. 4. Nobusako, S.; Osumi, M.; Matsuo, A.; Furukawa, E.; Maeda, T.; Shimada, S.; Nakai, A.; Morioka, S. Influence of Stochastic Resonance on Manual Dexterity in Children with Developmental Coordination Disorder: A Double-Blind Interventional Study. Front. Neurol. 2021, 12, 626608. 問い合わせ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 客員研究員 西 祐樹 畿央大学大学院健康科学研究科 准教授 信迫 悟志 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.nobusako@kio.ac.jp

2022.05.16

理学療法学科初の卒業生教員!瀧口先生ってどんな人?Part3~「教員」編

2022年4月に着任した瀧口述弘先生は、理学慮法学科の5期生(2011年3月卒業生)!理学療法学科では初の卒業生教員が誕生しました。瀧口先生っていったいどんな人なのか、インタビュー形式で全3回にわたってご紹介します。Part1「学生時代」編、Part2「臨床現場・大学院」編に続いて、Part3は「教員」編です! 研究テーマや専門は? 私は、電気を流したり温めたりして治療をする物理療法の研究や痛みに対しての研究を中心にしておりました。身体に痛みがありながら生活をしている方は全人口に対して2割ほどいらっしゃるというデータもあります。私はそのような方に電気療法をし、痛みに対する効果を検証していました。 また、近年では、理学療法でもロボットを用いた治療が試みられており、歩行練習用ロボットの開発研究にも関わっています。このような物理療法やロボット等の治療用機器を用いた理学療法が私の専門になります。私が最も関心があることは、最先端の技術で開発された治療機器を患者さんに還元させることです。これが私のミッションだと思っています。       病院では身体にけがなどをしてしまうことで身体が動きにくくなる運動器疾患の方に対して理学療法を実施していたので、物理療法や運動器の理学療法に関わる授業を担当する予定です。 畿央大学は、2007年に入学し、畿央大学大学院、客員研究員として15年間お世話になった大学です。畿央大学の教育を受けた理学療法士であるルーツを生かして教育に励みたいと考えています。   OBとして見た畿央や理学療法学科の印象は? 卒業してから伸びていく、もしくはリーダーとして活躍することができる理学療法士を輩出することを意識している大学だと感じました。とあるリハビリテーション専門の医師から「畿央大学出身の理学療法士はすごいねぇ」と言われました。もちろん私が畿央大学卒業生とは知らず、お世辞抜きに出た言葉です。これは、学会発表や論文発表などで成果を上げている理学療法士に畿央大学の卒業生が多いためです。学会会場では畿央大学の先輩後輩とたくさん出会うので、同窓会のようになります。私の同期、先輩、後輩でも教員になった人や、その他先駆的な取り組みをしている人がたくさんいて、いつも刺激をいただいています。 もちろん、理学療法学科を卒業し、国家試験に合格しスタートラインに立てることはいうまでもなく大切ですが、その後に違いを生む理学療法士を輩出させるのが、畿央大学だと思っています。 大切にしていることは何ですか? 努力と感謝の気持ちを忘れないようにしたいと考えています。 今の私があるのは自分なりのペースで努力をし続け、周りの方の支えがあったからです。何歳になっても成長し続け、感謝して生きることができれば、これ以上幸せなことはないと思っています。   趣味や好きなことは? 趣味は広く浅く色々とやっています。家庭菜園、山登りや釣りなどのアウトドア、ゴルフ、コーヒー、音楽はギター、ベースができます。他には「Back to the Future」のような少年の心を掻き立てる夢のある映画が好きです。すべてが友人から教えてもらい始めたものです。趣味だけを考えても、多くの人に影響を受けてきたと思います。 今一番ハマっているのは自分の家の庭でする家庭菜園です。初心者ですが、今までキュウリ、ピーマン、トマト、かぼちゃ、すいか、ズッキーニ、ゴーヤ、じゃがいも、さつまいも、ねぎ、玉ねぎ、えんどう豆、いちご、人参、かぶらなど…多くの野菜を作りました。     野菜を作っていて思ったのは、人間の育ち方と似ているいうことです。野菜それぞれ、育て方が違います。まず環境面である土作りから野菜によって違います。与える水の量や、肥料の種類、タイミングも違います。頻繁に世話をする必要がある野菜もあれば、何もする必要もないたくましく育つ野菜もあります。人も人それぞれで、適切な育て方があると思います。環境面、与えるアメとムチの量とタイミング、そもそも干渉しないなど、人それぞれ時期によって育て方が異なると思いますが、野菜作りと通ずるものはあると思います。 私はこれから教育に従事しますが、野菜作りのように人それぞれに適した教育をしたいと思います(笑)   理学療法学科 助教 瀧口 述弘   関連記事 理学療法学科初の卒業生教員!瀧口先生ってどんな人?Part1~「学生時代」編 理学療法学科初の卒業生教員!瀧口先生ってどんな人?Part2~「臨床現場・大学院」編

