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健康科学専攻(博士後期課程)の新着情報一覧

2019年の健康科学専攻(博士後期課程)の新着情報一覧

2019.03.14

10/19(土)理学療法特別講演会「スポーツを通じた共生社会の実現」を開催します。

畿央大学卒業生向けのリカレント教育(卒後教育)を兼ねて行われている「理学療法特別講演会」。2020東京オリンピック・パラリンピックを前に、今年は広島大学病院スポーツ医科学センターの平田和彦先生から、理学療法士のスポーツへの関わりについて、お話し頂きます。なお、本講演は受講料1000円にて卒業生以外の医療関係者にも公開させて頂きます。    ▲昨年の様子 日 時 2019年10月19日(土)10:30~12:00 (10:00~受付) 会 場 畿央大学P棟2階 P201講義室 講 演 スポーツを通じた共生社会の実現 ~障がい者スポーツへの関わりを通して~ 講 師 平田 和彦 先生 /広島大学病院 スポーツ医科学センター 受講料 1000円(卒業生・在学生は無料) 備考 今年は、懇親会は行いません。卒業生は同窓会サロンにお越しください。 申込方法 下記①~⑥を明記の上、E-mail、ハガキ、FAXのいずれかでお申し込みください。受講証の発行は致しません。当日、直接受付にお越しください。 ①氏名(ふりがな) ②卒業年度 ③住所(郵便番号から) ④電話番号 ⑤メールアドレス(お持ちの方) ⑥所属先(団体名、病院名等) 申込締切 2019年10月15日(火) 申込先 〒635-0832  奈良県北葛城郡広陵町馬見中4-2-2 畿央大学 広報センター 理学療法特別講演会係 FAX : 0745-54-1600 E-mail:dousoukai@kio.ac.jp (件名に「理学療法特別講演会」と明記) 問合せ先 TEL:0745-54-1603(担当:畿央大学広報センター増田、鈴木、伊藤) ※公共交通機関を利用してご参加ください。

2019.03.11

平成30年度運動器リハビリテーションセミナー「臨床編」を開講しました。

平成31年3月9日(土)、畿央大学運動器リハビリテーションセミナー<臨床編>を開催しました。今回は、昨年7月29日に開催予定だったものが台風のため延期となり、日程が大幅に変更されたにも関わらず、近畿圏内をはじめ、ご遠方からもたくさんの方にお越しいただきました。   今回のセミナーは、上肢・下肢・体幹のつくりを知り、その運動療法の基礎と関連する最新知見について学ぶことを目的としています。 講義は、「肩関節のリハビリテーションと最新の知見」「運動器の痛みとリハビリテーション」、「変形性膝関節症とその人工関節の最新知見とリハビリテーション」「足部の機能障害と理学療法」という4つに分けておこなわれました。これらは運動器の理学療法分野に従事するうえで、皆様が多く触れる機会のあるテーマであり、また講義内容は単なる文献のレビューではなく、講師陣の経験や実技も交えたものでとても充実したものでした。     次年度もまた、引き続き運動器リハビリテーションセミナーを開催予定です。 今後もさらにブラッシュアップした知見をお持ち帰りいただき、臨床経験や臨床研究に生かしていただければと思っております。 詳細は決定次第、畿央大学ホームページにアップされますのでご確認ください。 皆様の受講を心よりお待ち申し上げております。   理学療法学科 准教授 福本貴彦   【関連記事】 平成30年度運動器リハビリテーションセミナー「臨床実践編 (膝関節)」を開講しました。 平成30年度 運動器リハビリテーションセミナー「エビデンス編」を開講しました。

