理学療法学科の新着情報一覧
2025.03.21
理学療法士、3年連続100%を達成!~2025年3月卒業生
2025年2月に実施された理学療法士国家試験の合格発表が3月21日(金)に行われました。関西私大最多となる19回目の卒業生を送り出した健康科学部 理学療法学科では、卒業生68名が受験して全員合格をはたしました。一昨年、昨年に続き3年連続での全員合格となります。全国平均は95.2%(新卒のみ)でした。 過去10年間の現役合格率も99.9%(683/684)と、全国随一の高水準を維持しています。 畿央大学は理学療法士養成のパイオニアとして、これからも高い技術と志だけでなく、次世代を切り拓くリーダーシップを兼ね備えた理学療法士の育成をすすめていきます。 理学療法士国家試験 現役合格率の10年間推移 2025卒 2024卒 2023卒 2022卒 2021卒 受験者 68名 68名 71名 75名 61名 合格者 68名 68名 71名 74名 61名 合格率 100% 100% 100% 98.7% 100% 全国平均(新卒) 95.2% 95.2% 94.9% 88.1% 86.4% 2020卒 2019卒 2018卒 2017卒 2016卒 受験者 76名 64名 72名 67名 62名 合格者 76名 64名 72名 67名 62名 合格率 100% 100% 100% 100% 100% 全国平均(新卒) 93.2% 92.8% 87.7% 96.3% 82.0% 理学療法学科の19期生は本当によく頑張り、3年連続での全員合格となりました。学生生活の序盤はコロナ禍の難しい時間を過ごしてきましたが、やるべきことを日々積み重ね、実力を発揮してくれました。国家試験の合格には、普段からのたゆまぬ努力が大切です。来年に向けても、教職員一同なお一層の対策強化をはかっていきます。 理学療法学科 学科長 庄本康治 ▶理学療法学科ホームページ ▶3分でわかるKIO元気塾~理学療法学科の学生・教員が地域の「元気」をサポート!(YouTube) ▶オープンキャンパス特設サイト
2025.03.19
TASK(健康支援学生チーム)活動レポートvol.96~ 「広陵町を『骨折0(ゼロ)のまちへ』 大分トリニータ×広陵町・畿央大学」のイベントに参加!
こんにちは!健康支援学生チームTASK※の理学療法学科2回生 中山 紗希・高見 亮佑、1回生 岡崎 日菜乃です。 2025年3月2日(日)に広陵町さわやかホールにて行われた「広陵町を『骨折0(ゼロ)のまちへ』 大分トリニータ×広陵町・畿央大学」のイベントに体力チェックブースをTASKとして出展させていただきました。 ※TASKは‟Think、Action、Support for Health by Kio University”の略称です。学科の枠を超えて協力し合いながら、地域住民の方々や畿央生の健康支援を目的として活動しています。 今回のこのイベントはJリーグ大分トリニータと広陵町・畿央大学がコラボし、特に転倒リスクに関与する“足”をメインテーマとしたイベントになります。 私たちは、参加者の方に 握力 足趾筋力測定 4メートル歩行テスト(通常・二重課題) 3つのチェックを行いました。TASKメンバーが地域の方々と密接にコミュニケーションをとり、楽しく測定をしている姿がとても印象的でした。 また、大分トリニータの方が実施しているライフキネティックというエクササイズコーナーにTASKメンバーも参加させていただきました。地域の方が楽しみながらできる運動を実際に体験でき、とても勉強になりました。 また、足健診としてJAPAN HEALTHCARE という医師・理学療法士の先生方が外反母趾など足のトラブルのチェックをされており、そちらも見学をさせていただきました。また、Vitalityという企業からは体組成測定もされていました。 このイベントを通じて、地域の方々の骨折・転倒を減らせる何かのきっかけに繋がれば幸いです。 そして、骨折0(ゼロ)のまちへ に出展する機会をくださった松本先生、広陵町の方々、大分トリニータの方々、スタッフの皆様に心より感謝申し上げます。 参加メンバーの感想 ● 今回のイベントでは100名ほどの方に来ていただき、また他のブースを体験できるなど貴重な経験をさせていただけました。医師の方に偏平足に関するお話を伺ったり、ここでしか体験できない機器をTASKスタッフが積極的に体験し、スタッフの方々にお話を伺ったりしている姿が印象的でした。 出展ブースでは私は足趾筋力を担当しました。足趾筋力はこどもではジャンプやダッシュ、成人では転倒に関与する目安の一つとなります。そのため、フィードバックを大切に行いましたが、自分の知識の物足りなさを感じる場面もありました。 測定を行う中で参加者の方から「あなたの声掛けのおかげでいい結果出てうれしかった」とお声をいただいたときはとてもうれしく、やりがいを感じました。また、測定結果を踏まえて「トレーニング家で頑張ってみます!」と言ってくださり私たちの活動が参加者の方の健康維持のきっかけになっていると実感でき、とてもうれしかったです。 今後のイベントでも地域の方を含め様々な方々に楽しんでいただけるようなイベントを計画していきたいです。 理学療法学科2回生 中山 紗希 ● 今回は4メートル歩行テストの測定を担当しました。対象の方は主に65歳以上の方で、転倒のリスク管理を意識しながら実施しました。 このテストでは、4メートルを普段と同じ歩行速度で歩いていただき、そのタイムを測定しました。また、通常歩行に加えて、二重課題を取り入れた測定も行いました。具体的には、歩行中に簡単な計算を行いながら歩く課題や、コップの水をこぼさないように歩く課題を設定しました。これにより、注意を分散させた際の歩行の安定性や安全性を評価しました。 