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健康科学専攻(博士後期課程)の新着情報一覧

2023年の健康科学専攻(博士後期課程)の新着情報一覧

2023.03.04

多くの理学療法士が購読する「理学療法ジャーナル」の特集を本学教員が企画!~理学療法学科・健康科学研究科

健康科学部理学療法学科、畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターの森岡 周教授が理学療法ジャーナルVol.57 No.3 2023年3月号(医学書院)において特集「システムとしての姿勢制御 メカニズムの解明から臨床応用まで」を企画・編集しました。本雑誌は、理学療法士ならば誰もが必ず読んだことのある雑誌になります。       本特集は畿央大学関係者も執筆しており、今回、本特集の執筆に関わった、卒業生である植田 耕造さん(本学理学療法学科3期生、博士後期課程修了、JCHO滋賀病院 リハビリテーション部主任、本学大学院客員准教授)に、本特集ならびに畿央大学の特徴を聞きました。   植田 耕造さん コメント 私は本特集の中の「注意操作を用いた姿勢制御アプローチ」を執筆しました。 私は畿央大学大学院在籍中に「姿勢制御への注意機能の影響を調べた研究」を行っております。 この研究では、立位中の姿勢動揺に注意を向け随意的に動揺を制御する時(随意的制御)と、立位中に計算などの認知課題を行い姿勢動揺から注意を逸らした時(自動的制御)では、動揺の振幅は同程度だが、随意的制御の方が動揺速度が速く揺れの質が異なることを示しました。     本特集では、先の研究のような注意の操作により姿勢動揺が増減することや、高い所に立つことで起こる恐怖心により自分の身体に注意が向いてしまい意識的に姿勢制御を行ってしまうことなどを説明しました。また、立位中に計算など認知課題を行う、いわゆる二重課題法を用いたアプローチの効果などを解説しました。 私が注意機能へ興味を持ったのは、実は畿央大学在学時の卒業研究の時になります。その時は、障害物跨ぎ動作の時に携帯電話の操作を行うことの影響を研究しました。畿央大学の特徴の1つとして、卒業後に大学院への進学や研究を行う方が多いことが挙げられますが、これは各分野の第一線で活躍されている教員の先生から卒業研究を通して研究の重要性や面白みを伝えていただけることが大きく影響していると思います。   また、本特集には本学4期生の石垣智也さん(名古屋学院大学講師)も「接触操作を用いた姿勢制御アプローチ」を執筆しています。 石垣さんとは、大学、大学院と切磋琢磨した間柄です。特に大学院では同じ姿勢制御グループとして多くの時間を共にしました。卒業してからも世代関係なく先輩後輩の仲が良く、活躍してる人が多いのも畿央大学の特徴です。   本特集の著者の多くは、畿央大学のニューロリハビリテーション研究センター主催研究会「リハビリテーションのための姿勢運動制御研究(第1回、第2回)」で講師をしていただいています。それを発端に日本前庭理学療法研究会(塩崎智之 理事長/耳鼻咽喉・頭頸部外科教室 助教、理学療法士、本学大学院修士課程修了)も発足しました。こうした背景からも、姿勢制御研究において畿央大学が重要な位置を担っていることが伺えますし、学部教育や研究を行うだけでなく臨床家と研究者の架け橋という役割も畿央大学の特徴だと思います。   関連リンク 固定物とヒトへの軽い接触による立位姿勢制御の特徴 軽く触れることで得られる立位姿勢の安定化に直接影響を与える大脳皮質領域 軽く触れることで得られる立位姿勢の安定化に関係する脳活動

