理学療法学科の新着情報一覧
2022.02.07
脳卒中患者における歩行の関節運動学的特徴と筋シナジーパターン~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
脳卒中患者の歩行能力の低下には下肢筋活動パターンの異常が影響すると言われています。しかし、個々の症例毎に観察すると、異常な筋活動パターンは歩行時の立脚相または遊脚相において確認されます。畿央大学大学院 博士後期課程の水田 直道 氏と森岡 周 教授らは、歩行時における筋シナジーの異常パターンからサブタイプを特定し、サブタイプの歩行特性について検証しました。この研究成果は、PLOS ONE誌(Merged swing-muscle synergies and their relation to walking characteristics in subacute post-stroke patients: An observational study)に掲載されています。 研究概要 多くの脳卒中患者は歩行能力が低下し、日常生活や屋外での移動時にさまざまな困難さを経験します。歩行能力の低下には下肢筋活動パターンの異常が影響すると言われています。歩行時における異常な筋活動パターンは立脚相(歩行中に足が床面についている状態)または遊脚相(歩行中に足が床面から離れて前に振りだす時期)において確認され、運動学的特徴においても症例ごとに異なるパターンを示すことは臨床上明らかですが、それらの関係性は分かっていませんでした。 博士後期課程の水田 直道さんらは、歩行時における筋活動の異常パターンを筋シナジーの側面からサブタイプを特定し、サブタイプの歩行特性を明らかにしました。立脚期における筋シナジーの異常パターン(単調な筋シナジー制御)がみられるサブタイプでは、快適歩行時に麻痺側下肢伸展角度が減少した一方で、遊脚期における筋シナジーの異常パターンがみられるサブタイプでは、快適歩行時に麻痺側下肢屈曲角度が減少していることが分かりました。加えて、遊脚期における筋シナジーの異常パターンがみられるサブタイプでは、麻痺側下肢を大きく振り出す(屈曲角度の増大)ように歩くと、筋シナジーの異常パターンが即時的に改善することが分かりました。 本研究のポイント ■ 立脚期における筋シナジーの異常パターンがみられるサブタイプでは、快適歩行時に麻痺側下肢伸展角度が減少。 ■ 遊脚期における筋シナジーの異常パターンがみられるサブタイプでは、快適歩行時に麻痺側下肢屈曲角度が減少。 ■ 遊脚期における筋シナジーの異常パターンがみられるサブタイプでは、麻痺側下肢を大きく振り出すように歩くと、筋シナジーの異常パターンが即時的に改善する。 研究内容 介助なく歩行可能な脳卒中患者を対象としました。対象者は3つの歩行条件(快適歩行:cws、麻痺側下肢大股歩行:p-long、非麻痺側下肢大股歩行:np-long)で10m歩行テストを行いました。p-longおよびnp-long条件では、対象者にそれぞれの下肢を前に大きく振り出しながら歩くよう指示しました。cws条件における麻痺側下肢の筋シナジーの併合パターンに基づき、3つのサブタイプを特定しました。 図1:歩行時における筋シナジーの併合パターン 快適歩行条件における麻痺側下肢の筋シナジーの併合パターンに基づき、3つのサブタイプを特定しました。(A)歩行時における個々の筋活動波形を示します。(B)併合している筋シナジー波形と、それに含まれる筋肉の重み付けを示します。サブタイプ1では立脚前半と立脚後半、サブタイプ2では遊脚後半と立脚前半、サブタイプ3では遊脚前半と遊脚後半における筋シナジーが併合していることが確認できます。 図2:歩行条件間における運動学的パラメータおよび筋シナジーの複雑さ cws条件における下肢屈曲角度はサブタイプ3が減少している一方で、下肢伸展角度はサブタイプ1において減少していました。歩行条件間における筋シナジーの異常パターンは、サブタイプ3においてのみp-long条件で複雑に表現されました。 図3:歩行速度と筋シナジーの複雑さの関係性 全症例における歩行速度と筋シナジーの複雑さは有意な負の相関を示しました。一方で、サブタイプごとにこれらの相関関係を確認すると、サブタイプ2、3においてのみ有意な相関を示しました。 本研究の臨床的意義および今後の展開 この研究では、歩行時における筋シナジーの異常パターンからサブタイプを特定し、サブタイプの歩行特性について検証しました。結果として、筋シナジーの異常パターンは3つのサブタイプに分類され、それぞれのサブタイプに応じて快適歩行時の運動学的パラメータは異なっていました。遊脚期における筋シナジーの異常パターンを示すサブタイプにおいては、麻痺側下肢を大きく振り出すように歩くと、筋シナジーの異常パターンが即時的に改善することが分かりました。