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健康科学専攻(博士後期課程)の新着情報一覧

健康科学専攻(博士後期課程)の新着情報一覧

2026.02.18

平地の歩きから不整地の不安定さを予測 -ウェアラブルセンサーと機械学習で解析- ~ニューロリハビリテーションセンター

脳卒中者は、不整地を含む屋外の地域社会での歩行で安定性が低下し、転倒リスクが上昇します。ただし、脳卒中者の不整地での安定性に関する知見は不足しており、臨床的には平地歩行パラメータから予測できることは重要です。畿央大学大学院 博士後期課程の乾 康浩氏と森岡 周教授らは、脳卒中者の不整地歩行に特徴的な安定性指標を腰部に取り付けたウェアラブルセンサーから特定し、さらにそれらを平地歩行パラメータから予測できるかについて機械学習を用いて検証しました。 脳卒中者は不整地歩行中に、上下の動揺、前後の規則性、前後のリズムに課題を抱えることが明らかとなりました。また、平地歩行速度0.8m/s未満になると不整地での上下の動揺が大きく、平地歩行での足関節の動きが不整地歩行での前後の規則性に影響を与え、平地歩行でのリズムが不整地歩行でのリズムに影響を与えることが示されました。 この研究成果はScientific Reports誌(Identifying and predicting gait stability metrics in people with stroke in uneven-surface walking using machine learning)に掲載されています。   本研究のポイント 腰部に取り付けたウェアラブルセンサーから脳卒中者の不整地歩行に特徴的な安定性指標を抽出した。 脳卒中者は、健常者と比較して不整地歩行で上下の動揺の増加、前後の不規則性の増加、前後のリズムの低下を示すことが明らかとなった。 平地歩行速度0.8m/s未満になると不整地歩行での上下の動揺が大きく、平地歩行での足関節の動きが不整地歩行での前後の不規則性に影響を与え、平地歩行でのリズムが不整地歩行でのリズムに影響を与えることが示された。   研究概要 脳卒中者は、不整地を含む屋外の地域社会での歩行で安定性が低下し、転倒リスクが上昇します。ただし、脳卒中者の不整地での安定性に関する知見は不足しており、臨床的には平地歩行パラメータから予測できることは重要です。 畿央大学大学院博士後期課程の乾 康浩氏と森岡 周教授らの研究チームは、自作の予測困難な摂動が生じる不整地路を用いて脳卒中者の不整地歩行に特徴的な安定性指標を腰部に取り付けたウェアラブルセンサーから特定し、さらにそれらを平地歩行パラメータから予測できるかについて機械学習を用いて検証しました。脳卒中者は不整地歩行中に、上下の動揺、前後の規則性、前後のリズムに課題を抱えることが明らかとなり、平地歩行速度0.8m/s未満になると不整地での上下の動揺が大きく、平地歩行での足関節の動きが不整地歩行での前後の規則性に影響を与え、平地歩行でのリズムが不整地歩行でのリズムに影響を与えることが示されました。 本研究は、脳卒中者の不整地歩行に特徴的な安定性指標を特定し、平地歩行パラメータから予測した初めての研究です。   研究内容 脳卒中者は、不整地を含む屋外の地域社会での歩行で安定性が低下し、転倒リスクが上昇します。ただし、脳卒中者の不整地での安定性に関する知見は不足しており、臨床的には平地歩行パラメータから予測できることは重要です。 本研究では、腰部にウェアラブルセンサーを装着して自作の不整地路を歩行し(図1)、得られた加速度データから線形・非線形指標19項目を算出した。これらの指標を入力として複数の機械学習分類モデルを構築し、脳卒中者と健常者の分類を行った。さらに、SHAP(SHapley Additive ExPlanations)分析により、分類に寄与する指標を特定した。さらに特定された安定性指標を平地歩行パラメータか予測できるかについて機械学習回帰モデルを用いて検証しました。   図1.不整地路とウェアラブルセンサー   機械学習分類モデルの結果からは、複数のモデルで95%以上の識別精度があり(図2)、SHAP分析の結果、脳卒中者は不整地歩行中に、垂直方向の動揺を示すRoot Mean Squareの高さ、前後の不規則性を示すSample Entropyの高さ、前後のリズムを示すHarmonic Ratioの低さの寄与度が高いことが明らかとなりました(図3)。   図2.不整地歩行における脳卒中者と健常者の分類性能(ROC曲線) GAN1000: Generative Adversarial Network(GAN)を用いてデータ数を 1000 に拡張したモデル;ctGAN200: Conditional Tabular GANを用いてデータ数を200に拡張したモデル;ctGAN1000: Conditional Tabular GANを用いてデータ数を10000に拡張したモデル   図3.機械学習分類モデルにおける特徴量の寄与(SHAP分析) 各安定性指標が脳卒中者と健常者の分類にどれだけ貢献しているかを示すSHAP値をプロットしており、横軸がSHAP value(寄与度)を表しています。   また、機械学習回帰モデルの結果からは、平地歩行速度0.8m/s未満になると不整地歩行での垂直方向のRoot Mean Squareが大きく、平地歩行での足関節の動きが不整地歩行での前後のSample Entropyに影響を与え、平地歩行でのHarmonic Ratioが不整地歩行でのHarmonic Ratioに影響を与えることが示されました(図4)。 図4.機械学習回帰モデルにおける特徴量の寄与(SHAP分析) 不整地歩行における各安定性指標の予測に対して平地歩行パラメータがどれだけ貢献しているかを示すSHAP値をプロットしており、横軸がSHAP value(寄与度)を表しています。 RMS: Root Mean Square; EMG: Electromyography; BF: Biceps Femoris; HR: Harmonic Ratio; SampEn: Sample Entropy;BBS: Berg Balance Scale: IC: Initial Contact;RQA: Recurrence Quantification Analysis;sLE: short-time Lyapunov Exponent   研究グループは、これらの結果から、機械学習を用いて、 ウェアラブルセンサーの計測結果から不整地歩行の安定性を多面的に評価できる可能性を示唆しています。また、平地歩行パラメータから不整地歩行での安定性を予測できる可能性があることは、屋外歩行獲得に向けた個別化されたリハビリテーションの開発に貢献すると考察しています。   本研究の臨床的意義および今後の展開 本研究成果は、予測困難な摂動が生じる不整地を歩く際の脳卒中者の安定性低下について、健常者との違いを明らかにしており、リハビリテーション専門家が屋外歩行での安定性を捉える際に着目すべき点を示しています。さらに、不整地を安定して歩行するための平地歩行パラメータを明らかにしたことで、屋外歩行獲得のための個別化支援に貢献します。今後は、より高精度なモデルの構築や縦断研究へと発展する必要があります。   論文情報 Yasuhiro Inui, Yusaku Takamura, Yuki Nishi, Shu Morioka Identifying and predicting gait stability metrics in people with stroke in uneven-surface walking using machine learning. Scientific Reports. 2026   関連する先行研究 Inui Y, Mizuta N, Hayashida K, Nishi Y, Yamaguchi Y, Morioka S. Characteristics of uneven surface walking in stroke patients: Modification in biomechanical parameters and muscle activity. Gait Posture. 2023 Jun;103:203-209.   Inui Y, Mizuta N, Fujii S, Terasawa Y, Tanaka T, Hasui N, Hayashida K, Nishi Y, Morioka S. Differences in uneven-surface walking characteristics: high-functioning vs low-functioning people with stroke. Top Stroke Rehabil. 2025 Dec;32(8):789-799.   Inui Y, Mizuta N, Terasawa Y, Tanaka T, Hasui N, Hayashida K, Nishi Y, Morioka S. Distance-related changes in gait parameters during uneven-surface walking in people with stroke versus healthy controls: A cross-sectional analysis. Clin Biomech (Bristol). 2026 Jan 9;133:106747.   問い合わせ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 博士後期課程 乾 康浩 教授 森岡 周 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.morioka@kio.ac.jp  

