2021年の看護医療学科の新着情報一覧
2021.07.28
「薬害の実情」と「患者の人権」を学ぶ~看護医療学科「保健医療福祉システム論Ⅰ」
看護医療学科4年次生必修科目である「保健医療福祉システム論Ⅰ」では、公衆衛生と社会福祉のシステムとそのあり方を学んでおります。まだまだ収まることのない新型コロナウイルス感染症(COVID-19)についても、様々な資料を解説し、理解を深めてきました。その中には、感染者や医療従事者が差別を受けている現状を法務省のリーフレット等も用い、差別と偏見の解消に向けた方策も考えていきました。 2021年7月22日(水)の授業では全国薬害被害者団体連絡協議会 副代表世話人の勝村久司氏をお招きし、「『薬害の実情』と『患者の人権』~医療倫理や患者安全について考えながら~」と題した内容について講演いただきました。昨年度は遠隔講義でしたが、今年度は感染対策をとった上で、対面での特別講演という形をとることができました。 勝村氏は、「陣痛促進剤(子宮収縮剤)」の被害によりわずか9日間の命しかなかった、娘さんの星子さんのことがきっかけで、薬害被害に関する活動を展開されることになりました。講演の中では、薬害は人災であること、陣痛促進剤は感受性の個人差がかなり大きいがその理解が医療従事者の中でも十分ではないことを非常に懸念されておられました。 中でも、薬害等の不誠実な医療を防止するためにはリスクマネジメントがとても重要であると指摘され、情報公開や人権の尊重、副作用被害等の医療事故防止のためには健全なチーム医療によって専門性を発揮し、患者・家族を中心とした情報共有が大事であることを説かれました。その実践例として、診療報酬明細書の開示につながったことも紹介されました。 最後に、最終学年にあたる受講生に対して、市民・患者・医療被害者の立場から看護師にのぞむことは、「学問的良心」と「職業的良心」を常に持ち続けることであると話されました。 学生も今回の講演の内容を重くそしてしっかりと受け止めていました。学生たちの感想から一部紹介したいと思います。 【学生A】 夫として、父親として、そして家族としてこれまで多くの場所で講演をされてきたと思いますが、それでも悲しみと悔しさの体験を話すことはとても苦しかったのではないかと感じました。その中で、薬害がどのような事故があるのかを知っておくことにより、私たちが加害者や被害者にならないための学びの機会をいただけてとてもありがたいと感じました。臨床で働く前に、こういったことがあったと知っておくことで、患者や家族に寄り添う心の大切さ、誠意ある対応や行動がいかに重要かを改めて学ぶ機会になりました。こういう実際の声を聞く機会はほとんどないため、こういう機会が医療従事者になる前の心構えを学ぶ機会になりえるのだと感じました。医療従事者になる者として、薬害の被害が起こらないように、丁寧なインフォームドコンセントや、患者の声を聞き、その人が安心・安全な医療を受けることができるように行動していきたいと思います。 【学生B】 陣痛促進剤について、このような大きな被害が広がっていること、被害にあっていても気づかずに被害者となっていない方が多くいることを初めて知りました。講演を拝聴し、すごく胸が締め付けられるほど苦しかったというのが正直な思いです。ですが、被害を受けた当事者の方、そのご家族にとっては計り知れないほどの苦しさ辛さがあるのだということを想像すると、医療従事者を目指すものとして、なぜ防げたはずの事態を防ぐことができなかったのかと悔しさを感じました。被害が広がっているにもかかわらず、必要ではない場合にも陣痛促進剤を使用することが当たり前になってしまうことが非常に恐ろしいと思いました。患者中心に物事を考えることが大切であると改めて強く思う機会となりました。これ以上被害が増えることがないことを祈ると同時に、私自身も被害者に、加害者にならないように適切な知識を持ち、意思表明をすることの重要性を感じました。今回の講演では実際のお話を拝聴することができ、非常に貴重な機会となりました。ありがとうございました。 学生たちは、あと半年で医療の現場に飛び込んでいきます。今回の勝村氏の講演は学生たちにとって非常に大きな学びとなりました。 勝村先生にはこの場を借りて改めて厚くお礼申し上げます。ありがとうございました。 看護医療学科 准教授 文鐘聲 【関連記事】 「薬害の実情」と「患者の人権」を学ぶ~看護医療学科「保健医療福祉システム論Ⅰ」
2021.07.19
広陵町図書館での認知症啓発活動に参加!~認知症ケアサークル「畿央大学Orange ProjectⓇ」
