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健康科学専攻(博士後期課程)の新着情報一覧

健康科学専攻(博士後期課程)の新着情報一覧

2026.06.01

自他弁別閾値付近での運動経験は運動主体感の感度を向上させる-運動主体感の可塑性-~ニューロリハビリテーション研究センター

この運動は自分自身が引き起こしたと感じる意識経験を運動主体感といい、リハビリテーションにおいて大事な感覚とされています。畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターの林田一輝 客員研究員(宝塚医療大学助教)と同センター長の森岡周 教授らの研究チームは、立教大学の温文 教授との共同研究において、自分の運動かどうかを判断できる境界付近での運動の繰り返し経験によって、運動主体感の感度を向上させることを報告しました。 この研究成果は、Acta psycologica誌(Near the self–other discrimination threshold, experience of goal-oriented movement increases the sensitivity of the sense of agency)に掲載されています。この研究は、CREST(ナラティブ・エンボディメントの機序解明とVR介入技術への応用)の一部として行われています。 研究概要 この運動は自分自身が引き起こしたものだと感じる意識経験を運動主体感といい、身体的な自己感を形成する上で重要な感覚と言われています。そのため運動主体感はリハビリテーションを進める上で大事な意識経験とされていますが、その可塑的変化の可能性についてほとんどわかっていませんでした。畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターの林田一輝 客員研究員(宝塚医療大学助教)と同センター長の森岡周 教授らの研究チームは、立教大学の温文 教授との共同研究において、自分の運動かどうかを判断できる境界付近での目標志向運動の繰り返し経験によって、運動主体感の感度を向上させることを実験的に立証しました。対照実験として、自分の運動であることを容易に判断できる条件下での繰り返し経験では、運動主体感の変化は認められませんでした。この研究成果は運動主体感への介入可能性についての発見であり、リハビリテーション領域のみならず、心理学分野における発展性にも貢献しうる可能性を秘めています。 本研究のポイント ■自分の運動かどうかを判断できる境界付近での繰り返し経験によって運動主体感の感度を向上させる可能性がある 研究内容 この運動は自分自身が引き起こしたものだと感じる意識経験を運動主体感といい、身体的自己(embodiment)を形成する上で重要な感覚と言われています。運動主体感はリハビリテーションを進める上で大事な意識経験とされていますが、その可塑的変化の可能性については不明でした。例えば、脳卒中後の感覚運動障害によって感覚運動不一致が生じた結果、運動主体感は低下しますが、その回復プロセスに応じて改善が期待されます。しかしながら、ごく短期間の可塑的変化についてもわかっていませんでした。本研究では、明確に定義された外部目標を持ち、かつ自他弁別許容範囲内の感覚運動不一致の運動経験を行うことは、運動制御への注意を向けさせ、それによって運動主体感に対する感受性を高める可能性を検証しました。 実験は、健常若年者を対象に行われ、自他弁別閾値付近の運動を経験する中程度不一致群とほとんど自己の運動と判断できる運動を経験する低不一致群に分けられました。事前段階、経験段階、事後段階の3段階で構成されました。事前および事後段階では、自己他者弁別課題を行いました(図1左)。この段階では、マウスカーソルの運動に対する視覚フィードバックが自己運動制御レベル100%(他者運動混入0%)から自己運動制御レベル0%(他者運動混入100%)をランダムに提示され、その視覚フィードバックが自己の運動に基づくかどうかを判断する不一致検出課題でした。この課題によって、運動主体感の感受性の定量化および個々の不一致検出閾値を設定することができました。経験段階では目標到達運動課題を行いました(図1右)この段階で中程度不一致群は、自己運動制御が閾値レベル、閾値より10%低いレベルおよび閾値より10%高い3つのレベルを経験しました。低不一致群は、自己運動制御が80%、90%および100%のレベルを経験しました。 図1.実験課題 実験参加者は連続的に五芒星を書くように求められました。この例でモニター上のカーソルは、実験参加者自身のマウス操作に関して「自己運動制御70%」の条件を表しています。各試行の後、「コントロールできていると感じたか」という質問に対して、動きを制御できていると感じた場合は「はい」と答えるよう指示されました。図1右.目標到達運動課題:上下左右にランダムに提示するターゲットにマウスで到達させる課題です。低不一致群は一貫して自己運動制御80-100%レベルでした。中等度不一致群では、例えば不一致検出閾値が50%の場合、自己運動制御が40%、50%、60%レベルで目標到達運動を遂行しました。 実験の結果、中等度不一致群では事前段階に比べて事後段階で運動主体感の感度が向上しました(図2).これまでは不一致の経験は運動主体感を低下させるというのが定説でしたが、本研究はこれに異議を唱える結果となっています。 図2.運動主体感の感受性の変化 自分の運動か判断できる絶妙なラインでの到達運動の繰り返し経験は、自己の運動制御にほどよい注意をもたらし、運動主体感の感受性をむしろ上げたのではないかと考えられます。これはリハビリテーションにおける運動課題の難易度を設定する上で重要なキーワードとなる可能性があります。運動課題をできるかできないかという視点のみならず、その運動が自己のもと判断できるかどうかという視点も合わせて考慮することで運動学習効果やリハビリテーション効果に寄与するかもしれません。 本研究の臨床的意義および今後の展開 本研究成果によって、運動主体感の可塑的変化の可能性について言及することができました。 今回は短時間での変化でしたが、この継続効果などを検証する必要があります。 論文情報 Kazuki Hayashida, Mizuho Mishima, Miho Ohnishi, Daito Iyanaga, Wen Wen, Shu Morioka Near the self–other discrimination threshold, experience of goal-oriented movement increases the sensitivity of the sense of agency Acta Psychol (Amst). 2026 May 21;267:107095 問い合わせ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 客員研究員 林田一輝   畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 教授 森岡 周 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.morioka@kio.ac.jp