今後は、サブタイプの神経基盤を明らかにするとともに、筋シナジーの異常パターンがどのような回復過程を辿るか調査する予定です。 論文情報 Naomichi Mizuta, Naruhito Hasui, Yuki Nishi, Yasutaka Higa, Ayaka Matsunaga, Junji Deguchi, Yasutada Yamamoto, Tomoki Nakatani, Junji Taguchi, Shu Morioka. Merged swing-muscle synergies and their relation to walking characteristics in subacute post-stroke patients: An observational study. PLOS ONE 17 (2), e0263613, 2022 問い合わせ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター センター長 森岡 周(モリオカ シュウ) Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.morioka@kio.ac.jp 博士後期課程 水田 直道(ミズタ ナオミチ) 医療法人尚和会 宝塚リハビリテーション病院 E-mail: peace.pt1028_@_gmail.com(※@の前後の_を削除してお送りください)
2022.02.04
就職レポートNo.674(病院/理学療法士)理学療法学科
就職活動を終了したばかりの学生のリアルな声を紹介する「就職レポート」、第674弾! 理学療法学科16期生(22卒) Y.F さん 病院(理学療法士) 勤務 ※撮影時のみマスクを外しています。 【その病院に決めた理由】 私は高校時代から小児の理学療法士になりたいと考えていました。その中で、内定をいただいた病院では一年目から小児の理学療法に携わることができ、小児分野についての技術と知識を高められると感じました。また、18歳までと年齢制限がなく、一人の患者様に長く関わることで、成長をご家族の方や本人様と一緒に感じることができると考え志望しました。 【就職活動を振り返って】 自分自身をこれまで深く振り返ったことが無く、自己分析にはとても時間が掛かりました。しかし、友達やキャリアセンターの方々と話している中で自分自身の新たな発見もあり、とても良い機会になったと思います。 【就職活動でPRしたポイント】 基礎となる自己PRや学生時代に力を注いだことなどは、友達や先生などに相談に乗っていただき自分自身が自信をもって伝えることができる内容を具体的に考えるようにしました。面接当日はこれらを元に、小児理学療法士になりたいという思いを伝えられるように心がけました。また、面接の際には相手の目をしっかりと見て話すことや、笑顔で明るい雰囲気で臨むことを意識しました。 【キャリアセンターと就職サポートについて】 キャリアセンターの方々には大変お世話になり、沢山相談にも乗っていただきました。私自身が就職の希望として考えていた小児の理学療法士は採用枠が狭く、また病院数も少ないため、病院を探すことにもとても時間が掛かりました。その際に、求人情報が出た場合にはすぐに連絡をくださり、どういった求人情報であるかなど細かく内容を教えてくださいました。また、履歴書では文を書くことが苦手な私ですが、話を聞いてもらいながら少しずつ自分自身の納得がいくものを完成させることができました。面接の練習時には、コロナ禍ということもありオンラインでの面接練習にも力を入れてくださり、また細かな内容も想定して質問してもらえたことで、より自分自身について考えることができました。 沢山のことについて相談に乗っていただき、面接前日にも「大丈夫」といった声かけをしていただき、とても安心して面接に臨むことができました。また、合格発表時にも一緒に喜んでくださったのがとても嬉しく思いました。 就職活動を始める際に、何から手を付けて良いかわからないことが沢山あると思います。その際はキャリアセンターの方々に一度相談してみると、今後の進め方などの方向性がわかり、安心して活動することができると思います。 【後輩へのアドバイス・メッセージ】 自分自身のしたいことが何か、時間をかけてしっかり考える時間を取ることが大切だと思います。また自己分析に加えて友達に他己分析をしてもらうことで、新たな自分自身に気づくことができる機会にもなると思います。わからないことがあれば自分だけ解決しようとせず、キャリアセンターの方々や学科の先生、友達を沢山頼ってください。焦らず、息抜きもしながら納得のいくよう頑張ってください!!