Orange Project®とは、熊本県(熊本大学・熊本保健大学・崇城大学・熊本県立大学)と奈良県(畿央大学)を中心に活動している認知症啓発のための学生ボランティア団体で、“認知症になっても安心してくらせるまちづくりに貢献する”をコンセプトに、認知症啓発運動を行っている学生を中心とした団体です。2020年には、ロゴやマークが商標登録されました。畿央大学の卒業生たちは2019年から、在学中に熊本大学・熊本保健大学・崇城大学と共に、Orange Project®(認知症支援プロジェクト)に参画し、認知症になってもやさしい町づくりなどに、学生主体に取り組み始めました。そして「認知症にやさしい広陵町、認知症に強い畿央大学」となることを目的に2019年9月にサークルとして発足しています。 2021年7月13日(火)13時より、広陵町図書館での認知症啓発活動に参加し、私たちは「きおトレ」アプリ体験を実施しました。 「きおトレ」アプリ体験 参加者3名の方に、自分の認知機能を知ることができるアプリを体験していただきました。「自分の認知機能がどの程度であるか気になるわ、知りたい!」と興味を持って参加してくださる方もいました。イラストの記憶をしているときに、「前の絵なんやったっけ?」「あー、忘れた。」と話されていましたが、その後覚えたイラストを描きだすときは16問中7~10問はスラスラと思い出されていました。また、ヒントを見ると「なんやったかな。あ、あれやったわ。」と必死に思い出そうとされていました。 アプリ体験後には参加者とお話をする時間もあり、日頃からパソコンでゲームをしたり、図書館の本を借りて読んだり、脳を働かせるために意識しておられることも知りました。 ※常にマスクを着用して「きおトレ」アプリ体験を実施しました。 ※参加者のアプリ体験が終了するたびに、使用した物品はアルコール消毒をし、感染対策を行いました。 『旅のことばカード』~認知症になっても住みやすいまち~ 「きおトレ」アプリ体験の他に『旅のことばカード』による認知症の啓発活動を行いました。 『旅のことば』は、認知症のご本人、そのご家族、またその周りにいる皆さんが、それぞれの視点で簡単に実践できる「認知症とともによりよく生きるためのヒント」が書かれており、皆でちょっとした工夫をしながらよりよく生きる日々をひらがなで作っていける支援ツールです。認知症の方やそのご家族の考え方や気持ちに触れ、自分の目線でできることを考えていけるツールとして、家庭や病院、介護事業所内ばかりでなく、多くの自治体や教育機関でも使われています。 【引用】認知症とともによりよく生きるためのヒント:https://creativeshift.co.jp/product/2004/(2021年7月13日閲覧) 『旅のことばカード』は40種類あり、どの言葉も素敵で認知症の方やそのご家族だけでなく、私たち自身の心も軽くなり、前向きに生きていけるような言葉でした。 今回は、図書館を利用している地域の子どもから大人まで興味を持ってくれた10名程度の方に参加していただきました。パッと見て印象に残ったカードを選択してもらい、その内容のカードを渡しました。生活が少しずつよりよい方向へ向かっていくように、カードのことばの内容を理解し、実践してみることが大切だなと感じました。 ちなみに、偶然にも学生2名とも『今を楽しむ』のカードを選択しました。うまくできるかどうかではなく、今の一瞬一瞬を楽しもう!と考え、思い切って行動してみようと思います。 今回の認知症啓発活動を通して、広陵町で実際にどのような活動を行っているのかを知ることができました。少しでも多くの方々に認知症に対して興味・関心を抱いてもらうことが大切であり、「認知症になっても住みやすいまち」にするためには、地域住民がお互いに助け合うことがとても大事なことだなと感じさせられました。認知症の当事者が“その人らしく暮らす”ことができるように、自分にできることは何か、どのように接したらよいのか、などを改めて考える貴重な時間となりました。多くの方にご参加いただき、ありがとうございました。 この活動内容は、広陵町の広報誌「広陵(こうりょう)」に掲載される予定です。 まだまだ新型コロナウイルスの影響による活動制限はありますが、感染対策を徹底し工夫しながらOrange Project®の活動を行っていきたいと思っています。 Orange Project®に興味がある方は、ぜひご連絡ください! 看護医療学科4回生 德田真奈 b8615739@kio.ac.jp 冨松里帆 b8617938@kio.ac.jp 【関連記事】 小学生への認知症オンライン講座に参加!~認知症ケアサークル「Orange Project®」 認知症ケアに取り組む新サークル「Orange Project in KIO」が始動! ▶オレンジプロジェクトに関連するブログ記事 KIO Smile Blog
2021.07.12
小学生への認知症オンライン講座に参加!~認知症ケアサークル「Orange Project®」