2026.06.01

進行期パーキンソン病患者における足こぎ車椅子と手動車椅子の持久性および効率性:予備的研究~ニューロリハビリテーション研究センター

進行期パーキンソン病(Parkinson’s disease: PD)患者では、歩行能力の低下により車椅子が必要となります。手動車椅子では直進駆動や方向転換が困難となり、移動が制限される場合がありますが、足こぎ車椅子ではペダリング動作とジョイスティック操作によりそれらの制約が軽減され、効率的かつ持続的な駆動が可能となる可能性があります。しかし、その有用性はこれまで客観的に検証されていませんでした。畿央大学大学院博士後期課程の金蔵満百合氏と岡田洋平教授らは、進行期PD患者を対象に、6分間駆動テストを用いて足こぎ車椅子と手動車椅子の持久性および効率性を比較しました。その結果、足こぎ車椅子は、方向転換を含む走行路において、手動車椅子よりも長距離を効率的に移動できる可能性が初めて示されました。本研究成果はJournal of Movement Disorders誌(Endurance and Efficiency of Cycling and Manual Wheelchairs in Late-Stage Parkinson’s Disease: A Preliminary Study)に掲載されています。 研究概要 進行期パーキンソン病(Parkinson’s disease: PD)では、歩行能力の低下により車椅子での移動が必要となります。手動車椅子では直進駆動や方向転換が困難で、移動が制限される場合がありますが、足こぎ車椅子はペダリング動作とジョイスティック操作によりそれらの制約が軽減され、効率的で持続的な駆動が可能となる可能性があります。しかし、進行期PDにおいて方向転換を含む連続的な移動におけるそれらの比較検証は行われていませんでした。畿央大学大学院博士後期課程の金蔵満百合氏と岡田洋平教授らの研究チームは、Hoehn and Yahr stage 4~5の進行期PD患者9名を対象に、足こぎ車椅子と手動車椅子の持久性および効率性を比較する予備的研究を実施しました。対象者は、方向転換を含む走行路で、足こぎ車椅子と手動車椅子の両方による6分間駆動テストを実施し、総駆動距離、駆動速度、心拍数の変化量、効率性の指標であるPhysiological Cost Index(PCI)を評価しました。PCIは、心拍数の変化量を駆動速度で除して算出しました。 その結果、すべての対象者で、足こぎ車椅子は手動車椅子と比較して、6分間の総駆動距離と駆動速度が有意に高値を示しました。一方で、駆動前後の心拍数の変化量や主観的疲労感には有意差を認めず、より長距離かつ効率的な移動を可能にすることが示されました。 これらの結果から、進行期PD患者において、足こぎ車椅子は、方向転換を含む走行路で持久性と効率性の高い移動手段である可能性が初めて示されました。今後は、対象者数を増やした検証や、生活場面における実際の使用効果を明らかにする研究が期待されます。 本研究のポイント ■進行期パーキンソン病患者9名を対象に、方向転換を含む屋外走行路で、手動車椅子と足こぎ車椅子による6分間駆動テストを実施し、車椅子駆動における持久性と効率性を比較しました。持久性は総駆動距離と駆動速度で評価し、効率性は心拍数の変化量を駆動速度で除して算出されるPhysiological Cost Index(PCI)で評価しました。 ■足こぎ車椅子では、手動車椅子と比較して総駆動距離と駆動速度が大きく、方向転換を含む連続的な走行において、より長距離の移動が可能であることが示されました。Hoehn and Yahr stage 5の患者に限定した解析でも、同様に足こぎ車椅子で駆動距離と速度が大きい傾向が示されました。 ■足こぎ車椅子では、駆動効率を示すPCIが手動車椅子と比較して低く、より効率的な移動が可能であることが示されました。一方で、心拍数の変化量や主観的疲労感には有意差を認めず、足こぎ車椅子は心負荷や疲労感を増大させることなく、進行期PD患者の自律的な移動や生活範囲の拡大に貢献する可能性が示されました。) 研究内容 本研究は、進行期パーキンソン病(Parkinson’s disease: PD)患者における足こぎ車椅子および手動車椅子の持久性と効率性を比較検証することを目的とした予備的研究です。Hoehn and Yahr stage(HY) 4~5の進行期PD患者9名を対象に、足こぎ車椅子と手動車椅子の6分間駆動テストを実施しました。本研究では、屋外の平坦な走行路において、方向転換を含む条件で計測を行いました。すべての対象者は、より症状の軽い側へ方向転換する条件で走行を開始しました。持久性の指標として総駆動距離と駆動速度を評価し、効率性の指標として、心拍数の変化量を駆動速度で除して算出されるPhysiological Cost Index(PCI)を用いました。足こぎ車椅子はペダリングにより駆動し、対象者は利き手でジョイスティックを操作して方向転換しました(図1)。 図1:走行路および手動車椅子と足こぎ車椅子 その結果、足こぎ車椅子は手動車椅子と比較して、方向転換を含む走行路において、より長距離かつ効率的な移動を可能にすることが明らかになりました。一方で、心拍数の変化量や主観的疲労感には有意差を認めず、足こぎ車椅子は心拍数の上昇や疲労感を増大させることなく、より長距離の移動を可能にすることが明らかになりました。 図2:手動車椅子と足こぎ車椅子における総駆動距離および心拍数の変化量,駆動効率の比較 さらに、HY stage 5の6名のPD患者においても、足こぎ車椅子では手動車椅子と比較して駆動距離と駆動速度が大きく、PCIが低い傾向が示されました。これらの結果は、歩行能力が著しく低下した進行期PD患者においても、足こぎ車椅子がより長距離かつ効率的な移動を可能にすることを示唆しています。   以上より、進行期PD患者において、足こぎ車椅子は、手動車椅子と比較して持久性および効率性の高い移動手段である可能性が示され、今後は、対象者数を増やした検証や、生活場面における実際の使用効果を明らかにする研究が期待されます。 本研究の臨床的意義および今後の展開 本研究結果は、進行期PD患者における足こぎ車椅子および手動車椅子の持久性と効率性を明らかにし、移動手段が限られる進行期PD患者の自律的な移動や生活範囲の拡大を支援する上で重要な知見であると考えます。今後は、足こぎ車椅子の実生活場面での有用性を検証するとともに、手動車椅子における運動学的な特性についても検討し、進行期PD患者に適した車椅子移動支援のあり方を進めていく予定です。 論文情報 Mayura Konzo, Masaru Narita, Masaki Naito, Ayumi Ide, Taiyo Kai, Dai Wakabayashi, Wataru Fujita, Tomohiro Shibata, Yohei Okada Endurance and Efficiency of Cycling and Manual Wheelchairs in Late-Stage Parkinson’s Disease: A Preliminary Study J Mov Disord. 2026 Apr;19(2):203-207. 問い合わせ先 畿央大学大学院健康科学研究科 博士後期課程 金蔵満百合   畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 教授 岡田 洋平 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: y.okada@kio.ac.jp