実際に行っていただくと、参加者それぞれの結果に違いが見られ、個々の特性や現在の状態を把握する良い機会になったと感じました。 この測定を通じて、ご自身の状態を確認することで、健康に対する意識をより高めていただけたのではないかと思います。また、全体を通して参加者の方々が楽しみながら取り組んでいる様子が見られたことも印象的でした。 このような取り組みは、学内の学習だけでは得られない貴重な経験となりました。今後も、地域に根差した活動を増やしていけたらと思います。 理学療法学科2回生 高見 亮佑 ● 学校外での活動が初めてだったので緊張しました。沢山来ていると聞いて自分で捌き切れるか心配でしたが、思ったよりも来場者の方と話すことも出来ました。私は握力測定をメインに測定していたのですが正常値よりも上の値を出している方が多く見られたので驚きました。また、プロの方たちと同じ場所にいることが出来て勉強になったので、またこのような機会があれば参加したいと思いました。 理学療法学科 1回生 岡崎 日菜乃 足検診に来られていていたスタッフの皆様とも。TASKのTポーズで撮影していただきました! またTASKでは、健康チェック以外にも様々な活動を企画しています!その情報も下記に載せていますので、ご確認よろしくお願いします! ◆メールアドレス task@kio.ac.jp ◆ X(Twitter) @kio_task ◆ Instagram @kio_task 友達を誘ってワイワイ楽しく活動しましょう! 理学療法学科 2回生 中山 紗希・高見 亮佑 1回生 岡崎 日菜乃 TASK(健康支援学生チーム)活動レポートはこちら
2025.03.12
就職レポートNo.831(民間病院/理学療法士)理学療法学科
卒業された先輩のリアルな声を紹介する「就職レポート」、第831弾! 理学療法学科19期生 (25卒) S・Aさん 民間病院(理学療法士) 勤務 あなたがその職種を志したきっかけを教えてください。 理学療法士を目指したきっかけは、大学進学先に悩んでいた際、看護師である祖母、母、姉からの助言を受けたことです。幼い頃から医療関係者に囲まれて育ち、家族が人の健康を支える姿を間近で見てきたことで、「自分も人の役に立ちたい」という思いが自然と芽生えました。家族から理学療法士という職業について教えてもらった際、病気やけがで歩けなくなった方々の機能を回復し、再び歩けるように支援する仕事だと知り、その社会的意義と使命感に強く惹かれました。また、自分が手を動かし、目の前の人の生活を直接支えられる点にも魅力を感じ、理学療法士を志望しました。 畿央大学を選んだ理由は、理学療法士国家試験の高い合格率と充実した学習環境です。オープンキャンパスに参加した際、現場経験の豊富な教授陣や学生一人ひとりへの手厚いサポート体制を目にし、「ここなら夢を実現できる」と確信し志望しました。 畿央大学での学生生活を振り返ってどうでしたか? 特に印象に残っているのは、定期試験と長期休みです。定期試験は難易度が高く、試験期間中は精神的にも体力的にも大変でしたが、その分、達成感も大きかったです。試験を乗り越えるために、定期試験の1か月前から毎日21時まで勉強を続け、友人たちと協力しながら取り組みました。互いの得意分野を教え合ったり、重要なポイントをまとめたノートを交換したりすることで、効率よく学習できました。この経験を通じて、仲間と一緒に目標に向かって努力する大切さを学びました。 つらい定期試験を終えると訪れる長期休みは、試験期間中にたまったストレスを解消する貴重な時間でした。長期休みには旅行に出かけることを楽しみにしており、試験勉強中の息抜きとして旅行の計画を立てることが励みになっていました。 就職活動について、その就職先に決めた理由を教えてください。 就職先を選んだ理由は、病院見学時の雰囲気と、ゼミの卒業研究でお世話になった経験が大きく影響しています。就職活動中に複数の病院を見学しましたが、その中でも特に自分に合っていると感じたのがこの病院でした。見学時には、スタッフの方々が患者さんと向き合い、チームでのかかわりが密で協力しながら治療に取り組んでいる姿を目の当たりにし、「ここなら自分が理学療法士としてやりたいことに挑戦できる」と確信しました。 また、卒業研究でお世話になった際には、多くのスタッフの方が気さくに話しかけてくださり、その明るく温かい雰囲気にも強く惹かれました。研究中に教えていただいた実践的なアドバイスや、働くうえでの心構えはとても勉強になり、「こんな環境で成長していきたい」という気持ちが一層高まりました。 見学や卒業研究を通じて、この病院が私にとって最適な職場であり、成長し続けられる場所だと感じたため、ここで働くことを決めました。 就職活動を振り返っていかがでしたか? 最も大変だったのは、面接への不安を克服することでした。私は人前に立つと緊張してしまうタイプで、4回生の8月に行われた初めての集団面接練習では、思うように自分の考えを伝えられず、大きな危機感を覚えました。その経験から、「このままでは本番に臨めない」と感じ、本格的に面接練習に取り組むようになりました。 行きたい病院が決まり、面接の準備を進める際にも、最初の練習での失敗が頭をよぎり、不安が募りました。しかし、キャリアセンターの先生がその不安をしっかりと受け止めてくださり、何度も面接練習に付き合ってくださいました。具体的なアドバイスをいただくだけでなく、練習を重ねる中で、自分の強みや伝えたいポイントを整理し、自信を持って話せるようになったことは、大きな成長につながりました。 本番の就職面接では、ほとんど緊張せず、自分の思いをしっかり伝えることができました。この経験を通じて、「準備と努力が自信につながる」ということを学びました。また、キャリアセンターのサポートの手厚さに感謝するとともに、就職活動を通じて成長できた自分自身に対しても達成感を感じています。 後輩のみなさんへメッセージをお願いします! たくさん病院見学に行って、しっかり悩んで、自分が本当に行きたい病院を決めてください。自分の求める条件に合う病院は必ず見つかると思うので、あきらめずに頑張ってくださいね。 もし、「どの病院が自分に合っているのか分からない」と感じたら、キャリアセンターの方々に相談してみてください。親身になって一緒に考えてくれるので、安心して話を聞いてもらえますよ。 行きたい病院は、実習でお世話になった施設や、卒業研究で関わった病院など、きっかけは何でも構いません。自分がどんな環境で成長したいのかをよく考え、納得できる病院を見つけてください。