2026.02.18

脳卒中後の体幹機能の構造を解明:4つの因子と難易度階層に基づく新しい評価モデル ~ ニューロリハビリテーション研究センター

脳卒中者において、体幹機能の低下は座位保持や歩行、日常生活動作(ADL)の自立を妨げる主要な要因となります。これまで多くの体幹機能検査が開発されてきましたが、それぞれが評価する要素や難易度が異なり、統合的な解釈が困難でした。畿央大学大学院博士後期課程の田上 友希 氏と森岡 周 教授らは、既存の4つの体幹機能検査を統合的に分析し、脳卒中後の体幹機能が「静的座位」「基本動作」「動的座位(より挑戦的な課題)」「動的座位(挑戦的ではない課題)」の4つの因子で構成され、明確な難易度階層構造を持つことを明らかにしました。 この研究成果はArchives of Physical Medicine and Rehabilitation誌(Integrated Structural Analysis of Trunk Function Assessment After Stroke – New Evaluation Model Based on Multiscale Factor Analysis and Rasch Analysis)に掲載されています。   本研究のポイント 急性期脳卒中者200名を対象に、既存の4つの体幹機能検査(TIS-V、 TIS-F、 FACT、 TCT)を用いて、体幹機能の構成要素を検証しました。 探索的因子分析とRasch分析を用いた結果、体幹機能は「静的座位」「基本動作」「動的座位(より挑戦的な課題)」「動的座位(挑戦的ではない課題)」の4つの因子に分類され、それぞれの難易度が段階的に高くなる階層構造を持つことが明らかになりました。   研究概要 脳卒中後の体幹機能障害は、ADLや歩行の予後を予測する重要な因子ですが、臨床現場では複数の評価尺度が混在しており、「どの検査がどの能力を測っているのか」が不明確なままでした。畿央大学大学院 博士後期課程 田上 友希 氏、森岡 周 教授らの研究チームは、発症早期の脳卒中患者200名を対象に、代表的な4つの体幹機能検査(計38項目)を実施し、得られたデータを高度な統計手法(探索的因子分析およRasch分析)を用いて解析しました。その結果、脳卒中後の体幹機能は単一の構造ではなく、明確に異なる4つの因子から構成されていることを突き止めました。さらに、これらの因子間には難易度の順序性(静的座位<基本動作<動的座位[挑戦的ではない]<動的座位[より挑戦的])が存在することを証明しました。本研究は、脳卒中後の体幹機能の構造と階層性を初めて統計的に明らかにしたものであり、より個別化されたリハビリテーション介入への道を開くものです。   研究内容 本研究では、脳卒中後の体幹機能評価の構造を解明し、新しい統合的な評価モデルを構築することを目的としました。発症から48時間以内に離床が可能となった脳卒中患者200名を対象に、Trunk Impairment Scale (TIS-V、 TIS-F)、Functional Assessment for Control of Trunk (FACT)、Trunk Control Test (TCT) の4つの評価尺度を用いて評価を行いました。   図1. 本研究で統合解析した体幹機能評価   収集したデータに対し、探索的因子分析(EFA)を行った結果、体幹機能は以下の4つの因子に分類されることがわかりました。 静的座位(Static sitting):座位姿勢の保持能力 基本動作(Basic movement):寝返りや起き上がりなど、支持基底面内での基本的な体動 動的座位・難易度低(Dynamic sitting – Less Challenging):支持基底面内での重心移動を伴う動作 動的座位・難易度高(Dynamic sitting – More Challenging):支持基底面外へのリーチや体幹回旋を伴う高度な制御 さらに、ラッシュ分析を用いて各因子の難易度を検証したところ、これらは並列な関係ではなく、静的座位や基本動作が容易で、動的座位(特に回旋や大きな重心移動を伴うもの)が最も困難であるという階層性を持つことが示されました。 図2.体幹機能の4因子と難易度階層   研究グループは、従来の評価法ではこれらの異なる要素が混在してスコアリングされていたため、患者の特異的な課題(例:静的保持はできるが、回旋を含む動的動作だけができない等)が見過ごされていた可能性があると考察しています。本研究で示された4因子モデルを用いることで、患者が「どの段階の」「どの因子」に問題を抱えているかを正確に把握することが可能になります。   本研究の臨床的意義および今後の展開 本研究成果は、脳卒中後の体幹機能を「静的」「基本動作」「動的(低難度・高難度)」という4つの視点から整理し、その難易度順序を明確にした点にあります。これにより、リハビリテーション専門家は、単なる合計点での評価ではなく、患者の回復段階に応じた適切な目標設定(例:静的座位が確立したら、次は支持基底面内での動的課題へ進むなど)が可能になります。今後は、このモデルに基づいた短縮版の評価票(Keyform)の臨床応用や、各因子にターゲットを絞った介入プログラムの効果検証を進める必要があります。   論文情報 Tagami Y, Fujii S, Inui Y, Takamura Y, Nakao S, Takase K, Tomotake A, Shinbori N, Kitahara R, Morioka S. Integrated Structural Analysis of Trunk Function Assessment After Stroke- New Evaluation Model Based on Multiscale Factor Analysis and Rasch Analysis. Arch Phys Med Rehabil. 2026 Feb 5   問い合わせ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 博士後期課程 田上 友希 教授 森岡 周 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.morioka@kio.ac.jp  