2026.05.27

発達性協調運動症を有する児の運動イメージ能力の低下を2種類の課題で確認~ニューロリハビリテーション研究センター

運動イメージ(motor imagery: MI)とは、実際の運動を伴わず、運動を脳内でシミュレーションする認知過程のことをいいます。MIは、運動の計画、調整、実行のイメージも含み、これらの点で実際の運動と機能的に同等であると考えられています。先行研究において、2種類のMI課題(手の左右識別課題と両手結合課題)を用いた研究では、年齢が増加するほどMI能力が向上することが分かっていますが、これらの課題を用いた発達性協調運動症(Developmental Coordination Disorder: DCD)を有する子どものMI能力については、十分に検討されていませんでした。畿央大学大学院博士後期課程の橋添健也氏、信迫悟志教授らの研究チームは、2種類のMI課題を用いて、DCDを有する児のMI能力を詳細に検討しました。この研究成果はExperimental Brain Research誌 (Impaired motor imagery in children with developmental coordination disorder: task-specific deficits and links to ADHD and ASD traits)に掲載されています。 本研究のポイント ■DCD児では、両方のMI課題においてMI能力の低下がみられた。 ■HLR課題の正答率は、DCDQおよびADHDの不注意特性と関連していた。 ■BC課題のICEは、ASD特性と関連していた。 ■DCD児では、MIを想起できるものの、その質は低下していることが示された。 研究概要 本研究では、6~11歳のDCD児と定型発達児(Typical Developing: TD)を対象に、子どもたちがどれだけ正確に手のMIを想起できるかを評価するため、2種類のMI課題を実施しました。1つ目は、最も代表的なMI課題である手の左右識別(hand laterality recognition: HLR)課題(図1)で、モニター上に提示されるさまざまな角度・向きの手の画像を見て、それが左手か右手かをMIを用いて判断するものです。この課題では、正反応時間(RT)や正答率、RTを正答率で除したMI効率に加えて、生体力学的制約(身体の動きにくさ)効果や手の姿勢の効果の有無を指標とし、子どもたちのMI使用の程度を測定しました。2つ目は、両手結合(bimanual coupling: BC)課題(図2)で、次の3条件が含まれます。 ・片手条件:利き手でまっすぐな線を繰り返し描く。 ・両手条件:利き手でまっすぐな線を描きながら、他方の手で同時に円を描く。 ・MI条件:利き手でまっすぐな線を描きながら、非利き手で円を描いているところを頭の中でイメージする(実際には非利き手を動かさない)。 BC課題では、利き手で描いた反復直線を計測し、各条件で描かれた線の歪みの程度を楕円化指数(ovalization index: OI)として算出しました。特に、MI条件のOIから片手条件のOIを減算した値(イメージ干渉効果:Imagery Coupling Effect: ICE)は、MIが適切に想起できていることの定量指標となります。さらに、4つの質問紙(Developmental Coordination Disorder Questionnaire日本語版: DCDQJ; Social Communication Questionnaire: SCQ; Attention Deficit/Hyperactivity Disorder Rating Scale-IV: ADHD-RS-IV; Depression Self-Rating Scale for Children: DSRS-C)を用いて、DCD児のDCD、注意欠如多動症(ADHD)、自閉スペクトラム症(ASD)といった神経発達症の特性および抑うつ特性とMIとの関連性も検討しました。     研究内容 6~11歳の子ども(DCD群15名、TD群15名)を対象に、HLR課題とBC課題を実施しました。得られたデータは、DCD群とTD群の群間比較、それぞれの群内での相関分析、HLR課題におけるRT、正答率、MI効率の比較、およびBC課題における片手条件、両手条件、MI条件の群内比較を通じて、DCD児のMI能力を検討するために用いられました。   HLR課題 群内比較では、TD群においてRT、正答率、MI効率のすべてで生体力学的制約効果を認めましたが、DCD群ではRTとMI効率においてのみ認めました(図3)。また、手の姿勢の効果はTD群にのみ認めました(図4)。     図3.生体力学的制約効果   図4.手の姿勢の効果   群間比較では、正答率とMI効率において、DCD群がTD群よりも有意にパフォーマンスが低いことが示されました(図5)。さらに、DCD群において、正答率とDCD特性およびADHDの不注意特性との間に有意な相関関係を認めました。   図5.HLR課題の群間比較結果   BC課題 ICE(BC課題におけるMI能力の指標)についても、DCD群がTD群よりも有意にパフォーマンスが低いことが示されました(図6)。加えて、DCD群において、ICEとASD特性との間に有意な相関関係を認めました。 図6.BC課題の群間比較結果   これらの結果から、DCD児はMIを想起できているものの、その能力は低いことが示されました。また、HLR課題では、視覚刺激がDCD児のMI想起の手がかりとして機能した可能性が示唆されました。それに対し、BC課題では、視覚刺激を用いずにMIを想起することに加え、利き手で反復直線を描きながら、非利き手で円運動を行うイメージをするといった二重注意課題であるため、BC課題の難易度の高さがパフォーマンスの低下に影響した可能性も考えられました。 本研究の臨床的意義および今後の展開 DCD児のMI能力を測定する際には、DCD特性およびADHDの不注意特性が強い子どもにはHLR課題、ASD特性が強い子どもにはBC課題を用いることで、より感度高く測定できる可能性が示唆されました。 MI能力は、前述の通り、実際の運動と認知プロセスのうえで同等の機能を有すると考えられているため、協調運動に困難さを呈するDCD児への評価において、HLR課題やBC課題が有用である可能性があります。また、リハビリテーションにおける介入効果の評価や、運動学習支援への応用も期待されます。 論文情報 Hashizoe K, Nakai A, Nobusako S. Impaired motor imagery in children with developmental coordination disorder: task-specific deficits and links to ADHD and ASD traits. Exp Brain Res. 2026 Mar 17;244(4):73. doi: 10.1007/s00221-026-07265-2.   ・関連する先行研究 Nobusako S, Tsujimoto T, Sakai A, Yokomoto T, Nagakura Y, Sakagami N, Fukunishi T, Takata E, Mouri H, Osumi M, Nakai A, Morioka S. The use of motor imagery in 6-7-year-old children is not robust: Evidence from two motor imagery tasks. Hum Mov Sci. 2025 Jun;101:103362. doi: 10.1016/j.humov.2025.103362. 問い合わせ先 畿央大学大学院健康科学研究科 博士後期課程 橋添 健也   畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 畿央大学健康イノベーション教育研究センター 教授 信迫 悟志 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.nobusako@kio.ac.jp