2022.01.25
就職レポートNo.671(病院/理学療法士)理学療法学科
就職活動を終了したばかりの学生のリアルな声を紹介する「就職レポート」、第671弾! 理学療法学科16期生(22卒) K.I さん 病院(理学療法士) 勤務 ※撮影時のみマスクを外しています。 【その病院に決めた理由】 私が志望した病院は3病院を運営されており、急性期から回復期まで経験できる環境でした。実習自体は回復期病院に行くことが多かったですが、急性期病院でのリスク管理や幅広い症例を経験したいと以前から考えていたので志望しました。 【就職活動を振り返って】 私が内定を頂いた病院は試験日が10月下旬~11月上旬にかけてでした。友人たちの進路が決まっていくなかで、プレッシャーを感じながらの就職活動だったので終わった時の解放感がすごかったです。 小論文や履歴書を仕上げるのに苦労しましたが、キャリアセンターの先生に添削・修正をしていただきながら何とか完成させることができました。 【就職活動でPRしたポイント】 アルバイトや大学生活で学んだことを実際の臨床場面でどのように活かせるかということを意識して面接に挑みました。エピソードを丸々覚えるのではなく、自分がこれだけは面接官に伝えたいことを覚えておき、本番でしっかりと話せるように心がけていました。面接当日は緊張していましたが、これらのことを意識して臨んだので手ごたえを感じることができました。 【キャリアセンターと就職サポートについて】 キャリアセンターの先生には本当にお世話になりました。何度も履歴書や小論文の添削をしていただき、個人面接の練習もしていただきました。 また、相談にも親身になって答えてくださったのを覚えています。たくさん練習をしていただいたおかげで、試験当日はあまり緊張せず練習の成果を出すことができました。採用が決定したときも、真っ先にキャリアセンターに報告に行きました。 また、内定後の御礼状の書き方など就職活動後のフォローまで丁寧に対応していただきました。 【後輩へのアドバイス・メッセージ】 就職活動は一人では乗り切れないものだと思います。そのため、キャリアセンターの先生はもちろん、友人や家族に頼ってください。私は面接にとても不安を感じていたので、キャリアセンターの先生だけでなく、友人に面接官役をしてもらって練習していました。素直に周りに頼れば必ず助けてくれる人ばかりで、本当に周りに支えられているんだなと実感できた就職活動でした。焦らず自分のペースでしっかりと周りを頼りながら自分の納得できる進路を勝ち取ってください。応援しています。
2022.01.07
就職レポートNo.662(病院/理学療法士)理学療法学科
就職活動を終了したばかりの学生のリアルな声を紹介する「就職レポート」、第662弾! 理学療法学科16期生(22卒) M.T さん 病院(理学療法士) 勤務 ※撮影時のみマスクを外しています。 【その病院に決めた理由】 実習でお世話になった病院で、職員の皆さんのコミュニケーションが盛んで連携が密に図られているところや患者様が安心できるアットホームな雰囲気に魅力を感じました。また、介護老人保健施設などの関連施設も併設されており、退院後の生活を含め患者様の背景を考慮した地域に寄り添った理学療法を行うことができると思ったからです。 【就職活動を振り返って】 悩みに悩んだ就職活動でした。実習を終え、内定を頂いた病院を第一志望として考えていたのですが、就職活動を始めた8月時点ではまだその病院は求人が出されていない状態でした。そのため、たくさん他の病院の見学に行き、その中で気になる病院がありました。しかし、その病院はすでに募集人数の枠がほぼ埋まっており求人の締め切りが迫っている状況でした。どちらの病院を選択するのかゆっくりと悩む時間はなく、キャリアセンターの方やゼミ担任の先生にたくさん相談しましたが、なかなか答えを出すことはできませんでした。1つは求人が出るのかわからない、もう1つは求人の締め切りが迫っているという中で焦りもあり、締め切り間近の病院の面接を受けることにしました。結果的にその病院から内定を頂くことはできませんでした。準備不足だったため当然の結果だと思います。その後、第一志望に考えていた病院の求人が出て、キャリアセンターの先生のサポートを受けながらしっかりと準備を行い、面接を受け、内定を頂くことができました。 とても大変でしたが、キャリアセンターの先生やゼミ担任の先生、友人に支えてもらったおかげで、自分の将来についてしっかりと考えることができたし、後悔なく就職活動を終えることができたと思います。 【就職活動でPRしたポイント】 私は、以前から予防理学療法に興味があったのですが、実習に行って再入院される年配の方がとても多いことを身をもって感じました。