2022.04.28

恐怖文脈が身体所有感と疼痛閾値に及ぼす影響~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター

身体的あるいは精神的な苦痛を有する人は「自分の身体」を自分のものと感じられなくなることがあり、 これは身体所有感(sense of ownership)が低下した状態と考えられています。身体所有感の低下は、 リハビリテーション効果を阻害するため、 身体所有感に影響する要因を検証することは重要です。 畿央大学大学院 修士課程 修了生 田中 智哉 氏 (市立福知山市民病院)と 森岡 周 教授らは、ラバーハンド錯覚実験を用いて、外傷のある偽物の腕に対して身体所有感を惹起させる際に、その腕に対して恐怖を生じさせる言語情報を与え、その影響を検証しました。その結果、主観的な身体所有感を増加させ、その増加の程度が大きい人ほど、痛みを感じやすくなることを明らかにしました。この研究成果はFrontiers in Human Neuroscience誌(Verbal suggestion modulates the sense of ownership and heat pain threshold during the “injured” rubber hand illusion)に掲載されています。 研究概要 身体的および精神的な苦痛を有する人は「自分の身体」を自分のものと感じられなくなることがあり、これは身体所有感が低下した状態と考えられています。身体所有感の低下は、リハビリテーション過程において回復を阻害する因子であると考えられていることから、身体所有感に影響を与える要因を検証することは重要です。一般的に、身体所有感は視覚、触覚、固有感覚(位置情報)といった情報など、ボトムアップ情報を統合することによって生まれると考えられています。一方で近年では、文脈などのトップダウン要因も関与することが議論されています。文脈の操作として言語情報が最も簡易に用いられますが、身体所有感に与える影響は十分に検証されていませんでした。畿央大学大学院 修士課程 修了生 田中 智哉 氏(市立福知山市民病院)と 森岡 周 教授ら の研究グループは、ラバーハンド錯覚という錯覚現象を用いて、外傷のある偽物の腕に対して身体所有感を生じさせる際に、トップダウン要因の操作として、その腕に対して恐怖を生じさせる言語情報を与えました。その結果、客観的な身体所有感には影響を与えませんでしたが、主観的な身体所有感を増加させ、その増加の程度が大きい者ほど疼痛閾値は低下し、その影響度合いには個人差があることを明らかにしました。 本研究のポイント ■ラバーハンド錯覚時に恐怖を生じさせる言語情報を与えると、偽物の手に対する主観的な身体所有感が増加しました。 ■ラバーハンド錯覚時に恐怖を生じさせる言語情報を与えると、主観的な身体所有感と疼痛閾値には有意な負の相関関係を認め、言語情報の影響には個人差があることがわかりました。 研究内容 ラバーハンド錯覚:参加者からは偽物の手のみが見えている状況(図1a)で、実験者は筆を用いて参加者の本物の手と偽物の手に対して同じタイミングで触覚刺激を加えると、参加者は徐々に偽物の手を自分自身の手であると錯覚します(錯覚条件)。