2019.03.04

ニューロリハビリテーション研究センター「シンポジウム企画 × プロジェクト研究報告会」を開催しました。

2019年3月2日(土)に、畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターによる「シンポジウム企画 × プロジェクト研究報告会」を開催しました。今回は「身体性・社会性システムからニューロリハビリテーションを考える」というテーマで、教員がプロジェクト研究として実施してきたこれまでの研究成果を中心に、以下の内容を報告させて頂きました。   松尾 篤:「社会におけるコミュニケーションの役割」 信迫悟志:「発達性協調運動障害の病態分析から見える必要なニューロリハとは?」 前岡 浩:「痛みと情動とリハビリテーション」 大住倫弘:「疼痛に対するニューロリハの“具体的”な効果」 冷水 誠:「社会心理学的知見から考える運動学習戦略の検証」 岡田洋平:「姿勢、歩行制御の障害を理解するための行動および神経生理学的分析」 森岡 周:「身体意識の視点から神経障害の種々の病態を捉える」     多岐にわたった研究プロジェクトにみえるかもしれませんが、身体性・社会性システムからニューロリハビリテーションを考える取り組みは一貫しており、どちらが疎かになってもニューロリハビリテーションとして成り立たないことが再確認されました。例えば、“痛み”は身体的問題のみならず、情動的問題にもアプローチする必要があり、それは自分を取り巻く社会のかかわりによって大きく左右されることが報告されました。あるいは、“運動学習”は1人で黙々と練習をするだけでなく、激励や技術共有といったコミュニケーションが欠かせないことも報告されました。このように、ニューロリハビリテーションを“身体性”と“社会性”の両面から考えることによって、その解釈が立体的になり、リハビリテーションの奥深さをみることができると考えています。 このような背景も含め、来年度から再スタートする「ニューロリハビリテーションセミナー」では、“人間理解”と“リハビリテーション”を一緒に学ぶ機会にしていこうと考えています。こちらはホームページ・Facebook等で後日お知らせ致しますので、今後ともどうぞ宜しくお願い致します。   畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 助教 大住倫弘   関連リンク ●畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター ●畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター Facebook

2019.02.25

「今北ゼミ&福本ゼミ同門会」を開催!~同窓会レポート

畿桜会(畿央大学・畿央大学短期大学部・桜井女子短期大学同窓会)では、卒業後の同窓生のつながりを活性化することを目的に、一定数以上集まる同窓会の開催を補助しています。 ▶同窓会開催にかかわる補助について(大学ホームページ)   今回は、今北ゼミ&福本ゼミ同門会レポートをお届けします!     2019年2月10日(日)に、今北ゼミ・福本ゼミ合同で同門会を実施しました! 今年春に卒業予定の4回生から理学療法士として働いている社会人まで、総勢20名以上の会となりました。 今回は、大学で午前中から勉強会がスタートし、前半8名の卒業生に発表して頂きました。内容は臨床・研究・外部活動など様々な分野で発表をして下さいました。その後は、今北教授・福本准教授に特別講演をして頂きました。同じ理学療法士という職業でも、社会で活躍されている場面は様々で、改めて理学療法士の可能性の幅広さを感じました。私は社会人2年目になりますが先輩方や先生方の話を聞いて、私もこの場で自分の成果を発表出来るようにしていきたいと思いました。     勉強会の後は、奈良の大和平群のかんぽの宿へ移動し、宴会が行われました。勉強会の時とはまた違った雰囲気で沢山お話しを聴くことができました。 宴会の後は、さすが運動器ゼミ!と言わんばかりの本気の卓球大会が開催されました。1点入るごとに歓声が湧いたり、楽しい時間を過ごすことができました。 今年の同門会で、また更に縦と横の繋がりが深まったと感じました。また来年も参加させて頂きたいです。   理学療法学科11期生(2016年度卒業生) 安浦優佳

