健康科学専攻(博士後期課程)の新着情報一覧
2023.12.22
この痛みは私のせいじゃない:非予測的な負の出来事に対する認知過程~ニューロリハビリテーション研究センター
「この痛みは私のせいで起こったんじゃない」「あの先生のせいでこの痛みがあるんだ」など、自分が引き起こした行為や運動に伴って痛みが誘発されたにも関わらず、その痛みは自分のせいで起こったのではないと認識してしまうことがあります。畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターの 林田 一輝 客員研究員、森岡 周 教授 らは、非予測的な負の結果に対する認知過程について実験心理学的手法を用いて明らかにしました。この成果は、Consciousness and Cognition誌(I am not the cause of this pain: An experimental study of the cognitive processes underlying causal attribution in situations with unpredictable outcomes)に掲載されています。 研究概要 ある出来事について、それを生み出していると考えられる何らかの原因に結び付ける心理過程を原因帰属といいます。しばしば臨床では、「この痛みは私のせいで起こったんじゃない」「あの先生のせいでこの痛みがあるんだ」など、自分が引き起こした行為や運動に伴って痛みが誘発されたにも関わらず、その痛みは自分のせいで起こったのではないと原因帰属してしまうことがあります。このような患者は、他人に原因帰属をしてしまうため、患者教育が難渋する場合があります。痛みというネガティブな出来事を適切に原因帰属させることは、行動変容を促すために重要ですが、原因帰属は主観的な要素が多く科学的に扱うことが難しいため、その認知的メカニズムは不明でした。畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターの林田 一輝 客員研究員らの研究チームは、原因帰属を客観的に測定できるtemporal bindingという現象に着目し、行為を自分の意志で選択した場合(自由選択条件)と他者に強制された場合(強制選択条件)とで原因帰属が変化するのかどうかを、健常者を対象に実験的に調査しました。その結果、行為に伴って痛みが与えられた時、自由選択条件と比較して強制選択条件で自分への原因帰属が減少することが示されました。驚くべきことに、自由選択条件と強制選択条件では、痛みの程度は同等に感じていることも示されました。これらの結果から、他者のせいにする、といった原因帰属は、ネガティブな出来事そのものよりも自分でその行為を選択したかどうかが重要であることが示されました。 本研究のポイント ■ 自由選択と強制選択が痛みの原因帰属を変調させるかどうかの認知プロセスを調べた。 ■ 強制選択に痛みを伴うと自己への原因帰属が減少することが明らかにされた。 研究内容 強制選択が痛みの原因帰属に影響するかどうかを、健常者を対象とした実験で検証しました。単純な意思決定課題と痛み刺激を組み合わせた修正版temporal binding課題を用いました。Temporal binding課題とは、認知的な原因帰属を暗黙的かつ定量的に評価できる方法として知られています。あるキーを押して(行為を実行する)、100ms時間間隔を空けて、音が鳴る(出来事が起こる)という状況おいて、そのキー押しと音の間の時間間隔を参加者に推定させる課題です。推定した時間間隔が短いほど、行為と出来事の強い結びつけを認知しており、原因帰属を定量化できるとされています。 実験参加者は、自由選択条件と強制選択条件を遂行しました。画面上の3つのキーのうち1つは音だけが出る確率が最も高いキー、もう1つのキーは音と触覚刺激が出る確率が最も高いキー、最後のキーは音と痛み刺激が出る確率が最も高いキーであることが参加者に伝えられていました。自由選択条件では、痛み刺激を避けるようにキーを選択して押すように参加者に伝えられました。強制選択条件では、強制的に選択された黒塗りのキーを押すように指示されました。実際には、各キーはそれぞれの刺激を与える確率が同じでした(そのことを参加者は知りませんでした)。つまり、痛み刺激を受ける確率は、参加者がどのキーを押しても同じでした(33.3%)。すなわち、自由に選択できるかどうかの要因のみが操作されました。この課題にTemporal binding課題を組わせた実験を行いました。(図1) 図1:実験課題 キー押しの後、数100msの時間間隔が空いて、音のみ、音と触覚または音と痛みが提示される。その後、時間間隔の推定と痛みの程度をNumerical Rating Scale(NRS)にて評価する。自由選択条件と強制選択条件の両方を実験参加者は遂行した。 その結果、行為に伴って痛みが与えられた時、自由選択条件と比較して強制選択条件で推定時間間隔が有意に長くなることが示されました(図2)。つまり他者強制された時に痛みを伴うと自分への原因帰属が減少していました。驚くべきことに、自由選択条件と強制選択条件では、痛みの程度は同等であるという結果も得られました。これらの結果から、他者のせいにするといった原因帰属は、ネガティブな出来事そのものよりも自分でその行為を選択したかどうかが重要であることが示されました。この成果は、患者教育の際に患者の自由意志を確保する重要性を示しています。 図2:実験の結果 A:時間推定の結果、値が小さい程キー押しと音との時間間隔を短く推定しており、原因帰属が強いことを表す。痛みが提示された条件において、自由選択と比較して強制選択が有意に長くなった。 