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健康科学専攻(修士課程)の新着情報一覧

健康科学専攻(修士課程)の新着情報一覧

2025.10.17

11/18(火)第18回理学療法特別講演会「世界を舞台に得た学び」を開催します。

チラシデータ 申込フォーム 過去の理学療法特別講演会レポート 第17回理学療法特別講演会「キャリア開拓とマネージメント事始め」 【開学20周年】12/3(日)理学療法学科記念講演「PTの歩き方~PTが輝けるNew Spotを見つける旅」 第15回理学療法特別講演会「脳卒中急性期のリハビリテーション」 第14回理学療法特別講演会「2020東京五輪の活動報告」  

2025.10.07

株式会社中尾組と産学連携協定の調印式を行いました。

畿央大学は2025年10月1日(水)、株式会社中尾組と畿央大学健康科学部人間環境デザイン学科による産学連携に係る協定の締結調印式が開催されました。   (左から)人間環境デザイン学科 東実千代学科長、冬木正彦 畿央大学学長、株式会社中尾組 中尾隆成社長   奈良県内で創業110年を迎える総合建設会社である株式会社中尾組とは開学以来、企業インターンシップや卒業生の就職など多方面で交流を深めてきました。今回の協定は、奈良県産材を活用した木造建築や桜井市のまちづくり、建築分野の実証実験、インターンシップ・現場見学会などの体験学習、地域振興・社会活性化、教育・人材育成、SDGsへの取り組みなど、多岐にわたる分野での連携をさらに前に進めることを目的としています。     中尾社長、冬木学長、東学科長からそれぞれ挨拶があり、これまでの連携実績を振り返りつつ、Win-Winの関係で人材育成と地域に根差した活動の進展に対する期待が述べられました。双方が協力し合うことで、地域社会や産業の発展、人材育成への新たな一歩を踏み出すことへの強い意欲を確認する機会となりました。 協定書の締結後は記念撮影が行われ、和やかな雰囲気の中で式が進行しました。     両者の懸け橋となっている人間環境デザイン学科4期生の鈴木理人さんにも駆けつけていただきました。今回の協定を機に、相互協力しながら地域社会の総合的な発展と大学の教育・研究・社会貢献のさらなる深化を進めていく予定です。   関連リンク 自治体等との協定