Orange Project®とは、熊本県(熊本大学・熊本保健大学・崇城大学・熊本県立大学)と奈良県(畿央大学)を中心に活動している認知症啓発のための学生ボランティア団体で、“認知症になっても安心してくらせるまちづくりに貢献する”をコンセプトに、認知症啓発運動を行っている学生を中心とした団体です。2020年には、ロゴやマークが商標登録されました。畿央大学の卒業生たちは2019年から、在学中に熊本大学・熊本保健大学・崇城大学と共に、Orange Project®(認知症支援プロジェクト)に参画し、認知症になってもやさしい町づくりなどに、学生主体に取り組み始めました。そして「認知症にやさしい広陵町、認知症に強い畿央大学」となることを目的に2019年9月にサークルとして発足しています。 今回は、畿央大学が「多世代まちづくりプロジェクト2020コンペティション」で参加賞をいただいた企画、「絵本・紙芝居で子どもから社会へつなげよう」の活動の一環を報告させていただきます! この紙芝居は、2020年11月に認知症フレンドシップ主催の「次世代まちづくり 学生コンペテンション」で獲得(参加者賞10万円)した助成金から、畿央大学オレプロ学生たちで作成した世界に1つしかない認知症の啓発のための紙芝居(パワーポイントで作成)です。この紙芝居は「えがおのわ」というタイトルで、認知症という言葉を使用せず認知症のことを子どもたちに伝えるという特徴があります。 "えがおのわ" の視聴 | Microsoft Stream (学内のみ視聴可能) ※学外の方で視聴を希望される方がいらっしゃいましたら個別に対応いたしますので、ご相談ください! 看護においては小児看護の場面や、広くは教育学部の学生のみなさんにも総合的学習時間や道徳の授業などにも活用していただきたい紙芝居です。 2021年6月15日(火)11時半頃より、鹿児島県にある錦江町立大根占 (おおねじめ) 小学校の4年生から6年生に対して行った「鹿児島県の小学生に認知症オンライン講座をしよう!」にご招待いただき、私達、畿央大学オレンジプロジェクトも参加させていただきました。 実は...私達が昨年から作成していた紙芝居の初めてのお披露目の場でした! 始めに、オレンジプロジェクトの活動紹介をし、次に紙芝居を披露させていただきました。 最初は子ども達がどのような反応をしてくれるのか、zoomでの活動のためうまくコミュニケーションがとれるのか…など、不安なところもたくさんありました。 しかし、始まると同時に、画面越しに子ども達が活き活きと手を振ってくれる姿を見て、不安が一気に吹き飛びました! 子ども達が質問に対して積極的に答えてくれる姿、「困っている人がいたら、助けたい!」という感想を聴き、私達が紙芝居を通して伝えたかった「困っている人がいたら手を差し伸べてほしい」というメッセージが伝わったと実感し、とても嬉しく思います。 その後、認知症当事者である丹野さんの動画を見ていただき、無事に終えることができました。 ※写真撮影の時のみマスクを外しています ※写真掲載は大根占小学校の校長先生より許可をいただいています また今回の活動に関しては、南日本新聞においても取り上げていただきました。取り上げていただきありがとうございます。 今回の活動を通してコロナ禍だからこそ、さまざまな地域のさまざまな年代の人と繋がれることに気づくことができたと同時に子ども達に伝えることの楽しさを感じることができました。ご依頼のあった鹿児島県錦江町保健師からのお礼と子どもたちの反応について、メールをいただきましたので紹介しておきます。 <以下お礼文より> 子どもたちの純粋な反応や表情にとても癒やされたひとときでした。4年生・5年生はすごい元気な感じで、6年生は最初に音声トラブルがあって、5年生の教室へ行ったり、戻ったり恥ずかしさ??あるのかおとなしい雰囲気でした。(校長先生いわく今の6年生はずっとあんな雰囲気)学年でキャラが大きく違うとおっしゃっていました。でも、お話しは真剣に聞き入っていました。私は6年生の教室にいたのですが、ほんとに真剣でわりと学生さんのメモにもすんなり書いていました。最後に「認知症は終わりではない」という3つのキーワードのところ印象に残ったようで、メモを取っている女の子もいました。 (畿央大学の)学生のお二人や他チームのメンバーの方々、ほんとに短い期間に構成から考えてご指導頂き、画面上の一生懸命な様子に隠れているプロセスやいろんな準備があったんだろうなと思いました。最初の映像動画よりは紙芝居(世界初の披露)がさらにわかりやすかったように反応を感じました。丹野さんは、へえ~~と見ていたようですが、大根占小に今度来るの??とびっくりしていました。 遠い奈良の(畿央大学)学生のみなさんや大学の教授方、丹野さんがこうやって今の時代のICTツールでつながれたことが、今だからできたことですね。ありがとうございました。 次回の活動は、広陵町の図書館で看護医療学科4回生のメンバーが「認知症サポーター養成講座」のサポートに参加します。感染予防レベルが緩和されたこともあり、久しぶりの対面での活動なのでとても楽しみにしています。