B:痛みの結果、自由選択条件と強制選択条件で有意な差は認めなかった。データは平均±標準誤差を表す。*p<0.05 NRS:Numerical Rating Scale 本研究の臨床的意義および今後の展開 本研究によって、原因帰属は自由選択が重要な要因であることが示されました。今後の研究では、痛みの原因帰属の根底にある認知過程が患者の行動を変化させるかどうかを調べる予定です。 論文情報 Kazuki Hayashida, Yuki Nishi, Taku Matsukawa, Yuya Nagase, Shu Morioka I am not the cause of this pain: An experimental study of the cognitive processes underlying causal attribution in the unpredictable situation whether negative outcomes. Consciousness and Cognition, 2023 問合せ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 畿央大学大学院健康科学研究科 センター長/教授 森岡 周 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.morioka@kio.ac.jp
2023.12.21
畿央大学から世界へ!修了生がコロンビア大学で研究を続けています~健康科学研究科
私は2018年度に健康科学研究科博士後期課程(森岡周研究室)を修了した片山脩です。現在はコロンビア大学の認知神経科学部門で博士研究員として研究を続けています。近況報告と院生の頃を思い出しながら書かせていただきます。 学位取得後から現在 博士号の学位を取得した2019年4月から国立長寿医療研究センター予防老年学研究部に特任研究員として勤務を開始しました。その後、2021年4月から日本学術振興会の特別研究員となり、2023年の6月より現在のコロンビア大学で博士研究員として研究を続けています。 コロンビア大学ではドイツ、フランス、オランダ、イラン出身の博士研究員の方々と研究の話だけでなく、業務後にメジャーリーグを一緒に観戦したり、休日にホームパーティーをしたりと充実した生活を過ごしています。 ▼ラボのメンバーと 社会人院生として学位を取れた理由 私は、理学療法士として愛知県の田舎にある小さな病院で勤務していました。1年目から持ち続けていた臨床での疑問を解決できないまま過ごしていましたが、このままではいけないと決意して理学療法士7年目の春に健康科学研究科に入学しました。 私が愛知県で勤務しながら、社会人院生として学位を取得できたのには大きな理由があります。それは2014年の入学時点で講義はライブ配信とオンデマンド配信が完備されていたことです。そのため、愛知県にいながら仕事後にライブで講義を受講することや、残業で聞けなかった講義をオンデマンドで受講することができました。 どちらも今では当たり前となっていますが、当時は完備されている大学は珍しく社会人院生が学位を取れる仕組みの先駆けが畿央大学でした。 私は愛知県に住んでいることもあり、大学の事務の方々と関わる機会も多くありました。いつも丁寧に対応してくだったおかげで、遠隔地に住む社会人院生でも安心して学びに集中することができました。今でもとても感謝しております。 ▼修士課程時代 院生生活を振り返って 私が修士課程と博士後期課程でお世話になった健康科学研究科の森岡 周教授の研究室では、週に1度のゼミには修士課程から博士後期課程の院生が20名ほど集まっていました。研究分野は痛み、姿勢制御、高次脳機能障害、小児、目標設定など多岐に渡っており、一見まとまりがないように思われても、論理的思考で物事を捉えるという共通した意識があったため、自身の研究分野でなくても的確で建設的な議論が毎週行われていました。そのレベルの高さに入学して不安にもなりましたが、社会人院生の先輩、同期、後輩にも恵まれて学位を取得することができました。 世界を意識するきっかけとなった出会い 私が院生の頃は金子 章道栄誉教授が健康科学研究科長をされており、講義を受講していました。講義の合間にしてくださるハーバード大学へ留学されていた頃のお話が私は大好きで、何としても真実を突き止めるという金子先生の信念の強さと研究者としての本質を学びました。私が一番お世話になった森岡 周教授の講義は必ず教室で受講したかったため、毎週愛知県で午前中勤務し午後から奈良県に通っていました。森岡先生からもフランスに留学されていた頃のお話を聞かせていただき、留学して現場を自身の目で見てくることへの憧れを抱きました。そして、在学中には国際学会での発表機会も与えていただき海外の研究者とディスカッションをする醍醐味を経験させていただきました。 ▼Society for Neuroscience (北米神経科学学会)にて 留学をして感じていること 留学をして今、感じていることは、院生の頃に多分野の方々と論理的思考を繰り返し行ってきた経験がとても役に立っているということです。コロンビア大学で自身の研究について教授や同僚に伝える際、もちろん言語の壁はありますが客観的に物事を捉えて論理的に説明をすることは同じであり、その礎が健康科学研究科で築かれたと感じています。 留学前には、壮行会を開催していただき一緒に学んだ仲間との絆が今もなお続いていることに喜びを感じました。(その時の様子はこちらから) 末筆ながら、貴大学の一層のご発展を心よりお祈りいたします。 博士後期課程 (森岡周研究室)2018年度修了生 コロンビア大学 博士研究員 片山 脩 【関連記事】 大学院修了生のColumbia University留学に向けた壮行会を開催!~森岡研究室 教員・大学院生が2nd International symposium on EmboSSで発表!~ニューロリハビリテーション研究センター 大学院生が国際疼痛学会(IASP 2018)でポスター発表! 森岡周教授と大学院生が第40回日本疼痛学会で発表!~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 長崎大学大学院 運動障害リハビリテーション学研究室と研究交流会を開催!~ニューロリハビリテーション研究センター