2025.10.07

歩行中の予測誤差検出-視覚遅延フィードバックを用いた感覚運動不一致-~ニューロリハビリテーション研究センター

運動をより良くするためには、いかに予測誤差を検出できるかが重要となりますが、これまでの研究では上肢運動課題に特化したものがほとんどでした。畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターの林田一輝 客員研究員らは、健常成人を対象とした歩行中の予測誤差検出実験により、歩行パラメータや身体の重量感、不一致検出率が遅延時間とともに増加し、これらのデータは観察の視点に依存しないことを明らかにしました。この成果は、Psychological research誌(Sensorimotor incongruence during walking using delayed visual feedback)に掲載されています。   本研究のポイント ■「歩行中」の予測誤差検出能力の評価について視覚遅延フィードバック課題を用いて行いました。 ■歩行パラメータ(ステップ時間・ストライド時間)、身体の重量感、不一致検出率は遅延時間の増加に伴い上昇しました。 ■また、これらのパラメーターは観察する視点に依存しないことが明らかになりました。   研究概要 脳損傷後のリハビリテーションでは、動こうとしたときに脳が予測する感覚と、実際の感覚とのわずかなずれ(誤差)を認識できる能力がとても重要です。これまでの研究では、腕や指の動きを使ってこの能力が調べられてきましたが、実際に患者にとって最も必要とされる「歩行中」での仕組みはよく分かっていませんでした。畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターの林田一輝 客員研究員らの研究チームは、歩行中の誤差を認識する能力について実験を行いました。健常な人がトレッドミル上を歩くときに、その歩いている自身の映像の動きを段階的に遅延させ、その「わずかな遅れ」に気づけるかどうかの実験を行いました。その結果、歩くリズムや自分の体の重さの感じ方、そして遅れに気づく割合は、映像の遅延が大きくなるほど高まることが分かりました。さらに、自身の映像を横から見ても後ろから見ても結果は同じで、観察する視点に左右されないことも確認されました。これらの成果は、歩行リハビリにおいて「感覚と運動を統合する力」を新たに評価する方法の開発につながる可能性が示されました。   研究内容 本研究の目的は、健常者を対象としたトレッドミル歩行中の視覚フィードバック遅延実験において、歩行パラメータ、身体の重量感、遅延誤差検出率の影響を臨床でも応用可能な形で調査することでした。また、リハビリ場面で一般的に用いられる歩行中の矢状面(左側)または前額面(後方)による視覚フィードバックが誤差検出課題に与える影響も不明でした。したがって、もう一つの目的として、異なる観察視点によって影響されるかどうかも調査しました(図1)。   図1.実験手続き   参加者は、トレッドミル歩行中の姿をカメラで撮影され、リアルタイムに前方のモニターに映し出された。このフィードバックには遅延が設けられ、その遅延に気づいたかどうかの判断が求められた。遅延判断と同時に身体重量感も聴取された。歩行パラメータは加速度計にて計測された。 実験の結果、歩行パラメータ(ステップ時間・ストライド時間)、身体の重量感、不一致検出率は遅延時間の増加とともに上昇し、これらのデータは観察視点に依存しないことが判明しました。本研究は、歩行中の患者の感覚運動統合機能を評価する手法開発に向けた重要な示唆を提供すると考えられます(図2)。   図2.実験の結果   左:不一致(遅延)検出確率曲線を表す。遅延時間の増加に伴い、遅延判断(Yes)の回答確率が上昇していることがわかる。右上:遅延時間増加に伴う身体重量感の変化を表す(7段階評価)。右下:遅延時間増加に伴うステップ時間の変化を表す。 *p<0.05   本研究の臨床的意義および今後の展開 本研究は、歩行中の患者の感覚運動統合機能を評価する方法を開発するための重要な手がかりになる可能性が考えられます。今後は脳卒中などの神経疾患患者への応用を行う予定です。   論文情報 Hayashida K, Nishi Y, Inui Y, Morioka S. Sensorimotor incongruence during walking using delayed visual feedback. Psychol Res. 2025 Sep 8;89(5):139. doi: 10.1007/s00426-025-02170-9.   関連する論文情報 Hayashida K, Nishi Y, Matsukawa T, Nagase Y, Morioka S. I am not the cause of this pain: An experimental study of the cognitive processes underlying causal attribution in the unpredictable situation whether negative outcomes. Conscious Cogn. 2024 Jan;117:103622. doi: 10.1016/j.concog.2023.103622. Epub 2023 Dec 14.   問い合わせ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 客員研究員 林田 一輝   畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 教授 森岡 周 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.morioka@kio.ac.jp

2025.09.24

フランス・リヨン神経科学研究センターのHugo ARDAILLON 氏が畿央大学を訪問されました!~ ニューロリハビリテーション研究センター

2025年8月26日、フランス・リヨン神経科学研究センターのHugo ARDAILLON 氏が畿央大学を訪問されました。   当日は、畿央大学より森岡 周 教授、大住 倫弘 准教授、佐々木 遼 研究員、大西 空 研究員 が参加し、大学研究センターの概要や研究設備の紹介を行いました。     ▼大住准教授がアイトラッカー装置などを用いた実験について説明を行っている様子   ▼ VRの体験を行っている様子   その後の懇談では、2026年3月にフランス・リヨンで開催予定の日仏国際共同研究 CREST-ANR NARRABODY 4th Meeting に向けた意見交換も行われました。   本ミーティングは、国際的かつ学際的な研究の発展と連携強化に向けた重要な機会となりました。   CRESTは国内の競争的科学研究費としてはトップに位置するもので、本学 森岡 周教授らの日仏合同研究チームが2.74億円(5年6ヵ月/3研究室合同)の研究費を取得しています。   【プレスリリース】森岡周教授らの共同研究が2023年度 CRESTに採択されました。 関連記事 森岡周教授らの共同研究が2023年度 CRESTに採択されました。  日仏国際共同研究CREST-ANR NARRABODY 1st Meetingが開催されました!~ニューロリハビリテーション研究センター 日仏国際共同研究CREST-ANR NARRABODY 2nd Meetingが開催されました!~ニューロリハビリテーション研究センター 日仏国際共同研究CREST-ANR NARRABODY 3rd Meetingが開催されました!~ニューロリハビリテーション研究センター