2026.02.03

人工膝関節全置換術後早期には疼痛強度と運動が相互に関連し合う ~ ニューロリハビリテーション研究センター

急性疼痛を経験した後、疼痛、運動恐怖、運動機能は互いに影響し合い、たとえ創傷や外傷といった痛みの原因が治癒した後であっても、これらの要素がネットワークを形成することで疼痛や運動機能低下が慢性化すると考えられています。畿央大学大学院健康科学研究科 博士後期課程の古賀 優之氏(川西市立総合医療センター)と森岡 周教授らは、人工膝関節全置換術(Total Knee Arthroplasty:TKA)を受けた患者を対象に、術前・術後1週・術後2週の縦断データを用いて、疼痛、運動恐怖、運動機能の時間的関係を交差遅延効果モデル(Cross Lagged Panel Model:CLPM)により分析しました。その結果、術後1週における運動の狭小化が術後2週の安静時痛強度を予測し、同様に術後1週における安静時痛強度が術後2週の運動の不規則さを予測するという双方向の関係が明らかになりました。本研究成果はEuropean Journal of Pain誌(Temporal relationship between pain/fear and knee movement disorder after total knee arthroplasty)に掲載されています。 本研究のポイント TKA患者を対象に術前、術後1週、術後2週の3時点で、「痛み」や「動かすことへの恐怖心」、「膝関節の動かしにくさ」が測定されました。 解析の結果、術後1週時点における膝の曲がる角度(屈曲角度)が小さいほど、2週時点の安静時の痛みが強くなることや、術後1週時点での安静時の痛みが強いほど、2週時点の膝の動きが不規則でぎこちない(滑らかでない)ものになることが明らかになりました。 TKA術後1〜2週という極めて早い段階において、痛みと運動機能がそれぞれ異なる経路で互いに影響し合っていることが科学的に裏付けられました。この「悪循環」を断ち切るためには、術後1週から痛みを適切に管理しつつ、運動機能の改善を図る具体的な介入が不可欠です。 研究概要 人工膝関節置換術(Total Knee Arthroplasty:TKA)は、膝の痛みを軽減し、生活の質を向上させる有効な治療法です。しかし、手術を受けた患者の約20%では、術後も痛みが長引いたり、運動機能の回復が十分に得られなかったりするという課題が残されています。「痛み」「動くことへの恐怖心」「運動機能(膝の動き)」といった要素は互いに関連しており、疼痛が遷延化する要因となります。しかし、術後早期において、「動かないから痛くなるのか」、「痛いから動かなくなるのか」といった時間的な順序や関係性については、十分に明らかにされていませんでした。畿央大学大学院健康科学研究科 博士後期課程の古賀 優之氏(川西市立総合医療センター)と森岡 周教授らの研究グループは、TKAを受けた患者を対象に、手術前、術後1週、術後2週の時点で、痛み、動くことへの恐怖心、そして膝の運動機能を縦断的に調査しました。研究では、ベッド上で膝を曲げ伸ばしするシンプルな運動課題を実施し、膝の曲がる角度や動作の速度、動きの滑らかさといった運動の量と質の両面を詳細に分析しました。   解析の結果、術後1週時点で膝の曲がる角度が小さい(十分に動かせていない)ほど、術後2週の安静時の痛みが強くなることが予測されました。また、術後1週時点で安静時の痛みが強いほど、術後2週の膝の動きが不規則でぎこちないものになることが示されました。一方で、術後早期における「動くことへの恐怖心」は、術後2週の運動機能には直接影響していませんでした。この結果は、恐怖心が重要であるとされてきた従来の知見を踏まえつつも、術後早期においては「痛み」と「実際の動き」がより強く相互に影響し合っていることを示しています。多くの先行研究が、術後数ヶ月から数年といった長期的な経過に注目してきましたが、本研究は手術直後のわずか1週間の変化が、その後の回復過程に影響を及ぼす可能性を示しました。また、単に動きの速さや大きさだけでなく、「動きの滑らかさ(不規則性)」という目に見えにくい運動の質を数値化して評価に取り入れた点も、これまでにない新しいアプローチです。 これらの知見は、術後早期から痛みに配慮しつつ、適切に膝を動かすことが、その後の痛みの悪化を防ぎ、よりスムーズな動作の獲得につながる可能性を示唆しており、リハビリテーション戦略の改善に貢献することが期待されます。 研究内容 本研究は、術後早期における「疼痛強度」「動くことへの恐怖心」「運動機能(膝の動きの質)」といった要素が、時間の経過とともにどのように影響し合っているのかを明らかにすることを目的に行われました。評価は術前、術後1週、術後2週の3つの時点で行われました。運動機能については、ベッド上で膝を最大限速く大きく曲げ伸ばしする運動課題を動画撮影しました。この映像を解析し、膝が曲がる角度や動かす速度、動きの滑らかさ(ぎこちなさ)といった指標を数値化しました(図1)。また、課題直後に疼痛強度(運動時痛、安静時痛)と運動恐怖がVisual Analog Scaleにて評価されました。   図1. 運動学的データの抽出と解析手順   下肢にマーカーを貼付して撮影された動画データをトラッキングし、角度変化の時系列データから速度、加速度が算出されました。経過良好例では速度変化で滑らかな曲線を示し、加速度変化でもほぼ乱れがありませんでした。一方、経過不良例では速度変化が不規則になり、加速度変化では細かなノイズが観察されました。 統計的な解析(Cross-Lagged Panel Model:CLPM)の結果、術後1週時点で膝の屈曲角度が小さい(十分に曲げられていない)ほど、術後2週の安静時の痛みが強くなることが予測されました。また術後1週時点での安静時の痛みが強いほど、術後2週の膝の動きが不規則でぎこちないものになることが示されました。一方で、今回の研究の範囲内(術後2週間まで)では、動くことへの恐怖心がその後の運動機能の低下に直接つながるという因果関係は見つかりませんでした(図2)。     図2. 疼痛、恐怖、運動学的データの時間的関連性   交差遅延効果モデル(CLPM)の解析結果から、術後1週の角度が術後2週の安静時痛を予測し、術後1週の安静時痛が術後2週のエントロピー(円滑さ)を予測していることがわかりました。 これらの結果から、手術直後の極めて早い段階において、「動きの制限」と「痛み」が互いを悪化させ合う特有の経路が存在するということが明らかとなりました。この知見は、リハビリテーションにおいて術後1週という「超早期」から、痛みを適切にコントロールしつつ、膝を動かす範囲をしっかりと確保する介入を行う重要性を示唆しています。単に歩けるようになることだけでなく、早期に「質の高いスムーズな動き」を取り戻すことが、痛みの慢性化を防ぐ鍵になるかもしれません。 本研究の臨床的意義および今後の展開 本研究では、術後1週という「超早期」の運動制限がその後の痛みを予測し、逆に痛みが動きの質(不規則性)を悪化させるという具体的な相互作用の経路を特定しました。この知見は、遷延化リスクがある患者の早期特定や標的を絞った早期介入の検討につながるものであると考えられます。今後はより大規模なサンプルを長期間追跡することにより、慢性疼痛へ移行しやすい患者の特徴を明らかにし、「精密なリハビリテーション(Precision Rehabilitation)」戦略の策定につなげていく予定です。 論文情報 Koga M, Fujii S, Nishi Y, Koyama K, Maeda A, Fujikawa K, Morioka S. Temporal Relationship Among Pain, Fear, and Motor Function After Total Knee Arthroplasty: An Exploratory Study. Eur J Pain. 2026 Jan;30(1):e70210. 問い合わせ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 博士後期課程 古賀 優之 教授 森岡 周 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.morioka@kio.ac.jp