一方、異なるタイミングで触覚刺激を与えると、錯覚が生じにくくなります(非錯覚条件)。本研究においても、錯覚条件と非錯覚条件の2条件が、第一実験では各偽物の手に対して、第二実験では各参加者に対して行われました。第一実験:15名の健常人が参加し、ラバーハンド錯覚によって惹起された外傷のある偽物の腕に対する身体所有感と、錯覚後の疼痛閾値の程度を、外傷を有していない健常な偽物の腕のそれらの程度と比べました(図1b)。その結果、錯覚条件における主観的な身体所有感は、外傷のある偽物の腕と健常な腕は同程度惹起されることがわかり、外傷のある偽物の腕を用いるラバーハンド錯覚は実験として成り立つことをまず確認しました。 図1:ラバーハンド錯覚の実験セット(a) と使用したラバーハンド (b) 第二実験:30名の健常人が参加し、外傷のある偽物の手のみを用いたラバーハンド錯覚を行いました。その際、参加者はランダムに「恐怖文脈あり」と「恐怖文脈なし」の2グループ(それぞれ、15名ずつ)に分けられました。「恐怖文脈あり」は、ラバーハンド錯覚を行う際に、その偽物の腕に対して恐怖文脈を生じさせる言語情報を与えました。一方、「恐怖文脈なし」は、その腕に対して恐怖文脈を引き起こさない言語情報を提示しました(図2)。 図2:言語情報の要約 釘が刺さっている腕の背景について各グループ「恐怖文脈あり」と「恐怖文脈なし」で異なる説明を行った。その結果、「恐怖文脈あり」の錯覚条件では、主観的な身体所有感を増加させ、その増加の程度が大きい参加者ほど、痛みを感じやすくなることが明らかになりました(図3b)。 図3:主観的な身体所有感 (質問紙) の結果および疼痛閾値との相関関係 ラバーハンドの所有感と痛みの感じやすさについては、「恐怖文脈あり」×錯覚条件のみ有意な負の相関関係を認めた。*p<0.05 本研究の臨床的意義および今後の展開 身体所有感と痛みに影響する要因の一つとして、言語情報が関与することがわかりました。これは、医療者による対象者への病態説明などの言語情報が、身体所有感や痛みにも影響する可能性が示唆される知見と考えています。しかし、慢性的な痛みを有する者と健常者では、ラバーハンド錯覚に対する反応が異なることが報告されています。そのため、今回明らかになったことが臨床において、そのまま応用できる訳ではありませんので、今後は、健常者と筋骨格系疼痛を有する方の身体所有感の違いに関して検証していこうと考えています。 論文情報 Tomoya Tanaka, Kazuki Hayashida, Shu Morioka Verbal Suggestion Modulates the Sense of Ownership and Heat Pain Threshold during the “Injured” Rubber Hand Illusion Frontiers in Human Neuroscience, 2022 問い合わせ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 畿央大学大学院健康科学研究科 教授 森岡 周 Tel:0745-54-1601 Fax:0745-54-1600 E-mail:s.morioka@kio.ac.jp