2025.03.05
令和6年度在外研究報告会を開催しました。
畿央大学では、教育研究水準の向上、国際交流の進展、若手研究者の育成等を目的とした在外研究員制度があります。 コロナ禍もあってしばらく途絶えていましたが5年ぶりにこの制度を利用し、理学療法学科 松本大輔 准教授がフランスのトゥールーズ大学病院にて、令和5年4月~令和6年3月末まで研究活動を行われました。2月27日(木)に在外研究報告会を実施し、約30名の教職員が参加しました。 冒頭、学術振興委員長の東教授からご挨拶として松本准教授の紹介と在外研究の制度についてご説明いただきました。 健康科学部 理学療法学科 准教授 松本 大輔 在外研究期間:令和5年4月1日~令和6年3月31日 研究実施場所;トゥールーズ大学病院、老年科、加齢研究所(Institute of Aging, Gérontôpole, Toulouse University Hospital) 研究課題名 「機能的能力低下における内在的能力と環境要因との関連および相互作用」 松本准教授からは研究の背景や目的の説明があり、渡航先のトゥールーズ大学・指導教員等の紹介がありました。 松本准教授は介護予防や健康増進に関する研究をされています。トゥールーズ大学病院では、老化と加齢関連疾患への生物学的研究に焦点を当てたINSPIRE(INStitute for Prevention healthy agIng and medicine Rejuvenative)という研究プロジェクトに関わられており、多くのセミナー・共同研究・国際学会・研究者交流などに参加され、充実した研究活動が行われていたことをご報告いただきました。 令和5年度 在外研究員レポートvol.1~なぜフランストゥールーズへ? 令和5年度 在外研究員レポートvol.2~フランストゥールーズでの研究生活を紹介! 質疑応答のあと、健康科学研究科長の植田教授から講評をいただきました。 フランスでの研究成果が、今後の本学での教育・研究活動に還元されることを期待しています。 関連記事 朝日新聞社Webメディア「SDGs ACTION!」で松本准教授が「フレイル」を解説! 令和5年度 在外研究員 研究計画説明会を開催しました。 平成29年度在外研究報告会を開催しました。 平成29年度 在外研究説明会を開催しました。 平成28年度 在外研究説明会を開催しました。 畿央大学開学10周年記念プロジェクト研究中間報告会及び在外研究報告会を開催しました。
2025.03.05
第24回畿央大学公開講座を開催しました。
本学では、地域の皆様に生涯学習の場を提供することを目的とした「畿央大学公開講座」を開催しています。今年度は2025年2月22日(土)に健康栄養学科 准教授の岩田 恵美子先生と看護医療学科 准教授の紅林 佑介先生に講演していただきました。 講座① 「野菜のふしぎ」—調味料が色や食感に与える影響— 講師:健康科学部 健康栄養学科 岩田 恵美子 准教授 今回の講座では、野菜を中心に調味料の添加で料理の色や食感がどのように変化するのかについて、データや画像を使って分かりやすく紹介していただきました。生野菜を使った料理の手順では、「浸透圧」や「半透性」についての説明があり、調理の過程で細胞からの水分の移動を調理に役立てるコツが分かりました。 キャベツの千切りを水に浸すとしゃきしゃきになったり、キュウリのスライスを塩もみすると水分が細胞の外に出ますが、塩分量と出ていく水分の割合をデータをもとに確認することができました。また、重石をすると塩分量を抑えることができることも紹介されました。 そのほか、調理する際に重曹を添加すると水煮より食感が柔らかくなったり、逆にカルシウムイオンを含む牛乳などを使った場合は煮崩れを防ぐことができることが紹介されました。シチューを調理する際は、早い段階で牛乳を加えると具材が軟らかくなりにくいので、具材を充分煮てから仕上げで牛乳を入れた方が良いということです。 最後には大和野菜の一つである「大和丸なす」でジャムを調理した際のお話の中で、よりおいしくなる調合割合をデータに基づいて説明されました。参加者の中には、熱心にメモを取りながら岩田准教授の話に聞き入っておられました。 【参加者の声を一部紹介】 野菜の特性や成分に応じた調理法を選択することで、より美味しく色鮮やかに仕上がるということが勉強になりました。 塩もみの適切な塩分濃度(1%)や煮物の軟化度がpHに左右されるなど、今まで意識していなかった知見を得ることができた。 調理について専門的な知識が得られてよかったです。料理をするのが楽しくなりました。」 いつも何気なく調理している方法が、昔からの理にかなった方法だということがよく理解できました。 ナスをジャムに加工するという発想がすごいと思った。一度試してみたいと思う。 講座② テーマ:「メンタルヘルスを護る生活習慣」 講師:健康科学部 看護医療学科 紅林 佑介 准教授 メンタルヘルス上の悩みを抱える人が増加傾向にあり、その治療方法としては、薬物療法やカウンセリング、リハビリテーションが主軸となり、比較的多くの選択肢があるということが説明されました。