2026.02.03

脳卒中者が不整地を歩きつづけたときの歩き方の変化~ニューロリハビリテーション研究センター

脳卒中者は、歩行障害を有することで、不整地を含む屋外の地域社会での歩行が困難となる場合があり、結果として社会参加を妨げ、生活の質に不利益をもたらします。さらに、脳卒中者は不整地上で長い距離を歩いた場合に課題を抱える可能性があります。畿央大学大学院博士後期課程の乾 康浩氏と森岡 周教授らは、脳卒中者と健常者が80mの不整地を歩行した際の距離に応じた変化の違いを検証しました。この研究成果はClinical Biomechanics誌(Distance-related changes in gait parameters during uneven-surface walking in people with stroke versus healthy controls: A cross-sectional analysis)に掲載されています。 本研究のポイント 健常者と脳卒中者の不整地歩行中の距離に応じた変化の特徴の違いを自作の不整地路を用いて評価しました。 脳卒中者は、不整地歩行中に歩行速度、安定性、股関節および膝関節の角度は維持する一方で、健常者とは異なり踵接地の際に前脛骨筋の筋電図振幅が増大せずに足関節背屈角度が低下し、立脚終期には中殿筋の周波数が低下することが明らかとなりました。 研究概要 脳卒中者は、中枢神経系の損傷により歩行障害を有し、不整地を含めた屋外の地域社会での歩行が困難になります。これは、社会参加を妨げ、生活の質の低下にもつながります。また、脳卒中者は不整地上で長い距離を歩いた場合に課題を抱える可能性があります。畿央大学大学院 博士後期課程 乾 康浩氏、森岡 周教授らの研究チームは、自作の予測困難な摂動が生じる不整地路を用いて、脳卒中者が80mの不整地行中の歩行速度、体幹の加速度、麻痺側の関節運動、および下肢筋電図振幅と周波数を計測し、脳卒中者と健常者で歩行距離に応じた変化の特徴の違いを分析しました。その結果、脳卒中者は、不整地歩行中に歩行速度、安定性、股関節および膝関節の角度は維持する一方で、健常者とは異なり踵接地の際に前脛骨筋の筋電図振幅が増大せずに足関節背屈角度が低下し、立脚終期には中殿筋の周波数が低下することを明らかにしました。本研究は、健常者と脳卒中者の不整地歩行中の距離に応じた変化の違いを明らかにした初めての研究です。 研究内容 本研究では、脳卒中者が予測困難な摂動が生じる不整地80mを歩行する際の距離に応じた歩行パラメータ変化を健常者と比較することを目的とし、自作の不整地路(図1)を用いて検証しました。     図1. 不整地路と実験環境   実験で得られたデータから、歩行速度、歩行安定性を評価するための3軸の体幹の加速度のRoot Mean Square、麻痺側下肢の最大関節角度、麻痺側下肢の筋電図振幅と瞬間平均周波数を算出しました。その結果、脳卒中者は、 不整地歩行中に歩行速度、安定性、股関節および膝関節の角度は維持する一方で、健常者とは異なり踵接地時に前脛骨筋の筋電図振幅が増大せずに足関節背屈角度が低下し、立脚終期には中殿筋の周波数低下がみられました(図2)。     図2. 不整地歩行中の脳卒中者と健常者の歩行パラメータの変化の違い   研究グループは、この結果のうち、脳卒中者が不整地歩行中に歩行速度、安定性、股関節および膝関節角度を維持したことは不整地への適応と考えています。一方で、前脛骨筋の筋電図振幅を増大せずに足関節背屈角度が低下したことは皮質脊髄路損傷による神経駆動の低下に起因し、中殿筋の周波数が低下したことは疲労の可能性があると考察しています。 本研究の臨床的意義および今後の展開 本研究成果は、予測困難な摂動が生じる不整地を歩く際の距離に応じた変化について、脳卒中者と健常者の違いを明らかにしており、リハビリテーション専門家が脳卒中者の屋外歩行の適応や疲労を考える際に着目すべき点を示しています。今後は、より長い距離での歩行パラメータの変化や非麻痺側を含めた戦略の特徴を調査する必要があります。 論文情報 Yasuhiro Inui, Naomichi Mizuta, Yuta Terasawa, Tomoya Tanaka, Naruhito Hasui, Kazuki Hayashida, Yuki Nishi, Shu Morioka. Distance-related changes in gait parameters during uneven-surface walking in people with stroke versus healthy controls: A cross-sectional analysis. Clinical Biomechanics, Volume 133, 2026, 106747. 問い合わせ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 博士後期課程 乾 康浩 教授 森岡 周 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600