2019.02.21

脳卒中後の上肢運動機能に関連する運動イメージ能力~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター

畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター長の森岡 周教授らの研究グループは、両手協調運動課題(bimanual circle-line coordination task:BCT)を用いて、脳卒中片麻痺患者を対象に、運動イメージ能力、上肢運動機能、そして、日常生活における上肢の使用頻度ならびに動作の質との関係を調べました。一側上肢で直線を描きながら、反対側上肢で円を描くと、それに干渉されてしまい、直線が楕円化するといった現象が確認されています。BCTはそれをもとに開発された課題ですが、本研究では、対象者に非麻痺側上肢で直線を描いてもらいながら、麻痺側上肢で円を描くイメージを求め、その際の楕円化の程度を調べ、その楕円化の程度を運動イメージ能力の定量的指標としました。結果として、中等度〜軽度の上肢運動障害を有している脳卒中患者において、運動イメージ能力は、麻痺側上肢の日常生活における使用頻度を増大させ、その使用の際の動作の質に直接的に関係していることがわかりました。そしてそれら2つの要因を媒介し、上肢運動機能に間接的に関係することがわかりました。この成果は2月18日付けで米国科学誌『Annals of Clinical and Translational Neurology』(Motor‐imagery ability and function of hemiplegic upper limb in stroke patients)に掲載されました。   本研究のポイント ■ bimanual circle-line coordination task(BCT)は、麻痺側上肢の運動イメージ能力を定量的に評価できる手法である。 ■ 脳卒中患者における麻痺側上肢の運動イメージ能力は、日常生活における麻痺側上肢の使用頻度・動作の質に関係し、それらを媒介して上肢運動機能に関係する。   研究内容  本研究ではBCTを用いて、運動イメージ能力を定量的に調べ、運動イメージ能力が片麻痺上肢の運動機能や麻痺肢の使用頻度などに関係するかを明らかにしたものです。 対象は脳卒中片麻痺患者31名でした。BCTにはタブレット型PCを使用し、その課題は(1)unimanual-line(U-L):非麻痺側のみで直線を描く条件、(2)bimanual circle-line(B-CL):非麻痺側で直線を描き麻痺側で円を描く条件、(3)imagery circle-line(I-CL):非麻痺側で直線を描き麻痺側で円を描くイメージを行う3条件(図1)で行い、各々12秒間3セット、ランダムに実施しました。描かれた直線を記録し、その軌跡を1周期ごとに分解し、その歪みを数値化するためにovalization index(OI =[X軸データの標準偏差/Y軸データの標準偏差]×100)を算出しました。     図1: BCT課題の概要 A: 3条件の概要、U-L condition;非麻痺側上肢で直線を描く課題、B-CL condition;非麻痺側上肢で直線を描きつつ麻痺側上肢で円を描く課題、I-CL condition;非麻痺側上肢で直線を描きつつ麻痺側上肢で円を描くイメージを行う課題。B: 代表的なケースの軌跡、向かって左はU-Lの軌跡、右はI-CLの軌跡。I-CLのovalization indexからU-Lのovalization indexを減算した値をImage OI(運動イメージ能力)と定義しました。   運動麻痺の評価にはFugl-Meyer Motor Assessment(FMA)、日常生活での使用頻度にはMotor Activity Log(MAL)のAmount of Use(AOU)、動作の質にはMALのQuality of Movemen(QOM)を用いて評価しました。 OI値は、ULに対してBCLおよびICLで有意な増加を認めました。BCLとICLの間には有意差が見られず、BCLあるいはICLのOI値からULのOI値を減算したImage OI値においても、BCLとICLの間に有意差が見られませんでした。ゆえに、脳卒中片麻痺患者においても、運動イメージ能力を有していることが明らかになりました。 FMAとAOUの値を用いてクラスター分析した結果、2つのクラスター(クラスター1:10名、クラスター2 :21名)に分けられました。このうち、クラスター2のみFMAとAOUあるいはQOMに有意な相関が得られました。 クラスター2のデータを用いて媒介分析を行ったところ、媒介なしの場合ではImage OIとFMAの間に有意な相関が認められましたが、AOUあるいはQOMを媒介させると、それらの間に有意な相関が示されず、Image OIとAOUあるいはQOMの間に有意な相関、そして、AOUあるいはQOMとFMAの間に有意な相関が確認されました(図2)。       図2: 媒介分析の結果 媒介なしの場合ではImage OIとFMAの間に有意な相関をみとめましたが、AOUあるいはQOMを媒介させると有意な相関がみられなくなりました。一方、AOU媒介モデル(A)では、Image OIとAOUの間に有意な相関、AOUとFMAの間に有意な相関を認めました。他方、QOMモデル(B)においてもImage OIとQOMの間に有意な相関、QOMとFMAの間に有意な相関を認めました。AOUあるいはQOMを介したImage OIとFMAの間接効果は、ブーストラップ信頼区間(95%CI)から有意な正の効果を示すことがわかりました。   これらの結果から、脳卒中片麻痺患者において、運動イメージ能力の存在を定量的に確認することができました。一方で、運動イメージ能力は運動麻痺の程度に直接には関係しないものの、麻痺肢の使用頻度や動作の質に関係し、それらを媒介し、運動麻痺の程度に間接的に関係することが明らかになりました。   本研究の臨床意義および今後の展開 本研究結果は、脳卒中後の運動イメージ能力の向上が麻痺肢の使用頻度を増加ならびに動作の質を改善させ、それに基づき運動障害が改善することを示唆するものですが、その関係性を明確なものとするためには、縦断的調査を試みる必要があると考え、現在、それに取り組んでいます。   論文情報 Morioka S, Osumi M, Nishi Y, Ishigaki T, Ishibashi R, Sakauchi T, Takamura Y, Nobusako S. Motor‐imagery ability and function of hemiplegic upper limb in stroke patients Annals of Clinical and Translational Neurology 2019   問合せ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター センター長 森岡 周(モリオカ シュウ) Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.morioka@kio.ac.jp  