しかし予防策となると、効果的な方法はまだ限定的だということです。その中で、近年では一部の生活習慣が精神的不調の予防につながるという知見が、特に英豪から出てくるようになったそうです。 生活習慣予防であれば、自身の心がけ次第で実行することができ、心身ともに健やかで張り合いのある生活を長く享受するためにも、自身の生活習慣を見つめなおすだけでメンタルヘルスを護ることができるということがわかりました。 身体疾患患者の1/3にメンタル面の何らかの問題があるといわれていますし、また健常者の13%(8人に1人)は精神疾患を有するということです。生活習慣による発症予防策としてまず挙げられるのは、良質な睡眠をとるということで、良質な睡眠はうつ・不安発症予防、認知機能の低下予防につながるということが説明されました。良質な睡眠は、眠くなるまで寝ない、眠くないのに寝ようとしても良質な睡眠をとることはできない。そして良質な睡眠をとるためには、良質な食事をとることが求められるということでした。 ファーストフードなどの超加工食品を食べれば食べるほど認知症発症リスクが高まるということも紹介されました。また、適度な運動や社会交流が、うつ・不安感の予防効果や認知機能低下予防、良質の睡眠をとるために良いということも紹介されました。 【参加者の声を一部紹介】 データをもとに分かりやすく説明してくださり、大変勉強になった。このような講座をもっと頻繁に開講してほしい。 生活習慣を見直す良い機会になった。これから精神的にも健康でいられるよう食品選びにも気を付けて生活したい。 日常生活に直結した内容で、とてもよかった。このような素晴らしい講座に参加でき、住民としてとても喜んでいます。 生活習慣を改善する具体的な方法を教えていただけたので、今からすぐにも実践していきたいと思った。 メンタルヘルスの維持・向上には生活習慣が密接に関係しており、薬に頼らない改善方法をまず実行すべきと再認識した。 講座①②ともに、講演会終了後も質疑応答の時間に質問できなかった皆さんが講演いただいた先生の周りに集まり質問をする様子もあり、参加者の一つ一つの質問に丁寧にお答えにいただきました。 畿央大学では、今後も受講者の皆様にご満足いただける講座を開催してまいります。 【関連記事】 第23回畿央大学公開講座を開催しました。 第22回畿央大学公開講座を開催しました。 第21回畿央大学公開講座を開催しました。 第20回畿央大学公開講座「コロナ時代におけるこれからの認知症ケア」をオンライン開催しました。 第19回畿央大学公開講座「感染症を知ろう~新型コロナウイルスとこれからの生活~」をオンライン開催しました。 第18回畿央大学公開講座「当事者とともに創る認知症ケア」を開催いたしました。 第17回畿央大学公開講座「認知症の正しい理解」を開催しました。 第16回畿央大学公開講座を開催しました。 第15回畿央大学公開講座B・C(2日目)を開催しました。 第15回畿央大学公開講座 講座Aを開催しました。 第14回畿央大学公開講座を行いました。 第13回畿央大学公開講座を開催しました。 第12回畿央大学公開講座「健康長寿のための食と運動」を開催しました。
2025.03.04
求心路遮断性疼痛へのミラーセラピーが脳筋コヒーレンスを増大させる-Proof of concept study-~ニューロリハビリテーション研究センター
不慮のバイク事故などで腕神経叢を損傷してしまうと、上肢の感覚・運動機能が麻痺するだけでなく、激しい痛みが生じることがあります。この痛みは求心路遮断性疼痛と総称されており、これは生活の質に大きな影響を与えます。畿央大学大学院健康科学研究科 博士後期課程 瀬川 栞 氏、大住 倫弘 准教授の研究グループは、求心路遮断性疼痛を有する腕神経叢引き抜き損傷者を対象に、ミラーセラピー実施中の筋電図・脳波を計測し、ミラーセラピーによって痛みが緩和している時には脳-筋コヒーレンスが増大していることを報告しました。この研究成果は国際学術誌 Frontiers in Human Neuroscience(Case report Exploring cortico-muscular coherence during Mirror visual feedback for deafferentation pain a proof-of-concept study)に掲載されています。 研究概要 不慮のバイク事故などで腕神経叢を損傷してしまい、上肢の感覚・運動麻痺が生じるだけでなく、激しい痛みをともなうことがあります。この痛みは求心路遮断性疼痛と総称されており、これは生活の質に大きな影響を与えます。そして、この求心路遮断性疼痛は脳の誤った活動によって増悪すると考えられています。この誤った脳の活動を是正するためのリハビリテーションツールとして “ミラーセラピー” が有名です。これは健常な手を鏡に映しながら運動をすることで惹起される「あたかも麻痺している手が動いているような」錯覚を利用したもので、脳の活動を正常に戻すようなリハビリテーションツールとして知られています。これまでの研究でも、ミラーセラピーを活用したリハビリテーションによって求心路遮断性疼痛が緩和したという報告はいくつかありますが、その脳のメカニズムは明らかにはなっていません。そこで、畿央大学大学院健康科学研究科 博士後期課程 瀬川 栞 氏、大住 倫弘 准教授 の研究グループは、求心路遮断性を有する腕神経叢引き抜き損傷者を対象に、ミラーセラピー実施中の筋電図・脳波を計測し、ミラーセラピーによって痛みが緩和している時には感覚運動領域の脳-筋コヒーレンスが増大することを報告しました。つまり、ミラーセラピーによって求心路遮断性疼痛が緩和する背景には、脳の感覚運動領域における活動と麻痺した筋の活動の同期、これが適正化するというメカニズムがあるということです。 