また、内定先の病院は高齢者が多い地域にあり、患者様も高齢の方が大半を占めます。そのため、予防理学療法が重要になってくるのではないかと考え、その分野で活躍し地域に貢献したいという思いを伝えました。 【キャリアセンターと就職サポートについて】 親身になって相談に乗ってくださり、履歴書の添削や面接練習も丁寧にしていただきました。相談をするとすぐに状況を把握してくださり、病院の情報を教えてくださったり様々なアドバイスをしていただきました。また、キャリアセンター以外の場所で出会った時も声をかけてくれてとても心強かったです。キャリアセンターのサポートがなければ、就職活動は乗り切れなかったと思います。本当に感謝しています。 【後輩へのアドバイス・メッセージ】 早く就職活動を始めるに越したことはないと思います。その分色んな選択肢が増えるし、ゆっくりと将来を考えることができると思います。積極的に病院見学にも行って自分に合う病院を見つけてください。実際に行ってその病院の雰囲気を感じることはとても大切だと思います。 思い通りに進まないときもあると思いますが、周りをみると自分以外のみんなも頑張っているし、悩んだときはキャリアセンターの先生や理学療法学科の先生に相談して、後悔のないように就職活動を乗り切ってください。応援しています!
2021.12.24
就職レポートNo.657(病院/理学療法士)理学療法学科
就職活動を終了したばかりの学生のリアルな声を紹介する「就職レポート」、第657弾! 理学療法学科16期生(22卒) R.U さん 病院(理学療法士) 勤務 ※撮影時のみマスクを外しています。 【その病院に決めた理由】 まず初めにこの病院を知ったのは、畿央大学での病院合同説明会でした。患者さんと長く関わりサポートしていきたいという理由から回復期を志望していたこともあり、最新機器を取り入れるなど回復期リハビリテーションに力を入れている点に興味を持ちました。コロナ禍の影響で病院見学に行くことはできませんでしたが、同じゼミの先輩が就職していたこともあり、実際の声を聞けたということが大きかったです。また、新人教育が充実しており勉強できる環境が整っていることから、就職してからも自分が成長できる場だと感じ、この病院に決めました。 【就職活動を振り返って】 皆が就職活動を始めた時期に総合臨床実習で愛知県の病院に行っていたこともあり、周りと比べて就職活動が遅れていることに焦りがありました。また卒業研究や国家試験勉強と重なり、かなり追い込まれていたなと今振り返ると思います。そんな中でも、面接練習や履歴書・小論文の添削などキャリアセンターの先生方や友達に助けてもらうことで、何とか志望していた病院から内定をいただくことが出来ました。 長時間のオンデマンドでの就職試験やグループワーク、面接での慣れない言葉遣いなど大変だった記憶が大半ですが、これから社会人として社会に出ていくうえでとてもいい経験ができたと感じています。 【就職活動でPRしたポイント】 アルバイトや日本理学療法学生協会といった課外活動での経験から、自分は人と関わるときにどのようなことを意識しているのか、相手のために何ができるのかをエピソードを交えて伝えました。 Zoomでの面接ということで表情や空気感が伝わりにくいと事前に聞いていましたが、変に意識せず普段の自分を知っていただくためにいつも通りの会話を心掛けました。その結果、試験官の方に表情が柔らかく、あなたの人柄が大変よく伝わったと言っていただきました。 また、就職試験の1つとしてグループワークがあったのですが、ここでは自分の積極性をアピールするために積極的に意見を出し、独りよがりにならないように皆の意見をまとめる役割を担いました。他にも、全員の意見をまとめて自分の言葉で伝える能力をアピールするために、発表者に立候補したことなどが内定につながったのではと考えています。 【キャリアセンターと就職サポートについて】 キャリアセンターの先生には本当にお世話になりました。お忙しい中、何度も履歴書や小論文の添削をしていただき、個人面接の練習までしていただきました。履歴書での自己PRで何を書けばいいかわからなくて困っているときは、先生の方からエピソードを掘り起こしてくださり、そのエピソードの使い方も含め提案していただきとても助かりました。また、相談にも親身になって答えてくださったのを覚えています。たくさんの練習に付き合っていただいたおかげで、試験当日はあまり緊張せず練習の成果を出すことができました。 また、内定後の御礼状の書き方など就職活動期間だけでなく、その後のアフターフォローまで丁寧に対応していただきました。 【後輩へのアドバイス・メッセージ】 就職活動はとても1人では乗り越えられないと思います。実習の時期によっては思うように就職活動を行えず焦ることもあるかもしれません。そんなときは遠慮なく、周りにいる友達やキャリアセンターの先生方に頼ってください。必ず助けてくれるので、焦らず自分のペースで乗り越えてください。応援しています。