2019.01.30

平成30年度神経リハビリテーション研究大会を開催!~健康科学研究科(森岡研究室)

平成31年1月26・27日(土・日)に、信貴山観光ホテルにて神経リハビリテーション研究大会(院生合宿)が開催されました。この研究大会は今年で13年目を迎えました。本年度はニューロリハビリテーション研究センターの教員と大学院博士後期課程・修士課程のメンバーに加え、大学院博士課程修了生の平川善之さん、河村民平さんをお招きし、総勢28名での開催となりました。     初日は博士課程の院生3名の研究報告があり、その後に修了生の平川さんからCRPS症例に対する影絵を用いた介入について、河村さんから文の理解における再帰性との関連について話題提供をいただきました。いずれのプレゼンテーションも、内容、ディスカッションともに非常に密度の濃いものでした。目の前の現象をより深く理解しようとされている先輩方の研究者としての姿勢を見て、私も見習わないといけないと改めて感じました。     夕方には4つのグループに分かれて、修士課程1年の院生の研究計画に対するディスカッションが行われました。それぞれが研究背景や研究手続き、現在までの実験データを提示し、研究室のメンバーから意見やアドバイスをもらっていました。悩みながらも今より少しでもよい方向に進めようとする彼らの姿と昨年の自分が重なりました。是非来年は素晴らしい発表をしてほしいと思います。 夜の懇親会でもディスカッションは続き、毎年恒例ですが、日が変わるまで活発な議論が行われました。    2日目は、朝から修士課程の学位審査を控えた7名による予演会が行われました。それぞれが修士課程で取り組んできた内容を発表し、学位審査本番に向けてのアドバイスをいただきました。私を含め発表者は大変緊張しましたが、貴重なご意見やご助言をいただきましたので、本番まで準備を怠らず、修士課程の集大成として発表に望みたいと思います。   全ての発表が終わり、森岡教授による閉会の挨拶で無事に全日程を終えました。森岡教授からは、目先の研究発表や論文投稿だけでなく、今後の自分の研究や臨床への向き合い方を考えさせられるようなエールを頂きました。その中でも、「自信と謙虚さの狭間」という言葉が印象深く残っています。自信がないような態度ではいくら話しても相手にしてもらえません。一方で、自信ばかりで謙虚さを忘れると盲目的になります。いずれにしても他者からの信頼を得るためにはこの「自信と謙虚さの狭間」の意識が重要であると肝に銘じて、今後も研究や臨床に取り組み、リハビリテーションの対象者の方々へ貢献できるように、研究室一同ますます精進していきたいと考えています。     最後になりましたが、このような機会を与えてくださった森岡教授をはじめとする研究センターの皆様、神経リハビリテーション研究大会の開催にご尽力頂きました関係者の方々に深く感謝を申し上げます。   畿央大学大学院 健康科学研究科 修士課程2年 玉木義規   【関連サイト】 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター  【関連記事】 ●「平成29年度 畿央大学神経リハビリテーション研究大会」 ●「平成28年度 畿央大学神経リハビリテーション研究大会」 ●「平成27年度 畿央大学神経リハビリテーション研究大会」 ●「平成26年度 畿央大学神経リハビリテーション研究大会」 ●「平成25年度 畿央大学神経リハビリテーション研究大会」 ●「平成24年度 畿央大学神経リハビリテーション研究大会」 ●「平成23年度 畿央大学神経リハビリテーション研究大会」 ●「平成21年度 畿央大学神経リハビリテーション研究大会」 ●「平成20年度 畿央大学神経リハビリテーション研究大会」

