2017年の健康科学専攻(博士後期課程)の新着情報一覧
2017.09.13
ソーシャルスキルと痛みの関係に関する大学院生の論文がJournal of Pain Research誌に掲載!~健康科学研究科
社会の中で“上手くやっていく”能力は「ソーシャルスキル」と呼ばれており、このスキルは自身の心理状態を良好に保つためにも必要だと考えられています。畿央大学大学院健康科学研究科修了生の田中陽一らは「ソーシャルスキルと痛みとの間には密接な関係が存在するのではないか?」という仮説を立てて、共分散構造モデリングによって検証しました。この研究成果は、Journal of Pain Research誌(Uncovering the influence of social skills and psychosociological factors on pain sensitivity using structural equation modeling)に掲載されています。 研究概要 痛みには多面性があり、同一環境・刺激でも痛みの感じ方は個人によって異なります。痛みに対する複合的な治療概念として生物心理社会モデルが提唱されており、生物学的な要因に加えて、心理的側面、社会的側面を統合した臨床対応が求められています。今回の研究では社会的要因の1つであるソーシャルスキルに焦点を当てています。先行研究では、ソーシャルスキルが低い者はネガティブな心理状態に陥りやすく、ソーシャルスキルに優れている者は社会的支援(ソーシャルサポート)を受けやすくなるとともに生活の質が高くなり、抑うつに陥りにくいとされています。このように、ソーシャルスキルは個人の心理社会的要因の形成・構築に重要な影響を与えていることが明らかとなっていますが、痛みの感じ方との関係を検討した研究は報告されていませんでした。 そこで研究グループは、ソーシャルスキルが痛み感受性および心理社会的要因へ与える影響について共分散構造分析(structural equation modeling:以下SEM)を用いて検討しました。SEMの結果、ソーシャルスキルの下位項目である「関係開始」スキル(集団のなかでうまくやっていく第一歩として重要なソーシャルスキル)と痛みの感受性との間に正の関係性があることが認められました。 本研究のポイント SEMでは「関係開始」スキルが心理要因やソーシャルサポートと有意な関係性を有しているだけでなく、痛み感受性とも有意な関係性にあることが認められた。 研究内容 社会的要因として、ソーシャルスキル、ソーシャルサポート、心理要因として抑うつ、孤独感をそれぞれ質問紙にて評価しました。痛みの感受性は、痛みを惹起する画像を使用し内的な痛み体験を通して評価しました(図1)。 図1:使用した痛み画像 ソーシャルスキルと痛みの感受性の相関分析では、ソーシャルスキルの合計値と下位項目の「関係開始」スキルが痛み感受性と正の相関関係を有していました。SEMでは、ソーシャルスキル下位項目である「関係開始」を扱ったモデルで「関係開始」スキルが心理要因と負の関係性、ソーシャルサポートと正の関係性を有し、痛み感受性と正の関係性にあることが認められました(図2)。これらのことから、ソーシャルスキルの1つである「関係開始」スキルが「痛みの感受性」と密接な関係を持つことだけでなく,痛みの慢性化を助長させるような「抑うつ」「孤独感」とも関係していることが明らかになりました. 図2:共分散構造分析の結果 *p < 0.05. **p < 0.01. ***p < 0.001. 本研究の意義および今後の展開 研究成果は、痛みの臨床対応においても、良好な心理状態や社会関係性の構築に必要な個人のソーシャルスキルを意識・評価して介入することの重要性を示唆すると考えられます。今後は、身体的な痛み刺激を用いた検討や、臨床場面でのデータを蓄積していく必要があります. 論文情報 Yoichi Tanaka, Yuki Nishi, Yuki Nishi, Michihiro Osumi, Shu Morioka. Uncovering the influence of social skills and psychosociological factors on pain sensitivity using structural equation modeling. Journal of Pain Research. 2017. 10 2223–2231. 問い合わせ先 畿央大学大学院健康科学研究科 修了生 田中 陽一(タナカ ヨウイチ) E-mail: kempt_24am@yahoo.co.jp 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター センター長 森岡 周(モリオカ シュウ) Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.morioka@kio.ac.jp