この活動内容は広陵町の広報紙「広陵(こうりょう)」に掲載される予定です。 今後もコロナ禍だからこそ生まれた強みを活かして、活動の幅を広げていけたらと思っています! Orange Project®に興味がある方は、ぜひご連絡ください! 看護医療学科3回生 浜田みゆき b9619852@kio.ac.jp 谷﨑華穂 b9591648@kio.ac.jp 【関連記事】 「絵本・紙芝居で子どもから社会へつなげよう」活動報告ー当事者の方へのインタビュー~認知症ケアサークル「Orange Project®」 認知症ケアサークル「畿央大学OrangeProject®」、2021年度第1回ミーティングを開催! 多世代まちづくりプロジェクト2020コンペティションで「参加者賞」を受賞 ▶オレンジプロジェクトに関連するブログ記事 KIO Smile Blog
2021.07.06
令和3年度「保護者懇談会」を開催しました。
2021年(令和3年)7月3日(土)に保護者懇談会を開催しました。昨年度は新型コロナウイルス感染症拡大の影響により実施することができませんでしたが、今年度はオンライン会議システムによるリアルタイム配信とオンデマンドによる動画配信を併用した形で開催しました。 学長による挨拶と進路支援部によるキャリアガイダンスは、本学ホームページ上にてオンデマンドにより一定期間配信し、保護者懇談会終了後もご覧いただくことができるようにしました。 ▼保護者懇親会用のページ すでに視聴されている保護者の方からは、「コロナ禍における就職活動の状況やサポート体制がよくわかった」「就職活動に対する保護者の心構えなどがよく分かった」という感想をいただきました。 保護者懇談会当日は、オンライン会議システムを使用して5学科の学科別説明会を実施し、250名を超える保護者様にご参加いただきました。「学科長のお話もとてもわかりやすく、学生すべてに配慮してくださっている様子がよく分かりました」「学校の方針や卒業までのスケジュールが把握でき、非常に有意義な懇談会でした」「大学や先生方がコロナ禍の中、学生達のことを考えて色々、試行錯誤しながら授業等を進めてくださっていることがよく分かりました」などのお声をいただきました。 ▼学科別説明会の様子 保護者の方と担任教員による個人面談についても、同じくオンライン会議システムを使用して実施しました。「どんな先生と関わっているのか、親としての不安なことなど色々聞けて良かったです」「個人懇談がリモートで出来てとてもよかったです。親身になってくださる先生にとても感謝しています」などの感想を多くいただき、顔を見ながら面談ができたことで保護者の皆さまにもご安心いただけたようです。 ご参加、ご視聴いただいた保護者の皆さま、ありがとうございました。コロナ禍の影響により直接お会いすることはできず、また保護者の皆さま同士の交流もかないませんでしたが、本学の取組や学生の現状を少しでも知っていただく機会になったのではないかと考えています。 これからも保護者の皆さまのご意見を参考に、教育の改善につなげてまいります。来年度も多くの保護者の皆様のご参加をお待ちしております。
2021.07.05
離島・へき地医療体験実習(川上村)で応急手当ポケットカードを作成!~看護医療学科
看護医療学科4回生の必修科目である「離島・へき地医療体験実習」では、新型コロナウイルス感染拡大防止のため学生が現地を訪れることができませんでしたが、5月にインターネット等様々な方法を活用して、へき地で生活されている方々や、保健・医療・福祉を支えている方々と交流をし、多くの学びを得ることができました。 吉野郡川上村での実習では、学生が「母子」「学校」「成人」「高齢者」「包括」と5つのグループにわかれて活動をし、各発達段階における健康課題に着目して媒体作成を行いました。 成人グループは、一般社団法人 吉野かわかみ社中の上田一仁様にインタビューを行い、林業に携わる方々の業務の実状についてお話を伺いました。その中で、作業中に緊急性の高い傷病者が発生した場合には防災ヘリコプターでの救助を要請されることと、作業している場所によっては携帯電話が使用できず、救助までに時間を要することを知りました。 そこで、救助を待つ間に林業従事者の方々自身で傷病者への対応ができることを目的に「安心!応急手当てポケットカード~命を守ろう~」という媒体を作成しました。インタビューで、林業従事者の方々が受傷される原因として、伐採した木に脚を挟まれることによる骨折が多いということをお聞きし、媒体では骨折・出血への対処方法と心肺蘇生法に関する内容を取り上げました。 また、上田様からのアドバイスで、山林での作業に携帯していただけるようなサイズとし、防水のためのラミネート加工を施しました。内容のわかりやすさ、文字やイラストの見やすさについても林業従事者の方々に確認していただき、完成することができました。 