2019.01.15

徒手牽引の鎮痛効果を「信号検出理論」で検証~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター

徒手牽引は鎮痛手段の1つとして用いられていますが、その鎮痛効果が“主観的なバイアス”によるものか“徒手牽引そのもの”による効果なのか明らかになっていませんでした。畿央大学大学院博士後期課程の重藤隼人氏と森岡周教授らは、心理物理学的手法である信号検出理論による実験で、徒手牽引はAδ線維由来の一次痛に対して主観的なバイアスよりも、徒手牽引そのものによって鎮痛効果が引き起こされていることを明らかにしました。この知見は、徒手牽引を介入手段として選択する際の意思決定に役立つ基礎的知見になるものと期待されます。この研究成果は、Pain Medicine誌(Experimental Pain Is Alleviated by Manual Traction Itself Rather than Subjective Bias in the Knee: A Signal Detection Analysis)に掲載されています。   研究概要 徒手牽引は臨床場面で鎮痛を目的とした治療に用いられています。しかし、徒手牽引の鎮痛効果が主観的なバイアスによるものか、徒手牽引によるものかは明らかにされていませんでした。また、徒手牽引に伴う触刺激自体も鎮痛効果を有しているとされていますが。徒手牽引と触刺激の鎮痛効果の違いは明らかになっていませんでした。そこで、疼痛研究分野で応用されつつある「信号検出理論」と呼ばれる心理物理学的手法を用いて、徒手牽引および触刺激のAδ線維由来の一次痛およびC線維由来の二次痛に対する鎮痛効果が、疼痛感受性の低下によるものか、主観的なバイアスによるものかを鑑別し検討しました。その結果、徒手牽引は一次痛に対して鎮痛効果を有し、触刺激は一次痛および二次痛に対して鎮痛効果を有していることがわかりました。そして、徒手牽引の一次痛の鎮痛効果は、主観的なバイアスよりも疼痛感受性の低下によって引き起こされていることが明らかになりました。   本研究のポイント ■ 信号検出理論による解析によって、鎮痛効果を疼痛感受性と主観的なバイアスの影響に鑑別した。 ■ 徒手牽引はAδ線維由来の一次痛に鎮痛効果を有し、触刺激はAδ線維由来の一次痛およびC線維由来の二次痛に鎮痛効果を認めた。 ■ 徒手牽引の一次痛に対する鎮痛効果は、主観的なバイアスよりも疼痛感受性の低下による影響が大きかった。   研究内容 健常成人を対象に、1)徒手牽引×Aδ線維、2)触刺激×Aδ線維、3)徒手牽引×C線維、4)触刺激×C線維、の4条件の実験を実施しました。介入(図1)前後に疼痛強度の選択課題を実施させます。この課題では、「低強度」・「高強度」の2つの刺激強度を設定し、ランダムに「低強度」もしくは「高強度」の電気刺激を被験者に実施し、被験者は電気刺激が「低強度」・「高強度」どちらであったか回答を行いました。 回答は下記の4パターンに分類され、各回答の割合を解析に用いました。 Hit:高強度を高強度と回答 Miss:高強度を低強度と回答 False Alarm:低強度を高強度と回答 Correct Rejection:低強度を低強度と回答 本研究ではHit率(Hitの割合)の低下を鎮痛効果と定義しています。 信号検出理論による解析では、Hit率およびFalse Alarm率を用いて、d`(感度)とC(バイアス)を算出することができ、d`の低下が識別能力の低下(≒疼痛感受性の低下)による鎮痛を示し、Cの低下が主観的なバイアスの増大による鎮痛を示しています。   図1:徒手牽引(A)、触刺激(B) 実験の結果、徒手牽引ではAδ線維でHit率の低下を認め、触刺激ではAδ線維およびC線維でHit率の低下を認めました(図2)。鎮痛効果を認めた徒手牽引のAδ線維のd`(感度)とC(バイアス)に着目すると、C(バイアス)よりもd`(感度)の変化が大きく認められました(図2)。つまり、徒手牽引によるAδ線維由来の痛みの軽減は、主観的なバイアスよりも疼痛感受性の低下によって引き起こされていました。   図2:A.Aδ線維での徒手牽引・触刺激前後のHit率とFalse Alarm率、d`(感度)とC(バイアス). B.C線維での徒手牽引・触刺激前後のHit率とFalse Alarm率、d`(感度)とC(バイアス). *p<0.05. #p<0.10.     本研究の臨床的意義および今後の展開 本研究成果は、徒手牽引はAδ線維由来の痛みに対して有効であり、その鎮痛効果は主観的なバイアスによるものではなく徒手牽引そのものによって引き起こされていることを示唆するものです。徒手牽引による鎮痛効果が、主観的バイアスによるものではないという事実は、臨床的には意義がある基礎研究と考えられます。   論文情報 Sigetoh H, Osumi M, Morioka S. Experimental Pain Is Alleviated by Manual Traction Itself Rather than Subjective Bias in the Knee: A Signal Detection Analysis Pain Medicine 2019  問合せ先 畿央大学大学院健康科学研究科 博士後期課程 重藤隼人(シゲトウ ハヤト) Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600   畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター センター長 森岡 周(モリオカ シュウ) Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.morioka@kio.ac.jp