2017.08.09
平成29年度 運動器リハビリテーションセミナー「臨床編」を開講しました。
7月30日(日)、平成29年度「畿央大学運動器リハビリテーションセミナー(臨床編)」が開催されました。運動器リハビリテーションセミナーは、卒後のリカレント教育(再教育)の機会や最新知見を提供することで、運動器リハビリテーションに必要な知識を基礎から実践まで系統的に学べるプログラムとなっています。 前年度までのプログラムを改変し、今年度は、明日の運動器リハに使える『エビデンス編』、部位ごとに基礎から臨床応用まで学べる『臨床編』、臨床現場での日々の疑問を客観的に解決する手法を学ぶことで、未来の運動器リハビリテーションを創造する『臨床研究編(導入)』『臨床研究編(実践)』の4つで構成されています。 そして、今回は『臨床編』として、臨床で多く経験する運動器疾患を中心に、各関節の関節構造・運動学・疾患に対する治療戦略を多くの研究論文から考察した内容になっていました。 まず、1講座目は「肩関節のリハビリテーションと最新の知見」というテーマで、運動器リハビリテーションセミナーの代表である福本准教授による講義を開始しました。解剖学・運動学の振り返りから、ガイドラインや最新のエビデンスを用いて、どのように臨床現場で診ていくかについてご紹介いただきました。 2講座目、「肘・手関節および体幹の最新知見とリハビリテーション」については、健康科学研究科修了生で他機関にて活躍されている梅山和也先生、粕渕賢志先生からお話いただきました。梅山先生からは近年、高齢者だけでなく、勤労者でも問題となっている腰痛を中心に、粕渕先生からは肘・手関節についてアプリケーションを用い、実際の関節の動きを確認しながらご説明いただきました。また、粕渕先生の研究テーマである「ダーツスローモーション」については整形外科の教科書でも取り上げられるようになっており、まさにホットトピックになりつつあるとのことでした。 【写真上;梅山先生】 【写真下;粕渕先生】 3講座目は、「変形性膝関節症とその人工関節の最新知見とリハビリテーション」として、健康科学研究科修了生の平川善之先生から、運動器疾患で最も多く経験する変形性膝関節症および人工関節置換術後の治療戦略について、実際に身体を動かしたデモンストレーションを入れながら、経験の浅い受講者の方にもわかりやすくご説明いただきました。 4講座目は、「フレイル・サルコペニア・ロコモーティブシンドロームの予防」について、松本から、老年学のトピックであるフレイル・サルコペニア・ロコモーティブシンドロームについて現場で落とし込めるように整理し、説明させていただきました。 全体を通して、4講座ともかなりの情報量でしたが、参加者の方々は熱心に聴講され、個別で質問もされていました。なかなか自分だけでは、それぞれの分野の最新の知見を調べて理解するのは難しいと思いますが、それぞれの講座でまとめていただき、臨床に戻ってから、しっかり考えるための素材がつまっていたのではないかと思います。 最後に、今回の運動器セミナーを受講して頂いた皆様、ありがとうございました。次回は今年新たに臨床研究編を二つに分けたプログラムを開始しますので、楽しみしておいてください。 臨床研究編(導入) 平成29年10月8日(日) 詳細 臨床研究編(実践) 平成30年1月28日(日) 詳細 お申し込みはコチラから! 理学療法学科 助教 松本 大輔 【関連記事】 平成28年度「臨床研究編」レポート 平成28年度「下肢編」レポート 平成28年度「上肢・体幹編」レポート 平成28年度「エビデンス編」レポート
2017.07.21
書評~庄本康治教授執筆「エビデンスから身につける物理療法」