完成したポケットカードは、吉野かわかみ社中を通じて、川上村で働くすべての林業従事者の方々に配付していただきました。さらにご希望をいただき、令和3年7月1日(木)開催の全国労働安全週間イベントで、村内の土木建築事業所や製造事業所にもポケットカードを配付していただくことになりました。 上田様からは以下のような感想をいただきました。 「多くの林業従事者は日常作業の一貫として、立木伐採などの業務を行っておられるので、危険を伴う作業であるという認識が薄れがちになります。加えて、村内で重篤な林業事故が発生する頻度も高くないことから、突発的なアクシデントが発生した際に、自身の知識だけで冷静に対処できるかは未知数です。そのような場面で、このカードを携帯していれば手順に従って適切に処置できるので、現場での安心感は高まると思います。このカードを使う機会が訪れず、お守り代わりにカバンに入ったままというのが理想ですが…。」 また、ポケットカードを作成した学生からは以下のような感想がありました。 ポケットカードを作成時は、どのような場面、場所で活用するのかを想像し、より必要性のあるものになるように心がけました。緊急時に活用していただきたいです。 看護医療学科4回生 青木千春 ポケットカードを作成してみて、看護職だけでなく労働者の方が自分たちで救命措置を行うことができることは、とても重要なことであると考えました。初めてポケットカードを見る方でも、救命措置を行うことができるよう、絵や詳しい手順を記載することができたと思います。緊急時に活用していただきたいと思います。 看護医療学科4回生 板谷彩夏 ポケットカードを作成するにあたって、使用者のことを思いながら作成することがとても大切だとわかりました。緊急時に活用していただきたいです。 看護医療学科4回生 羽柿和也 緊急時に誰が見てもすぐに理解でき、実践できるようなわかりやすいパンフレット作成ができたと思います。林業従事者の方々が安全に働けるような環境づくりの一部に少しでも力になれて嬉しいと感じています。 看護医療学科4回生 安井優奈 今回の媒体作成では、山林での傷病者への対処ということを念頭に置き、どのような内容であれば林業従事者の方々に実践していただけるのかということを重視して作成しました。学生にとって、これまで学修した知識を、一般論ではなく対象となる方々の状況や個別性にあわせて活用することの重要性を学ぶ機会となりました。「安心!応急手当てポケットカード~命を守ろう~」が林業や建設業・製造業に携わる皆様方にとって安全のお守りとなることを願っています。 最後になりましたが、お忙しい中、離島へき地医療体験実習にご協力を賜りました皆様方に、心から感謝申し上げます。 看護医療学科 教授 松本泉美 講師 中西恵理 特任助教 松川真葵 助手 山本広大 【関連記事】 離島・へき地医療体験実習(山添村)レポート~看護医療学科 離島・へき地医療体験実習(宇陀市大宇陀地区)レポート~看護医療学科 離島・へき地医療体験実習(川上村)レポートvol.2~看護医療学科 離島・へき地医療体験実習(川上村)レポートvol.1~看護医療学科
2021.07.02
逝去時の看護を学ぶ-エンゼルケア演習 ~看護医療学科「終末期ケア論」
「終末期ケア論」は、看護医療学科3回生前期に必修科目として開講しています。 授業では、「がん患者を看取った遺族の体験を聴く」「ホスピス実習を終えた4年生からホスピス緩和ケアについて学ぶ」など終末期ケアの現場で求められている看護師の役割について考える力を養うための内容を盛り込んでいます。 今年度は、5月以降オンデマンド型の授業を行っていましたが、大阪府に発出されていた緊急事態宣言の解除後は、対面型授業を再開しました。 今回は、令和3年6月25日(金)の授業で行った「エンゼルケア演習」の様子を報告します。 この演習は、臨死期に出現する症状や逝去時のケアを理解する授業のなかで行われています。 ▲学生は、ユニフォームを着用し身だしなみを整えて演習に臨みました エンゼルケア(逝去時に身体や頭髪をきれいに整え、故人の生前の表情や血色に近いメイクを施し、「旅立ちにむけた整え」を行うこと)は、逝去時の看護技術であり残されたご遺族への心のケアにつながるといわれています。 授業では、闘病による苦しみから解放された方の表情を柔らかくするためのマッサージや汚れを除去し血色の良いお顔になっていただくためのエンゼルメイクを実施しました。 ▲フェイスマネキンを使って、表情を柔らかくするマッサージをする様子 学生のなかには、毎日化粧をする習慣のある人と習慣のない人、また男子学生もおり、化粧への関心や思いは様々です。しかし、共通していたのはご遺体を想定したメイクには微妙な色合わせや表情のなかに生前の面影を残すなど、これまでに触れたことが無い対象を思い浮かべながら、メイクすることの難しさでした。 