2023.12.13
亜急性期脳卒中患者の麻痺側上肢の上肢機能に対する使用頻度の傾向~ニューロリハビリテーション研究センター
脳卒中後上肢麻痺への評価においては、運動機能だけでなく生活の中での使用頻度を評価することが重要です。上肢麻痺の評価には、Fugl-Meyer Assessment(FMA)とMotor Activity Log(MAL)の2つの評価法が広く採用されています。FMAの上肢項目(FMA-UE)とMALの間には相関があることが明らかになっていますが、FMA-UEのスコアにおける重症度と使用頻度の傾向の違いについて明らかにした研究はありません。岸和田リハビリテーション病院の平山 幸一郎氏、松田 麻里奈氏、本学客員研究員 渕上 健氏、本学 森岡 周教授らは、FMA-UEのスコアをSegment回帰分析により統計的に分割し、MALにおける麻痺側上肢の使用頻度の傾向の違いを明らかにしました。この研究成果は、BMC Neurology誌(Trends in amount of use to upper limb function in patients with subacute stroke: a cross-sectional study using segmental regression analysis)に掲載されています。 研究概要 脳卒中患者の約33-80%は、発症後3週間以内に上肢麻痺を呈し、麻痺側上肢の不使用はさらなる機能低下を招く可能性が指摘されています。そのため、麻痺側上肢の運動機能のみでなく、日常生活における使用状況の評価も重要です。麻痺側上肢の運動機能と生活における使用頻度は密接に関連することが多く報告されています。一方で、Schweighoferらは、Constraint-induced movement therapyの効果を検証する大規模RCTに参加した被験者のデータを再解析し、コンピュータシュミュレーションに基づく上肢麻痺の回復モデルを検証した結果、治療を受けた1週間後のWolf Motor Function Test(WMFT)スコアが、1年後の麻痺側上肢の使用状況を予測し、ある一定のWMFTの得点を超えるか否かで、使用状況が大きく変化する可能性を示しました。この結果から、上肢麻痺へのリハビリテーションを行う中で、ある程度の運動機能の回復を担保しなければ、生活の中で麻痺側上肢を使用することは困難であることが考えられます。しかし、麻痺側上肢の運動機能の程度に対して、それぞれの運動機能に対する使用頻度の傾向について分析した研究はありません。岸和田リハビリテーション病院の平山 幸一郎氏、松田 麻里奈氏、本学客員研究員 渕上 健氏、本学 森岡 周教授らは、FMA-UEのスコアをSegment回帰分析により統計的に分割し、MALにおける麻痺側上肢の使用頻度の傾向の違いを明らかにしました。 本研究のポイント ■ FMA-UEにおけるMAL-Aの傾向の変化および変化するポイントをSegment回帰分析によって検討しました。 ■ FMA-UE:45.3点を境にMAL-Aの回帰直線の傾きは大きく増加しました。 ■ 亜急性期の脳卒中後上肢麻痺において、FMA-UEが45.3点に達すると、麻痺側上肢の使用頻度の傾向が変化する可能性が示唆されました。 研究内容 初発の発症後3ヶ月以内の脳卒中患者203名を対象としました。対象者のFMA-UE、MALのAmount of Use(MAL-A)を評価し、FMA-UEに対するMAL-Aの傾向の変化を捉えるために、FMA-UEを独立変数、Mal-Aを従属変数として、Segment回帰分析を行いました。Segment回帰分析とは、異なるグループに分類された独立変数が、これらの領域で変数間に異なる関係を示す場合に用いられる統計手法であり、分割された独立変数における領域の区間は変曲点(Break point)として算出されます。Segment回帰分析における変曲点とは、以前に確立されたパターンから変化を示す可能性がある特定の点のことです。Segment回帰分析におけるBreak pointのフィッティングは、Akaike Information Criterion(AIC)を用いて検討しました(図1)。 研究の結果、FMA-UE 45.3点でMAL-Aの傾きが大きく変化し、45.3点以降では、MAL-Aのスコアに大きなばらつきが認められました。つまり、FMA-UE 45.3点を境にMAL-Aのスコアは大きく改善する可能性が示唆されました。 図1:FMA-UEとMAL-Aに基づくSegment回帰分析 FMA-UEとMAL-Aは有意な正の相関を示し、FMA-UE:45.3点で回帰直線の傾きは変化しました。回帰直線の勾配は、変曲点より下でx=0.03、変曲点より上でx=0.12でした。 本研究の臨床的意義および今後の展開 この研究では、初発の亜急性期の脳卒中患者を対象に、FMA-UEとMAL-Aに基づいてSegment回帰分析を行いました。Segment回帰分析では、FMA-UEのスコアを統計的に分割し、MAL-Aにおける麻痺側上肢の使用頻度の傾向の違いを明らかにしました。