理学療法学科の庄本康治学科長が羊土社より「エビデンスから身につける物理療法」を発行されました。庄本先生をはじめとする執筆者15名のうち11名(教員3名、大学院修了生7名、卒業生1名)が大学院・学部関係者で構成されています。 執筆者の一人であり客員研究員でもある小嶌康介先生から書評が届きました。 ▼理学療法学科長の庄本教授(研究室にて) 庄本教授が編集された物理療法書籍「エビデンスから身につける物理療法」をご紹介させていただきます。庄本先生をはじめ急性期や回復期のリハビリテーション現場で物理療法を実践し、研究成果を発表している若手の先生が多数共同執筆されています。 主な読者対象は理学療法士の学生ということで私自身、学生に戻った気持ちで読ませていただきました。まず感じたことは最新のエビデンスが多く含まれており、知識的な学びという点だけでも内容が非常に充実している点です。また具体的な実践方法について写真と動画が多く掲載され、細かい解説がなされているので分かりやすく臨場感があります。この点では臨床のセラピストの技術力向上にも大いに活用出来る書籍だと思います。 疼痛や関節可動域制限などの機能障害、また様々な物理刺激について生理学、病理学、物理学など関連学際領域の解説がしっかりと書かれています。これにより、病態と治療効果を十分理解した上で物理療法を正しく選択し、効果的に用いる能力が身につく、まさに書名通りの内容となっています。 国家試験に関連した領域にはマーキングがなされており、試験対策にも当然活用できるでしょう。ただし、ここまでも述べた通り本書の最大の魅力はエビデンスの理解とともに臨床での実践能力を養うことができる点であると思います。臨床実習に臨む学生にも是非本書を熟読した上で物理療法の実践体験をしてほしいと願います。 庄本先生が序論で書かれていますが、本邦では物理療法はまだまだ積極的に実践されていません。本書にはこの問題を根底から解決するための答え、すなわち学生時代における物理療法への興味と理解を深め、使用経験を促していくための魅力が詰まっています。本書の読者が患者を治療する上で物理療法を「当たり前に存在するオプションの一つ」と考えて実践していくことで、物理療法は更なる発展が期待できます。職種や分野を問わず、臨床現場での実践を通して物理療法が研究課題となり、学術成果として発展し、「クライエントに良い影響」をもたらすという庄本先生の祈念に強く共感を感じています。 西大和リハビリテーション病院 畿央大学大学院健康科学研究科 客員研究員 理学療法士 小嶌 康介
2017.05.20
経頭蓋直流電流刺激によって社会的認知機能が向上することを明らかに~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
経頭蓋直流電流刺激により社会的認知機能が向上することを明らかに 自閉症スペクトラムに関連する社会性の神経メカニズムを説明する基礎的知見へ 「自他区別」、すなわち自分の思いや考えと他者の思いや考えは異なることがあると理解した上で、他者の考えや意見を参考にしつつ、自身の考えや意見をより良いものにしていく能力は、社会生活において重要です。一方で、「視点取得」すなわち他者の視点に立って物事を考える能力は、他者の意図や感情といった心的状態を適切に理解する上で重要です。畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターの信迫悟志らは,経頭蓋直流電気刺激(transcranial Direct Current Stimulation:以下,tDCS)を用いて、右頭頂-側頭接合部および右下前頭皮質の神経活動を促進すると、「自他区別」や「視点取得」といった社会的認知機能が向上することを明らかにしました。これは、社会性の神経基盤を説明する基礎的知見になるものと期待されます。この研究成果は、Frontiers in Behavioral Neuroscience誌(Transcranial direct current stimulation of the temporoparietal junction and inferior frontal cortex improves imitation-inhibition and perspective-taking with no effect on the Autism-Spectrum Quotient score)に掲載されています. 研究概要 自閉症スペクトラムは、主に社会性に困難を認める発達障害です。自閉症スペクトラムの神経科学的な説明として、右頭頂-側頭接合部(Temporo-Parietal Junction:以下、TPJ)や右下前頭皮質(Inferior Frontal Cortex:以下、IFC)の機能不全が指摘されています。TPJは他者の心的状態を見出したり推論したりする能力(メンタライジング)の中核領域とされています。IFCは、模倣や共感の神経基盤とされるミラーシステムの主要領域です。 「自他区別」や「視点取得」のような社会的認知能力を客観的かつ定量的に測定するのには、困難が伴います。そんな中、自他区別能力を反映する課題として、模倣抑制課題(図1)があります。