実際に、死の直後から経時的にご遺体に起こる変化を具体的にイメージしながら、「顎関節が硬直しないうちに義歯を装着して、口が閉じられるように頭部を挙上する」「死後硬直がすすまないうちに旅立ちの衣装に着替える」「エンゼルケアを行って葬儀を終えて出棺するときまでには2日程度の時間があるので、そのときに最高の表情で旅立てるようにメイクをする」などの学びがあったようです。 ▲逝去後の経時的な変化を予測して表情を作っていきます ▲日ごろはメイクをしない男子学生も慣れない手つきで丁寧なメイクを施します 授業の中では、実際ご遺体をきれいに清拭し旅立ちの準備をする動画も視聴しましたが、学生は「いのちが終わってからも生前と同じように声をかけたり、プライバシーに配慮しながら、旅立ちの準備をすることが大切と感じました」と逝去後も対象を大切にケアすることの重要性を学んでいたようです。 また、エンゼルケアの目的の一つとしてご遺体の感染予防があります。感染を予防するために体液や排せつ物が漏れ出さないような処置を行うときに用いる物品なども手にとってみました。 感染予防という視点から「COVID-19 」によって逝去された対象のご遺体の扱いについてとりあげ、ご遺体と対面することができない遺族の苦悩について考えました。 ▲エンゼルケアの実際を動画で学ぶ様子 先輩たちは、この演習の経験を活かして、病院実習の場で逝去された患者さんへのエンゼルケアをさせていただいたことがあります。卒業後どのような領域で看護師として働いた場合にも必ず看取りの場に直面する機会があります。そのようなときに、「ご遺体に尊厳を持った態度でケアする」姿勢を忘れないでほしいと思います。 ▲同じ顔をしたマネキンへのメイクですがグループによって少しずつ表情が違っています 「最期の数時間に起こったことは、残された者の記憶に留まりつづける」といわれているように、お別れの時に穏やかな表情で送ることは、遺族ケアの第一段階であることを学生と共有できた貴重な演習となりました。 看護医療学科 講師 大友絵利香 【関連記事】 看取りを体験した遺族に対する看護の課題~看護医療学科「終末期ケア論」 第15回 奈良県認知症ケア専門士会オンラインセミナー「〜コロナ時代におけるこれからの看取り〜」参加者レポート~看護医療学科 国保中央病院「緩和ケアホーム飛鳥」での見学実習!~看護医療学科「終末期ケア論」
2021.06.22
「絵本・紙芝居で子どもから社会へつなげよう」活動報告ー当事者の方へのインタビュー~認知症ケアサークル「Orange Project®」
Orange Project®とは、熊本県(熊本大学・熊本保健大学・崇城大学)と奈良県(畿央大学)を中心に活動している認知症啓発のための学生ボランティア団体で、“認知症になっても安心してくらせるまちづくりに貢献する”をコンセプトに、認知症啓発運動を行っている学生を中心とした団体です。2020年には、ロゴやマークが商標登録されました。 畿央大学の卒業生たちは2019年から、在学中に熊本大学・熊本保健大学・崇城大学と共に、Orange Project®(認知症支援プロジェクト)に参画し、認知症になってもやさしい町づくりなどに、学生主体に取り組み始めました。そして「認知症にやさしい広陵町、認知症に強い畿央大学」となることを目的に2019年9月にサークルとして発足しています。 今回は、畿央大学が「多世代まちづくりプロジェクト2020コンペティション」で参加賞をいただいた企画、「絵本・紙芝居で子どもから社会へつなげよう」の活動の一環を報告させていただきます! この企画では、認知症の当事者の実体験をもとに紙芝居を作成するため、当事者の方からのお話をとおして、情報を得る必要がありました。 そこで、Orange Project®では、 ・2021年5月6日(木)18時より、若年性アルツハイマー病と診断された丹野智文さん ・2021年5月8日(土)13時より、若年性認知症と診断された竹内裕さん に、ZOOMでインタビューをさせていただきました。 【丹野智文さんへのインタビュー】 はじめに、畿央大学「Orange Project®」の活動紹介を行い、多世代の紙芝居を作成していることをお伝えしました。紙芝居は、学生が一から手書きで作成しています。 ぜひ皆さんも、完成をお楽しみにしていてください! 次に参加学生の紹介後、丹野さんより自己紹介を行っていたただいた後、学生から丹野さんへのインタビューTIMEとなりました。 特に3回生は以前に、丹野さんが執筆された書籍『丹野智文 笑顔で生きる-認知症とともに-』を拝読させていただいていたため、実際にお話ができるということで、とてもわくわくしていました。 インタビュー時に出た主な質問内容としては、 ・若くに認知症と診断されたときの心情 ・現在の日常生活で工夫していること ・認知症の方に対してどのようなサポート(声掛け)をするべきなのか というような内容でした。 