結果として、FMA-UE:45.3点以上でMAL-Aの傾向は大きく変化し、45.3点を境にMAL-Aのスコアは大きく改善する可能性が示唆されました。この知見は、麻痺側上肢へのリハビリテーションにおいて、機能訓練や生活への参加に向けた介入などの治療戦略を考える上で、非常に有用であると考えています。 論文情報 Koichiro Hirayama, Marina Matsuda, Moe Teruya, Takeshi Fuchigami, Shu Morioka Trends in amount of use to upper limb function in patients with subacute stroke: a cross-sectional study using segmental regression analysis. BMC Neurology, 2023 問合せ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 畿央大学大学院健康科学研究科 センター長/教授 森岡 周 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.morioka@kio.ac.jp
2023.12.05
「第16回アジア理学療法連盟学術大会」に教員と大学院生が参加!~健康科学研究科
去る11月25日(土)~26日(日)にタイ・ノンタブリーのグランド・リッチモンド・ホテルで開催された第16回アジア理学療法連盟学術大会(16th Asian Confederation for Physical Therapy Congress)に大学院生3名と参加してきました。 コロナ禍でほとんどの学会が中止あるいはオンライン開催となっていたため、約4年振りに国際学会の現地参加となりました。また3名の大学院生うち2名は国際学会初挑戦でした。私自身も「Development, validity, and reliability of Japanese version of the constant shoulder score」という演題でポスター発表を行いました。 学会では色々な国からの参加者と研究についてディスカッションをするだけでなく、長らく会うことができないでいた日本人研究者の方々との再開も果たせました。 ほとんどの学会が対面開催に戻りつつあるので、来年度以降、改めて積極的に国際学会に参加していきたいと思います。また大学院生にもどんどん国際学会での発表にチャレンジしてもらいたいと思います。 理学療法学科・健康科学研究科 准教授 瓜谷 大輔 【関連記事】 第44回バイオメカニズム学術講演会(SOBIM2023 in 北九州)に教員・大学院生が参加しました!~健康科学研究科 瓜谷ゼミ「インソールセミナー」学部生レポート!~理学療法学科 瓜谷ゼミがインソールのセミナーに参加しました!~理学療法学科 「第11回日本運動器理学療法学会学術大会」院生レポート~健康科学研究科 「第11回日本運動器理学療法学会学術大会」在学生レポート~理学療法学科 学部生と大学院生が第11回日本運動器理学療法学会学術大会に参加しました~理学療法学科・健康科学研究科 卒業研究に向けて、瓜谷研究室が合同勉強会を実施!~理学療法学科 奈良学園大学 池田教授による質的研究勉強会を開催!~健康科学研究科 瓜谷研究室 大学院生が「第33回岐阜県理学療法学会学術集会」で奨励賞に選出!~健康科学研究科
2023.12.05
「第16回アジア理学療法連盟学術大会」大学院生レポート①~健康科学研究科
健康科学研究科 修士課程 2年の森 一晃です。2023年11月25日(土)~26日(日)にかけて、タイのノンタブリーで開催された第16回アジア理学療法連盟学術大会(16th Asian Confederation for Physical Therapy Congress)に、瓜谷 大輔准教授とともに参加し、ポスターセッションにて発表を行ってきました。 私は「Relationship between subjective performance recovery and neurocognitive function upon return to sports after ACL reconstruction」という演題の研究発表を行いました。 ポスター発表の形式は、指定された時間(30分間)にポスターの前に立ち、質問者と英語でフリーディスカッションを行う方法でした。なんとか1名のシンガポール在住の理学療法士と英語でディスカッションを行うことができ、貴重な経験を得ることができました。また、私が本学の学部生時代に参加したAPTSA(アジア理学療法学生協会)2nd congress in Japanで知り合ったタイの理学療法士と約12年ぶりに再会することができ、その頃の思い出やタイの理学療法などについて話すことができました。 今回、初めての国際学会での発表ということで不安ばかりでしたが、アジアの理学療法士と話していくうちに、少しずつ楽しさに変わっていきました。現地では、タイの理学療法士との再会のほかに、日本の他大学の先生方との交流、またタイの文化や食事に触れる機会などもあり、日々の臨床業務や研究活動に繋がるような情報や知識を得ることができました。 最後になりましたが、今回の研究発表にご協力頂いた瓜谷先生ならびに瓜谷ゼミの皆様、職場のスタッフに心から深謝を致します。 健康科学研究科 修士課程 2年 理学療法学科7期生(2013年3月卒業) あんしん病院 理学療法士 森 一晃 【関連記事】 タイ開催「第16回アジア理学療法連盟学術大会」に参加しました!~健康科学研究科 第44回バイオメカニズム学術講演会(SOBIM2023 in 北九州)に教員・大学院生が参加しました!~健康科学研究科 瓜谷ゼミ「インソールセミナー」学部生レポート!~理学療法学科 瓜谷ゼミがインソールのセミナーに参加しました!~理学療法学科 「第11回日本運動器理学療法学会学術大会」院生レポート~健康科学研究科 「第11回日本運動器理学療法学会学術大会」在学生レポート~理学療法学科 学部生と大学院生が第11回日本運動器理学療法学会学術大会に参加しました~理学療法学科・健康科学研究科 卒業研究に向けて、瓜谷研究室が合同勉強会を実施!~理学療法学科 奈良学園大学 池田教授による質的研究勉強会を開催!~健康科学研究科 瓜谷研究室 大学院生が「第33回岐阜県理学療法学会学術集会」で奨励賞に選出!~健康科学研究科