2022.04.22

長期間の理学療法が脊髄損傷後の神経障害性疼痛に及ぼす影響~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター

ヒトには、痛みの感受性を低下させる疼痛抑制メカニズムが備わっています。有酸素運動は疼痛抑制メカニズムを賦活することが知られており、慢性疼痛の治療にも用いられています。脊髄損傷後の神経障害性疼痛に対しても、有酸素運動により痛みが即時的に軽減することが報告されていますが、単回の介入による検討に限られています。畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターの 佐藤 剛介 客員准教授ら は、長期間の理学療法(有酸素運動)が脊髄損傷後の神経障害性疼痛に及ぼす影響を頚髄不全損傷の単一症例を通して検証しました。 この研究成果は、Spinal cord series and cases誌(Long-term physical therapy for neuropathic pain after cervical spinal cord injury and resting state electroencephalography: a case report)に掲載されています。   研究概要 脊髄損傷後の神経障害性疼痛は、約半数近くで認められ様々な健康指標の低下を引き起こすことが知られています。脊髄損傷後の神経障害性疼痛に対する介入として、様々なものが提唱されており、その中の一つに有酸素運動があげられます。車椅子駆動による有酸素運動は、脊髄損傷後の神経障害性疼痛に対する即時的な鎮痛効果が得られることが明らかにされています(Sato et al. J Rehabil Med, 2017)。しかし、これまでの研究では、単回の介入による即時的な効果に限局されており、長期間の介入による鎮痛効果は検討されておらず、不明瞭なままでした。 本研究では、頚髄不全損傷者一例に対して、有酸素運動を含む長期間の理学療法が脊髄損傷後の神経障害性疼痛におよぼす影響を検証しました。加えて、本研究では、鎮痛効果の機序を明らかにするために、神経障害性疼痛のバイオマーカーである安静時脳波活動から得られるPeak alpha frequency(PAF)を指標として測定しました。   本研究のポイント ■ 長期間の理学療法により頚髄不全損傷者の上肢の神経障害性疼痛が軽減された ■ 有酸素運動として集中的歩行トレーニング(体重免荷式トレッドミル歩行トレーニング)を行い、痛み強度の軽減と運動野周辺で測定したPAFの高周波域へのシフトが確認された ■ 疼痛がある部位(上肢)に直接接触することなく、他の身体部位の運動を介して疼痛強度の軽減が得られた 研究内容 C5レベル残存の頚髄不全損傷者に対して、18週間の介入を行いました。 介入は7日/週の頻度で行い、1回の介入は40分間でした。4週~10週目の間には、有酸素運動を企図して体重免荷装置を用いた集中的歩行トレーニングを実施しました。安静時脳波活動は、1チャンネル脳波計を使用して測定しました。電極は、運動野に相当する領域に配置して閉眼状態で3分間測定し、PAFを算出しました。PAFは、α帯域のピークパワーを示す周波数で、視床-大脳皮質間の神経回路の活動を反映するとされており、高周波域へシフトしている場合に痛みの感受性が低下している状態であることを指しています。アウトカムは、脊髄損傷の評価としてInternational Standards for Neurological Classification of Spinal Cord Injury (ISNCSCI)の運動スコアと感覚スコア、主観的疼痛強度と疼痛範囲、安静時脳波活動としてPAF、動作能力の指標として10m歩行テストとWalking Index for Spinal Cord Injury II (WISCIII)を2週間ごとに測定し、PAFについては入院時を基準として変化率(Δ)を求めました。 結果は、痛みの平均強度と最大強度のNRSスコアは6週間後に有意に減少し、ΔPAFは4週以降に有意に増加しました。ΔPAFの変化については、集中的な歩行トレーニングの開始と同時期に生じていました。ΔPAFは集中的歩行トレーニング期間の終了後に低周波域へのシフトを認めましたが、入院時よりも高周波域へシフトした状態が維持されていました(図1)。 図1:各評価の経時的変化 黄色で示した範囲は、集中的歩行トレーニングの期間を表しています。集中的歩行トレーニング開始後にΔPAFの増加と痛み強度の減少が認められています。さらに、集中的歩行トレーニング期間終了時にはPAFが低周波域へシフトしているものの、入院時を比べて高周波域にシフトしている状態が維持されています。   本研究の臨床的意義および今後の展開 本研究は、長期間の理学療法(有酸素運動)を行うことで頚髄不全損傷者の上肢の神経障害性疼痛が軽減できることを初めて報告しました。これは、継続した有酸素運動によって、痛みがある身体部位に直接触れることなく、痛みを軽減できることを示唆しています。さらに、有酸素運動を行っている期間は、PAFが高周波域へシフトしており、痛みの感受性が低下している状態であることを示しています。今後は、複数症例に対して長期的な有酸素運動の効果と安静時脳波活動への影響を調べるとともに、神経障害性疼痛の性質と有酸素運動による鎮痛効果との関係を詳しく検証していく必要があります。 論文情報 Sato G, Osumi M, Mikami R, Morioka S Long-term physical therapy for neuropathic pain after cervical spinal cord injury and resting state electroencephalography: a case report Spinal cord series and cases, 2022 関連論文 Sato G, Osumi M, Morioka S. Effects of wheelchair propulsion on neuropathic pain and resting electroencephalography after spinal cord injury. J Rehabil Med. 2017 Jan 31;49(2):136-143.   問い合わせ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 畿央大学大学院健康科学研究科 客員准教授 佐藤剛介 E-mail: gpamjl@live.jp   畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 畿央大学大学院健康科学研究科 教授 森岡 周 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.morioka@kio.ac.jp

2022.04.19

学部卒で研究成果が「Brain Sciences」に掲載!理学療法学科13期生大西 空さんをインタビュー!