2019.01.11

大学院生の研究成果が神経科学分野で権威ある雑誌「Cortex」に掲載されました。

脳卒中後に生じる高次脳機能障害「半側空間無視」 のあらたな評価手法を開発 畿央大学大学院博士後期課程の大松聡子氏、森岡 周教授、国立障害者リハビリテーションセンター神経筋機能研究室の河島則天室長(畿央大学大学院健康科学研究科客員教授)らの研究グループは、脳卒中後に生じる高次脳機能障害の一つである「半側空間無視」症状の新たな評価手法を開発しました。半側空間無視は損傷を受けた脳と反対側の空間の物体やできごとが認識できなくなる不思議な症状で、症状が慢性化すると日常生活に大きな支障を来します。大松氏たちは、視線分析によって半側空間無視症状を簡便かつ定量的に評価できる手法を開発し、その有用性に関する重要な知見を得ました。従来の検査は紙面検査や日常生活の行動観察によるもので、検査に時間を要することや、重症度の高い患者の評価が困難であるなどの限界点がありました。開発手法は、PC画面上に提示された対の左右反転画像を見ているときの視線の分布特性を分析することで無視症状の程度や特徴を捉えるもので、今後、臨床場面での活用が期待されます。 この成果は1月5日付けで、神経科学分野で権威ある英国科学誌『Cortex』に掲載されました。    国立障害者リハビリテーションセンター プレスリリース 畿央大学 プレスリリース 研究概要 半側空間無視は、脳卒中後に生じる高次脳機能障害の一つで、損傷を受けた大脳半球の反対側の空間にある物体や事象を無視してしまう神経症状です。脳卒中後のリハビリテーションでは、紙面検査や行動観察によって無視症状についての評価を行うことが一般的ですが、検査実施に時間を要すること、患者側に集中力や認知的負荷を強いることなどの問題点があり、加えて重症度の高い患者では評価が困難であるなどの限界点があります。空間無視、という言葉に表れるように、この症状は空間上の物体や事象を認識できなくなる症状で、筆記検査や言語での回答を要求するような検査手法では、症状の特性を捉える上で限界があります。 今回発表した論文では、視線分析を用いて直観的かつ定量的に無視症状を捉えるための手法を開発し、その有用性についての検証を行いました。単に様々な画像を注視した際の視線分析を行うのではなく、左右を反転させた対の画像を用い、注視対象の空間配置に応じて視線がどのように推移するかを分析する工夫を施しました(図1)。     【図1 開発手法の概要】 患者さんにコンピュータスクリーン上に提示される画像をただ見るのみ、という課題を行いました(A)。提示される画像は、図Bで示される元画像6種類(B)に、それぞれを左右反転した画像、計12画像でした。分析は、対の左右反転画像の視線データを合わせ、平均したものを視線偏向(°)として用いました(C )。     図中に示すような対の左右反転画像を自由に見ている(Free viewing)ときの私たちの視線は、画面の右空間に注視対象があれば右空間に集中し、画像の左右空間を反転することで注視対象が左に移れば視線もまた、左空間に集中します(図1C、図2:健常群)。一方、半側空間無視をもつ患者群では、右空間に注視対象があるときこそ右に視線が集中するものの、画像を左右反転させ、注視対象が左に移ったとしても対象を探索できず、依然として右空間を注視するような特徴を持ちます(図2:無視群)。私たちはこの特性を利用して、無視症状の特徴を捉えることを試みました。左右反転画像を用いるメリットは、元画像と左右反転画像に含まれる物理的(輝度や色彩など)、認知的要素(意味性や文脈など)を統一した状態で、左右の空間的位置関係のみを反転できる、ということになります。また、画像間の視線分布の違いに表れるように、注視対象の特性(生物or無生物、単数or複数、配列の方向性や意味性)により、無視空間への視線配分に変化を認めました(図2)。つまり、半側空間無視症例が見せる『無視空間』は空間上の固定された範囲で生じるのではなく、画像に含まれる情報や要素に応じて変化することを示唆しています。これらの結果は、左右反転画像を用いた視線分析が、評価の視点だけでなく、リハビリテーション介入を考える上での重要な情報を提供し得るものと考えられます。   【図2 研究結果の概要】 画像ごとの視線分布の結果です。視線のカラーマップ(上:健常群、下:無視群)は赤くなっている箇所が、長く注視されていた部分です。折れ線グラフは、横軸が画像の横軸に対応しており、縦軸は横軸の各左右位置を見ていた時間の割合を示した図です。健常者は画像が反転すると視線も反転して、どちらも類似した箇所を見ていますが、無視群は右に偏った特徴があります。ただし、少女や金魚の画像では、他群と類似した視線分布となっていることが分かります。       【図3 全画像を通じた結果】     本論文で開発した左右反転画像の注視点分析による評価結果は、無視のない群と比較して無視群の視線が有意に右へ偏向しており、かつ通常臨床で使用される行動性無視検査(BIT)結果と有意な相関を示しました。開発手法は所要時間が数分足らずで実施可能で、かつ覚醒レベルの停滞や全般性注意障害、認知機能面の低下を合併しているような、BIT検査の実施が困難な症例にも実施可能です。本論文の対象のうち2名は、BIT検査が実施困難でしたが、開発手法による評価が実施可能でした。今後、臨床場面での無視症状の把握に活用することが期待できます。 論文情報 Ohmatsu S, Takamura Y, Fujii S, Tanaka K, Morioka S, Kawashima N. Visual search pattern during free viewing of horizontally flipped images in patients with unilateral spatial neglect.  Cortex 113: 83-95, 2019 補足情報 研究成果の一部は既に実用化され、株式会社クレアクトより製品販売されています。 https://www.creact.co.jp/item/welfare/attention/usn_attention/attention-top   問合せ先 畿央大学大学院健康科学研究科 博士後期課程 大松 聡子(オオマツ サトコ) Tel: 04-2995-3100(内線7190) Fax: 04-2995-3132 E-mail: ohmatsu-satoko@rehab.go.jp   畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター センター長 森岡 周(モリオカ シュウ) Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.morioka@kio.ac.jp   国立障害者リハビリテーションセンター 研究所運動機能系障害研究部 神経筋機能障害研究室長 河島 則天(カワシマ ノリタカ) Tel: 04-2995-3100(内線2520) Fax: 04-2995-3132 E-mail: nori@rehab.go.jp