2023.12.05
「第16回アジア理学療法連盟学術大会」大学院生レポート②~健康科学研究科
健康科学研究科 博士課程 2 年の安浦 優佳です。2023年11月25日から26日の2日間、タイで開催された第16回アジア理学療法連盟学術大会(16th Asian Confederation for Physical Therapy Congress)に参加しました!アジア各国の理学療法士が集まり、様々な視点から多くの発表がなされました。 瓜谷研究室からは私を含め、4名がポスターセッションでの発表を行いました。私は「Intra- and inter-rater reliability of ultrasound in dynamic evaluation of the vastus medialis muscle」という研究の発表を行いました。 私は修士課程の時に国際学会へエントリーしていましたが、コロナの影響で学会自体が中止になってしまいました。今回の学会参加は、その時のリベンジ!として、初の国際学会への参加で、とても意気込んでいました。 英語が得意ではない私は、あらかじめdiscussionの内容を英語で準備し、当日の朝ギリギリまで発表内容を何度も何度も見直していました。会場では終始緊張し、ソワソワしていましたが、瓜谷准教授や博士課程の山野さん、修士課程の森さんが一緒にいてくださり、安心して挑むことができました。30分間のポスターセッションは本当にあっという間で、無事に発表を終えることができました。限られた時間の中でしたが、私にとってとても貴重な経験になりました。 ▼ポスター発表での安浦(左)とdiscussionされている瓜谷准教授(右) その後もアジア各国の先生方の発表を聴講しました。その中で、日本の先生が流暢な英語で発表され、様々な国の方々とdiscussionされる姿を見て、私もさらにスキルアップして、あの場に立てるようになりたい!!と感じました。 また、お昼や休憩時間には、現地の大学院生とお話させていただき、新しい繋がりもできました。 2日間、本当に刺激的で大変貴重な時間を過ごすことができました。 最後になりましたが、今回の発表にあたって、埼玉県立大学 今北 英高 教授、畿央大学 瓜谷 大輔 准教授、福本 貴彦 准教授には終始熱心なご指導をいただきました。心から感謝申し上げます。また、瓜谷研究室、福本研究室の先生方のも多くのご助言をいただきました。本当にありがとうございました。 健康科学研究科 博士課程 2年 理学療法学科11期生(2017年卒業) 運動器ケアしまだ病院 リハビリテーション部 安浦 優佳 【関連記事】 畿央生が見た東京五輪#1~安浦さん編 「第16回アジア理学療法連盟学術大会」大学院生レポート①~健康科学研究科 「第16回アジア理学療法連盟学術大会」に教員・院生が参加!~健康科学研究科 第44回バイオメカニズム学術講演会(SOBIM2023 in 北九州)に教員・大学院生が参加しました!~健康科学研究科 瓜谷ゼミ「インソールセミナー」学部生レポート!~理学療法学科 瓜谷ゼミがインソールのセミナーに参加しました!~理学療法学科 「第11回日本運動器理学療法学会学術大会」院生レポート~健康科学研究科 「第11回日本運動器理学療法学会学術大会」在学生レポート~理学療法学科 学部生と大学院生が第11回日本運動器理学療法学会学術大会に参加しました~理学療法学科・健康科学研究科 卒業研究に向けて、瓜谷研究室が合同勉強会を実施!~理学療法学科 奈良学園大学 池田教授による質的研究勉強会を開催!~健康科学研究科 瓜谷研究室 大学院生が「第33回岐阜県理学療法学会学術集会」で奨励賞に選出!~健康科学研究科
2023.12.02
修了生が第7回日本リハビリテーション医学会秋季学術集会にてYoung Investigator Award 優秀賞を受賞しました~健康科学研究科
この度、2023年11月3日(金)〜11月5日(日)に宮崎県のシーガイアコンベンションセンターで開催されました、第7回日本リハビリテーション医学会秋季学術集会にて、久保峰鳴(畿央大学理学療法学科7期生、畿央大学大学院修士課程および博士後期課程修了生)が口述発表を行って参りました。 本学術大会では、医師を中心に、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士といったリハビリテーション職に加え、看護師など多職種が一同に会し、様々なテーマの講演・演題発表が行われました。 大会テーマは「リハビリテーション医学会イノベーション -継承と革新-」でした。リハビリテーション医学発展のため、最先端の知識や技術に関する報告、またそれらについて修得を目的とした講演などが多くあり、まさにテーマに合致した学会内容であったと感じました。 今回の学術大会では、畿央大学大学院の大住 倫弘准教授が合同シンポジウム「ペインリハビリテーションの実効と今後の展望」にてシンポジストとしてご登壇されておりました。 