2025.09.12

新校舎の建設が始まります!

畿央大学では、教育研究環境のさらなる充実を目指し、新校舎の建設を進めています。 その工事の着工に先立ち、2025年9月2日(火)、「地鎮祭」を執り行いました。 まだまだ厳しい暑さが残るなか、神主をお招きし、学園、設計者、施工者の三者がそろって、工事が安全に、そして無事に完成するよう祈願しました。     新校舎には、教育研究活動の成果発表や地域交流イベントなどで幅広く活用できる2層吹き抜けのプレゼンテーションホールを設けます。畿央大学の持つ「知」のリソースを地域へ発信し、繋がりを育む拠点となることをめざしています。     新しい校舎の完成に、どうぞご期待ください!

2025.09.02

子どもの“書きにくさ”を特性ごとに解明―DCD・ADHD・ASDの違いをタブレットで可視化~ニューロリハビリテーション研究センター

学校生活において運筆・書字スキルは学習の基盤ですが、神経発達症のある子どもたちの多くが書く行為に困難を抱えています。発達性協調運動症(Developmental Coordination Disorder:DCD)、注意欠如多動症(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder:ADHD)、そして自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder:ASD)と運筆・書字困難との関連はすでに指摘されていますが、先行研究結果は必ずしも一致しておらず、客観的な指標に基づいた各特性と書く能力との詳細な関連は不明でした。畿央大学大学院博士後期課程の片岡新 氏と信迫悟志 教授らは、診断名で分けるのではなく、各特性の強さに着目する「Dimensional approach(次元的アプローチ)」で解析を行い、デジタル機器で運筆スキルを定量的に評価し、堅牢な書字評価バッテリーで書字スキルを評価することで、特性ごとの運筆および書字運動プロファイルの違いを明らかにすることを目的としました。この研究成果は、Human Movement Science誌(Kinematic and kinetic characteristics of graphomotor skills in children with neurodevelopmental disorders: The impact of DCD, ADHD, and ASD traits)に掲載されています。 本研究のポイント DCD特性が強い子どもほど、描線の正確性(逸脱量)、速度、加速度、ジャーク(動作の滑らかさ)など、多くの運筆指標が悪化することが明らかになった。 ADHD特性が強い場合には、筆圧が強くなり、描線速度も速くなる傾向が認められた。特に曲線や三角波といった複雑な描線条件で顕著であり、一方で直線条件では能力低下との関連は見られなかった。 ASD特性は二面性を示した。すなわち、「注意を細部に向ける特性」が強いと直線課題で速度、加速度、ジャークが悪化する一方、「注意の切り替え能力」が高いと書字スキル(書字流暢性)が向上するという、他の発達特性とは異なる特徴的な結果が得られた。   研究概要 本研究は、DCD、ADHD、ASDと診断された神経発達症の子ども17名(6〜11歳)を対象に、書字スキルおよび運筆スキルと神経発達特性との関連を調べた探索的研究です。書字スキルは Understanding Reading and Writing Skills of Schoolchildren II(URAWSS-II) を用いて「書字流暢性」を測定しました。運筆スキルは TraceCoder®を使用し、直線・正弦波・三角波の3条件(図1)で描線をトレースさせ、基準線からの逸脱量、筆圧、速度、加速度、ジャーク(動作の滑らかさ)、描線面積 の6指標を定量的に測定しました。さらに、神経発達症特性の評価として Developmental Coordination Disorder Questionnaire(DCDQ)、ADHD Rating Scale IV(ADHD-RS)、Autism Spectrum Quotient(AQ) を使用しました。