研究成果が国際誌「Brain Sciences誌」に掲載された理学療法学科13期生の大西空さん。実は学生時代は「不真面目だった」と語る大西さんに、理学療法士のやりがいや研究にのめり込んだきっかけなどについて語っていただきました! 今はどこで何を? 宝塚リハビリテーション病院で理学療法士をしています(4年目)。 どんな大学生でしたか? 特に、1-3回生の私はとても不真面目な生徒だったと思います。学校の定期試験は前日に1夜漬けして行くことが多く、日々の授業における復習も疎かにしていました。そのため、再試験となることが多く、実習先でも知識不足が原因で困ることが多々ありました。担任の前岡先生やゼミ担当の宮本先生には大変ご迷惑をおかけしたと思います。実習で実際の臨床現場を経験することを通して、理学療法士として働くやりがいや責任の重さを感じて以降、必死で勉強するようになったと思います。   ▼卒業式(宮本ゼミ)   ▼卒業式(13期生) 畿央大学での思い出 国家試験や定期テストの前に自習室で同じ学科の友人と夜遅くまで勉強したことや、息抜きにエコール・マミ(大学隣のショッピングセンター)でご飯を食べたことなど、楽しい時や忙しい時を同じ学科の友人と共有しながら過ごした時間は大切な思い出です。また、ソフトボール部にも所属しており、日々の練習や食事会などを通して他学科と交流できたことも貴重な時間でした。     ▼卒業式(ソフトボール部)   理学療法士として働くやりがい 患者さんの今後の人生に関わる仕事であるため、責任も伴いますがそこが大変やりがいを感じる点だと思います。病気を発症した患者さんに対して(症状が重くても軽くても)、これほどまで身近に回復や経過を見ることができる職種は少ないかと思います。特に、入院当初は自立歩行が困難であった担当患者が、屋外を笑顔で歩くことができるようになった際などには大変やりがいを感じます。   ▼fNIRSを用いて担当患者の臨床症状を評価・ディスカッションしている時 どうして研究を? 研究に興味を持ったのは、職場の尊敬する先輩方が熱心に学会発表や研究活動に取り組んでおり、患者さんに対する介入効果や入院してから退院するまでの経過をまとめることの重要性を教えていただいたことがきっかけです。現在は、自立歩行困難な脳卒中患者(特に運動麻痺重症例)に対して、どうすれば歩行能力の回復を促進することができるのか研究を進めています。   ▼宝塚リハビリテーション病院で新しい機材の使用方法をディスカッションしている様子 臨床と研究を両立する意義とは? 臨床をしながら研究をする意義としては、患者さんの機能や活動レベルの経時的変化を最も近くで評価できることだと思います。特に、担当患者における経時的変化は臨床で働いているからこそ観察する事ができる点だと思います。また、臨床現場で働くことで、従来の研究では明らかにされていない病態やアプローチに関するヒントを見つけやすいと思います。 研究がアクセプトされた感想は? 大変嬉しいです。特に、畿央大学の森岡先生をはじめ、普段よりお世話になっている宝塚リハビリテーション病院で務める先輩方のご指導を、このように形に残せたことを大変嬉しく感じています。   ▼第19回日本神経理学療法学術大会(宝塚リハビリテーション病院スタッフ) 最後にメッセージをお願いします! これから理学療法士をめざす方へ 理学療法士は本当にやりがいを感じる仕事です。患者の機能が1日前より少し良くなった、1日前より少し笑顔になった、などの日々の少しの変化を最も近くで見ることができる仕事です。私は理学療法士になり一度も後悔したことはありません。少しでも理学療法士に興味がある方々は是非頑張って下さい。 卒業研究を控える後輩の皆さんへ 卒業研究で学ぶことは今後研究をするかどうかに関わらず、臨床に出てから非常に役に立つことだと思います。特に、一つの疑問を解決するために、論文を探すことや周りの方と議論をすることは、臨床に出てからも患者さんへのアプローチを考える際の基盤になります。卒業研究を進めていくにあたり大変なこともあるかもしれませんが、必ずいい経験になると思いますので精一杯頑張って下さい。 同じく臨床研究を進める卒業生の皆さんへ 臨床研究における研究テーマは、日々の臨床を通して見つかることが多いかと思います。特に、対象患者に対するアウトカムや研究デザインを決めた上で、患者の症状における経時的変化をしっかり評価し先行研究と比較することが重要かと思います。目の前の患者を良くすることに加えて、これからの臨床の発展に向け一緒に研究を進めていく方が増えれば幸いです。     関連記事: 両側補足運動野への経頭蓋直流刺激が重症な運動麻痺を有する脳卒中患者の下肢運動機能に及ぼす影響:症例研究 | 畿央大学