2026.05.27

転倒歴のある高齢者を姿勢のゆらぎから捉える-重心動揺の時間的構造に着目した探索的研究~ニューロリハビリテーション研究センター

高齢者の転倒は、けがや活動量の低下、生活の自立度の低下につながる重要な課題です。これまで、重心動揺計を用いた評価では、動揺の大きさや速度などの量的指標が主に用いられてきました。しかし、姿勢制御の変化は、「揺れの大きさ」のみでは十分に捉えられない可能性があります。畿央大学大学院博士後期課程の若林汰氏と岡田洋平教授らは、公開データを用いて高齢者の重心動揺データを解析し、従来の線形指標に加えて、ゆらぎの複雑性や規則性を示す非線形指標を算出しました。さらに、これらの指標と転倒歴との関連を検討しました。この研究成果はSensors誌 (Non-linear Center-of-Pressure Features Associated with Fall History in Older Adults: An Exploratory Analysis)に掲載されています。 本研究のポイント ■高齢者の重心動揺データを用いて、転倒歴と姿勢動揺指標との関連を探索的に検討した。 ■従来の動揺速度や動揺面積に加えて、マルチスケールエントロピーや再帰定量化分析など、姿勢動揺の時間的構造を示す非線形指標を解析した。 ■単一の指標では明確な群間差は認められなかったが、探索的な多変量解析では、非線形指標が転倒歴に関連する情報を補足する可能性が示唆された。 研究概要 高齢者の転倒は、骨折や活動量の低下、生活の質の低下につながる重要な健康課題です。転倒リスクを評価する方法の一つとして、立位時の重心動揺を測定する方法があります。従来は、重心の移動距離、動揺速度、動揺面積など、主に「どれだけ大きく揺れているか」を示す量的指標が用いられてきました。しかし、姿勢制御は視覚、前庭感覚、体性感覚、筋骨格系など複数の要素が相互に関わる動的な制御過程であるため、同じような揺れの大きさであっても、その背景にある制御戦略は異なる可能性があります。 そこで本研究では、公開されている高齢者の重心動揺データを用いて、転倒歴のある高齢者と転倒歴のない高齢者を比較しました。解析では、従来の線形指標に加えて、マルチスケールエントロピー、再帰定量化分析、フラクタル次元、Stabilogram Diffusion Analysis,Sway Density Curveなど、姿勢動揺の時間的構造や複雑性を捉える非線形指標を算出しました。また、年齢や身体特性、疾患、服薬状況などの背景因子の影響をできるだけ調整するため、傾向スコアマッチングを用いた解析も行いました。その結果、マッチング後の単一指標の比較では、転倒歴の有無による有意な差は認められませんでした。一方で、SHAPを用いた探索的な多変量解析では、姿勢動揺の時間的構造や複数の時間スケールに関わる非線形指標がモデル出力に比較的大きく関与する傾向が示されました。これは、転倒歴に関連する情報が、単一の動揺量指標として明確に現れるのではなく、複数の指標を組み合わせた姿勢制御の「質的な特徴」として反映される可能性を示すものです。 研究内容 本研究では、高齢者の転倒歴と立位姿勢動揺との関連を検討することを目的に、公開されている重心動揺データベースを用いました。対象は60歳以上の高齢者で、過去12か月間の転倒歴に基づき、転倒歴あり群と転倒歴なし群に分類しました。解析対象は、硬い床面上での開眼条件および閉眼条件における60秒間の静止立位データとしました。 まず、重心動揺の大きさやばらつきを評価するため、平均動揺速度、95%信頼楕円面積、前後方向・左右方向の速度、速度の標準偏差などの線形指標を算出しました。次に、姿勢動揺の時間的構造を評価するため、マルチスケールエントロピー、再帰定量化分析、フラクタル次元、Stabilogram Diffusion Analysis、Sway Density Curveなどの非線形指標を算出しました。これにより、単なる動揺量だけでなく、動揺がどのような時間的パターンで変化しているのかを評価しました。 背景因子の影響を調整するため、年齢、性別、BMI、ADL、疾患の有無、服薬数、障害の有無、装具使用の有無を用いて傾向スコアマッチングを行いました。その結果、マッチング後の単一指標の比較では、開眼・閉眼条件ともに、転倒歴の有無による有意な差は認められませんでした。一方で、SHAPを用いて各指標がモデル出力にどの程度寄与しているかを検討した結果、動揺速度などの従来指標に加えて、マルチスケールエントロピーや再帰定量化分析など、姿勢動揺の時間的構造を反映する非線形指標が比較的高く寄与する傾向が示されました(図1)。研究グループは、転倒リスクに関わる姿勢制御の特徴は、単一の指標では捉えにくく、動揺量と時間的構造を組み合わせて評価する必要があると考察しています。   図1.SHAP解析による姿勢動揺指標の寄与と安定性 本研究の臨床的意義および今後の展開 本研究の臨床的意義は、高齢者の転倒歴に関連する姿勢制御の特徴を捉えるうえで、従来の動揺速度や動揺面積などの量的指標だけでなく、姿勢動揺の複雑性や規則性といった「ゆらぎの質」に着目する重要性を示した点にあります。一方、本研究は公開データを用いた探索的解析であり、対象者数や転倒歴の情報には限界があります。そのため、本結果は臨床で直ちに使用できる判定指標を示すものではなく、今後の大規模研究に向けた仮説生成的知見として位置づけられます。 論文情報 Wakabayashi D, Okada Y. Non-Linear Center-of-Pressure Features Associated with Fall History in Older Adults: An Exploratory Analysis. Sensors (Basel). 2026 Apr 8;26(8):2298. 問い合わせ先 畿央大学大学院健康科学研究科 博士後期課程 若林 汰 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 教授 岡田 洋平 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: y.okada@kio.ac.jp ページト