その他の測定項目には、年齢、学年、全検査IQ(FSIQ)、レーヴン色彩マトリシス検査(RCPM)、感覚プロファイル(SSP) を含めました。   図1. Trace coder®を使用した運筆評価   研究内容 本研究では、6~11歳の神経発達症(DCD、ADHD、ASD)の診断を有する児17名を対象に、神経発達症特性と運筆・書字スキルとの関連を検討しました。運筆スキルは、各条件(直線、正弦波、三角波)における基準線からの逸脱量、筆圧、速度、加速度、ジャーク(動作の滑らかさ)、描線面積といった運動学的・運動力学的指標をTraceCoder®により測定し、書字スキルは URAWSS-II によって書字流暢性を評価しました。さらに、知的機能(FSIQ、RCPM)や感覚特性(SSP)も測定項目に含め、相関分析を行いました。 その結果、DCD特性が強い子どもほど、直線・正弦波・三角波といったいずれの描線課題においても、基準線からの逸脱が大きく、速度や加速度、ジャークの安定性が低下するなど、運筆の正確性や滑らかさが一貫して悪化することが示されました(図2、図3)。 一方、ADHD特性が強い場合には、筆圧が強く、描線速度が上がる傾向が認められ、特に複雑な正弦波や三角波課題でその特徴が顕著に現れました(図2,図3)。また、ASD特性については二つの異なる関係が見られました.すなわち,「注意を細部に向ける傾向」が強いと、直線課題における速度や加速度,ジャークが悪化しましたが,「注意の切り替え能力」が高い場合には、逆に書字流暢性(短時間で正確に多くの文字を書ける能力)が向上するというポジティブな効果も確認されました(図2,図3)。   図2.相関ヒートマップ   縦軸に運筆スキル(運筆における運動学的・運動力学的指標)と書字スキル(書字流暢性)を示し、横軸に神経発達症特性(DCD、ADHD、ASD)を示す。 SLC:直線条件、SWC:正弦波条件、TWC:三角波条件   図3. 各神経発達症児の代表的な運筆波形   これらの知見は、書字運動の特性が単なる診断名ではなく、DCD・ADHD・ASDといった発達特性ごとに異なる形で現れることを示しており、子どもの「書きにくさ」に対して、より特性に応じた個別的な評価・支援が重要であることを強調しています。   本研究の臨床的意義および今後の展開 本研究は、子どもの「書きにくさ」の背景にある多様なメカニズムを解明し、診断カテゴリーではなく特性に応じた評価と支援の必要性を示しました。特に、タブレット端末による定量的評価と URAWSS-II の標準化された書字評価を組み合わせることで、臨床や教育現場において、子どもの課題点を客観的かつ効率的に把握できる方法を提示しました。 さらに、ASD特性に見られた「注意の切り替え能力」と書字流暢性とのポジティブな関連は、書字困難を単なる弱点としてではなく、特性に応じた強みを生かす視点の重要性を示しています。 今後は、より大規模な調査や縦断的研究を通じて、発達に応じた書字スキルの変化や介入効果を検証し、特性に応じた支援プログラムの開発につなげていくことが期待されます。   論文情報 Kataoka S, Nakai A, Nobusako S. Kinematic and kinetic characteristics of graphomotor skills in children with neurodevelopmental disorders: The impact of DCD, ADHD, and ASD traits. Human Movement Science. 2025 Aug 18;103:103388. doi: 10.1016/j.humov.2025.103388. Epub ahead of print. PMID: 40829511.   問い合わせ先 畿央大学大学院健康科学研究科 博士後期課程 片岡 新   畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 畿央大学大学院健康科学研究科 教授 信迫悟志 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.nobusako@kio.ac.jp