この課題は、画面上に表示された数字に従って、人差し指か中指を持ち上げる課題です(①なら人差し指、②なら中指)。その際、指示と動画が一致している条件と異なっている条件があります。通常、ヒトは目前の他者の運動を真似ることよりも、他者の運動と異なる運動をすることの方が難しくなります。これは模倣や共感を担うミラーシステムの自動的活性化によるためとされています。したがって、ミラーシステムの働きによって、一致条件の反応時間や正答率は促進され、逆に不一致条件では他者運動に干渉を受けて、反応時間が遅くなったり、正答率が低下します。つまり他者の運動につられてしまうわけです。この影響を「模倣干渉効果」と呼び、それが小さくなるほど自他区別がしっかりできていることの一指標となります。 図1:模倣抑制課題 また視点取得課題(図2)では、素早く他者の視点に立って物事を見る能力を定量的に測定することができます。図2の視点取得条件をご覧ください。あなたはラックの手前に立っています。ラックの向こう側では、男性があなたに向かって「1番大きなコップに触れてください」と指示を出しています。実際、1番大きなコップは青丸で囲んだコップですが、この条件では指示を出している男性からはそのコップが見えていないことに気が付く必要があります。そして、男性が言っている1番大きなコップとは、赤丸で囲んだコップだと認識する必要があります。 図2:視点取得課題 信迫らの研究グループは、DCSという脳活動を修飾することできるニューロモデュレーション技術を用いて、自閉症スペクトラムにおいて機能不全が指摘されているTPJとIFCの脳活動を一時的に促進させた際の模倣抑制、視点取得、そして自閉症スペクトラム指数(Autism spectrum Quotient:以下,AQ)に与える影響について検討を行いました。AQとは、個人の自閉症傾向を測定するスクリーニング検査です。その結果、TPJ刺激とIFC刺激の両方において模倣抑制と視点取得が促進されることが示されました。一方で、AQには影響を及ぼさないことも示されました。 本研究のポイント tDCSによるニューロモデュレーション技術によって、自他区別や視点取得に関係する大脳皮質領域を明らかにした。 研究内容 本研究ではtDCSを用いて、TPJとIFCの神経活動を一時的に促進する手続きを加えることで示される模倣抑制や視点取得、AQへの影響を検討しました。実験では、右TPJを刺激する群と右IFCを刺激する群の二群を設定し、それぞれプラセボ刺激(脳活動に影響を及ぼさない刺激)を加え、模倣抑制課題と視点取得課題の正答率、反応時間およびAQを測定しました。その結果、TPJ刺激とIFC刺激の両方の群において、AQに対しては影響を及ぼさないものの、模倣抑制と視点取得の反応時間を促進することが示されました(図3,4). 図3:模倣抑制課題の結果 図4:視点取得課題の結果 模倣抑制は、眼前の他者運動を抑制して指示に従う必要があるため、他者を抑制し、自己を促進する課題とも言えます。一方で、視点取得は自分の見えを抑制して他者の視点に立つ必要があるため、自己を抑制し、他者を促進する課題とも言えます。このように一見すると対照的な課題ですが、本研究ではTPJとIFCの両方が両課題に関与していることが示されました。この研究結果に対して研究グループは、IFC(ミラーシステム)とTPJ(メンタライジング)は社会的認知において競合するシステムではなく、所与の行動的状況において適切な社会的相互作用を確実にするために、お互い相乗的・相補的に働くシステムであると考察しています。 本研究の意義および今後の展開 本研究成果は、自閉症スペクトラムに関連する社会性の神経メカニズムを説明する基礎的知見のひとつになるものと期待されます。本研究により、TPJとIFCの両方が自他区別と視点取得に貢献していることが明らかになりましたが、自閉症スペクトラム傾向を反映するAQとの関連については未だ明らかになっておらず、この点に対する更なる研究が望まれます。また、本研究成果は、模倣抑制や視点取得といった運動・行動課題による訓練が社会性の向上につながる可能性も示唆しており、今後は社会性向上を目指したニューロリハビリテーションに関する研究も望まれています。 