2026.01.13

身体知覚の変容のカギは「うずく・引きつる」痛み-機械学習による検証 ~ニューロリハビリテーション研究センター 

痛みを有する患者の中には、「自分の身体がどこにあるかわからない」、「身体の大きさや位置が変に感じる」といった身体知覚の変容を経験する場合があります。畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターの重藤隼人 客員研究員(京都橘大学助教)と同センター長の森岡周 教授らは、機械学習手法の一つであるSHAP(SHapley additive exPlanations)解析を用いて、複数の痛みの性質(かじられるような痛み、刃物でつき刺されるような痛み、割れるような痛み、気分が悪くなるような、ちくちくする、焼けるような痛み、ひきつるような痛み、うずくような痛み、鋭い痛み)が身体知覚異常と関連することを明らかにしました。特に、運動感覚に関わる痛みの性質(ひきつるような痛み、うずくような痛み、かじられるような痛み)が身体知覚の変容に強く影響することが示され、痛みの性質に基づいた評価および介入戦略の重要性が示唆されました。この研究成果はArchives of Physical Medicine and Rehabilitation誌(Pain qualities associated with body perception disturbances: insights from machine learning and SHapley additive exPlanations)に掲載されています。 なお、本研究は厚生労働科学研究補助金(種々の症状を呈する難治性疾患における中枢神経感作の役割解明とQOL向上、社会啓発を目指した領域統合他施設共同疫学研究班)の研究成果になります。 本研究のポイント 機械学習(SHAP解析)を用いて、痛みの性質と身体知覚の変容との関連を定量的に解析しました。 複数の痛みの性質が身体知覚異常と関連することを明らかにしました。 特に「ひきつるような痛み」、「うずくような痛み」、「かじられるような痛み」といった運動感覚に関連することが示唆されている痛みの性質が、身体知覚の変容に強く影響することが示されました。 研究概要 疼痛患者は、痛みだけでなく「自分の身体がどこにあるかわからない」、「身体の大きさや位置が変に感じる」といった身体知覚の変容を経験することがあります。身体知覚異常は痛みの重症度と関連し、運動感覚に関連する痛みの性質とも関連することが示唆されていますが、どのような痛みの性質が身体知覚の変容と関連しているのかは明らかになっていませんでした。畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターの重藤隼人 客員研究員(京都橘大学助教)と森岡周 センター長・教授らの研究チームは、疼痛患者を対象に身体知覚の変容と痛みの性質の関連性について検証しました。身体知覚の変容および痛みの性質について質問紙を用いて評価した上で、機械学習(SHAP解析)を用いて、痛みの性質が身体知覚異常にどのように影響するかを定量的に解析しました。その結果、複数の痛みの性質が身体知覚異常と関連し、特に「ひきつるような痛み」、「うずくような痛み」、「かじられるような痛み」といった運動感覚に関わる痛みの性質が身体知覚の変容に強く影響することを明らかにしました(図1)。 図1 研究の概要 研究内容 本研究の目的は、筋骨格系疼痛患者を対象に機械学習を用いて痛みの性質と身体知覚異常との関連を明らかにすることでした。 質問紙評価を用いて、身体知覚の変容(Fremantle Back Awareness Questionnaire: FreBAQ)と痛みの性質(Short-Form McGill Pain Questionnaire-2:SFMPQ-2)を評価し、機械学習(SHAP解析)を用いて、各痛みの性質が身体知覚の返答にどれだけ貢献しているかを示す寄与度を可視化・定量化しました。 SHAP分析の結果、「ひきつるような痛み」が最も身体知覚異常への寄与度(SHAP値)が高いことが明らかになりました(図2)。また、運動感覚に関連する痛みの性質でもある「うずくような痛み」も寄与度が高いことが明らかになりました。   図2 身体知覚異常に対する各痛みの性質のSHAP値(寄与度) 各痛みの性質が身体知覚の変容にどれだけ貢献しているかを示すSHAP値をプロットしており、横軸がSHAP値(寄与度)、各点が個別の患者の痛みの性質スコアを表しています。特に「ひきつるような痛み」が最も高い寄与度を示しています。   さらに、各対象者における痛みの性質の寄与度(SHAP値)と身体知覚変容スコアとの相関分析の結果、複数の痛みの性質(かじられるような痛み、刃物でつき刺されるような痛み、割れるような痛み、気分が悪くなるような、ちくちくする、焼けるような痛み、ひきつるような痛み、鋭い痛み)が身体知覚の変容と高い相関(r > 0.7)を示しました。特に運動感覚に関連する痛み(かじられるような痛み、ひきつるような痛み)が高い相関を示しており、運動感覚に関連する痛みの性質が身体知覚変容の病態と関連していることを示唆しています。 本研究の臨床的意義および今後の展開 本研究成果は、特定の痛みの性質が身体知覚の変容に関連する可能性を示しています。特に、運動感覚に関連する痛みの性質を訴える患者に対しては、感覚運動連関に焦点を当てた評価やリハビリテーションアプローチが有効である可能性が考えられます。 論文情報 Shigetoh H, Koga M, Tanaka Y, Hirakawa Y, Morioka S. Pain qualities associated with body perception disturbances: insights from machine learning and SHapley additive exPlanations. Arch Phys Med Rehabil. 2025 Dec 3:S0003-9993(25)01070-6. 問い合わせ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 客員研究員 重藤 隼人 教授 森岡 周 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.morioka@kio.ac.jp