2023.02.25

日本物理療法合同学術大会2023で大学院生が優秀賞を受賞!~健康科学研究科

この度、2023年2月19日〜20日に開催された『日本物理療法合同学術大会2023』において、畿央大学大学院健康科学研究科 修士課程の立石 貴樹(東京湾岸リハビリテーション病院・理学療法士)が発表してまいりました。   本学術大会はハイブリッド開催となりましたが、約800名が参加しました。理学療法士以外の他職種も集い、基礎分野の研究者や臨床家が参加され、幅広い領域における発表内容の一般演題が報告されました。 本学術大会のテーマは『物理療法の評価と治療-測る・理解する・変える-』と題され、患者の病態を把握・理解し、物理療法の効果機序に基づいた治療選択を行うための評価と治療に焦点を置かれ、それに基づく教育講演とシンポジウムがプログラムされていました。いくつかのプログラムでは、物理療法の科学的手段の確立のために、最新の知見を基に課題と可能性を提示され、物理療法の有用性が再認識されました。   今回、私は『重度感覚鈍麻の麻痺側下肢にしびれ感を呈した脳卒中症例に対するしびれ同調TENSの効果:症例報告』というテーマで発表し、その内容が優秀賞に選出されました。その内容は、重度感覚障害の麻痺側下肢にしびれ感を呈した脳卒中症例に対して、ニューロリハビリテーション研究センター客員研究員である西祐樹さん(長崎大学 助教)が開発されたしびれ同調TENSを用いた症例報告になります。重度感覚障害で電気刺激の知覚が得られにくく、パラメータ設定が難渋したことから、非麻痺側下肢でしびれ感を再現させて、麻痺側下肢に同様のパラメータ設定で電気刺激を行なったことでしびれ感が改善したことを報告しました。 多くの演題の中から、優秀賞を受賞できたことは、研究活動を行う活力、自信となり大変嬉しく思います。今後も皆様のリハビリテーション介入の意思決定の一助となるよう臨床実践および研究活動に精力したいと思います。   最後になりますが、今回の発表にあたり、客員研究員の西祐樹先生ならびに指導教員である森岡周教授をはじめとする多くの方々にご指導、ご支援をいただきました。この場を借りて深く感謝申し上げます。   発表演題 重度感覚鈍麻の麻痺側下肢にしびれ感を呈した脳卒中症例に対するしびれ同調TENSの効果:症例報告 立石 貴樹、西 祐樹、松井 菜緒、立本 将士、伊藤 惇亮、近藤 国嗣、森岡 周   健康科学研究科 修士課程 立石 貴樹   関連リンク 日本物理療法合同学術大会2023ホームページ

2023.02.21

慢性腰痛の運動時痛に対する経皮的電気刺激の効果~理学療法学科・健康科学研究科

腰痛をもつ日本人は38%程度と推定されており、社会経済に与える影響は少なくありません。腰痛治療の一つに、弱い電流を流して痛みを軽減する経皮的電気刺激(Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation: TENS)がありますが、TENSの慢性腰痛の運動時痛に対する効果を検証した報告は限られていました。そこで、畿央大学健康科学部理学療法学科の瀧口 述弘助教、庄本 康治教授と高松 昇三(健康科学研究科博士課程2年/オムロンヘルスケア株式会社)らは、腰部運動時痛に対してTENSの効果を検証し、周波数を変調したTENSによって慢性腰痛の運動時痛が軽減することを明らかにしました。この研究成果は、物理療法科学誌「慢性腰痛患者の運動時痛に対する経皮的電気刺激の効果:ランダム化比較試験」(https://doi.org/10.57337/jjeapt.21-21)に掲載されています。 研究概要 エビデンスレベルが高いといわれているランダム化比較試験という研究デザインを用いて検証しました。腰部に周波数を変調した(刺激の感覚が変わる)TENSを実施すると、プラセボTENS(電気を流していると説明しているが実際は流していない)と比較して、腰部運動時痛が低下しました。この結果から、周波数を変調したTENSを実施することで、慢性腰痛の運動時痛が軽減されることが明らかになりました。   研究のポイント ・慢性腰痛の運動時痛はTENSで軽減する。 ・周波数を変調させた方が、運動時痛が低下した。   研究内容 慢性腰痛患者80名を高周波数TENS群、変調周波数TENS群、プラセボTENS群に分類して、腰部運動時痛に対して効果を比較しました。腰部運動時痛は、腰部の運動テストでよく用いられる指床間距離を測定し、その時の痛みを運動時痛として測定しました。痛みの程度はVisual Analogue Scale (0 – 100で痛みの程度を示す。0: 全く痛くない 100: 想像できる最悪の痛み)を用いて測定しました。変調周波数TENSはプラセボ経皮的電気刺激と比較して、運動時痛が低下しました。   HF-TENS: 高周波数TENS MF-TENS: 変調周波数TENS   本研究の臨床的意義及び今後の展開 TENSは副作用がほとんどなく、近年では操作が簡単な家庭用の機械も販売されています。本研究の結果から、動作中の痛みを軽減できる可能性が示唆されました。今後は、日常生活場面で経皮的電気刺激を併用し、日常生活動作での腰痛が軽減するかを明らかにする必要があります。   論文情報 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjeapt/advpub/0/advpub_21-21/_article   問合せ先 畿央大学 健康科学部 理学療法学科 助教 瀧口述弘 TEL:0745-54-1601 FAX:0745-54-1600 E-mail: n.takiguchi@kio.ac.jp