論文情報 Satoshi Nobusako, Yuki Nishi, Yuki Nishi, Takashi Shuto, Daiki Asano, Michihiro Osumi, Shu Morioka. Transcranial direct current stimulation of the temporoparietal junction and inferior frontal cortex improves imitation-inhibition and perspective-taking with no effect on the Autism-Spectrum Quotient score. Frontiers in Behavioral Neuroscience. 2017 問合せ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 畿央大学大学院健康科学研究科 特任助教 信迫 悟志(ノブサコ サトシ) Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.nobusako@kio.ac.jp
2017.04.28
平成29年度 理学療法特別講演会「地域を支える理学療法士を目指して」(卒業生対象)
特別講演会は毎年、畿央大学卒業生に向けてリカレント教育(卒業後も幅広い知識を養う)を兼ねて行っています。地域での認知症予防・フレイル予防に従事しておられる鹿児島大学医学部保健学科の牧迫飛雄馬先生に、今後の理学療法士の動向についてお話し頂きます。 なお本講演は、受講料1000円にて卒業生以外の医療関係者にも公開させて頂きます。 日 時 2017(平成29)年11月26日(日)10:30~12:00 (10:00~受付) 会 場 畿央大学 L棟1階 L103講義室 講 演 地域を支える理学療法士を目指して ー今後理学療法士にどのような動きが求められるかー 講 師 牧迫 飛雄馬 先生 / 鹿児島大学医学部保健学科 受講料 無料(卒業生以外は1000円) 懇親会 12:30~14:00 講演会終了後、懇親会を予定しています。軽食・ソフトドリンクを用意しています(無料) 申込方法 下記①~⑥を明記の上、E-mail、ハガキ、FAXのいずれかでお申し込みください。受講証の発行は致しません。当日、直接受付にお越しください。 ①氏名(ふりがな) ②卒業年度 ③住所(郵便番号から) ④電話番号 ⑤メールアドレス(お持ちの方) ⑥所属先(団体名、病院名等) 申込み締め切り 2017年11月20日(月)必着 ※定員に若干の余裕があるため引き続き申し込みは受け付けますが、資料準備のため事前申込にご協力をお願いいたします。 郵送先 〒635-0832 奈良県北葛城郡広陵町馬見中4-2-2畿央大学 広報センター 理学療法特別講演会係 FAX : 0745-54-1600 E-mail:dousoukai@kio.ac.jp (件名に「理学療法特別講演会」と明記) お問合せ TEL:0745-54-1603(担当:増田、伊藤、鈴木) ※公共交通機関を利用してご参加ください。
2017.04.05
平成29年度入学式を行いました。
607名の新たな畿央生が誕生! 2017(平成29)年4月4日(火)、畿央大学健康科学部346名、教育学部220名、健康科学研究科28名(修士課程22名、博士後期課程6名)、教育学研究科(修士課程)4名、助産学専攻科9名あわせて607名の新しい畿央生が誕生しました。学部は午前10時、大学院と助産学専攻科は午後3時から入学式を行いました。 門出を祝うように雲ひとつない快晴のもと、新入生と保護者の方々でキャンパスは華やぎました。学科長から一人ひとり呼名され、初々しい面持ちで新入生が起立、冬木正彦学長による入学許可の言葉をしっかりと受け止めていました。学長式辞では、「冬木学園の一員として建学の精神を身につけ、能動的に学んでいただきたい。」と述べられました。 続いてご来賓の山村吉由広陵町長、香芝市の廣瀬教育長、清水隆平後援会長からも新入生へのエールの言葉をいただきました。 新入生代表健康栄養学科1回生の家崎明日佳さんから宣誓、在学生代表松岡紗夜さんから歓迎の言葉があり、閉式となりました。その後、教職員の紹介、学歌の紹介、学生による歓迎行事と続き、ジャグリング部とチアリーディング部が華を添えました。 また午後3時からは、大学院 健康科学研究科・教育学研究科および助産学専攻科の入学式が行なわれました。 大学院および専攻科の入学生、全員の名前が読み上げられ入学を許可された後、それぞれの研究科長、専攻科長から祝辞をいただきました。より高度な学びと研究活動に向けての決意を固める、緊張した中にも和やかな入学式となりました。 入学式の様子は、大学公式facebookページでもご覧になれます。
2017.03.22
神経リハビリテーション学研究室の研究交流会が開催されました。