2022.04.18

理学療法学科初の卒業生教員!瀧口先生ってどんな人?Part2~「臨床現場・大学院」編

2022年4月に着任した瀧口述弘先生は、理学慮法学科の5期生(2011年3月卒業生)!理学療法学科では初の卒業生教員が誕生しました。瀧口先生っていったいどんな人なのか、インタビュー形式で全3回にわたってご紹介します。Part1「学生時代」編に続いて、「臨床現場・大学院」編です! 就職活動や臨床現場での経験について 就職活動は多くの施設に見学に行き、自身の希望に最も近いところをよく探すことをおすすめします。私は医聖会というグループの八幡中央病院、学研都市病院に11年間勤務しました。私のやりたいことを支援して下さり、私を成長させてくれました。自身のやりたいことができる施設を探して下さい。施設側もそれを求めているはずです。自身のやりたいことと施設が求めているものが合致すれば、内定もいただきやすいと思います。 臨床現場では、整形外科疾患の患者様を担当させていただくことが多かったです。私は3年間臨床現場で経験を積んだ後、2016年に畿央大学大学院 健康科学研究科修士課程に入学し、庄本研究室に入りました(2019年博士後期課程修了)。   疼痛(痛み)に対する電気刺激療法の研究を臨床現場で働きながら、研究を続けてきました。 ▶瀧口先生の研究成果(リサーチマップ)     ▼瀧口先生も卒業生として出演!「今の仕事のやりがいは?」理学療法士編   学会発表について 私は大学院に入学してから、毎年3回以上は学会発表をしていました。国際学会でも2回発表し、デンマークに院生仲間と行ったのはとても良い思い出です。   デンマークでは私の研究している経皮的電気神経刺激の世界的権威の先生の一人であるリーズ大学のマーク・ジョンソン先生にお会いすることができ、先生の公式Facebookアカウントに私の研究を紹介して頂くサプライズもありました!   ▼マーク・ジョンソン先生との1枚       学会発表は施設外の多くの先生と知り合え、話し合える貴重な機会です。私も多くの出会いがあり、多くの刺激を頂きました。学会発表は理学療法の発展にはもちろんですが、自身の成長のためにも不可欠なものです。   ▼院生と学会発表でデンマークに行った際の1枚     仕事と研究の両立について 私は学部生の時にゼミ活動でお世話になった庄本学科長に、臨床での質問をした際に、「それはまだわかってないことだから、大学院に入って研究して明らかにしてみてはどうか?」という話から大学院入学を決めました。元々、臨床経験を積んだ後、大学院進学を考えていたので、すぐに入学を決めました。 私は病院で働きながら、臨床研究、基礎研究を実施しました。研究をするようになり、理学療法は発展途上の学問であるという認識を強く持つようになり、ますます理学療法を勉強することが楽しくなりました。   理学療法士をめざしている高校生、学部生の方も、自らが理学療法を創っていくものだと思って下さい。ますます勉強することが楽しくなると思います!     次回Part3では、教員としてスタートした現在についてご紹介します!     理学療法学科 助教 瀧口 述弘     【関連記事】 理学療法学科初の卒業生教員!瀧口先生ってどんな人?Part1~「学生時代」編 理学療法学科初の卒業生教員!瀧口先生ってどんな人?Part3~「教員」編