2023.02.15

健康栄養学科の山本 隆教授がNHK「ほっと関西」に出演!「冬アイス」の疑問に答えます!

“ホット”なニュースと“ほっと”する話題を平日午後6時からお届けするNHK大阪放送局「ほっと関西」。2月16日(木)の放送では、健康栄養学科の山本 隆教授が出演して、「なんで冬でもアイスを食べたくなるのか?」の疑問に答えます! 「チコちゃんに叱られる」など何度もNHKに出演している山本 隆先生ですが、今回は「ほっと関西」内のコーナー「nan で nan?」で、「なんで冬でもアイスをたべたくなるのか」についてコメントします。   取材は、山本先生の研究室で行われました。取材クルーにイスを勧めたり、質問に一つ一つ丁寧に回答するお人柄が印象的でした。     実験では、健康栄養学科4回生でゼミ生の上村 里帆さんがサポートに駆けつけてくれました。インタビューと実験で予定の2時間を超える取材となりましたが、終始とても和やかな雰囲気で行われました。     冬にアイスを食べたくなるみなさん、どうしてなのか疑問に思いませんか? ぜひご視聴ください!     また、山本先生は2/18(土)13時から「畿央大学公開講座」を担当します。テーマは「おいしさを生み出すうま味とコクの新常識~味覚と脳のメカニズム~」。気になる方はこちらもご参加ください! 放送予定 2/16(木)18:00~19:00 *山本隆先生は18:00~18:30内で出演予定ですが、放送の都合上変更になることがあります。 ▶番組ホームページ    

2023.02.14

健康栄養学科卒業生が、畝傍高校硬式野球部を栄養サポート!~健康科学研究科

健康科学研究科1年の新田 裕樹(にった ゆうき)です。2020年3月に健康栄養学科を卒業して現場で働くなかで、専門性をもっと深めたいと思い、2022年に母校である畿央大学大学院健康科学研究科に進学しました。   現在は栄養教諭として働きながら、「ジュニア期におけるスポーツ選手の栄養」について研究を進めています。ご縁があって、奈良県立畝傍高等学校硬式野球部を継続してサポートすることになり、紹介させていただきます。     選手たちは身体づくりやパフォーマンスの向上のために、食事の意識を高く持って取り組んでいるようです。しかし、なかなか結果が出なかったり、実際にどんな食事を摂ればよいのか、どのように行動に移せばよいのか、どのタイミングで食べるとよいのかなどがわからないなどの課題がある、と監督から依頼を受けました。私自身も野球をしていたので、選手たちの気持ちにもとても共感でき、研究や現場での勉強の一環という側面もありますが、ただ単純に「何か一つでも力になりたい!」「応援したい!」という思いでサポートが始まりました。     第1回目のサポートでは、指導スタッフ、選手、マネージャー、保護者を対象に栄養講義を行いました。講義は高校生のライフステージに焦点を合わせた成長期における栄養とスポーツ選手に必要な栄養を中心にお話させていただきました。選手からはたくさんの質問があり、参加してくださった方も配付資料やノートにメモを取りながら積極的に受けてくれました。     現在は生徒たちに「食事記録」を取ってもらっています。今後はその食事記録をもとに選手それぞれの食事を分析・フィードバックし、目標に向けて食事の内容・量・タイミングなどアドバイスしていく予定です。         すぐに結果が表れる選手もいれば、なかなか結果が出ない選手もいると思います。もちろん結果につなげることができればと思いますが、仮に結果が出なかったとしてもまだ高校生なので、食事や目標に向けて自発的に行動に移すことの大切さなどを考えるきっかけとなるサポートをしていきたいと思います。これからも選手と共に成長できるようにがんばっていきます!     健康科学研究科 修士課程1年 健康栄養学科 2020年3月卒業 新田 裕樹   【関連リンク】 畝傍高等学校野球部Twitter