私は、一般演題として、「変形性膝関節症患者における歩行時膝関節の動的なStiffnessと推進力および制動力の関連性」を発表しました。また、本発表におきまして、Young Investigator Award 優秀賞に選出して頂きました。 日本リハビリテーション医学会という非常に大きな学会が主催する学術大会で、理学療法士ながら、私の発表を優秀賞として選出していただき、大変嬉しく、光栄に思います。 私は、畿央大学大学院博士後期課程において、変形性膝関節症の歩行に関する研究を行い、博士後期課程を修了しました。本学術大会で発表した研究も、変形性膝関節症の歩行に関する研究であり、畿央大学大学院で学んだことを生かすことが出来た結果であると考えております。 今後もリハビリテーション医療の一助となるよう研究活動に取り組んでいきたいです。 最後になりましたが、今回の報告にあたり、ご指導・ご支援を頂きました先生方、大会関係者の方々に深く感謝申し上げます。 関西医科大学 リハビリテーション医学講座 研究員 大阪河﨑リハビリテーション大学 リハビリテーション学部 理学療法学専攻 助教 久保 峰鳴 畿央大学 健康科学部 理学療法学科 7期生 大学院 健康科学研究科 修士課程、博士後期課程修了生 【関連記事】 第44回バイオメカニズム学術講演会(SOBIM2023 in 北九州)に教員・大学院生が参加しました!~健康科学研究科 瓜谷ゼミ「インソールセミナー」学部生レポート!~理学療法学科 瓜谷ゼミがインソールのセミナーに参加しました!~理学療法学科 「第11回日本運動器理学療法学会学術大会」院生レポート~健康科学研究科 「第11回日本運動器理学療法学会学術大会」在学生レポート~理学療法学科 学部生と大学院生が第11回日本運動器理学療法学会学術大会に参加しました~理学療法学科・健康科学研究科 卒業研究に向けて、瓜谷研究室が合同勉強会を実施!~理学療法学科 奈良学園大学 池田教授による質的研究勉強会を開催!~健康科学研究科 瓜谷研究室 大学院生が「第33回岐阜県理学療法学会学術集会」で奨励賞に選出!~健康科学研究科 瓜谷准教授の研究成果が2年連続で学会表彰されました!~健康科学研究科 「第10回日本筋骨格系徒手理学療法研究会学術大会」に教員・大学院生が参加!~健康科学研究科
2023.11.29
地域在住ロバスト高齢者における新型コロナウイルス流行下での運動実施と基本チェックリストの下位項目との関連~健康科学研究科
新型コロナウイルスの感染拡大により、身体活動量が減少し、フレイル*の新規発生率が増加しています。フレイル予防には運動習慣などの健康的な生活習慣が重要で、コロナ禍でも同様に運動や社会性の確保、十分な栄養補給が推奨されています。高齢者の運動実施に関する要因は、数多く報告されていますが、コロナ禍のような社会生活が制限された環境下での運動実施の可否に関する要因についてのエビデンスはまだ十分ではありません。 また、わが国では各地方自治体において、要介護状態のリスクが高い高齢者を抽出するために基本チェックリスト**が用いられています。しかし、多くの基本チェックリストを使用した研究では、総該当数によるフレイル判定に用いられており、実際に行政が活用している基本チェックリストの下位項目に着目した報告は少ないのが現状です。 本学大学院健康科学研究科修士課程の中北智士、健康科学研究科の松本大輔准教授、高取克彦教授は、地域在住高齢者を対象にした調査を行いました。その結果、ロバスト高齢者であっても、抑うつ項目(基本チェックリストの下位項目の一つ)に該当する者は、コロナ禍のような社会生活が制限される環境下において運動を実施することが難しいことを明らかにし、その内容を地域理学療法学に発表しました。 *フレイル:健康から障害に至る前段階の状態と位置付けられ、機能予後や要介護度に影響し、早期の死亡リスクを高める。フレイルの段階として、ロバスト(健常)、プレフレイル、フレイルに分けられる。 **基本チェックリスト:二次予防事業対象者の選定のために厚生労働省が作成した。全25項目7つのドメイン(生活機能、運動機能、栄養状態、口腔機能、閉じこもり、認知機能、抑うつ)で構成されている。 研究概要 A市在住の高齢者3,698名を調査し、2018年の基本チェックリストの下位項目と2020年のコロナ禍での運動実施の有無の関連について検討しました。 本研究のポイント 高齢者に対する調査によって、年齢、性別、家族構成、主観的健康感、痛みによる制限、各下位項目を調整しても、抑うつ項目該当者は、該当しない者と比べて、コロナ禍で運動を実施できていない割合が約1.5倍高いことが明らかとなりました。 図1:コロナ禍での運動非実施と抑うつとの関連(オッズ比) 図2:抑うつ者における運動実施・非実施群でのフレイル新規発生率の比較 また、ベースライン時に抑うつ項目該当者であってもコロナ禍で運動実施できている者では、運動実施できていない者に比べてフレイル発生率は有意に少なく(運動実施群14.0% vs 運動非実施群29.4%)、抑うつ該当者でも適切な支援を実施することでフレイルを抑制できる可能性が示唆されました。 本研究の臨床的意義及び今後の展開 本研究は実際に行政が活用している基本チェックリストの下位項目に着目した数少ない研究です。ロバスト高齢者であっても抑うつ傾向にあるものは、コロナ禍のような環境で運動実施することが難しいことが明らかになりました。介護予防に認められている予後予測に基づいた明確な目標設定や支援方法の選定の一助になると考えられます。今後もより地域施策に還元できるような研究に発展させていきたいと思います。 謝辞 研究にご協力いただきました住民の皆様、役場の方々に感謝申し上げます。 論文情報 中北智士,松本大輔,高取克彦. 地域在住ロバスト高齢者における新型コロナウイルス流行下での運動実施と基本チェックリストの下位項目との関連. 地域理学療法学. 公開日2023/11/03. DOI https://doi.org/10.57351/jjccpt.JJCCPT23002 問合せ先 畿央大学大学院健康科学研究科 修士課程 中北智士 准教授 松本大輔 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: d.matsumoto@kio.ac.jp