2026.05.22

痛みの性質からみた脳卒中後疼痛のメカニズム~ニューロリハビリテーション研究センター

脳卒中を発症した患者の約40%以上は、運動麻痺だけでなく「痛み」に苦しむことがあります。これは「脳卒中後疼痛」と呼ばれる症状であり、日常生活やリハビリテーションの進行に大きな不利益をもたらします。畿央大学大学院 健康科学研究科 博士後期課程 浦上慎司氏と大住倫弘教授ら は、患者が日常的に表現する痛みの性質(「しびれるような」「うずくような」など)の背景にある脳内の損傷部位や神経ネットワークの断絶パターンが異なることを特定し、それによってリハビリテーションによる回復の予後を推定できることを明らかにしました。この研究成果はEuropean Journal of Pain誌(Lesion and Disconnection Profiles of Pain Quality Subtypes After Stroke: Implications for Prognosis and Rehabilitation)に掲載されています。 本研究のポイント 痛みの性質に基づいたクラスター解析と脳画像解析を実施した 脳卒中後疼痛患者を痛みの性質(しびれ、冷刺激誘発痛、深部痛、圧痛)に基づき4つのグループに分類し、それぞれのグループの責任病巣と神経ネットワークの断絶(Disconnection)を解析しました。その結果、「しびれ・冷刺激痛」タイプは感覚系である上視床放線の断絶と関連し、「圧痛」タイプは運動系である皮質脊髄路の断絶と関連していることが特定されました。  損傷している神経ネットワークによってリハビリ予後が異なることを明らかにした 12週間にわたるリハビリテーション経過を追跡した結果、皮質脊髄路(運動系)の障害に関連する「圧痛」などのグループは改善しやすい一方、上視床放線(感覚系)の断絶を背景に持つ「しびれ」が強いグループは、従来の運動療法では痛みが軽減しにくい難治性の予後を辿ることが判明しました。 研究概要 脳卒中後疼痛は、脳卒中を発症した患者の約40%以上が経験するとされる痛みであり、その症状は、服が触れるだけで痛む感覚過敏から、うずくような痛み、しびれまで多岐にわたります。脳卒中後疼痛は患者の日常生活やリハビリテーション過程に大きな影響を及ぼしますが、その病態メカニズムは複雑であり、どのような患者で痛みが改善しやすいのかという「リハビリ予後」を正確に予測することは困難とされてきました。これまでの研究では,痛みの性質が病態を反映している可能性が示唆されていましたが、それが脳内のどの部位の損傷やネットワークの断絶と関連しているのか、具体的な根拠は十分に示されていませんでした。 そこで、畿央大学健康科学研究科博士後期課程の浦上慎司氏と大住倫弘教授らは、脳卒中後疼痛を有する患者を対象に、痛みの性質に基づく分類と脳画像解析、そしてリハビリテーション経過の縦断的調査を行いました。その結果、患者は「冷刺激誘発痛・しびれ(CL1)」,「深部痛(CL2)」,「しびれ(CL3)」,「圧痛(CL4)」という4つの特徴的なクラスターに分類されることが明らかになりました。さらに、脳画像解析(Lesion/Disconnection Mapping)を用いた検証により、しびれや冷刺激痛を主とするグループ(CL1・CL3)は、視床と皮質を結ぶ「上視床放線」という感覚ネットワークの断絶と強く関連している一方、圧痛などを主とするグループ(CL2・CL4)は、運動機能を司る「皮質脊髄路」の断絶と関連していることが特定されました。 研究内容 脳卒中後疼痛には、冷たさに反応する痛み、しびれ、圧痛など、多様な痛みの性質が含まれます。本研究では、これらの痛みの性質が脳内のどのような損傷部位やネットワーク断絶に関連しているのか、そしてリハビリテーションによる痛みの予後にどう影響するのかを検討するため、脳卒中後疼痛患者114名を対象に、クラスター解析と脳画像解析(Lesion/Disconnection Mapping)を用いた検証を行いました。 まず、痛みの性質に基づいて患者を分類した結果、①冷刺激誘発痛・しびれ(CL1)、②深部痛(CL2)、③しびれ(CL3)、④圧痛(CL4)の4つのクラスターが特定されました。 次に、各クラスターの責任病巣と白質線維の断絶を検討しました。その結果,感覚過敏やしびれを主徴とするCL1およびCL3は、視床、被殻、後部島皮質といった感覚処理領域の損傷、および上視床放線の断絶と強い関連を示しました(図1)。一方で、深部痛、圧痛を主徴とするCL2およびCL4は、前頭葉の運動関連領域の損傷、および皮質脊髄路の断絶と関連していることが明らかになりました(図1)。 図1:痛みの性質からみた脳卒中後疼痛のサブタイプ分類ごとの脳画像解析 脳卒中後疼痛患者を痛みの性質(冷刺激誘発痛,しびれ,深部痛,圧痛)に基づき4つのグループに分類し、脳損傷部位を解析しました。その結果、「冷刺激誘発痛・しびれ」タイプは感覚系である上視床放線の断絶と関連し、「圧痛」タイプは運動系である皮質脊髄路の断絶と関連していることが特定されました。   さらに、12週間にわたるリハビリテーション経過を追跡したところ、運動ネットワークの障害に関連するグループ(CL2・CL4)では痛みの軽減が認められたのに対し、視床ネットワークの断絶を背景に持つ「しびれ」が強いグループ(CL3)では、統計的に有意な痛みの改善が見られず、難治性である傾向が示されました。研究グループは、この結果について、患者が訴える「痛みの性質」が単なる自覚症状にとどまらず、脳内の特定の感覚・運動ネットワークの損傷状態を反映していると考察しています。特に、上視床放線の断絶を伴うしびれタイプは、従来の運動療法では効果が得られにくい予後不良の指標となる可能性があり、早期から非侵襲的脳刺激法や薬物療法を組み合わせた、病態メカニズムに基づく個別化リハビリテーション戦略の必要性を提唱しています。 本研究の臨床的意義および今後の展開 本研究成果は、脳卒中後の痛みという目に見えない主観的な症状に対し、患者が発する言葉を詳細に評価することの重要性を示しただけでなく、その背後にある脳ネットワークの損傷状態やリハビリテーション予後までもが予測可能であることを明らかにしました。今後は、痛みの表現型に応じた個別化リハビリテーションの有効性について検証していきます。 論文情報 Uragami S, Igawa Y, Takamura Y, Iki S, Morioka S, Osumi M. Lesion and Disconnection Profiles of Pain Quality Subtypes After Stroke: Implications for Prognosis and Rehabilitation. Eur J Pain. 2026 May;30(5):e70276. 問い合わせ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 教授 大住倫弘 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: m.ohsumi@kio.ac.jp