2026.01.07

1/22(木)放送「あしたが変わるトリセツショー」に客員研究員の西先生が出演!~ニューロリハビリテーション研究センター

  NHK総合「あしたが変わるトリセツショー」(毎週木曜放送)の2026年1月22日(木)放送回に、本学ニューロリハビリテーション研究センター客員研究員の西 祐樹先生(長崎大学勤務/大学院健康科学研究科 博士後期課程修了)が解説員として出演予定です! 「あしたが変わるトリセツショー」は、身近でありながら意外と知られていない“モノ・コト”の正しい理解や活用法を、専門家の知見と最新の科学的根拠をもとに紹介する番組です。     今回のテーマは、「しびれ」。腰・首・足・手・顔など、全身のさまざまな部位で起こる“しびれ”について、その原因やメカニズムを解説します。番組では、「しびれる範囲」から原因の可能性を読み解く“しびれ図鑑”の作成をはじめ、「背骨が原因となるタイプ」「命に関わる可能性のあるタイプ」「治療しないともったいないタイプ」など、多様なしびれを体系的に整理し、効果的な対策や最新の治療法についても紹介されます。   ▼ 番組ホームページより(1/22(木)放送告知)       西先生は、ニューロリハビリテーションの専門的立場から、しびれに対して開発した治療について解説する予定です。 しびれに悩む方も、健康に興味がある皆さんも、ぜひご覧ください!   ▼ 初の4学会合同開催となり1300名が参加した「JAPAN PAIN WEEK2025」で、西先生はしびれに関する研究で「奨励賞」を受賞されています。       ▼西先生の「しびれ」に関する論文はこちら 脊髄損傷によるしびれ感に対するしびれ同調経皮的電気神経刺激の効果 -N-of-1試験による効果検証- 横断性脊髄炎1症例の異常感覚および上肢運動に対するしびれ同調経皮的電気神経刺激の効果 しびれ感に対する新たな経皮的神経電気刺激の効果   関連記事 ▼ 番組ホームページ あしたが変わるトリセツショーの最新情報 - NHK   ▼ニューロリハビリテーション研究センター関連記事 JAPAN PAIN WEEK 2025にて本学関係者が登壇・受賞しました! ~ 健康科学研究科 第25回認知神経リハビリテーション学会学術集会にて本学関係者が学会長・多数登壇!~ ニューロリハビリテーションセンター    

2025.12.24

【新刊紹介】生成AI時代にあらためて問う「人間の知性」 —— ピアジェをハブに、時空を超えた知の対話へ ——

このたび、森岡 周(本学理学療法学科・教授、ニューロリハビリテーション研究センター長)の新刊『ピアジェ・思考の誕生 —— ニューロサイエンスと哲学から読み直すリハビリテーションの新しい地平 —— 』が、協同医書出版社より刊行されています。   本書は、生成AIが急速に発展する現代において、「それでもなお人間の知性とは何か」を根底から問い直す、568ページに及ぶ単著書き下ろしです。特徴的なのは、図表をほぼ用いず、文章のみで構成されている点です。そこでは、効率や要約を志向するAI的記述とは異なる、人間ならではの飛躍的洞察や冗長性があえて選び取られています。   ジャン・ピアジェの発達理論を中心軸(ハブ)に据え、予測符号化理論、メルロ=ポンティやハイデガーの現象学、リクールの物語論、スピノザの自由論、レヴィナスの倫理学、そして東洋思想まで——100名を超える科学者・哲学者が時代や分野を越えて交差します。発達心理学、神経科学、現象学、哲学、そしてリハビリテーション臨床——それぞれの知が断片としてではなく、思考の生成過程そのものとして編み直されていきます。   本書が提示するのは、単なる理論整理ではありません。砂原茂一が掲げた「人間復権」の理念を継承し、「機能回復」を超えて、人がいかに世界を理解し、自己を構築し直していくのかという根源的問いに対し、リハビリテーションを知の交差点として再定義する試みです。AIが情報処理を加速させる時代だからこそ、人間の思考がもつ遅さ、回り道、物語性が、あらためて価値を帯びる——その確信が、全編を貫いています。 書誌情報 * 書名:『ピアジェ・思考の誕生 —— ニューロサイエンスと哲学から読み直すリハビリテーションの新しい地平 ——』 * 著者:森岡 周 * 出版社:協同医書出版社 * 刊行日:2025年10月24日 * 仕様:単行本(ソフトカバー)/568ページ * ISBN:978-4-7639-1098-1     人間の知性の未来を、深く、ゆっくりと考えたいすべての方へ。本学から発信される一冊として、ぜひご注目ください。 関連記事 養成校の4割が使用!本学教員が編集する「標準理学療法学 神経理学療法学」第3版が発行されました! 教育学部教員による書評~森岡周教授著「コミュニケーションを学ぶーひとと共生の生物学ー」 書評「リハビリテーションのための脳・神経科学入門 改定第2版」 書評:森岡周教授執筆「発達を学ぶ―人間発達学レクチャー―」