認知症と聞けば、忘れることが多くなる、できないことが多くなるというようなマイナスなイメージに目を向けがちではありますが、できることはたくさんあります。 その人ができることに目を向け、一緒に考え、一緒に日常生活を工夫してゆくことが大切であると学ぶことができました。 そして丹野さんはオレンジドアという活動も行われています。 認知症と診断されてから引きこもりがちになる方が多く、社会とのつながりが失われることが多いそうです。そのような方が少しでも減少するよう、診察室の近くに丹野さんなどが待機し、認知症と診断されてからすぐ当事者同士でお話する場があり、社会とのつながりをつくっておられます。 また、多くの参加学生が、認知症の人には優しくしなければ、何かしてあげられることはないか、と思っていました。 ですが、それは反対に認知症の方ができることを先回りして支援することになり、できることを奪っていってしまうのだということが、参加学生にとってとても印象に残ることでした。 【竹内裕さんへのインタビュー】 開始前に竹内さんがZOOMに参加できていない!というような、少しハプニングもありましたが、、、(笑) 開始後は、初めに「なんでもきいてください!」とおっしゃってくださり、楽しくインタビューを実施することができました。 質問内容としては、 ・認知症と診断された時の心情 ・認知症と診断されたときの家族の反応 ・日常生活で工夫していること ・どのようなサポートがあると良いか というような、内容を質問させていただきました。 竹内さんは、認知症と診断された後、引きこもることが多くなったそうです。そのような状況から抜け出すきっかけが、旧友との還暦祝いのパーティでした。すなわち、家族以外の人との繋がり、社会との繋がりです。 また、紙芝居についても、幼稚園生や小学生にもなにか認知症の人にできることはないかと考え、その対応の仕方などの意見をいただくことができ、本当に楽しい時間を過ごすことができました。 最期に、丹野さんと竹内さんとのインタビューに共通して、認知症の人が住みやすい、暮らしやすい環境を作るうえで、いかに”人との繋がり”が大切であるのかを実感することができました。 コロナ禍ということもあり、ZOOMでの実施となりましたが、積極的に学生は質問を行い、丹野さんや竹内さんは、快くお答えくださいました。 学生にとっては、認知症に対しての理解を深め、今の私達には何ができるのかを考える良い機会となり、貴重な時間を過ごすことができました。 これからも、認知症についてさらに学び、少しでも多くの認知症の人との繋がりを作り、認知症の人が住みやすい街づくりに貢献できるよう、コロナ禍でもできる活動を続けてまいりたいと思います! Orange Project®に興味がある方は、ぜひご参加ください! 看護医療学科3回生 谷﨑華穂 【関連記事】 認知症ケアサークル「畿央大学OrangeProject®」、2021年度第1回ミーティングを開催! 多世代まちづくりプロジェクト2020コンペティションで「参加者賞」を受賞 ▶オレンジプロジェクトに関連するブログ記事 KIO Smile Blog
2021.06.12
児童養護施設「飛鳥学院」を見学!~助産学専攻科「乳幼児の成長・発達」
2021年5月20日(木)に「乳幼児の成長・発達」の授業で、奈良県桜井市にある児童養護施設「飛鳥学院」を見学させていただきました。 飛鳥学院では、様々な理由によって、環境上養護を必要とする子どもたちが入所し、自主性、社会性を持って自立することを支援するため、子どもたちへの温かい関わりをされています。 ▼基本理念:二宮尊徳翁(金次郎)の報徳精神。「勤倹」勤勉に働き、倹約すること、「分度」自己の社会的、経済的実力を知り、それに応じて生活の限度を定めること、「推譲」今日のものを明日に譲る、社会のために譲る。 施設は、70年ほど前に建てられた木造建築で重厚感があり、床はピカピカで掃除が行き届いており、木の温かみと清潔感を感じました。また、大きな保育園が隣接しており、とても賑やかで安心感を感じるような雰囲気がありました。 ▼飛鳥学院の玄関 ▼玄関からホールに続く廊下 院長の河村先生や児童指導員の清水先生からは、施設で生活をする子どもたちの教育にとても力を入れられていることをお話していただきました。施設の中には、塾、そろばんをする学習室があり、その他、部活動や子どもたち自身が興味のある習い事にも取り組むことができるような体制が整っています。勉強ができること、自分の強みを見つけられることで、自尊感情を高め、社会に出た時に大きな糧となるような関わりをされていて、子どもたちの将来にとても真剣に向き合っておられることを強く感じました。 職員の方々の関わりによって、子どもたちが社会に適応する力、社会で生きる力を身につけ、自立した生活ができるようになるのだということを感じました。 ▼河村院長 ▼清水先生の講義の様子 ▼こどもたちの学習室 ▼洗濯室(中学生以上は自分たちで洗濯を行っています) 今回の見学を通し、人に真摯に向き合う、誠実で親切な姿勢を忘れずに、子どもやお母さんをはじめとする家族の架け橋となるようなサポートをしていきたいと思いました。 ▼全員で集合写真(※撮影時のみマスクを外しています。) お忙しい中、私たち学生を温かく迎えてくださった河村院長、宮崎副院長、清水児童指導員、職員のみなさま、本当にありがとうございました。 助産学専攻科 寺林香織 安田悠未 【関連記事】 児童養護施設「飛鳥学院」を見学!~助産学専攻科 児童養護施設「飛鳥学院」を見学!~助産学専攻科 児童養護施設を見学!~助産学専攻科「乳幼児の成長・発達」