2025.08.13

第15回呼吸・循環リハビリテーション研究大会を開催しました!~健康科学研究科 田平研究室

2025年8月9日(土)〜10日(日)に三重県鳥羽市のエクシブ鳥羽アネックス「白帆の間」にて「第15回呼吸・循環リハビリテーション研究大会」が開催されました。本研究大会は、田平教授をはじめ、大学院生と卒業生によって運営されており、今回は15回目の開催となります。今年は学部生6名、卒業生7名、WEB参加3名の計16名が参加し、10題の演題発表が行われました。   ▼▼ 昨年度の実施された第14回呼吸・循環リハビリテーション研究大会の様子はこちら ▼▼ 第14回呼吸・循環リハビリテーション研究大会を開催しました!~健康科学研究科 田平研究室       質疑応答では活発な意見交換がなされ、各自の研究をブラッシュアップするための貴重なフィードバックを得ることができました。卒業生の発表では、呼吸理学療法に関する最新の知見や新規性・発展性のある研究内容も共有され、大変有意義な時間となりました。     もちろん発表後には美味しい食事を囲みながらのプライベートな話や近況報告でゼミ生同士の交流を深めることも忘れていません。セッション中の質疑応答とは違う和やかな雰囲気の中でのディスカッションも行われ、より質の高い研究につながる二日間となりました。     田平研究室では、日々の臨床の中で生じた疑問を、卒業生も含めて一丸となり解決に向けて議論を重ねています。     呼吸・循環分野に関するClinical Questionをお持ちの方、ぜひお気軽にご連絡ください。私たちと一緒に、楽しみながら答えを見つけていきましょう。研究室スタッフ一同、心よりお待ちしております。   健康科学研究科 博士後期課程 玉村 悠介 関連記事 ▼▼ 健康科学研究科についての関連記事 ▼▼ 日本リハビリテーション医学会学術集会に参加しました! ~ 健康科学研究科 瓜谷研究室 神経リハビリテーション学研究室の学生・教員が World Physiotherapy Congress 2025 で発表 ~ 健康科学研究科 地域リハビリテーション研究室の学生・教員が World Physiotherapy Congress 2025 で発表 ~ 健康科学研究科 第65回日本呼吸器学会学術講演会で『トラベルアワード』を受賞 ~ 健康科学研究科   ▼▼ 理学療法学科についての関連記事 ▼▼ 筋肉かるたで“知識”と“絆”を強化!~ 理学療法学科 2・3回生交流会レポート ~ 中国の理学療法、リハビリテーション事情について~理学療法学科 第15回「やさしさをチカラに変える次世代リーダー育成セミナー」  