2021.12.21
令和3年度 理学療法学科卒業研究発表会を開催!~学生レポート
理学療法学科4回生、福森ゼミの西原大暉です。2021年11月5日(金)に開催された理学療法学科卒業研究発表会についてレポートを書かせていただきます。 【発表当日までの活動】 3回生前期に「理学療法研究法」という授業を通して論文の探し方や読み方を学びました。その後、先生や興味のある分野などからそれぞれが考え、各々希望のゼミを選択しました。3回生後期では「理学療法研究法演習」にて本格的なゼミ活動を始めました。日本語や英語の論文を読み、抄読会を行った上で研究のテーマをそれぞれ決定していきました。その後、本格的に実験へ取り組み、発表へ向けて準備を進めました。 私が所属する福森ゼミでは、研究には欠かせない統計学について、4Pの卒業研究で使用できるような統計教材を開発するため、先生から指導を受けながらメンバー全員で協力して準備を進めました。 【発表当日】 今年度は16のゼミから全23演題の発表が行われました。1演題につき、7分の発表と3分の質疑応答がありました。質疑応答では4回生や先生方から様々な視点からの意見、質問をいただきました。 今年も去年に引き続きコロナ禍ということもあり様々な制限がありました。そんな中でも各ゼミが研究内容や方法について、試行錯誤を繰り返し、無事に発表会を迎えることが出来ました。それぞれ分野の異なる発表は、非常に興味深いものばかりでした。 今回の研究で得られた経験や知識を4月から始まるそれぞれの舞台で存分に発揮し、日々精進していきたいと思います。 最後に、ご指導頂きました先生方並びにご協力頂いた方々に厚く御礼申し上げます。 理学療法学科4回生 西原大暉 【関連記事】 令和3年度 理学療法学科卒業研究発表会を開催!~教員レポート ●昨年度の卒業研究発表会はコチラ!
2021.12.20
固定物とヒトへの軽い接触による立位姿勢制御の特徴~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
手すりや壁などの固定物だけではなく、ヒトに軽く触れるだけでも立位姿勢が安定します。しかし、このような接触する対象物の違いによって生じる姿勢制御の特徴は明らかにされていませんでした。畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 石垣 智也 客員研究員(現:名古屋学院大学 講師)と畿央大学大学院 修了生 山道 菜未 氏(現 福岡リハビリテーション病院)、森岡 周 教授らは、固定物に触れると立位姿勢が安定化し姿勢動揺が高周波化するのに対し、ヒトに触れる場合には立位姿勢の安定化が固定物の場合に比べ少ないものの、姿勢動揺の高周波化が生じにくいことを明らかにしました。また、低周波成分の姿勢動揺で生じる二者間の姿勢協調が、高周波化を生じさせにくくする要因である可能性を示しました。 この研究成果はHuman Movement Science誌(Characteristics of postural control during fixed light-touch and interpersonal light-touch contact and the involvement of interpersonal postural coordination )に掲載されています。 研究概要 ヒトの立位姿勢は様々な感覚情報を用いて制御されています。この中でも、触覚が姿勢制御に与える影響を調べるために、指先等を用いて対象物に軽く接触(1 N未満)する「ライトタッチ」という方法が用いられています。一般的にライトタッチを固定物(例:手すりや壁)やヒトに対して行うと立位姿勢の安定化が得られますが、これら姿勢制御特徴の違いは明らかにされていませんでした。畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 石垣 智也 客員研究員らは、固定物とヒトに対するライトタッチの姿勢制御特徴を比較するために4つの立位条件(図1)で姿勢動揺を計測し、姿勢動揺の大きさや周波数、二者間での姿勢協調(自身と相手の姿勢動揺が類似すること)を分析しました。