2025.12.23

CREST「マルチセンシング」研究領域の領域会議が開催されました!~ ニューロリハビリテーション研究センター

2025年12月17日(水)~19日(金)、北海道大学学術交流会館において、CREST「マルチセンシング」研究領域の領域会議が開催されました。CREST(国立研究開発法人科学技術振興機構〈JST〉による戦略的創造研究推進事業)は、学際的かつ先端的な研究を推進することを目的とした大型研究プログラムです。本領域会議では、各研究プロジェクトの進捗報告や研究成果の共有に加え、今後の研究展開について分野横断的な議論が行われました。   CRESTは国内の競争的科学研究費としてはトップに位置するもので、本学森岡 周教授らの日仏合同研究チームが2.74億円(5年6ヵ月/3研究室合同)の研究費を取得しています。   【プレスリリース】森岡周教授らの共同研究が2023年度 CRESTに採択されました。   本会議では、本プロジェクトの研究代表者である嶋田 総太郎教授(明治大学)より、研究チームのテーマである「身体的自己とナラティブセルフの関係性」に関する研究成果および進捗状況について報告が行われました。具体的には、ラバーハンド錯覚において錯覚が生起する際の主観的経験のフェーズ遷移と、それに対応する脳活動の特徴との関係について紹介がありました。   また、VRを用いたフルボディ錯覚実験に基づき、脳活動、重心動揺、心拍などの複数の生体指標を統合的に解析することで、錯覚の生起およびその強度との関連を検討した研究成果と進捗が示されました。さらに、脳卒中後患者を対象とした研究として、現象学的インタビューによって得られたナラティブと、慣性センサーや筋電図を用いて評価した歩行機能の時間的変化との関係について、現在進行中の研究状況が共有されました。   これらの報告に対する質疑応答では、哲学や数理科学など多様な専門分野の研究者から示唆に富む意見が寄せられ、今後の研究の方向性について活発な議論が交わされました。     また、本年度採択された若手チャレンジの発表として、西 祐樹助教(長崎大学、畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター客員研究員)より、「パーキンソン病患者におけるすくみ足の状態遷移モデルの構築とその機序の解明」をテーマとした研究発表が行われました。   本発表では、すくみ足の発生前・発生中・発生後における眼球運動、心拍、筋活動など複数の生体指標の時間的遷移に着目し、これらを統合的に捉えることで、すくみ足の状態変化をモデル化する試みについて、その途中経過が報告されました。発表後には、計測手法および解析手法の可能性に関して、活発な意見交換が行われました。     本領域会議を通して、私たちのプロジェクトに対する貴重な助言を得るとともに、他大学・他分野の研究者による発表を聴講することで、本研究にとって新たな視点や着想を得る大変有意義な機会となりました。また、本プロジェクトに参画する各大学(明治大学、東海大学、畿央大学)の研究メンバーが一堂に会し、それぞれの研究内容について直接意見交換を行うとともに、今後の研究協力体制について改めて確認することができました。   本研究は、日仏共同提案による国際共同研究(CREST–ANR)として実施されており、今後は研究内容をさらに発展させ、2026年3月にフランス・ボジョレーで予定されている日仏合同シンポジウムにおいて、国際的な視点から研究成果を発信していくことを目指します。本領域会議で得られた知見や議論を今後の研究活動に積極的に反映し、国際的な議論の深化につなげていきたいと考えています。   畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 関連記事 森岡周教授らの共同研究が2023年度 CRESTに採択されました。  日仏国際共同研究CREST-ANR NARRABODY 1st Meetingが開催されました!~ニューロリハビリテーション研究センター 日仏国際共同研究CREST-ANR NARRABODY 2nd Meetingが開催されました!~ニューロリハビリテーション研究センター 日仏国際共同研究CREST-ANR NARRABODY 3rd Meetingが開催されました!~ニューロリハビリテーション研究センター フランス・リヨン神経科学研究センターのHugo ARDAILLON 氏が畿央大学を訪問されました!~ ニューロリハビリテーション研究センター

2025.12.23

JAPAN PAIN WEEK 2025にて本学関係者が登壇・受賞しました! ~ 健康科学研究科

2025年12月4日(木)~6日(土)に、東京都江東区の東京ビッグサイトにてJAPAN PAIN WEEK 2025(JPW2025)が開催されました。本大会は第47回日本疼痛学会、第18回日本運動器疼痛学会、第29回日本ペインリハビリテーション学会、第30回日本口腔顔面痛学会による本邦の疼痛関連では初の4学会合同開催で、全国から約1300名が参加されました。 畿央大学大学院およびニューロリハビリテーション研究センターからも多くの大学院生・修了生・研究員・教員が参加し、研究発表や講演、そして受賞という形で大きな成果を収めました。   学会での主な講演・発表 シンポジウム/教育講演 初日には、大住倫弘准教授が「慢性疼痛の脳波ネットワーク異常とリハビリテーション」というテーマでシンポジウムに登壇され、脳波を活用した慢性疼痛の神経病態解明やリハビリテーション応用への展望について話題提供されました。   2日目には客員研究員の西祐樹氏(現・長崎大学生命医科学域(保健学系) 助教)が「慢性疼痛患者の運動特性から考える運動療法の新展開」というテーマでシンポジウムに登壇され、個別最適化を目指す運動療法の新たな展開について提言されました。また、「痛みを有する患者に対する物理療法」について、私(佐々木遼)が教育講演を担当いたしました。   3日目には大住倫弘准教授が「義手の身体化の背景にある脳内メカニズム」というテーマでシンポジウムに登壇され、身体所有感の誘起プロセスについて、医工連携研究の知見を紹介されました。 一般演題/受賞 一般演題でも多数のメンバーが発表しました。本学およびニューロリハビリテーション研究センター所属メンバーの発表演題は以下の通りです。   <客員研究員> 西 祐樹:しびれ同調経皮的電気神経刺激の即時効果を規定する臨床指標:末梢・中枢神経障害を対象とした疾患横断的決定木分析 佐藤 剛介:経頭蓋交流電気刺激が脳波リズムと疼痛閾値に与える影響   <研究員> 佐々木 遼:サーマルグリル錯覚はプレゼンティーイズムのスクリーニングツールとなりうるか:小型機器の信頼性・妥当性を含めた検討   <大学院生> 田中 智哉:人工膝関節置換術後における痛みと身体性の関係性に基づくサブタイプ分類 森川 雄生:高周波電気刺激で誘発された中枢感作に伴う空間的注意と脳ネットワークの変化 江田 朱里:脊髄損傷後に出現する触覚アロディニアに特徴的な脳波成分の分析 古賀 優之:人工膝関節全置換術の周術期における運動恐怖の縦断経過分類と疼痛および運動学的指標の特徴―予備的研究― 海藤 公太郎:療法士として働く非特異的腰痛有訴者の患者教育ニーズに関するパイロット混合研究 内沢 秀和:亜急性期脳卒中後疼痛に対する早期経皮的電気刺激(TENS)介入の有効性:単一症例ABABデザインによる時系列分析 南川 勇二:しびれ同調経皮的電気神経刺激によるしびれ感・アロディニアの改善と長期持続効果:脳波所見を含めた症例報告 輝かしい受賞 その中で、客員研究員の西 祐樹氏(現・長崎大学生命医科学域(保健学系) 助教)が「しびれ同調経皮的電気刺激の即時効果を規定する臨床指標:末梢・中枢神経障害を対象とした疾患横断的決定木分析」というテーマで発表し、奨励賞を受賞しました。多職種が参加する合同学会の中で、本学関係者が受賞したことは大変喜ばしい成果です。    終わりに 来年度開催のJAPAN PAIN WEEK 2026(12月3日~5日、東京ビッグサイト)では大住 倫弘准教授が第30回日本ペインリハビリテーション学会の大会長を務められます。合同学会に向けて、より一層盛り上げていきたいと思います。   今後も、畿央大学大学院とニューロリハビリテーション研究センターが疼痛領域、そして社会に貢献できるよう、臨床・研究・教育ともにさらに精進してまいります。   畿央大学 ニューロリハビリテーション研究センター 研究員 佐々木 遼 関連記事 第25回認知神経リハビリテーション学会学術集会にて本学関係者が学会長・多数登壇!~ ニューロリハビリテーションセンター CREST「マルチセンシング」研究領域の領域会議が開催されました!~ ニューロリハビリテーション研究センター 地域リハビリテーション研究室大学院生・研究員の学会での活躍をご紹介~健康科学研究科 第23回日本神経理学療法学会学術大会にて本学関係者が多数登壇・受賞しました!