2019.01.10

感覚運動の空間的不一致による異常知覚と運動制御に関わる神経活動~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター

脳卒中や慢性疼痛患者における身体性変容の要因の1つとして、感覚情報の予測と実際に入力される感覚情報との間の不一致(感覚運動の時間的および空間的不一致)が考えられています。健常者においても、感覚運動の“時間的”不一致を生じさせると、四肢の重さの知覚変容、しびれ、奇妙さや嫌悪感の惹起に加えて、運動の正確性も低下することが明らかにされています(Katayama and Morioka et al 2018)。しかしながら、感覚運動の“空間的”不一致による異常知覚と運動制御に関わる神経活動は明らかになっていませんでした。 畿央大学大学院博士後期課程の片山脩氏と森岡周教授らは、健常者を対象に感覚運動の空間的不一致課題を実施し、感覚運動の空間的不一致による異常知覚と運動制御異常には、前補足運動野および帯状皮質運動野におけるベータ波帯域の神経活動性の低下が関わっていることを脳波の三次元画像解析(eLORETA)を用いて明らかにしました。この知見は、脳卒中や慢性疼痛患者の病態解明に貢献し、新たなニューロリハビリテーション技術開発に向けた基礎的知見になるものと期待されます。この研究成果は、Neuroscience Letters誌(Neural activities behind the influence of sensorimotor incongruence on dysesthesia and motor control)に掲載されています。   研究概要 脳卒中、慢性疼痛患者では患肢に対する知覚変容や運動制御の低下が生じます。この要因の1つとして、運動指令に基づいて脳内で生成される感覚情報の予測と、運動により実際に入力される感覚情報との間に生じる不一致(感覚運動の時間的および空間的不一致)が考えられています。実験的に感覚運動の時間的不一致を生じさせると、健常人であっても知覚変容や運動の正確性が低下することが明らかにされていました(Katayama and Morioka et al 2018)。しかしながら、感覚運動の空間的不一致による異常知覚と運動制御に関わる神経活動は明らかになっていませんでした。今回、健常者を対象に実験的に感覚運動の空間的不一致を生じさせ、異常知覚と運動制御に関わる神経活動を検討しました。その結果、感覚運動の空間的不一致により様々な異常知覚が惹起され、その中で奇妙さが有意に強く惹起されました。さらに、運動制御においては運動の正確性が低下することを確認しました。これらの異常知覚と運動制御には、前補足運動野と帯状皮質運動野のベータ波帯域の神経活動性の低下が関わっていることを脳波の三次元画像解析により明らかにしました。   本研究のポイント ■ 感覚運動の空間的不一致により、奇妙さをはじめとした異常知覚が惹起される。 ■ 感覚運動の空間的不一致により、運動の正確性が低下する。 ■ 異常知覚と運動制御に前補足運動野と帯状皮質運動野のベータ波帯域の神経活動性の低下が関わる。   研究内容 健常成人を対象に、片面がホワイトボードでもう片面が鏡となったボードを両上肢の間に設置し両手関節の掌背屈運動を実施させます(図1)。一側の手関節を背屈した際にもう一側を掌屈させる条件(図1D)では、鏡の後ろに隠された手関節の運動方向と、鏡に映る鏡像の運動方向が空間的に不一致した状態となります。この条件設定によって、ヒトの感覚運動ループを実験的に錯乱させることができ、“患肢の知覚変容”という状況を設定することができます。   図1:実験の条件設定 実際の実験では、A:ホワイトボード一致条件、B:ホワイトボード不一致条件、C:鏡一致条件、D:鏡不一致条件(感覚運動の空間的不一致条件)の4条件で手関節の反復運動を被験者に実施してもらいました。