2022.04.15

理学療法学科初の卒業生教員!瀧口先生ってどんな人?Part1~「学生時代」編

2022年4月に着任した瀧口述弘先生は、理学療法学科の5期生(2011年3月卒業生)!理学療法学科では初の卒業生教員が誕生しました。瀧口先生っていったいどんな人なのか、インタビュー形式で全3回にわたってご紹介します。Part1は「学生時代」編です! 畿央大学を受験した理由、理学療法士をめざしたきっかけは? 高校生の皆さんで進路に悩んでいる方は多くいると思います。もしくは夢があり、明確に進路が決定している方もいるでしょう。私は前者で、明確に進路を決めていたわけではなく、理学療法士を初めからめざしたわけではありませんでした。 私は理系で、医療の道に進みたいという希望はありました。恥ずかしい話、当時の私の学力では医学部をめざすことは難しかったため、薬学部をめざすことになりました。もちろん、絶対に薬学部に入りたいと考えていたわけではありません。自分の当時の学力を考えて、薬学部をめざしただけでした。しかし、センター試験の結果、薬学部をめざすことは難しいと判断し、理学療法学科に急遽変更しました。私は和歌山県出身であり、実家との距離や教育の充実度を考えた結果、畿央大学を選択し、入学しました。 このように、私は明確に理学療法士をめざし、畿央大学に入学したわけではありませんでした。私のように進路に悩んでいる学生の方もいると思います。しかし、今となっては、全く後悔はしていなく、理学療法士は私にとって天職であると確信しています。 学生時代は充実していましたし、卒業後もやりがいを持って働くことができました。興味は尽きることなく、病院で働きながら大学院に進学し、理学療法士として様々の経験をした後に、畿央大学に教員として戻ることになりました。本当に幸せな日々を過ごしております。皆様にも同じような経験をしてほしいと思っています。   学生時代の授業で印象に残っていることは? 理学療法士になるためには多くのことを学びます。人間の身体や病気のことを学ぶための解剖学、生理学、運動学、病理学、内科学など、理学療法専門分野である運動器理学療法、神経系理学療法、呼吸循環理学療法、代謝系理学療法、老年系理学療法、予防系理学療法など… こう言うと大変そうで、自分には無理だと思われるかもしれませんが、そんなことはありません。 畿央大学では各領域専門の先生がおられ、テーラーメイドで親切丁寧な指導をして頂けるため、授業についていけないということはないです。それよりも、先生方が熱い授業をして頂けたことで、授業がとても面白かったです。 当初は明確な目標もなく入学しましたが、畿央大学の授業を受けたおかげで、「絶対に先生方のような理学療法士になる!」と心に決め、朝4時に起きて自主勉強をするくらい、勉学にのめり込んでいきました。   授業以外ではどんなことを? アルバイト、サークル活動、そして友人達とよく遊んでいました。アルバイトは飲食店でしておりました。そこで他大学、他学科の友人ができ、様々な話が聞けてとても楽しかったです。サークルはSAPS(理学療法学生研究会)、軽音楽部、テニス部、バドミントン部などを掛け持ちして、広く浅く活動していました(笑)畿央大学は部活動、サークルは多いので、楽しめると思います。友人達とは食事に行ったり、買い物に行ったり、旅行に行ったりと本当によく遊んだと思います。卒業旅行ではグアムに行きました。今となっては全てかけがえのない思い出です。 理学療法士は人を相手に仕事なので、コミュニケーション能力は大事になります。机に向かっての勉強のみならず、様々な活動を通して人間性を磨いて下さい。 実習の経験を振り返って 私は実習ではくやしい思いをすることが多かったです。絶対うまくやる!と思って挑んだ臨床実習でしたが、なかなかうまくできず、悩み落ち込みました。しかし、今となっては、それは当たり前だと思っています。理学療法の学問はまだまだ発展途上の学問です。私達がこれからも創り上げていかなくてはいけない学問です。これは大学院での研究活動をすることで、より強く思うようになりました。 今でも私は完璧な理学療法を実践できておらず、勉強すべきことは沢山あります。ですので、学生時代の自分が完璧な理学療法ができるはずはありません。もちろん実習は最大限準備をして挑まなくていけませんが、完璧をめざすのではなく、現場での理学療法の実際を経験し、多くのことを感じてもらえたらと思います。   卒業研究の思い出は? 私は学科長である庄本ゼミに入りました。庄本先生と西大和リハビリテーション病院の技師長である生野公貴先生に指導を仰ぎました。学部生時代で一番楽しい時間でした。   ▼庄本先生とゼミ生の集合写真     卒業研究は臨床実習終了後に特に本腰を入れて実施しましたが、朝から夕方まで友人と研究と国家試験対策をし、夕食は友人とし、時には遊んだりもしました。理学療法士が幅広い視点を持つためにも、卒業研究を実施することは不可欠だと思います。   国家試験対策は? 国家試験本番までにいくつか模試を受けます。私は徐々に点数を上げていき、国家試験本番が最も点数が高かったです。国家試験対策勉強期間は長いので、中だるみしないことが重要だと感じています。国家試験は理学療法士になるための最後の砦です。特に4回生の皆さん!最後まで気を抜かないよう心がけていってください。     次回Part2では、就職活動を含む臨床現場での経験、大学院での経験をご紹介します!     理学療法学科 助教 瀧口 述弘     【関連記事】 理学療法学科初の卒業生教員!瀧口先生ってどんな人?Part2~「臨床現場・大学院」編 理学療法学科初の卒業生教員!瀧口先生ってどんな人?Part3~「教員」編