2023.11.17
サーマルグリル錯覚を過敏にさせる脳損傷領域の探索~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
サーマルグリル錯覚は温かいモノと冷たいモノを同時に触ることで灼熱痛に似た痛みや不快感を経験する錯覚です。サーマルグリル錯覚は中枢神経系の感覚情報処理の過程で生じるといわれており、最近では中枢性感作の有用な指標として提案されています。畿央大学大学院 博士後期課程 松田 総一郎、大住 倫弘 准教授を中心とする研究グループは、サーマルグリル錯覚が視床外側周囲の損傷によって過敏になることを明らかにしただけでなく、その過敏さは脳卒中患者における中枢性感作の症状と相関していることを明らかにしました。この研究成果はJournal of pain research誌(Thermal Grill Illusion in Post-Stroke Patients: Analysis of Clinical Features and Lesion Areas)に掲載されています。 研究概要 サーマルグリル錯覚は温かいモノと冷たいモノを同時に触ることで灼熱痛に似た痛みや不快感を経験する錯覚です。サーマルグリル錯覚は中枢神経系の感覚情報処理の過程で生じるといわれており、最近では中枢性感作と呼ばれる脳の問題による痛みの治りにくさを測るツールとして提案されてきています。しかしながら、そのメカニズムは不明なところが多く、多方面からの研究が求められている真っ只中にあります。畿央大学大学院 博士後期課程 松田 総一郎、大住 倫弘 准教授を中心とする研究グループは、サーマルグリル錯覚のメカニズム解明の一端を担うために、脳卒中後患者にを対象に「どのような脳の損傷によってサーマルグリル錯覚に過敏になるのか」を探索しました。その結果、サーマルグリル錯覚の過敏さは視床外側周囲の損傷と有意に関連していることが明らかになりました。また、興味深いことに、サーマルグリル錯覚の過敏さは、中枢性感作症状の1つであるワインドアップ現象(繰り返される痛み刺激によって徐々に痛みをつよく感じる現象)と相関していることが示されました。このことは、サーマルグリル錯覚が中枢性感作症状を安全に測ることのできる臨床ツールとなり得ることを示唆しています。 本研究のポイント 脳卒中後患者におけるサーマルグリル錯覚と臨床的特徴・損傷領域の関連性を検証した。 サーマルグリル錯覚によって経験する痛みや不快感が脳卒中後患者の中枢性感作を反映している可能性が示唆された。 サーマルグリル錯覚によって経験する不快感は視床外側の損傷と有意に関連していた。 研究内容 サーマルグリル錯覚を惹起するためには温刺激と冷刺激を同時に触る必要があります。そこで、本研究では直径 1 cm の銅の棒とプラスチックのチューブに水を流し、患者の接触面に温 (40 °C) と冷 (20 °C) の刺激を与えるように水温を調整しました。4本の温かい銅棒と 4本の冷たい銅棒を交互に配置することで、被験者が銅棒に触れるとサーマルグリル錯覚を生じるように設定しました(図1)。 図1:サーマルグリル刺激の実験条件 サーマルグリル錯覚の検査では、健側→患側の順番で銅棒の上に手のひらを最大30秒間置きました。その後、検査中に経験した痛みと不快感の強度をそれぞれ0(痛みなし)~10(想像できる最大の痛み)と0(不快感なし)~10(想像できる最大の不快感)で回答させました。その結果、サーマルグリル錯覚による痛みとワインドアップ比の間に有意な関連性を認めました。 また、脳画像解析(voxel-based lesion–symptom mapping)の結果、サーマルグリル錯覚による不快感は内包後脚および視床外側核周囲の病変と有意に関連していることが明らかになりました(図2)。 図2:サーマルグリル錯覚と損傷領域の分析 サーマルグリルによる不快感は内包後脚および視床外側核周囲の病変と有意に関連していました。 研究グループは、この結果について、内包や視床を損傷することで脳内での痛みや温度感覚情報処理の問題が生じ、サーマルグリル錯覚が過敏になると考えています。 本研究の臨床的意義及び今後の展開 本研究成果は、脳卒中後患者の中枢性感作を「痛くない刺激」を用いて安全に定量評価することを示しているだけでなく、サーマルグリル錯覚のメカニズム解明および脳卒中後疼痛の病態解明の一助となると考えられます。 論文情報 Soichiro Matsuda, Yuki Igawa, Hidekazu Uchisawa, Shinya Iki, Michihiro Osumi Thermal Grill Illusion in Post-Stroke Patients: Analysis of Clinical Features and Lesion Areas Journal of pain research, 2023 問合せ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 畿央大学大学院健康科学研究科 博士後期課程 松田 総一郎 准教授 大住 倫弘 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: m.ohsumi@kio.ac.jp