結果、固定物へのライトタッチ(固定物ライトタッチ)で立位姿勢動揺の減少と高周波化が認められ、ヒトへのライトタッチ(対人ライトタッチ)では立位姿勢動揺の減少が固定物の場合に比べて少ないものの、高周波化が生じにくいことが示されました。また、対人ライトタッチでは0。4 Hz以下の低周波成分で二者間の姿勢協調が認められるのに対し、0.4 Hzより大きな高周波成分では姿勢協調が認められませんでした。これら結果より、固定物ライトタッチでは自身の姿勢動揺を動きの無い対象物を基準に制御するため、姿勢動揺が大きく減少するとともに高周波化が生じると解釈されます。一方、対人ライトタッチでは動いている対象物(ヒト)を基準に自身の姿勢動揺を制御するため、姿勢動揺の減少が得られつつも高周波化が生じにくいと考えられます。低周波成分の姿勢動揺はヒトの重心の動きを反映するため、対人ライトタッチによる二者間での姿勢協調が高周波化を生じさせにくくする要因と考えられます。 本研究のポイント ■ 固定物へのライトタッチでは、立位姿勢の安定化が得られ姿勢動揺は高周波化する ■ ヒトへのライトタッチでは立位姿勢の安定化は固定物の場合に比べると少ないが、姿勢動揺の高周波化は生じにくい ■ ヒトへのライトタッチでは姿勢動揺の低周波成分において二者間の姿勢協調が生じる 研究内容 健常若年者を対象に閉眼での継ぎ足立位姿勢を基準とし、非接触条件、固定物(安定した台)へのライトタッチ条件、自身より安定したヒトに接触する対人ライトタッチ条件、自身と同様に不安定なヒトに接触する対人ライトタッチ条件の4条件を設定し(図1)、各条件の姿勢動揺(足圧中心)を計測しました。そして、姿勢動揺の大きさと主たる周波数(平均周波数)、低周波成分(≤0.4 Hz以下)と高周波成分(>0.4 Hz)における二者間での姿勢協調(相互相関係数)を解析し、条件間の比較を行いました。 図1:設定した立位条件 NT: no touch, FLT: fixed light touch, SILT: stable interpersonal light touch, UILT: unstable interpersonal light touch その結果、固定物ライトタッチでは立位姿勢動揺の減少と高周波化が認められ、対人ライトタッチ条件では立位姿勢動揺の減少が固定物ライトタッチに比べて少ないものの、不安定な対人ライトタッチ条件の左右動揺を除いて高周波化が生じにくいことが示されました(図2)。そして、高周波化の示されなかった安定した対人ライトタッチ条件と不安定な対人ライトタッチ条件の前後動揺では、低周波成分で高い姿勢協調が認められたのに対し、高周波成分では姿勢協調に条件の差を認めませんでした(図3)。 図2:立位姿勢動揺の平均周波数 図3:周波数成分別における二者間の姿勢協調 本研究の臨床的意義および今後の展開 リハビリテーションの臨床場面では、対象者の動作介助や運動療法のために支持物(手すりや杖など)や療法士の徒手的な身体接触が用いられます。本研究成果は、これら方法の違いが対象者の姿勢制御に与える影響について、基礎的知見からの考察を提供するものとなります。具体的には、姿勢動揺の減少は姿勢の安定化を意味するものの、他の研究知見を踏まえると、姿勢動揺の高周波化は固定化された自由度の低い制御様式とも解釈できます。そのため、姿勢の安定化を目的にライトタッチを用いる場合であったとしても、対象者や状況によっては用いる方法を使い分ける必要があるかも知れないという仮説を提唱するものとなります。 論文情報 Ishigaki T, Yamamichi N, Ueta K, Morioka S. Characteristics of postural control during fixed light-touch and interpersonal light-touch contact and the involvement of interpersonal postural coordination. Hum Mov Sci. 2021;81:102909. 問い合わせ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 客員研究員 現:名古屋学院大学 リハビリテーション学部 理学療法学科 講師 石垣 智也(イシガキ トモヤ) Tel: 0745-54-1601(畿央大学) Fax: 0745-54-1600(畿央大学) E-mail: ishigaki@ngu.ac.jp 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 森岡 周(モリオカ シュウ) E-mail: s.morioka@kio.ac.jp Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600