2022.04.13

2022年度新入生研修 学科別レポートvol.3~理学療法学科

畿央大学では入学後の不安を取り除き、担任や同級生との絆を深めるため、学科ごとに新入生宿泊研修を入学式直後に行っています。コロナ禍で一昨年は中止、昨年は感染対策を講じたうえで学内での1日開催となりましたが、今年度は3年ぶりに学外・日帰りで実施しました。新入生研修の第三弾!  理学療法学科の様子をお伝えします!! 2022年4月7日(木)に大阪ガーデンパレスにて、健康科学部 理学療法学科の令和4年度新入生研修が開催されました。この研修会は、新入学生に対し入学式直後に①様々な人々とのコミュニケーションを積極的に図り、今後の大学生活に役立てること、②理学療法士と本学の建学の精神「徳」「知」「美」との関係を考察し、理解を深めること、を目的としています。また、同じ目標に向かってこれからの学生生活を共に過ごす仲間たちと仲良くなることも大きな目的です。 今回、新入生83名、4回生2名、卒業生(13期生)2名、教職員3名が参加しました。   本来であればこの新入学生研修は一泊二日での実施になりますが、新型コロナウイルス感染症の影響により、この2年間は残念ながら中止あるいは学内で短時間での実施となっていました。しかしながら今回は、宿泊はまだ困難ですが、感染予防(検温、手指消毒、フェイスシールド、各机にパーテーション、昼食は黙食)をしっかりと行い、3年ぶりに学外で開催することができました。         研修では始めに、交流を深めるため自己紹介を行いました。学生の趣味や特技、経験したことなども聞くことができ、良い雰囲気になったかと思います。             引き続いて4回生、卒業生それぞれ2名の先輩から1回生に向けて、これからの大学生活および卒業後も「建学の精神」がいかに重要かということについて講演をしていただきました。講演では、大学での学習や部活・サークル、ボランティア活動、アルバイト、そして理学療法士としての多くの経験について、具体例を提示しながら講演していただきました。1回生にとって、これからの大学生活、そして将来の職業である理学療法士のイメージがさらに明確になったのではないかと考えます。     ▼南山智弘 先生(13期生)     ▼中山明里紗 先生(13期生)         ▼大石七海 さん(4回生)     ▼谷口遼真 さん(4回生)         昼食後は、「建学の精神と理学療法士を考える−すてきな理学療法士になるための4年間−」について、先輩の講演内容も含め、グループワークを行いました。どのグループも積極的に意見交換し、協力して課題に取り組んでいたと思います。各グループの発表では、すてきな理学療法士になるためには「建学の精神」が重要であり、そのためにこれからの大学生活をどのように過ごしていくかについてよく考えた内容が反映されていました。また、1回生にとってはこのような発表の経験も「知をみがく」良い機会になったのではないかと考えます。                               ※撮影時のみマスクを外しています     今回の新入学生研修での内容を忘れず、これからの学生生活の中で「徳をのばす」、「知をみがく」、「美をつくる」について行動に移し、“すてきな理学療法士”をめざしていただきたいと思います。 最後に、4回生は総合臨床実習の直前、卒業生は忙しい臨床業務にもかかわらず、1回生のために参加していただき、この場を借りて感謝申し上げます。     理学療法学科 教授 田平一行 理学療法学科 准教授 前岡浩 キャリアセンター  飯山知里       関連記事: 2022年度新入生研修 学科別レポートvol.1~現代教育学科 2022年度新入生研修 学科別レポートvol.2~看護医療学科

2022.04.05

令和4年度入学式を行いました。

2022(令和4)年4月4日(月)、健康科学部346名、教育学部194名、健康科学研究科40名(修士課程30名、博士後期課程10名)、教育学研究科修士課程2名、助産学専攻科10名、臨床細胞学別科6名、あわせて598名の新しい畿央大生が誕生しました。 学部は午前10時、大学院・専攻科・別科は午後3時からと2部にわけて入学式を行いました。       午前の学部生入学式は、新型コロナウイルス感染拡大予防のため、冬木記念ホールで式典を開催し、その様子を中継して各学科の会場から視聴・参加して行われました。       冬木正彦学長が学科ごとに入学許可を行い、 つづく学長式辞では、”建学の精神である「徳をのばす」「知をみがく」「美をつくる」を大切にしながら充実した4年間を過ごしてほしい”と力強いメッセージがありました。     新入学生代表として現代教育学科1回生 下柳田千晴さんから入学生宣誓が、在学生代表として現代教育学科3回生 岸維織さんから歓迎のことばがあり、閉式となりました。       式典後は、学科別に入学生ガイダンスが行われました。各会場でも手指消毒、換気などの感染予防策を徹底したうえで、1回生担任紹介や学生生活に関してのオリエンテーションが行われました。         当日は桜も綺麗に咲き、晴天に恵まれたあたたかい一日となりました。オリエンテーション後は、フォトスポットや入学式の看板の前で撮影する姿や、クラブ・サークルの勧誘ブースで先輩から紹介を受けている姿が見られました。               ※写真は撮影直前のみマスクを外し、声を出さないようにして撮影しています。             午後3時からは大学院健康科学研究科、教育学研究科、助産学専攻科および臨床細胞学別科の入学式が冬木記念ホールにて行なわれました。入学許可の後、学長、研究科長・専攻科長・別科長から祝辞をいただきました。     新入学生の皆様、入学おめでとうございます!皆様のこれからの学生生活が実りのあるものになるよう教職員一同全力でサポートしていきます。  

1 23 24 25 26 27 112