本研究のポイント 求心路遮断性疼痛を有する腕神経叢引き抜き損傷者を対象に、ミラーセラピーを実施中の脳波および筋電図を計測した。 ミラーセラピーによって痛みが緩和すると同時に、感覚運動領域の脳-筋コヒーレンスが増大した。 研究内容 求心路遮断性疼痛を有する腕神経叢引き抜き損傷者2名にご協力頂き、ミラーセラピーをしている時の脳波および筋電図を計測しました。どちらの症例も不全麻痺ながら感覚・運動麻痺があり、求心路遮断性疼痛を有していました。ミラーセラピー実施中には「あたかも麻痺している手が動いているような感覚」が得られ、その時には不十分ながら痛みは緩和しました。そして、ミラーセラピー実施中に筋が収縮している区間の筋電データおよび脳波データ(32ch)を抽出して、それらの同期性(コヒーレンス)を計算しました。その結果、どちらの腕神経叢引き抜き損傷者ともミラーセラピー実施中には対側感覚運動領域の脳-筋コヒーレンスが増大していました。これらは、「感覚運動領域の適正化が求心路遮断性疼痛を緩和する」ことを示唆する結果となります。ちなみに、脳波-筋コヒーレンスは皮質脊髄路の興奮性を間接的に表す指標として知られており、分かりやすく言うと、これが増大するということは脳からの運動指令が麻痺した筋肉へうまく伝わるようになった状態だと考えられます。 本研究の臨床的意義および今後の展開 リハビリテーション現場でも活用されているミラーセラピー、これによる痛みの緩和メカニズム解明の一助になったことは意義があると思います。ただし、今回は症例報告ですので、今後もこのような研究を継続して痛みの緩和をもたらすリハビリテーションのメカニズムを解明していく所存です。 論文情報 Segawa S, Osumi M. Case report Exploring cortico-muscular coherence during Mirror visual feedback for deafferentation pain a proof-of-concept study. Front Hum Neurosci, 2025. 謝辞 西大和リハビリテーション病院 リハビリテーション部 技師長 畿央大学大学院健康科学研究科 客員准教授 生野 公貴 問い合わせ先 畿央大学大学院健康科学研究科 博士後期課程 瀬川 栞 准教授 大住 倫弘 Tel 0745-54-1601 Fax 0745-54-1600 E-mail m.ohsumi@kio.ac.jp
2025.02.22
急性期運動器疾患患者におけるAWGS2019とISarcoPRMによるサルコペニア該当率の比較~健康科学研究科
高齢化の進行に伴い、サルコペニア*が注目されており、世界的にも数多くの研究が実施されています。我が国では、Asian Working Group for Sarcopenia 2019(AWGS2019)に従ってサルコペニアを診断することが推奨されています。しかし、国際リハビリテーション医学会が提唱した新しいサルコペニアの診断基準としてISarcoPRMがあります。両基準の違いとして、サルコペニアの診断に必須となる骨格筋量の評価方法が異なるという点が挙げられます。AWGS2019では、骨格筋量の評価に生体電気インピーダンス法(Bioelectrical Impedance Analysis:BIA)が主に使用されており、四肢の骨格筋量から身長(m2)で除したSkeletal Muscle Index(SMI)がサルコペニアの骨格筋量評価として用いられております。しかし、急性期運動器疾患患者を対象とした場合、BIAでは手術に伴う浮腫や体内の金属インプラントの影響で、SMIが過大評価されることが問題となります。一方で、ISarcoPRMでは、近年注目されている超音波画像診断装置(エコー)で測定した大腿四頭筋の筋厚をBody Mass Index(BMI)で除したSonographic Thigh Adjustment Ratio(STAR)が骨格筋量評価として用いられます。エコーで評価した筋厚は、浮腫の影響を比較的少なく測定できることがわかっており、BIAの欠点を補える可能性があります。そのため、急性期運動器疾患患者におけるサルコペニア診療においてISarcoPRMの有用性を明らかにすることは重要であると考えられます。 そこで、本学大学院健康科学研究科修士課程の池本大輝、健康科学研究科の松本大輔准教授らは、急性期病院に入院された運動器疾患患者を対象に、AWGS2019とISarcoPRMの両基準を用いてサルコペニアの該当率を調査し、各基準で判定されるサルコペニアの特徴を比較しました。その結果、AWGS2019(40.2%)よりもISarcoPRM(59.1%)の方が、サルコペニアの該当率が有意に高く、AWGS2019では低体重群(BMIが18.5kg/m2未満)での該当率が高く(86.7%)、肥満者(BMIが25kg/m2以上)での該当率が低かったが(7.3%)、ISarcoPRMでは、肥満度に関係なくサルコペニアを判定できることが明らかとなりました。その内容が総合リハビリテーションに掲載されました。 *サルコペニア:加齢に伴う進行性の骨格筋量および筋力低下と定義されており、転倒、骨折、入院、死亡のリスクが高い疾患である。 研究概要 急性期病院へ入院された65歳以上の運動器疾患患者164名を対象に、AWGS2019とISarcoPRMを用いてそれぞれでサルコペニアを判定しました。サルコペニアは、SMIあるいはSTARに基づく骨格筋量低下と握力に基づく筋力低下の両方に該当した場合に判定しました。各サルコペニアの判定項目(骨格筋量、握力)とサルコペニアの該当率を各基準で比較しました。