2021.06.03
セルフモニタリングが必要な患者のアセスメント・支援の演習~看護医療学科「慢性期看護学援助論Ⅱ」
看護医療学科3回生対象の授業「慢性期看護学援助論Ⅱ」で、令和3年5月17日(月)、24日(月)に、セルフモニタリングが必要な患者のアセスメントと支援についての演習を実施しました。演習は糖尿病の事例患者を基に2つのブロックに分かれ、1つは血糖自己測定(患者が自分で血糖を測定する)の教育支援、もう1つは事例患者の1日の食事メニューを作成する内容です。 血糖自己測定の教育支援のブロックでは、学生が事前に準備してきた血糖自己測定の説明用パンフレットと行動計画をもとに、患者役と看護師役になり、実施しました。 学生が作成したパンフレットは工夫を凝らした様々なものがあり、教育支援実施後はグループメンバーで共有し、良い点・改善点を話し合いました。 その後、教員が患者役となり学生が看護師役でのロールプレイングを実施しました。他の学生の教育支援を見学することで、事例患者の疾患や背景を考慮した関わり方などを考えた行動計画の立案が必要であることに気付いたようでした。 事例患者の1日のメニュー作成のブロックは、食品カード(そのまんま料理カード)を用いて実施しました。和洋中の様々な食品およびアルコールやパン、ケーキなどのカードもあり、グループメンバーと相談しながら、メニュー作りをしました。 作成後、カードの裏にある栄養成分表を見て再度検討し、メニューを作っていきました。何度も計算を繰り返し、食事療法の制限範囲に収めるメニュー作りの難しさに悲鳴をあげていました。 事例患者とはいえ、糖尿病という慢性疾患を持つ患者が生活していくうえで必要な食事療法と血糖自己測定の教育支援の演習を通して、生活者としての患者の療養を想定した支援が必要であることが理解できたようです。今後は臨床現場で患者に合わせた教育支援を考え、実践できるようになってほしいと思います。 看護医療学科教員(慢性期看護学)對中百合・山本裕子
2021.06.01
熟練助産師に学ぶ!母子のための骨盤ケア!~助産学専攻科「助産診断技術学Ⅰ」
令和3年5月13日(金)中井戸明美先生に「助産診断技術学Ⅰ(妊娠期診断とケア)」の授業の中で、「骨盤ケア」を教えていただきました。 中井戸先生は助産師として妊産婦さんの腰痛相談に携わっておられます。講義ではフィジカルサポート、骨盤の特徴、妊娠と骨盤の関係性について教わりました。母子のフィジカルサポートでは母と子がその人らしく妊娠・分娩・育児に適応できるように身体的特徴(姿勢や発達)をふまえたサポートを行うことをめざしています。 講義では腰痛や分娩の進行の変化(回旋異常・骨盤位・吸引分娩・帝王切開など)には骨盤の形やゆがみが大きく影響していることを教えていただきました。骨盤ケアを通して骨盤のゆがみを改善することで腰痛が緩和され、妊産婦さんのQOLの改善や出産時のスムーズなお産につながることを学びました。 その後の演習では、学生同士2人1組でお互いの立ち姿勢を観察し、肩の高さ、脇の開き具合、手を上げるスピードなどから身体のゆがみをチェックし、今まで気づかなかった自分たちの身体のゆがみに気づきました。そして、骨盤を支え、ゆがみを改善するために、さらしを巻いたり、体操を行ったりしました。また、バスタオルを使い、座ったときや寝たときの姿勢が楽になる方法も教えていただきました。 さらしで骨盤を支えると、姿勢がよくなり気持ちもスッキリしました。短い演習時間のなかで実践しただけでも、すぐに効果を実感することができました。少しでも支える位置がずれたり、強さがきつすぎたりすると、正しくケアを行うことができないため、学修を積み重ねていく必要性を感じました。 骨盤のゆがみや緩みによるトラブルを抱えている妊産褥婦さんは多いため、学んだ骨盤ケアをお母さんたちの妊娠中や産後の生活が快適になるような援助に活かしていきたいと思います。妊産褥婦さんが、正しい知識を理解して、実践することができるように、まずは助産師として接する私たち自身が、正しい知識と技術を身につけていきたいです。 助産学専攻科 桑野朋佳 辻本詩織 【関連記事】 産婦人科医に学ぶ!超音波診断法!~助産学専攻科「助産診断技術学」