3月11日(土)、畿央大学にて神経リハビリテーション学研究室(大学院 森岡研究室)の研究交流会が開催されました。今回は、吉備国際大学の竹林崇先生,伊丹恒生脳神経外科病院の竹内健太先生(いずれも作業療法士)に御来学頂き、研究紹介を行って頂きました。また、畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターの大住助教、大学院生の藤井、高村、石垣からも研究紹介を行い、双方の研究に関して意見交換を行いました。また、本会では在学中の大学院生以外にも、修士課程や博士課程の多くの修了生が参加し、懐かしい顏ぶれが揃う機会にもなりました。 研究会の前半は、竹林先生と竹内先生からそれぞれの研究紹介がありました。 竹林先生の研究紹介では、CI療法(脳卒中後片麻痺上肢の集中訓練:Constraint induced movement therapy)とTransfer package(改善した上肢機能を生活場面の使用に汎化させる行動療法)との併用効果や、その改善に関する神経メカニズム、運動療法にロボットを用いることの有用性、そして、経頭蓋直流電気刺激と末梢電気刺激の併用がCI療法の効果に与える影響など、脳卒中患者を対象とした様々な臨床研究の成果を示して頂きました。脳卒中患者の上肢機能という事項に対して、様々な側面から評価・介入しつつも回復機序までも検証しておられる一連の取り組みに感銘を受けると共に、強い臨床志向的な研究動機に触れさせて頂きました。また、竹内先生からは、半側空間無視患者の臨床的評価に対する素朴な疑問を検証するために取り組んでおられる臨床研究を紹介して頂きました。普段の臨床で生じる疑問を取りこぼさず、それに対する仮説を立てて検証していく手続きの重要性を改めて学ばせて頂きました。 続いて後半は、畿央大学から半側空間無視の病態特性について藤井、高村が、慢性疼痛患者の運動特性について大住助教、姿勢制御の社会的特性に関して石垣が紹介させて頂きました。 それぞれの研究紹介に対して、竹林先生、竹内先生との意見交換だけでなく、修了生からの意見も活発に発せられ、予定時間を超過してしまうほどの充実した会となりました。また、普段から博士課程の先輩方の研究発表を聞く機会がある修士課程の私達にとっても、発表を聞く度に研究が発展している先輩方の姿を目の当たりにし、刺激を受けるとともに、自身の研究に取り組む姿勢についても学ばせて頂きました。 交流会の途中で撮影した集合写真ですが、実は他の共同研究で来学されていた東京大学医学部附属病院リハビリテーション科の四津先生が交流会へと足を運んでくださり、集合写真まで撮らせて頂きました。東京へ戻られるお忙しい時間にも関わらず、わざわざ足を運んで頂きました。ありがとうございました。 半日という短い時間で開催された会ではありましたが、建設的な意見交換が活発に行われ、未来志向的な場を共有することができたと思います。そして、このような機会をきっかけに、様々な領域の研究者との協力関係を形成し、真にリハビリテーションの対象者に還元される研究成果の発信に繋げていきたいと思います。 最後になりましたが、ご多忙のなか御来学して頂いた竹林先生ならびに竹内先生、企画及び運営を実施してくださった博士後期課程の方々、そして、このような機会を与えてくださった森岡教授に深く感謝を申し上げます。 畿央大学大学院 健康科学研究科 修士課程1年 山道菜未
2017.03.16
平成28年度卒業証書・学位記・修了証書授与式を行いました。
2016(平成28)年度卒業証書・学位記・修了証書授与式が3月15日(水)に冬木記念ホールにて挙行され、健康科学部281名(理学療法学科67名・看護医療学科92名・健康栄養学科75名、人間環境デザイン学科47名)、教育学部153名、助産学専攻科7名、大学院27名(健康科学研究科修士課程22名、博士後期課程2名、教育学研究科修士課程3名)の合計468名を送り出しました。 10時に開式、国歌斉唱を終えると、学部学科ごとの代表者に卒業証書・学位記・修了証書が手渡されました。その後、学長表彰が行われ、特に優秀な成績を修めた学生が各学科1名選ばれ、表彰状と記念品が手渡されました。 冬木正彦学長による式辞では、「建学の精神である『徳をのばす、知をみがく、美をつくる』を卒業後も実践し、大学で培った仲間との絆や支えてくださる周囲の皆さんへの感謝の気持ちを忘れず、社会で活躍してください。」という言葉が送られました。続いて山村吉由広陵町長、清水隆平後援会長、唄大輔畿桜会長よりご祝辞をいただきました。 その後、学生自治会である畿友会長の光岡克真さんが在学生を代表して送辞を、卒業生を代表して現代教育学科の土山小梅さんが答辞を述べました。 午後4時からは会場をホテルニューオータニ大阪に移して「卒業パーティー」が開催されました。女子学生たちは袴姿からドレス姿にお色直しして再登場。全学科が一つのキャンパスにある本学では学科をこえた交流も多く、恩師を囲みながら仲間たちと終始笑顔の絶えない時間となりました。 大学公式facebookページに式典およびパーティーのフォトレポートを掲載しておりますので、合わせてご覧ください。 (facebookアカウントをお持ちでない方もご覧になれます) 卒業式 フォトレポート 卒業パーティー フォトレポート