2025.12.23

第25回認知神経リハビリテーション学会学術集会にて本学関係者が学会長・多数登壇!~ ニューロリハビリテーションセンター

2025年11月29日(土)~30日(日)に、大阪市中央公会堂にて第25回認知神経リハビリテーション学会学術集会が開催されました。畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターの大松 聡子客員准教授が学会長を務め、本学からは多くの大学院生・修了生・教員が登壇しました。 冒頭の学会長講演では、大松 聡子客員准教授が、畿央大学大学院在学時から取り組んできた視線計測や脳画像を用いた研究を紹介しながら、学術集会テーマ「見えないものを観る〜行為と認知のVisualization〜」の背景や視座を示しました。   クリニカルディスカッションでは、9名の本学関係者が以下の各病態に関するセッションでモデレーターやパネリストを務め、最新の研究活動や臨床経験にもとづく発表を行い、『見えない「病態」を観る』視点や思考について議論を展開しました。   発表演題 慢性疼痛 大住 倫弘准教授が「疼痛リハビリテーションにおける情報の不一致と身体情緒」を捉える視点について、修了生の井川 祐樹さん(西大和リハビリテーション病院)が「痛みという現象の再考―臨床的洞察に基づく多角的評価の重要性―」について、修了生の長倉 侑祐さん(たつえクリニック)が「肩関節鏡視下腱板修復術後の疼痛患者におけるナラティブと客観的指標の統合―個別性を捉えた病態把握と介入の視点―」について発表しました。 姿勢バランス 修了生の菅沼 惇一さん(中部学院大学)が「姿勢バランスの見えない病態を多角的側面から観る」枠組みを提示し、植田 耕造客員准教授(JCHO大和郡山病院)が「見えない恐怖感や注意は姿勢バランスをどう変えるか」について研究成果にもとづく発表を行いました。 小児疾患 修了生の浅野 大喜さん(日本バプテスト病院)が発達に関する理論や症例をもとに「当たり前の視点に至るまでの臨床思考」を整理し、大学院生の私 長森 由依(北陸大学)が『「この子なりの成長」の可能性を観る~重度肢体不自由児と養育者の相互作用のVisualization~』と題して多層的・多角的・微視的な観察の視点について発表しました。 高次脳機能障害 修了生の玉木 義規さん(甲南病院)が「左半球損傷者をどのように観察し、病態を捉え介入につなげていくか」と題して失語症や失行症の症例を提示し、大学院生の産屋敷 真大さん(市立福知山市民病院)が「脳卒中後症例の身体に対する感情」の強度や空間的な広がりを可視化するbody mapping法を用いた取り組みについて発表しました。     教育講演 教育講演では、本学関係者4名を含む講師陣が登壇しました。   信迫 悟志教授が「実験的手法で明らかにする認知の構造」、石垣 智也准教授が「症例検討の在り方を再考する」、修了生の上田 将吾さん(結ノ歩訪問看護ステーション)が「言語の質的分析」、修了生の塩崎 智之さん(奈良県立医科大学)が「前庭系の多面的評価の視点」といったテーマを掲げ、それぞれの立場から「見えないものを観るための手段」について講演しました。 ポスター発表 ポスター発表では、CREST研究の一部として、大学院生の三枝 信吾さん(東海大学文明研究所)が「入院中の脳卒中者における上肢経験の変容過程–二症例に基づく比較的アプローチ–」について発表しました。異なる変容過程を辿った2症例の経過をもとに、活発な議論が行われました。 シンポジウム シンポジウムでは、修了生の赤口 諒さん(摂南総合病院)が「上肢機能の回復可能性と治療ストラテジーを把持力制御と認知神経リハビリテーションの視点から紐解く」というテーマで、大学院生の南川 勇二さん(西大和リハビリテーション病院)が「実生活における上肢活動の観える化と心理と文脈統合による行動変容支援」というテーマで発表し、見えない変化を可視化し実践へとつなげるストラテジーについて議論しました。     学会の最後には、2日間の総括と今後の課題について議論が行われました。ときにユーモアを交えながら忌憚のない意見が交わされ、あたたかい空気と身が引き締まる思いを胸に、学会は幕を閉じました。   この2日間では、一般化されたエビデンスから漏れてしまう対象者の個別性や主観的体験をどのように観るかについて、認知神経リハビリテーションの枠組みやそれにとらわれない視点で議論が繰り広げられました。日々の取り組みを異なる立場から振り返るとともに、視野を広げる貴重な時間とすることができました。また、私たち大学院生にとって初のパネリストやシンポジストとしての機会を、神経リハビリテーション学研究室の尊敬する先輩方と同じ壇上で経験し議論できたことは、かけがえのない財産となりました。   このような貴重な機会をくださった学会長の大松 聡子客員准教授はじめ運営のみなさま、そして日頃より親身にご指導くださり、この2日間も私たちをあたたかく見守り、励まし、誰よりも刺激的な議論を展開する背中を見せてくださった森岡 周教授に、心より感謝申し上げます。本学会での学びを活かして、引き続き神経リハビリテーション学研究室の仲間たちと切磋琢磨し研鑽に努めてまいりたいと思います。   畿央大学大学院 健康科学研究科 博士後期課程2年 長森 由依 関連記事 CREST「マルチセンシング」研究領域の領域会議が開催されました!~ ニューロリハビリテーション研究センター 地域リハビリテーション研究室大学院生・研究員の学会での活躍をご紹介~健康科学研究科 第23回日本神経理学療法学会学術大会にて本学関係者が多数登壇・受賞しました! 第35回日本呼吸ケア・リハビリテーション学会学術集会で2年連続となる「医療の質特別賞」を受賞! ~ 健康科学研究科  

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