2026.05.08

活躍する大学院修了生vol.10~松田 総一郎さん(国立長寿医療研究センター 研究所勤務/健康科学研究科博士後期課程修了)

働きながら学べる畿央大学大学院を経て、現場で活躍する修了生をご紹介!大学院への進学を考えている方、あるいは研究に興味をお持ちの方に向けて、これまでのキャリアや大学院での経験、研究の魅力などを振り返っていただきました!   松田 総一郎さん(健康科学研究科 博士後期課程 2024年3月修了)   現在のお仕事・研究を教えてください! 国立長寿医療研究センター 研究所 老年学・社会科学研究センター 予防老年学研究部の特任研究員として、臨床研究に従事しています。 これまでのキャリアを教えてください! 履正社医療スポーツ専門学校を卒業後、摂南総合病院に勤務しながら修士課程へ進学し、博士課程3年目に現職へ就きました。現在は、地域在住高齢者を対象としたコホート研究をはじめ、さまざまな研究プロジェクトに携わっています。 これまで取り組んできた研究、また今関心のある研究テーマ・キーワードは? 主に高齢者の慢性疼痛に関する研究を進めてきました。高齢者にとって痛みは身近な症状の一つですが、痛みのメカニズムや、痛みが健康状態の悪化に及ぼす影響については、まだ不明な点が多く残されています。そのため最近は、痛みが健康状態の悪化に及ぼす影響を明らかにするとともに、痛みを予防する方法や、たとえ痛みがあっても健康状態が悪化しにくくなる要因について研究しています。   研究キーワードは、「老年学」、「神経科学」、「認知科学」、「慢性疼痛」です。     大学院に進学したきっかけや目的は? 摂南総合病院で理学療法士として勤務していた際に、指導教員の大住先生と出会いました。当時、痛みに悩む患者様や、脳卒中後に原因不明の痛みを抱える方を担当する中で、「痛みに困る人を少しでも減らしたい」「自分の知識と経験を生かしたい」という思いが強くなりました。そこで、痛みの研究に取り組まれていた大住先生のもとで学びたいと考え、大学院進学を決めました。 大学院での時間を一言でいうと? 今の自分を形づくる土台を築いた時間だったと思います。大学院での学びは研究だけにとどまらず、仕事を進める上で必要となる、さまざまな力を養う機会にもなりました。   また、大学院では学術的に物事を捉え、問いを立て、根拠をもって考える姿勢を身につける時間になります。こうした学びは決して簡単なものではありませんが、その分、自分の理解が深まっていくことに大きな充実感がありました。新しい知見に触れたり、自分なりに考えたことが少しずつ形になったりする経験は、大学院ならではの魅力だったと感じています。   特に畿央大学大学院は、指導教員との距離が近く、相談や指導を受けやすい環境が整っています。また、意欲の高い方が多く、互いに刺激を受けながら研究に取り組める点も大きな魅力だと感じています。   今の仕事や研究に、大学院での学びはどう活きていますか? 現在の職場では、研究だけでなく企業との連携も多い立場で仕事をしています。   研究を進めるうえでは、最終的な成果報告を見据え、綿密に計画を立てて着実に進めていく必要があります。規模の大きいプロジェクトは個人の力だけでは進めることが難しいため、チームで協力して進めます。他の研究者や企業の方々と議論を重ねながらプロジェクトを円滑に進めるためには、さまざまな力が求められます。   さらに、物事を感覚的に捉えるのではなく、根拠に基づいて整理し、課題を明確にしていく姿勢は、大学院で学術を修めたからこそ身についたものだと感じています。   こうした研究を遂行するための基礎となる力を大学院で身につけることができたのは、大きな財産だと日々感じています。これは研究者に限らず、どのような仕事をするうえでも欠かせない力だと思います。 これから大学院進学を考えている方へのメッセージを! やりたいことを見つけ、それを形にしていくには、大きな努力や苦労も伴います。しかし、畿央大学大学院には、それを乗り越えるための環境と、支えてくださる先生方がそろっています。少しでも皆さんの進路選択の参考になれば幸いです。        

2026.05.08

活躍する大学院修了生vol.9~藤井 廉さん(九州大学大学院 医学研究院勤務/健康科学研究科博士後期課程修了)