2021.12.10
脳卒中患者における“急激な”体重減少は“慢性”疾患における悪液質基準と関連している~健康科学研究科
悪液質とは、がんや心不全などの慢性疾患に関連して生じる予後不良な複合的代謝異常症候群であり、筋肉量の減少を特徴とし、顕著な臨床的特徴は体重減少といわれています。一般に、脳卒中患者は急性期に体重減少が生じやすく、この体重減少は予後不良因子であることが報告されていますが、その原因については十分に解明されていません。畿央大学大学院健康科学研究科修士課程の山本実穂氏と庄本康治教授、野添匡史准教授(甲南女子大学)、吉田陽亮氏(奈良県西和医療センター)らは、脳卒中患者に生じる急激な体重減少は悪液質の診断基準と関連があることを明らかにしました。本研究結果は,脳卒中患者に生じる体重減少に悪液質が関連している可能性を示唆するものであり、脳卒中患者の体重減少予防のための治療方法の確立に寄与する内容といえます。この研究成果は、Nutrition誌に掲載されます。 研究概要 悪液質の主な症状である体重減少は脳卒中において生じやすく、特に脳卒中発症後間もない急性期において生じやすいことが知られています。そこで本研究では、脳卒中患者における急性期での体重の変化と、悪液質の診断基準とに関連があるか否か、前向きの観察研究を実施することで検討しました。 研究内容 脳卒中発症後、研究期間内に急性期病院に入院した155名の患者を対象に、急性期病院入院時及び退院時に体重を測定し、体重の変化率を求めました。また、急性期病院退院時に悪液質診断基準の評価(図1)を行い、この5項目の基準のうち3項目以上の基準を満たした場合、悪液質基準を有すると判断しました。そして、体重変化率と悪液質基準の有無に関連性があるか否かを分析しました。 【図1:本研究で用いた悪液質の診断基準(Evansらの分類)】 データ分析の結果、155名中30名(19%)の方が入院期間に5%以上体重が減少しており(体重減少群)、体重減少を認めなかった125名(体重安定群)よりも悪液質基準を満たす割合が多いことが分かりました(体重減少群=18名(60%) vs体重安定群=28名(22%))。また、悪液質基準は体重変化率に影響を与える他の要因(重症度やエネルギー摂取量、嚥下能力や悪液質の原因になる他疾患の保有など)で調整した上でも、体重変化率に影響を与えることが明らかになりました(表1)。 【表1:悪液質基準と体重変化率の関係】 BMI: body mass index, NIHSS: National Institute of Health Stroke Scale, FOIS: Functional Oral Intake Scale 研究の臨床的意義および今後の展開 慢性疾患で生じるとされている悪液質の診断基準が、急性期の脳卒中患者における体重減少に関連しているということは、脳卒中患者で生じる体重減少に悪液質が関与している可能性を示唆するものです。本研究結果から、脳卒中患者で生じる体重減少に対して、悪液質の影響を考慮し早期診断・早期介入することで、生命予後や生活の質改善に寄与すると考えられます。これらの因果関係を明らかにするためには、今後さらなる研究が必要と考えられます。 論文情報 Miho Yamamoto, Masafumi Nozoe, Rio Masuya, Yosuke Yoshida, Hiroki Kubo, Shinichi Shimada, Koji Shomoto Cachexia criteria in "chronic" illness associated with “acute” weight loss in patients with stroke Nutrition December 2021, 111562 問い合わせ先 甲南女子大学 准教授 畿央大学健康科学研究科 客員研究員 野添 匡史(ノゾエ マサフミ) nozoe@konan-wu.ac.jp 畿央大学健康科学研究科 教授 庄本 康治(ショウモト コウジ) k.shomoto@kio.ac.jp Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600
2021.12.06
地域在住障害高齢者におけるバディスタイル介入が運動継続に与える効果~健康科学研究科