2023.02.13

第27回日本神経理学療法学会サテライトカンファレンス@畿央大学、開催レポート!

2023年2月11日(土)、本学で第27回日本神経理学療法学会サテライトカンファレンスが開催されました。       畿央大学大学院健康科学研究科 佐藤 剛介客員准教授(奈良県総合医療センターリハビリテーション部勤務)が集会長を務め、「中枢性疼痛の病態理解と理学療法」というテーマで講演と症例報告および討論が実施され、とても濃厚な1日となりました。当日は対面+WEB配信のハイブリッド形式で実施され、400名以上の方にご参加いただきました。   ▼講演:佐藤 剛介客員准教授       ▼座長:森岡 周教授   ▼講演:松原 貴子教授(神戸学院大学)   ▼症例報告   井川 祐樹さん(博士後期課程)   ▼講演:古賀 優之さん(博士後期課程)   ▼鋭い質問  :初瀬川 弘樹さん(畿央大学3期卒業生)     #JSNPT27sc でTwitter検索すると当日の様子や参加者の生の声をご覧になれますので、あわせてご確認ください!     【関連リンク】 大学院生2名が4週にわたってラジオ出演!~FM大阪「マクセルmeetsカレッジナレッジ」 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 大学院健康科学研究科

2023.02.08

感覚運動レベルにおける行為主体感の頑健性~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター

行為/運動主体感(sense of agency:SoA)とは「このボールを蹴っているのは私だ」とか「このお皿を割ったのは私だ」など、日常生活で起こる行為の結果を自分に帰属させる主観的な意識のことです。感覚・運動に障害が生じると予測と実際の感覚が一致しないことがあり、それにより行為時の快適さが失われ不快感を訴えるケースがみられます。これは後遺症によって生涯にわたって頑健(つまり「適応できない」)に継続するのかは不明でした。畿央大学健康科学部理学療法学科4回生 三嶋 瑞穂さん、森岡 周教授、ニューロリハビリテーション研究センター 林田 一輝客員研究員らは、東京大学大学院人工物研究センター 温 文特任准教授と共同で、実験的に感覚予測と結果を一致あるいは不一致させる群を設け、一定の期間それに暴露させることで行為主体感が変化するかを調べました。その結果、短期間では行為主体感は変化しない、すなわち頑健であることが明らかになりました。この研究成果はBehavioral Sciences誌(Adaptability of the Sense of Agency in Healthy Young Adults in Sensorimotor Tasks for a Short Term)に掲載されています。 研究概要 行為/運動主体感(sense of agency)とは「ある運動・出来事を引き起こしている、生み出しているのは自分自身である」という主観的な制御の感覚・意識のことです。行為主体感は感覚予測と実際の感覚結果が一致すれば起こり、それらが一致しなければ低下あるいは喪失すると考えられています。例えば、神経疾患、統合失調症、自閉症スペクトラム障害では行為主体感の低下や喪失が報告されています。こうしたケースは、行為のたびに予測と結果に不一致が生じ、自らの行為への不快感につながることが示唆されます。脳卒中後の運動障害は残りやすく、行為に対する不快感が頑健(すなわち「非適応的」)に継続する可能性が考えられます。しかしながら、一定の期間、感覚予測と実際の感覚結果の不一致に暴露されることによって、行為主体感が適応的に変化するか否かは不明でした。また、行為主体感に影響する抑うつ傾向、統合失調症傾向、感覚過敏などの心理状態の個人差がその適応性に影響するかは不明でした。そこで畿央大学健康科学部理学療法学科4年生 三嶋 瑞穂さん、森岡 周教授、ニューロリハビリテーション研究センター 林田 一輝客員研究員らは、東京大学大学院人工物研究センター 温 文特任准教授が開発した実験課題(PCカーソルの自己制御比を実験的に操作することで行為主体感の変化を検出するもの)を用いて、一定期間、感覚予測と実際の感覚結果の一致(一致群)あるいは不一致(不一致群)の暴露による行為主体感の変化を捉えました。その結果、一致群と不一致群の行為主体感の変化に有意な差はみられず、行為主体感が適応的でなく頑健である可能性を示しました。また一致群のみ、暴露前後の行為主体感の変化が抑うつ傾向と関係することがわかりました。 