働きながら学べる畿央大学大学院を経て、現場で活躍する修了生をご紹介!大学院への進学を考えている方、あるいは研究に興味をお持ちの方に向けて、これまでのキャリアや大学院での経験、研究の魅力などを振り返っていただきました!   藤井 廉さん(健康科学研究科 博士後期課程 2022年9月修了) 現在のお仕事・研究を教えてください! 九州大学大学院 医学研究院 医療経営・管理学講座 の特別研究員、医療法人田中会 武蔵ヶ丘病院 武蔵ヶ丘臨床研究センター の主席研究員、また畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターの客員研究員として、臨床研究に従事しています。 これまでのキャリアを教えてください! 熊本県の専門学校である九州中央リハビリテーション学院を卒業後、急性期病院や回復期リハビリテーション病院で臨床経験を積みました。その後、臨床4年目に畿央大学大学院健康科学研究科の修士課程へ進学し、修了後はそのまま博士後期課程へ進みました。   博士号取得後は、「臨床と研究をつなぐ基盤をつくりたい!」という思いから、当時の勤務先であった武蔵ヶ丘病院において武蔵ヶ丘臨床研究センター(文部科学省科学研究費助成事業指定研究機関)を立ち上げ、センターの運営・管理に携わってきました。   さらにその後、九州大学の公衆衛生専門職大学院に進学し、公衆衛生学やデータベース疫学を学びました。   現在は、所属を九州大学大学院 医学研究院 医療経営・管理学講座に移し、畿央大学で培った【人の行動を科学的に捉える視点】と、九州大学で学んだ【疫学的視点】を統合し、生体情報と医療ビッグデータを組み合わせた研究に取り組んでいます。 これまで取り組んできた研究、また今関心のある研究テーマ・キーワードは? 畿央大学では森岡 周先生のご指導のもと、慢性疼痛患者を対象にした運動学的研究に取り組んできました。三次元動作解析装置という特殊なカメラと解析ソフトを用いて、人が運動している際の生体情報をマーカー座標から取得し、「痛みを有すると身体の動かし方がどのように変化するのか?」を明らかにしてきました。   現在は、こうした生体情報の活用を臨床レベルにとどめず、疫学レベルへ発展させた研究に取り組んでいます。   具体的には、行政と連携しながら住民単位で生体情報(デジタルデバイスを活用したライフログデータなど)を収集し、それらをレセプトデータなどの医療ビックデータと統合することで、健康状態の把握や疾病予防、医療・介護分野への応用可能性を検証しています。最終的には、これらの知見をリハビリテーション医療の発展に役立てたいと考えています。   「個人の身体機能を深く捉える視点」×「集団の健康を広く捉える視点」の両方を大切にしながら、リハビリテーション医療への応用を見据えた研究を進めています。   大学院に進学したきっかけや目的は? 新人理学療法士の頃、指導教員である森岡 周先生の講演を聞き、ニューロリハビリテーションの理論やその背景にある根拠に強く惹かれました。その後、臨床で患者さんと向き合う中で、痛みを抱える患者の病態を理解するには神経科学的な視点が欠かせないのではないかと感じるようになりました。こうした臨床的疑問を明確にし、学術的に探求したいと考え、大学院への進学を決めました。     大学院での時間を一言でいうと? 一言でいうと、「かけがえのない学びの時間」だったと思います。   憧れていた森岡 周先生から直接ご指導をいただけたこと自体が本当に幸せな時間であり、今でも私にとって大切な宝物です。   森岡研究室では研究テーマが多岐にわたり、私は「痛み」をテーマにしていましたが、ほかにも高次脳機能や歩行、姿勢制御など、さまざまなテーマに取り組む方がいました。そのため、自分のテーマについても多様な視点からコメントをもらうことができ、研究をより発展的に深めることができました。   また、私は修士課程の頃から自宅の熊本から通っていましたが、遠方であることを感じさせないほど、きめ細やかな環境・サポート体制が整っており、博士課程を修了するまで安心して、充実した研究ライフを送ることができました。   畿央大学大学院の魅力は、質の高い研究指導と、多様な視点に触れながら研究を深められる温かな学びの環境にあると思います。   今の仕事や研究に、大学院での学びはどう活きていますか? 森岡 周先生からは、「引用される研究をしなさい(論文を書きなさい)」とご指導いただきました。これは、自分の知的好奇心を満たすためだけの研究ではなく、その研究が社会課題の解決にどうつながるのか、どのように社会実装へ結びつくのかまで考えることの大切さを意味していたと受け止めています。   自己満足で終わる研究ではいけない、という姿勢は、今の仕事や研究の根幹となっています。先に述べた研究センターの立ち上げは、まさにその学びを実践に活かせた一例です。もともと研究基盤が十分に整っていない環境の中で、現場のスタッフや上層部と対話を重ねながら、「研究の力で組織に何が貢献できるのか」を模索し、形にしていくことができました。   このように、大学院での学びは、研究手法や知識だけでなく、「社会に役立つ問いを立て、それを周囲と協働しながら形にしていく姿勢」として、今の実務・研究の両方に活きています。   これから大学院進学を考えている方へのメッセージを! 大学院は、単に知識や研究手法を身につける場ではなく、自分の中にある問いを深め、それを社会にどう役立てるかを考える場でもあります。畿央大学大学院での学びは、自分の可能性や将来の選択肢を広げてくれる貴重な経験になると思います!        