身体活動は障害者や高齢者であっても健康状態の維持・改善に有効であることが知られていますが、障害高齢者の多くは十分な運動をしていないとされています。そのため、運動継続を促進できるような取り組みが必要となります。 最近の研究では、バディスタイル(二人1組で行う介入方法)の身体トレーニングと栄養教育介入で、フレイル、栄養状態、身体活動量が改善したことが報告されています。しかし、これらの研究では、トレーニングを受けた健常者のボランティアが介入をしており,実施が容易ではありませんでした。畿央大学大学院健康科学研究科 博士後期課程 武田広道 氏と高取克彦 教授 らは、地域在住障害高齢者同士のバディスタイル介入が12週間の在宅運動プログラムにおける運動継続性に効果があるかどうかを検証することを目的に本研究を行いました。この研究成果はClinical Rehabilitation に掲載されています。 研究概要 通所介護事業所を利用している障害高齢者65名に12週間の在宅運動プログラムを実施してもらいました。その際、無作為にバディスタイル介入群と対照群に分けて実施し、バディスタイル介入を追加することで運動継続と身体・心理機能に効果があるかどうかを分析しました。 本研究のポイント ■障害高齢者同士のバディスタイル介入は12週間の在宅運動プログラムにおける運動継続性向上に効果があることが分かりました。 研究内容 データ解析の結果、バディスタイル介入群は対照群と比較して9~12週の期間において運動プログラムを実施した日数が有意に多くなっていました。両群で運動プログラム終了後に膝関節伸展筋力、4m歩行時間、5回立ち上がり時間が改善していました。 本研究の意義および今後の展開 今回の研究はバディスタイル介入が運動継続に与える効果を検討したものです。障害高齢者同士でバディを組むため、実施が容易で効率的に運動継続を促せるという点に意義があると考えています。本研究は運動の実施頻度を評価指標にしましたが、現在は運動の実施時間やバディスタイル介入終了後の持続効果についての報告をまとめています。また運動継続の予測因子として、アパシーに着目した解析も行っており、これらの結果も報告する予定としています。 論文情報 Hiromichi Takeda, Katsuhiko Takatori Effect of buddy-style intervention on exercise adherence in community-dwelling disabled older adults: A pilot randomized controlled trial Clinical Rehabilitation, 2021.
2021.11.30
令和3年度 理学療法学科卒業研究発表会を開催!~教員レポート
今年度の理学療法学科の卒業研究発表会は2021年11月5日(金)に開催され、計23演題の発表が行われました。 研究テーマは運動器や脳科学、呼吸器系、物理療法、動物実験による基礎研究、コミュニケーション、高齢者、ウィメンズヘルス、統計など多岐にわたりました。 理学療法学科では3年次に各教員のゼミへ配属されると、そこから4年次の11月に行われる「卒業研究発表会」に向けて、先行研究を調べたり教員と相談をしたりしながら研究計画を立てていきます。昨年に引き続きコロナ禍での卒業研究ということで学外でデータを取るような研究は難しかったケースもありますが、昨年に比べると学生同士で協力してヒトを対象としたデータを取るなど、制約がありながらも以前の形に近い研究を行えた学生も増えていた印象があります。 今年度も感染対策に気を遣いながらではありましたが、「無事に卒業研究発表会を開催できて良かった」という思いでいっぱいです。普段は「聞く」側であることが多い学生たちにとって、冬木記念ホールという大きなホールに立って発表できたということは、貴重な経験になったことだと思います。 7分間というのは始めは長いような気もしますが、実際に発表する段階になると思いの外短く、伝えたいことを時間内にまとめるのに苦労した学生も多かったのではないでしょうか。3分間の質疑応答では、教員からの鋭い質問に少し戸惑いながらも自分たちの言葉でしっかりと答える姿が印象的でした。 今回の発表が満足のいくものだった学生もいれば、心残りがある学生もいるかもしれません。しかし、卒業研究を立案、実施していく中で分からないことを深く探求したこと、コロナ禍の中で今出来る範囲で最大限のことをしようと臨機応変に対処できたことは、きっと臨床に出た時に患者さんにより良い医療、より良い理学療法を提供する力になると思います。 卒業研究は終わりましたが、すぐに国家試験の対策が待ち受けています。 今年も合格100%をめざして頑張りましょう!! 理学療法学科 助教 梶原由布 【関連記事】 令和2年度 理学療法学科卒業研究発表会を開催!~学生レポート