本研究のポイント ■ 感覚予測-結果の不一致への暴露によって行為主体感は適応的に変化するかを調べた。 ■ その結果、感覚運動水準においては、行為主体感は適応的でない(頑健)であることがわかった。 研究内容 33名の健康な実験参加者を感覚予測と実際の感覚結果の一致群(一致群)と不一致群に分けました。MATLABとPsychtoolbox (MathWorks, USA) を使用して、行為主体感を検出する課題を作成しました。参加者はタッチパッドを使用してPC画面上のドットを4秒以内に自由に操作するように指示されました。なお、ドットの動きを自分の操作0~100%の中で10%ごとにランダムに反映させました。試行数は1試行4秒間の操作を計110試行(0~100%を10%ごとに各10回)とし、「“ドットの動きに違和感があっても”自分が動かしていると感じれば Yes と答える」よう参加者に要求し、個人の行為主体感の閾値を算出しました。図1は実験課題の例ですが、タッチパッドを使用して画面上のドットを操作した際、そのドットが自分によってコントロールできていると感じているかどうかが評価されました(図は100%または50%コントロールの例)。不一致群では算出した個人の閾値より10%低い値を100試行、一致群では完全に自分の動きで100試行実施させました。     図1.行為主体感を捉える実験課題 参加者はタッチパッドを使用して PC 画面上のドットを操作し、4 秒以内にドットを自由に操作するように指示されました。そのドットをコントロールできていると感じるかどうかで行為主体感が評価されました。図は100%または50%コントロールの例を示しています。   行為主体感の曖昧さの指標である傾きと50%の確率で「Yes」と回答する主観的等価点(Point of Subjective Equality:PSE)をロジスティック回帰曲線を使用して算出しました。また、参加者の抑うつ傾向、統合失調症傾向、感覚過敏を各種質問紙を用いて調べました。行為主体感を表すロジスティック回帰曲線の傾き、PSEに群間差はありませんでした(図2)。つまり感覚予測と感覚結果の不一致への非適応性が示され、感覚運動課題を用いた感覚運動レベルにおいては、不一致を受け入れることが難しいことが示唆されました。一方で、一致群のみで暴露前後の行為主体感の変化が抑うつ傾向と有意な相関関係を示しました。この結果は、抑うつ傾向の場合、感覚予測と結果の一致経験によって行為主体感を向上させる可能性が示唆されました。しかし、長期にわたる感覚予測と結果の不一致の暴露の影響は不明なままです。今後は、長期間の暴露による思考の変化といった認知レベルが感覚予測と結果の不一致といった感覚運動レベルにどのように影響するかを調べる必要があります。   図2.行為主体感の変化 行為主体感の指標であるロジスティック回帰曲線の勾配 ( A ) とPSE ( B ) の群別の結果(平均 ± 標準偏差)を表します。検定の結果、交互作用と主効果はどちらも有意ではありませんでした。Congruent group(一致群)、Incongruent group(不一致群) 本研究の臨床的意義および今後の展開 本研究における感覚予測と結果の不一致の暴露プロセスは、脳卒中後の片麻痺プロセスを想定しており、学習された不使用の原因に接近する可能性があると予想しています。一方、感覚予測と結果が一致する課題は抑うつ傾向を改善させる選択肢となる可能性が示唆されました。今後は、感覚運動水準の課題に文脈や思考など認知水準の手続きを加え、柔軟に適応できるかどうかを調べる必要があります。 論文情報 Mizuho Mishima, Kazuki Hayashida, Yoshiki Fukasaku, Rento Ogata, Kazuki Ohsawa, Ken Iwai, Wen Wen, Shu Morioka Adaptability of the Sense of Agency in Healthy Young Adults in Sensorimotor Tasks for a Short Term Behavioral Sciences, 2023 問い合わせ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 畿央大学大学院健康科学研究科 教授 森岡 周 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.morioka@kio.ac.jp