運動中の手関節の運動を電子角度計で計測し、身体に対する異常知覚についてアンケートで定性的に評価しました。 実験の結果、感覚運動の空間的不一致条件で、奇妙さが他の条件と比較して強く惹起され、多数の異常知覚が惹起されました(図2)。さらに、手関節における運動の正確性の低下が確認されました。   図2:惹起した異常知覚とその数の比較および運動の正確性の比較   脳波活動は、感覚運動の空間的不一致条件では、前補足運動野と帯状皮質運動野のベータ波帯域の神経活動性の低下を認めました(図3)。   図3:感覚運動の空間的不一致条件の神経活動領域   本研究の臨床的意義および今後の展開 本研究成果は、脳卒中や慢性疼痛患者の異常知覚や運動制御の低下に前補足運動野と帯状皮質運動野の神経活動性が関わっていることを示唆するものです。そのため、理学療法や作業療法の際には、感覚運動の空間的不一致を最小限にしながら臨床介入を進めることの重要性を提唱する基礎研究となります。今後は、実際に患肢の知覚変容や運動制御の低下が生じている症例を対象に神経活動性の検証をしていく予定です。   論文情報 Katayama O, Nishi Y, Osumi M, Takamura Y, Kodama T, Morioka S. Neural activities behind the influence of sensorimotor incongruence on dysesthesia and motor control. Neuroscience Letters 2019   問合せ先 畿央大学大学院健康科学研究科 博士後期課程 片山 脩(カタヤマ オサム) Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: b6725634@kio.ac.jp 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター センター長 森岡 周(モリオカ シュウ) Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.morioka@kio.ac.jp  

2019.01.08

同窓会レポート~理学療法学科瓜谷ゼミ

畿桜会(畿央大学・畿央大学短期大学部・桜井女子短期大学同窓会)では、卒業後の同窓生のつながりを活性化することを目的に、一定数以上集まる同窓会の開催を補助しています。 ▶同窓会開催にかかわる補助について(大学ホームページ)   今回は、理学療法学科を卒業した瓜谷先生のゼミ生による同窓会兼ラボ勉強会のレポートをお届けします!     昨年瓜谷先生が研究員として行っておられたオーストラリアのメルボルンより帰国され、再始動しました瓜谷ゼミです。2018年12月23日、今年も瓜谷ゼミ・裏瓜谷ゼミ同窓会兼ラボ勉強会を開催いたしました。現在3回生の学部生から社会人まで参加し、今回は総勢20名以上の会となりました。     この会は例年、メンバーや瓜谷先生自身が発表し意見を出し合う形式で実施しています。今年の発表者および内容は、学部生による卒業研究の計画、卒業生の今井亮太さんによる運動器疼痛について、佐々木将人さんによるこれまでの職場経験についてでした。3つの発表はどれも全く異なる分野のものでしたが、毎回メンバーから質問や意見の交換が行われ、とても有意義な場となりました。その後は忘年会を兼ねた飲み会も実施しました。     今年も現職者、学生、先生と縦・横のつながりを感じられる会となりました。2019年もパワーアップされた瓜谷先生とともに、メンバーみんなでさらにゼミを盛り上げていければと思います!   理学療法学科7期生 坂東峰鳴

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