2023.11.16
卒業生らの研究が国際学術雑誌に掲載されました!~理学療法学科
この度、理学療法学科1期生の中村 潤二さん(本学客員准教授/博士後期課程修了)、4期生辻本 直秀さんの研究が国際学術誌に掲載されました。 お二人の勤める西大和リハビリテーション病院は、本学の学生も実習施設としてもお世話になっており、多くの卒業生が理学療法士として勤務している施設の一つです。今回、卒業生の論文が同時期に同施設から掲載されるというのは快挙です。 中村さんと辻本さんのお二人から論文内容をそれぞれご紹介いただきました。 中村 潤二さん(理学療法学科1期生) 【論文名】 Effects of postural-control training with different sensory reweightings in a patient with body lateropulsion: A single subject design study 脳卒中後には、様々なバランス障害が生じますが、その中の一つであるBody lateropulsion (BL)は、座位や立位、歩行などの際に身体の側方傾斜が生じる障害です。この原因には、前庭脊髄路などの姿勢の制御に関連する神経機構の障害が関連していることが考えられています。しかし、このBLメカニズムもまだ明らかではなく、治療方法についてもほとんど調査されていません。 この研究では、BLを呈した症例の方に、バランス機能やバランス制御に関連する神経機構の評価などを詳細に行ったうえで、視覚情報に頼った状態でのバランス練習や、視覚に頼らずに体性感覚情報に頼った状態でのバランス練習を行った際の影響を比較しました。その結果、この症例では、視覚に頼らず、体性感覚情報に重きを置いた状態での練習の方が、バランス機能の向上がみられました。またバランス制御に関連する神経機構の評価を行った結果、神経機構の変化自体は乏しく、あくまでも代償的なバランス機能の改善であることが示されました。 今回は、一例のみの報告ですが、国際学術誌にBLの治療介入の調査報告が示されたのは、世界初であり、BLの方の理学療法を推進するための貴重な情報になると思われます。 辻本 直秀さん(理学療法学科4期生) 【論文名】 Predictors indicating the continuous need for a knee-ankle-foot orthosis in stroke patients at 1 month after onset 脳卒中発症後に重度の片麻痺を呈した方は、踏ん張ることができずに立つ、歩くことが困難になります。そのような方に立つ、歩くための練習を行う場合、膝や足首の固定性を高め、踏ん張りをサポートする長下肢装具を使用します。この練習効果を考えるうえで、長下肢装具は患者の足の長さや太さに合わせたものを使用することが望ましく、長期的に使用する場合には、本人用の長下肢装具を作製することが推奨されています。 しかし、脳卒中の急性期では、長下肢装具が完成するまでの2週間という非常に短い期間に足の麻痺が改善し、長下肢装具が不要になる患者も存在します。これまで、急性期病院で長下肢装具を作製するか否かの判断は、臨床家の経験に依存する側面が大きく、客観的な判断基準は確立されていませんでした。 私達が行った研究では、以前所属していた急性期病院で実施された装具作製についてのカンファレンス実績から、多種多様なデータを解析し、長下肢装具が必要であった患者の状態を調査し、麻痺側膝関節の自動伸展角度が高い精度で発症1か月後の長下肢装具の必要性を予測し得ることを報告しています。 ▲:写真左より(中村氏、辻本氏) これらの成果が得られたのも、畿央大学在学中から高いレベルの教育を受けることができたことや、学術活動の重要性を教えていただいてきたからこそだと思います。この場を借りて、日頃から支援いただいている畿央大学の皆様に深く感謝申し上げます。 西大和リハビリテーション病院 理学療法士 中村 潤二、辻本 直秀 論文情報 Nakamura J, Nishimae T, Uchisawa H, Okada Y, Shiozaki T, Tanaka H, Ueta K, Fujita D, Tsujimoto N, Ikuno K, Shomoto K. Effects of postural-control training with different sensory reweightings in a patient with body lateropulsion: a single-subject design study. Physiother Theory Pract. 2023. Tsujimoto N, Abe H, Okanuka T, Seki T, Fujimura M, Predictors indicating the continuous need for a knee-ankle-foot orthosis in stroke patients at 1 month after onset. Journal of Stroke and Cerebrovascular Diseases. 2023. 関連記事 修了生が「第21回日本神経理学療法学会学術大会」で奨励賞を受賞!~健康科学研究科 本学教員、大学院生の論文が学術優秀賞に選ばれました~理学療法学科・健康科学研究科 客員研究員の渕上 健さんの総説論文が「Journal of CLINICAL REHABILITATION」に掲載されました〜ニューロリハビリテーション研究センター