さらに、性別と肥満度別でも各サルコペニアの判定項目の該当率を比較しました。 本研究のポイント AWGS2019よりもISarcoPRMの方がサルコペニアの該当率が高いことが明らかとなりました。 また、AWGS2019では、低体重者の該当率が高く、肥満者の該当率が低く、肥満度に影響される結果でしたが、ISarcoPRMでは肥満度に関係なくサルコペニアと判定できることが明らかとなりました。 近年注目されているサルコペニア肥満*を見逃さずに評価できる可能性が示唆されました。 *サルコペニア肥満:サルコペニアに肥満が合併した病態であり、身体機能障害を伴うだけではなく、代謝障害や動脈硬化が進展しており、心血管リスクが高いと考えられている。 表1.各サルコペニアの判定項目の該当率の比較 表2.肥満度(BMI)別の各サルコペニアの判定項目の該当率の比較 本研究の臨床的意義及び今後の展開 本研究は、我が国で初めてISarcoPRMを用いてサルコペニアの該当率を報告した研究です。本研究の結果より、肥満者では、ISarcoPRMを補完的に用いることでAWGS2019では、見逃されやすいサルコペニア肥満を診断できる可能性があります。これらの知見により、サルコペニア診断におけるエコーの有用性を示唆する研究であると考えられます。今後は、ISarcoPRMにおけるサルコペニアと臨床的な機能予後などとの関連について更なる検討を行い、対象者の皆様に還元できる研究を進めてまいりたいと思っております。 謝辞 研究にご協力いただきました対象者の皆様、共同研究者の方々に感謝申し上げます。 論文情報 池本大輝,松本大輔・他:急性期運動器疾患患者におけるAWGS2019とISarcoPRMによるサルコペニア該当率の比較.総合リハビリテーション 2025; 53(2): 197-205. 問合せ先 畿央大学大学院健康科学研究科 修士課程 池本大輝 准教授 松本大輔 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: d.matsumoto@kio.ac.jp
2025.02.21
就職レポートNo.828(公的病院/理学療法士)理学療法学科
就職活動を終了したばかりの学生のリアルな声を紹介する「就職レポート」、第828弾! 理学療法学科19期生(25卒) N・Tさん 公的病院(理学療法士) 勤務 あなたがその職種を志したきっかけを教えてください。 理学療法士を目指したきっかけは、中学生の頃に職場体験で実際に理学療法士の仕事を体験し、とてもやりがいを感じ将来こんな職業に就きたいと考えたからです。そこで、実際に畿央大学のオープンキャンパスに参加し、レベルの高い教育制度に魅力を感じ入学を決めました。また、高校の先輩が畿央大学に入学していたこともあり、実際の学校の雰囲気などを聞くことができたことも決め手の一つとなりました。 畿央大学での学生生活を振り返ってどうでしたか? 大学生活を通して、普段の授業、試験勉強、実習など大変なことがたくさんありましたが、その分たくさんの素晴らしい友達に出会い、たくさんの素晴らしい思い出をつくることができました。そのなかでも、特に印象に残っていることは、友人と文化祭でたこ焼きを出店したことです。当日は、忙しくとても大変でしたが、みんなと協力し無事成功を収めることができ、とても楽しかったです。 就職活動について、その就職先に決めた理由を教えてください。 学校の授業や実習で興味を持った整形疾患に強みをもつ病院を中心に就職活動を行っていました。病院見学などもたくさん申し込み、様々な病院の異なる雰囲気を見学しました。その中でも、高い目標を持ち、意識の高いスッタフが数多くいる点に惹かれ、私もこの環境で学び、成長していきたいと思い志望しました。 就職活動を振り返っていかがでしたか? 就職活動を通して、まず、どこを受けるかを迷いました。また、実際受ける病院を決めてからも小論文が苦手で何度も練習しました。その際、キャリアセンターの方が毎回添削して下さり、自信を付けて試験に臨むことができました。 就職活動で役立ったツールを教えてください。 キャリアセンターの方(飯山さん)。就職活動で困ったことがあれば、なんでも相談させていただきました。(笑) 後輩のみなさんへメッセージをお願いします! 就職活動は、自分の将来について深く考えられるとてもいい機会だと思います。周りで友だちの就職先が決まり始めると焦りを感じると思いますが、自分の将来についてよく考え、自分が行きたいと思った病院を選ぶべきだと思います。大変だと思いますが、息抜きも忘れず、頑張ってください。
2025.02.14
脳卒中後の特異な空間認知障害を報告-描画時に左側を過剰に表現する症例-~ニューロリハビリテーション研究センター
脳卒中後、多くの患者さんに見られる半側空間無視は、日常生活動作に支障をきたし、リハビリテーションの大きな課題となっています。この症状が改善した後も残る空間認知の障害は、患者さんの生活の質に影響を与える可能性があります。畿央大学大学院健康科学研究科の吉川里彩氏、大住倫弘准教授、森岡周教授らの研究グループは、右視床出血後の症例を詳細に分析し、半側空間無視が改善した後も、描画時に左側の要素を過剰に表現する「Hyperschematia(空間の過剰表象)」が継続することを発見しました。さらに、詳細な画像解析により、この症状が脳の腹側視覚経路の損傷と関連している可能性を明らかにしました。この研究成果は国際学術誌Cureus(Persistent Hyperschematia With Over-Generation Following Recovery From Unilateral Spatial Neglect: A Case Report)に掲載されています。 研究概要 脳卒中後の空間認知障害の一つである半側空間無視は、脳の右側が損傷を受けた際に起こる症状です。