2017.02.13
大学院生の研究成果がInternational Journal of Developmental Disabilitiesに掲載!~健康科学研究科
発達障害児の運動機能に身体知覚の歪みが関係していることを明らかに 脳性麻痺に限らず発達障害児は、全身や手先の不器用さを伴うことが報告されています。この原因として、身体イメージや身体図式とよばれる自己身体の知覚、認識の問題が指摘されていますが、この関係を客観的に調査した研究はこれまでありませんでした。畿央大学大学院健康科学研究科修士課程修了生(日本バプテスト病院)の浅野大喜らは、運動障害をもつ発達障害児の運動機能と、身体イメージの指標とされている他者に触れられた場所を同定するtactile localization能力が関係していることを明らかにしました。この研究成果は、International Journal of Developmental Disabilities誌(Associations between tactile localization and motor function in children with motor deficits)に掲載されています。 【研究概要】 出生後早期の脳損傷により運動障害を呈する脳性麻痺児は、運動障害だけでなく身体運動の知覚にも問題があることが示されています。また、自閉症スペクトラム障害などの発達障害児にも運動の不器用さ、身体知覚の問題が指摘されています。これらの運動の困難さの原因として、自己の身体イメージや身体図式といった自己身体の知覚、認識の発達不全が関与していると考えられていますが、下肢については客観的に調査された研究はありませんでした。そこで、研究グループは、運動障害をもつ脳性麻痺や発達障害児を対象に、触れられた手指、足趾、下肢の場所を同定する触覚位置同定(tactile localization)能力と運動機能との関係について調査し、手指の認識と手の巧緻動作、さらに下肢全体のtactile localization能力と下肢の運動機能との間に相関関係があることを見出しました。 研究の詳細は畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターホームページでご覧になれます。
2017.02.07
大学院生の研究成果がClinical Rehablitation誌に掲載!~健康科学研究科
畿央大学大学院健康科学研究科博士後期過程の今井亮太らは、橈骨遠位端骨折術後患者に腱振動刺激による運動錯覚を惹起する(引き起こす)ことで痛みの軽減のみならず、手関節の運動機能の改善が認められたことを示しました。また、この効果は術後2ヵ月経っても持続していました。その研究成果はClinical Rehabilitation誌(Effect of illusory kinesthesia on hand function in patients with distal radius fractures: a quasi-randomized controlled study)に1月12日に掲載されました. 【研究概要】 2015年に今井らは、橈骨遠位端骨折術後患者に腱振動刺激による運動錯覚を惹起させることで、痛みの感覚的側面だけではなく情動的側面(不安や恐怖)の改善が認められたことを報告しました。またこの時、2ヵ月後まで効果が持続したことも示さました。しかしながら、理学療法において痛みを改善軽減させることは重要ですが、1番の目的は手関節の運動機能(ADL)の獲得であるにも関わらず、調査ができていませんでした。そこで本研究では、2ヵ月後まで手関節の運動機能を評価して検討しました。その結果、運動錯覚を惹起しなかった群と比較して、運動錯覚を惹起した群では有意に手関節の運動機能の改善が認められました。 詳細はニューロリハビリテーション研究センターホームページでご覧になれます。