2026.04.23

合同ゼミ懇親会を開催!~ 健康科学研究科 地域リハビリテーション研究室

畿央大学大学院 健康科学研究科 地域リハビリテーション研究室では、合同ゼミ懇親会を開催しました。当日は、新入生をお迎えし、修士課程7名、博士課程3名、客員研究員2名、教員4名が参加し、軽食やドリンクを囲みながら、和やかな雰囲気の中で交流を深めました。   多様なバックグラウンドが集まる学びの場 本研究室の特徴の一つは、働きながら大学院で学ぶ社会人大学院生が多いことです。 所属先は、急性期病院、回復期病院、通所リハビリテーション、介護老人保健施設、行政など多岐にわたり、臨床経験も3年目から15年以上までと幅広い人材が在籍しています。それぞれの現場で感じた疑問や課題を出発点とした研究テーマは、実践につながる可能性を秘めています。 1枚スライドに込めた「想い」 懇親会では、一人ひとりが1枚のスライドを用いて自己紹介を行いました。研究テーマだけでなく、これまでのキャリア、家族、趣味なども共有され、普段のゼミでは見えにくい一面を知る機会となりました。それぞれの発表からは、「なぜこの研究に取り組むのか」という想いが伝わり、参加者同士の理解とつながりが一層深まりました。会は終始温かい雰囲気に包まれ、あっという間の2時間となりました。   臨床と研究をつなぐ教育体制 地域リハビリテーション研究室では、奈良県を中心に以下のような研究・活動を展開しています。   地域高齢者の健康増進・介護予防 要介護高齢者の生活機能とQOLに資する研究・実践 アクションリサーチによる地域実践 ビッグデータを活用した地域特性分析 フレイル予防に関する研究 リハビリテーション専門職としての視点を大切にし、「研究を現場に還元する」ことを重視しています。   充実した指導体制 本研究室は、高取 克彦教授、松本 大輔准教授に加え、今年度より石垣 智也准教授が新たに参画されました。さらに、健康イノベーション教育研究センターの土井 剛彦教授にもご協力いただき、多角的な指導体制のもとで研究を進めることができます。   議論を深め、視野を広げるゼミ運営 ゼミは、指導教員との個別指導に加え、月1回の合同ゼミを実施しています。異なる専門・経験を持つ院生同士が議論することで、新たな視点や気づきを得ることができ、研究の質を高める環境が整っています。 院生からのメッセージ 私は現在、県外の遠方から通っていますが、毎回のゼミが楽しみで仕方がありません。 授業はオンデマンド中心なので、仕事や家庭など生活のリズムを守りながら学べることも畿央大学の魅力です。 他大学出身の私も仲間は温かく迎え入れてくれました。今回の懇親会でも、研究の枠を超えて家族や趣味の話で盛り上がり、仲間の意外な一面を知ってさらに絆が深まったと感じています。 修士に行きたいけれど、自分に両立ができるだろうかと、一歩踏み出せずに悩んでいる方も多いと思います。正直、両立は楽ではありません。でも、同じように悩み、現場を良くしたいともがく仲間の存在は、何よりの支えになります。もう一度、大人の青春してみたい方をお待ちしております。 健康科学研究科 地域リハビリテーション研究室 修士課程2年 平川 雄太 大学院進学を考えている方へ 「臨床で感じた疑問を、研究として深めたい」 「専門性を高め、次のキャリアにつなげたい」 「地域に貢献できる理学療法士として成長したい」 そのような想いを持つ方にとって、本研究室は最適な学びの場です。働きながらでも学び続けられる環境と、志を同じくする仲間との出会いがあります。興味がある、また相談したい方は、気軽にご連絡ください。 お待ちしております! 健康科学研究科 地域リハビリテーション研究室 准教授 松本 大輔 地域リハビリテーション研究室 関連記事 地域リハビリテーション研究室教員・院生が国際学会で発表 ~ 健康科学研究科・ウェルネス共創研究センター 言葉を超えたケアのかたちを探る研究が学術変革領域研究(A)に採択 ~ 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 第25回認知神経リハビリテーション学会学術集会にて本学関係者が学会長・多数登壇!~ ニューロリハビリテーションセンター CREST「マルチセンシング」研究領域の領域会議が開催されました!~ ニューロリハビリテーション研究センター 地域リハビリテーション研究室大学院生・研究員の学会での活躍をご紹介~健康科学研究科 第23回日本神経理学療法学会学術大会にて本学関係者が多数登壇・受賞しました! 第35回日本呼吸ケア・リハビリテーション学会学術集会で2年連続となる「医療の質特別賞」を受賞! ~ 健康科学研究科

2026.04.21

令和8年度入学式を行いました。

2026(令和8)年4月2日(木)、健康科学部328 名、教育学部213 名、健康科学研究科36 名(修士課程17 名、博士後期課程19 名)、教育学研究科修士課程4 名、助産学専攻科9 名、臨床細胞学別科10 名、あわせて600 名の新しい畿央生が誕生しました。当日は天候が心配されましたが、柔らかな日差しと春風に恵まれ、無事に入学式を挙行できました。         学部は午前10時から、大学院・専攻科・別科は午後3時からと二部にわけて入学式を行いました。午前の学部生入学式は冬木記念ホールに全5学科の新入生が集まり、保護者の皆様はその様子を中継会場から視聴・参加する形で行われました。         冬木正彦学長が学科ごとの入学許可を行い、学長式辞を述べました。また広陵町長 吉村 裕之 様にもご臨席いただき、ご祝辞を頂戴しました。     新入学生代表として現代教育学科の中道由菜さんが入学生宣誓を行い、また、在学生代表として健康栄養学科3回生松下鈴奈さんから歓迎のことばがありました。         式典後、新入生には冬木記念ホールにてオリエンテーションを実施し、保護者の皆さまには、各学科の教室にて教員よりご挨拶を申し上げました。オリエンテーションの後は、記念撮影をされる方や、在学生からのクラブ・サークル紹介に耳を傾け、交流を深めている姿もみられました。                 午後3時からは大学院健康科学研究科、教育学研究科、助産学専攻科および臨床細胞学別科の入学式が冬木記念ホールにて行われました。 入学許可の後、学長、両研究科長・専攻科長・別科長が祝辞を述べました。     新入生の皆さま、ご入学おめでとうございます! 学生の皆さんが畿央大学で充実した時間が過ごせるよう、教職員一同全力でサポートしていきます。  

2026.04.21

畿央大学名誉教授 山本隆先生の研究成果が国際学術誌に掲載されました

このたび、本学の山本隆名誉教授による総説論文が、国際学術誌 International Journal of Gastronomy and Food Science(Background mechanisms of palatable foods: roles of taste substances, kokumi substances and their interactions) に掲載されました。   本論文では、食べ物のおいしさ(嗜好性)がどのように形成されるのかについて、甘味・塩味・うま味といった基本味に加えてコクという概念に着目し、これまでの味覚研究の成果と、その背景にある科学的メカニズムを最新の研究に基づいて整理しています。   甘味は、基本味の中でも本能的に快として感じられる特徴を持ちますが、他の味は単独では必ずしもおいしさにつながるとは限りません。食べ物のおいしさはひとつの味で決まるものではなく、いくつかの味や香り、食感が重なり合って、おいしさが生まれます。   だしや発酵食品を使った料理が深みのある味わいになるのは、うま味とコクの働きによるものです。こうした日常的な味覚の背景にある仕組みが科学的に説明されています。特に、うま味とコクの相互作用が、味の深みや広がり、持続性といった感覚を生み出し、おいしさを高める重要な要因であることが示されています。こうした研究成果は、食品開発や調理の実践への活用にもつながります。   本論文の発表は、山本隆名誉教授の長年にわたる味覚研究の成果に基づくものであり、本学にとっても大変喜ばしい報告となりました。   健康栄養学科教授 永澤 健     論文情報 Takashi Yamamoto Background mechanisms of palatable foods: roles of taste substances, kokumi substances and their interactions - ScienceDirect International Journal of Gastronomy and Food Science Volume 44, June 2026, 101467 関連記事 山本 隆教授の最終講義が行われました。|KIO Smile Blog 健康栄養学科の山本 隆教授がNHK「ほっと関西」に出演!「冬アイス」の疑問に答えます!|KIO Smile Blog 科学雑誌「Newton」に健康栄養学科の山本隆先生の記事が掲載されました!|KIO Smile Blog    

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