この症状により、患者さんは左側の空間を認識することが困難となり、日常生活に大きな支障をきたします。これまでの研究から、半側空間無視には様々な特徴があることが分かっていますが、回復過程での変化については、まだ十分に解明されていない点が多く残されています。 畿央大学大学院健康科学研究科の吉川里彩氏(西大和リハビリテーション病院言語聴覚士)、南川勇二氏、大住倫弘准教授、森岡周教授らは、右視床出血後の症例を縦断的に詳細に分析しました。その結果、半側空間無視が改善した後も、描画時に左側の要素を過剰に表現する「Hyperschematia(空間の過剰表象)」という特異な症状が継続することを発見しました。例えば、星の左部分を拡大して表現したり、時計の文字盤を描く際に必要以上の数字を書いたり、花の絵を描く際に左側に余分な花びらを加えたりする現象が観察されました。 本研究の新しい発見は以下の2点です。第一に、これまで半側空間無視や身体失認に付随すると考えられていた「Hyperschematia」が、必ずしも半側空間無視の症状と同時に改善するとは限らないことを示しました。第二に、詳細な画像解析技術を用いて、この症状が脳の腹側視覚経路の損傷と関連している可能性を明らかにしました。 この成果は、脳卒中後の空間認知障害の理解を深め、より効果的なリハビリテーション方法の開発につながる重要な知見を提供しています。空間認知の障害に対して、より詳細な評価と個別化された対応の重要性を示唆する発見といえます。 本研究のポイント 右視床出血後の症例において、半側空間無視が改善した後も、描画時に左側の要素を過剰に表現する「Hyperschematia」が継続することを見出しました。 画像解析により、この症状が下前頭後頭束(IFOF)および中縦束(MdLF)という腹側視覚経路の損傷と関連している可能性を明らかにしました。 研究内容 本研究の目的は、脳卒中後の半側空間無視の回復過程における空間認知の変化を明らかにすることでした。研究では、右視床出血後の症例について、約6ヶ月間の詳細な観察を行い、従来の評価に加えて最新の脳画像解析を実施しました。 研究グループは、最新の画像解析技術を用いて脳の神経回路を詳細に分析しました。その結果、本症例では、下前頭後頭束(IFOF)および中縦束(MdLF)という腹側視覚経路に90%以上の重度な損傷があることが判明しました。 行動評価では、特徴的な「Hyperschematia」が半側空間無視の改善後も持続することが明らかになりました。下図に示すように、星の左部分を拡大して表現したり、時計描画では文字盤に必要以上の数字を書き加える、花の絵では左側に余分な要素を追加するなどの現象が観察されました。これらの症状は観察期間を通じて持続しました。 このような詳細な観察と画像解析の結果から、研究グループは以下の重要な結論に達しました: 「Hyperschematia」は、半側空間無視の改善後も残存する可能性がある。 この症状は、腹側視覚経路の損傷と関連している可能性が高い。 これらの知見は、脳卒中後の空間認知障害の評価において、従来の半側空間無視の評価に加えて、より包括的な空間認知機能の評価が必要であることを示唆しています。 このように、神経回路の損傷パターンと行動症状を詳細に対応づけた本研究は、脳卒中後の空間認知障害の理解を深め、より効果的なリハビリテーション方法の確立に向けた重要な一歩となりました。 本研究の臨床的意義および今後の展開 この症例研究では、半側空間無視の改善後も「Hyperschematia」が持続する可能性と、その症状が脳の特定の神経経路の損傷と関連している可能性を示しました。これは空間認知障害の評価において新たな視点を提供するものです。 論文情報 Yoshikawa R, Minamikawa Y, Osumi M, Morioka S. Persistent Hyperschematia With Over-Generation Following Recovery From Unilateral Spatial Neglect: A Case Report. Cureus. 2025 Jan 25;17(1):e77951. 問い合わせ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 教授 森岡 周 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.morioka@kio.ac.jp
2025.02.04
脳卒中者の歩行非対称性の特徴-障害と代償戦略の特定-~ニューロリハビリテーション研究センター
脳卒中後、多くの人が体験する歩行の左右非対称性は、転倒リスクを高め、リハビリ期間を長引かせることがあります。この現象は「歩行非対称性」と呼ばれ、日常生活の質に大きな影響を与えます。畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 客員研究員 の 水田直道さん(日本福祉大学健康科学部 助教 )、教授 森岡 周 らを中心とする研究グループは、リズム聴覚刺激を用いた歩行実験を通じて、歩行非対称性の原因が「純粋な障害」と「補償戦略」の2つに分類できることを明らかにしました。さらに、被験者の歩行パターンを詳細に分析することで、歩行非対称性が4つの特徴的なグループに分類できることを明らかにしました。この研究成果はScientific Reports誌 (Identifying impairments and compensatory strategies for temporal gait asymmetry in post-stroke persons)に掲載されています。 