2023.02.03

サーマルグリル錯覚に特徴的な脳波律動~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター

温かいモノと冷たいモノを同時に触ると、本当は熱くないはずなのに、それを「痛い」と経験することがあり、この経験は”サーマルグリル錯覚”と呼ばれています。畿央大学大学院 健康科学研究科 修士課程を修了した浦上 慎司さん(現:星ヶ丘医療センター 理学療法士)とニューロリハビリテーション研究センター大住 倫弘 准教授は、サーマルグリル錯覚を経験している時の脳波活動を計測・分析し、特徴的な脳波活動を明らかにしました。この研究成果はNeuroReport誌(Cortical oscillatory changes during thermal grill illusion)に掲載されています。   研究概要 ”サーマルグリル錯覚”とは、温かい棒と冷たい棒が交互に並べられている棒に手を置くと、痛みをともなう灼熱感が惹起される現象です(図1)。この現象は、中枢神経メカニズムによって生じると説明されていますが、そのメカニズムは十分に明らかにされていません。畿央大学大学院 健康科学研究科 修士課程を修了した浦上 慎司さん(現:星ヶ丘医療センター 理学療法士)とニューロリハビリテーション研究センター大住 倫弘 准教授は、健常者を対象に、サーマルグリル錯覚中における脳波活動を計測・分析しました。その結果、サーマルグリル錯覚を経験している時には、痛み関連脳領域/ペインマトリックス(Pain Matrix)の代表である島皮質周辺の脳波律動が特徴的に変化することが明らかになりました。この研究は、サーマルグリル錯覚における中枢神経メカニズムの一端を明らかにしたことになります。   本研究のポイント ■ 温かい棒と冷たい棒が交互に並べられているグリルの上に手を置くと痛みを感じる ■ サーマルグリル錯覚中では島皮質に特徴的な変化が生じる   研究内容 健常21名を対象にして、サーマルグリル錯覚によって生じる脳波活動を計測・分析しました。具体的には、①暖かい棒だけが並べられているグリルに手を置く条件(コントロール条件)と、②温かい棒と冷たい棒が交互に並べられているグリルに手を置く条件(サーマルグリル錯覚条件)で脳波活動を計測し、それらの脳波活動を比較することによってサーマルグリル錯覚に特徴的な脳波成分を抽出しました。       その結果、痛み関連脳領域/ペインマトリックス(Pain Matrix)の代表である島皮質が、サーマルグリル錯覚を引き起こす脳領域であることが明らかになりました。島皮質は、暖かい/冷たいという感覚が入力されているだけでなく、”痛い”という情動経験にも関与します。加えて、この島皮質は中枢性疼痛をもたらす脳領域としても知られています。今回の結果は、中枢性疼痛のメカニズム解明に役立つ基礎研究になることが考えられます。   論文情報 Uragami S, Osumi M. Cortical oscillatory changes during thermal grill illusion. NeuroReport 2023   問い合わせ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 准教授 大住 倫弘(オオスミ ミチヒロ) Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: m.ohsumi@kio.ac.jp

2023.02.03

日本物理療法合同学術大会2023で本学教員、修了生、院生が多数登壇!~健康科学研究科

  2023年2月18日(土)、19日(日)に日本物理療法合同学術大会2023が対面・Webのハイブリッドで開催されます。「日本物理療法学会」と「日本理学療法学会連合 日本物理療法研究会」が初めて合同で実施するもので、それぞれの理事長を本学理学療法学科の庄本康治学科長と生野公貴さん(健康科学研究科博士後期課程修了)が務めています。学会では本学教員、修了生、院生が多数講演を行い、一般演題においても本学の卒業生、大学院生も発表する予定です。       「物理療法の評価と治療‐測る・理解する・変える‐」と題して、物理療法を正しく選択・活用するための評価と治療に焦点を当てた内容となっています。ご関心のある方は是非ご参加ください。 主な登壇者(本学関係者)は以下の通りです。 1日目:2/18(土) 17:10~17:40  エキスパートレビュー1 「物理療法全般の最前線」 中村 潤二さん 西大和リハビリテーション病院 勤務 健康科学研究科 博士後期課程修了 理学療法学科1期生     17:10~17:40  エキスパートレビュー2 「疼痛への物理療法最前線」 瀧口 述弘さん 畿央大学理学療法学科 助教 健康科学研究科 博士後期課程修了 理学療法学科5期生   2日目:2/19(日) 10:10~11:20 教育講演3「疼痛の評価と治療」 徳田 光紀さん 平成記念病院 勤務 健康科学研究科 博士後期課程修了 理学療法学科1期生     11:00~12:00 企業協賛ハンズオンセミナー1「痙縮に対する新たな物理療法-拡散型ショックウェーブの臨床活用-」 中村 潤二さん 西大和リハビリテーション病院 健康科学研究科 博士後期課程修了 理学療法学科1期生   13:00~14:30 シンポジウム「物理療法をどのように使うのか・使わないのか」 尾川 達也さん 西大和リハビリテーション病院 勤務 健康科学研究科 博士後期課程 理学療法学科3期生     関連記事 (尾川さん登壇)卒業生に学ぶチーム医療のリアル~理学療法学科 第3回「やさしさをチカラに変える次世代リーダー育成セミナー」 (徳田さん登壇)第1回「やさしさをチカラに変える次世代リーダー育成セミナー」を開催! 理学療法学科初の卒業生教員!瀧口先生ってどんな人?Part1~「学生時代」編

2023.01.31

大学院生2名が4週にわたってラジオ出演!~FM大阪「マクセルmeetsカレッジナレッジ」

現役大学生で元AKB48の山本 瑠香さん(写真左)がDJを務め、月替わりで様々な大学の『未来につながる研究』を紹介するラジオ番組「マクセル meets カレッジナレッジ」。2月の放送では4週にわたって、本学健康科学研究科博士後期課程の井川 祐樹さん(右)と修士課程の木下 栞さん(中央)が出演することに!臨床と研究を両立するお二人の研究内容や目標などが紹介されます。 番組スポンサーを務めるマクセル株式会社に数年前からニューロリハビリテーション研究センターへの研究計測支援をしていただいているご縁で、今回大学院生2名が出演することになりました。収録は同研究センターで行われ、和やかな雰囲気の中、DJを務める山本 瑠香さんのリードで取材が進みました。 仕事と研究の両立や研究内容、大学院で学ぶ理由やモチベーションなど、いろんな視点で深堀りしていただきました。ぜひ視聴ください! 【2/5・12放送】健康科学研究科 博士後期課程2年 井川 祐樹さん 西大和リハビリテーション病院 勤務/理学療法士 【研究内容】脳卒中後疼痛について 第20回日本神経理学療法学会学術大会の公募シンポジウムⅥ「中枢性疼痛ー中枢性疼痛の脳内メカニズムとリハビリテーション」シンポジストを担当   【2/19・26放送】健康科学研究科 修士課程1年 木下 栞さん 星ヶ丘医療センター 勤務/理学療法士 【研究内容】脳卒中後の感覚運動システムについて   放送予定 2/5・12・19・26(日)13:55~14:00放送 ▶番組ホームページ ▶radiko    

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