研究概要 脳卒中者の歩行の特徴として、歩行時の左右の動きが異なる「歩行非対称性(Temporal Gait Asymmetry, TGA)」があります。この状態は転倒リスクを高め、日常生活の質を低下させるだけでなく、リハビリ期間の延長にもつながります。TGAは、運動麻痺や痙縮などの身体的な要因だけでなく、患者が安全を優先して取る歩行戦略も影響していると考えられていました。しかし、快適歩行条件(CWS)における非対称性は、純粋な障害と代償戦略が混在しており、これらの要因をどのように区別できるかは明らかにされていませんでした。畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 客員研究員 の 水田直道さん(日本福祉大学健康科学部 助教 )、教授 森岡 周 らを中心とする研究グループは、リズム聴覚刺激を用いた歩行実験を通じて、歩行非対称性の原因が「純粋な障害」と「補償戦略」の2つに分類できることを明らかにしました。 クラスター1:過剰な代償戦略 メトロノームの音に合わせて歩行する条件(RAC)では左右対称に歩くことができるにも関わらず、CWSでは非対称的であるクラスター。 身体機能は他のクラスターと差はないが、歩行への自己効力感(modified Gait Efficacy Scale)が低く、「代償戦略」が優位になっていると考えられます。 クラスター2:純粋な障害 CWS・RACともに非対称的な歩行となるクラスター。 運動麻痺や痙縮、体幹機能等が重症であり、「純粋な障害」が優位になっていると考えられます。 本研究は、これまで区別が困難であったTGAの要因を「純粋な障害」と「代償戦略」に分類した点にあります。この成果は、個々の脳卒中者に合わせた、テーラーメイドリハビリテーションの構築に役立つことが期待されます。 本研究のポイント • CWSとRACを用いた2つの条件下で、歩行中の時間的対称性(SI)を評価した。 •「純粋な障害」を特徴とするクラスターは、運動麻痺や痙縮、体幹機能低下などの神経学的要因により歩行が非対称的である特徴がありました。 •「代償戦略」を特徴とするクラスターは、身体機能は他のクラスターと差がないが、歩行への自己効力感が低い特徴がありました。 研究内容 本研究では脳卒中後の患者39名を対象に、Fugl-Meyer Assessment(FMA)、Modified Ashworth Scale(MAS)、Trunk Impairment Scale、modified Gait Efficacy Scale(mGES)を用いて臨床評価を行い、参加者の身体機能や歩行の自己効力感を評価しました。参加者は、快適歩行条件(CWS)とメトロノームの音に合わせて歩行する条件(RAC)の2つの異なる条件下で10m歩行を行いました。RAC条件では、CWS条件で計測されたケイデンスに基づきメトロノームのテンポを設定し、参加者はメトロノームの音に下肢の接地タイミングを合わせて歩行しました。慣性センサーのデータから両下肢の接地・離地のタイミングを同定し、単脚支持時間の対称性指数(SI)を算出しました。CWS条件とRAC条件における単脚支持時間のSIを用いて、混合ガウスモデルに基づくクラスター分析を行い、参加者を4つのクラスターに分類しました。 図1.対称性指数に基づくクラスタリングの結果.© 2025 Naomichi Mizuta CWSおよびRAC条件における歩行中の単脚支持時間の対称性指数の分布をクラスターごとに示す。黒色のラインプロットは全データの回帰直線を示す。上図と右図は、各条件における平均値、95%信頼区間、各データポイントを示している。 対称性指数が負であるほど、非麻痺側の単脚支持時間が麻痺側と比較して長いことを示す。 CWS条件とRAC条件における単脚支持時間のSIは有意な相関関係が見られませんでした。クラスター分析の結果、4つのクラスターが抽出され、本研究の目的に合致したクラスターは下記の2つです。 クラスター1:過剰な代償戦略 RACでは左右対称に歩けるが、CWSでは非対称的であるクラスター。 身体機能は他のクラスターと差はないが、歩行への自己効力感(modified Gait Efficacy Scale)が低く、「代償戦略」が優位になっていると考えられます。 クラスター2:純粋な障害 CWS・RACともに非対称的な歩行となるクラスター。 運動麻痺や痙縮、体幹機能等が重症であり、「純粋な障害」が優位になっていると考えられます。 本研究の臨床的意義および今後の展開 これまで区別されていなかった快適歩行時のTGAの要因を、「純粋な障害」と「代償戦略」に分類できたことは、個々の脳卒中者に応じた、より効果的なリハビリテーションの立案に役立つと期待されます。今後は、個々の特徴に合わせたリハビリテーション介入の効果を検証する予定です。 論文情報 Naomichi Mizuta, Naruhito Hasui, Yasutaka Higa, Ayaka Matsunaga, Sora Ohnishi, Yuki Sato, Tomoki Nakatani, Junji Taguchi, Shu Morioka. Identifying impairments and compensatory strategies for temporal gait asymmetry in post-stroke persons. Scientific Reports, 2025. 問い合わせ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 客員研究員 水田直道 教授 森岡 周 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.morioka@kio.ac.jp