2025.08.04

日常生活に不可欠な“両手を同時に独立して動かす能力”の発達変化~ニューロリハビリテーション研究センター

一方の手で定規を押さえながら、他方の手で線を引く。一方の手で紙を持ちながら、他方の手でハサミで切る。あるいは、一方の手でお皿を保持しながら、他方の手でスプーンで食べ物をすくう。このように、両手を同時に異なる動きで使う“両手同時独立制御能力(Simultaneous Independent Bimanual Coordination)”は、日常生活において不可欠な動作スキルであり、その発達には運動制御や注意機能など多様な神経基盤が関与しています。しかしこの能力が、子どもにおいてどのように発達するのかについては、これまで十分に解明されていませんでした。畿央大学大学院健康科学研究科の信迫悟志 教授らの研究チームは、5〜13歳の定型発達児150名を対象に、両手で同時に異なる描画を行う「両手結合課題(bimanual circles–lines coupling task)」を用いて、この能力の発達過程を詳細に検討しました。その結果、年齢の増加とともに“両手を同時に独立して動かす能力”が徐々に向上することが明らかになりました。また、この課題で得られた指標は、標準化された微細運動技能テストによって測定された“両手協調運動技能”の得点とも有意に関連していることが示されました。 この研究成果は、Frontiers in Human Neuroscience誌(Developmental Changes in Independent Bimanual Coordination: Evidence from the Circles–Lines Coupling Task in Children Aged 5–13 Years)に掲載されています。   本研究のポイント 両手を同時に別々に動かす「両手同時独立制御能力」は、5〜13歳の間に徐々に向上することが示された。 「両手同時独立制御能力」は、両手を協調させて目的を達成する両手協調運動技能と有意に関連していた。 両手結合課題(BC課題)は、特別な設備を必要とせず短時間で実施可能であり、発達期における両手協調運動技能の評価ツールとして有用である。   研究概要 本研究では、5〜13歳の定型発達児150名を対象に、両手を同時に異なる動きで使う「両手同時独立制御能力(Simultaneous Independent Bimanual Coordination)」の発達変化を調査するため、両手結合(bimanual circles–lines coupling task: BC)課題を実施しました。この課題では、以下の2条件を設定しました(図1) 片手条件:利き手でタブレット上に垂直線を繰り返し描く(図1_左) 両手条件:同様に利き手で垂直線を描きながら、同時に非利き手で紙の上に円を反復描画する(図1_右) 図1.  BC課題   本研究に参加した8歳の右利き女児の例。通常、図の両手条件にあるように、利き手で描いた垂直線は、非利き手の円運動の影響を受けて、楕円形に歪んでしまう。したがって、両手条件でこの歪みの程度が少ないことは、両手を同時に別々に動かす能力が高いことを表す。 通常、両手条件においては、非利き手による円運動のプログラムからの干渉(影響)により、利き手で描かれた直線が楕円状に歪む現象が見られます。本研究では、この線の歪みの程度を楕円化指数(Ovalization Index: OI)として算出しました。OIは、0に近いほど直線性が保たれ、100に近いほど正円に近づくことを意味します。さらに、両条件間のOIの差分を両手干渉効果(Bimanual Coupling Effect: BCE)として定量化しました。BCEの値が小さいほど、両手を同時に独立して動かす能力が高いことを示します。さらに、協調運動技能の標準化検査の手先の器用さテストを実施し、BCEとの関連も検討しました。   研究内容 本研究では、5〜13歳の定型発達児150名を対象に、両手で異なる運動を同時に行う能力を評価するためのBC課題(図1)および微細運動技能検査(利き手スキル、非利き手スキル、両手スキル、利き手の運筆スキル、総合)を実施しました。BC課題(片手条件、両手条件)で測定された利き手の運動軌跡の歪みをOIとして算出し、両条件間のOIの差をBCEとして定量化し、年齢との関係性および微細運動技能との関連性を検討しました。その結果、全ての年齢群において両手条件のOIは片手条件よりも有意に高く、BCEの存在が確認されました。そして、片手条件および両手条件のOIは年齢とともに有意に低下し、運動軌跡の直線性が向上していくことが示されました(図2)。また、BCEも年齢と有意な負の相関を示し、年齢の増加に伴い干渉効果が弱まり、両手を同時に独立して制御する能力が徐々に発達することが示唆されました(図3)。   図2. 年齢群間比較結果   図3. 年齢とBC課題変数との相関関係   さらに、年齢を統制したうえでの偏相関分析では、BCEおよび両手条件でのOIが、両手協調運動技能と有意に関連していることが明らかとなりました(図4)。   図4. 年齢を制御したBCEと両手協調運動技能との偏相関関係   本研究の臨床的意義および今後の展開 本研究では、両手で異なる運動を同時に行う「両手同時独立制御能力」が、5歳から13歳にかけて徐々に発達することが、行動レベルで明らかになりました。またこの能力は、左右の手を協調させてひとつの目的を達成する「両手協調運動技能」とも有意に関連していることが示されました。 この「両手同時独立制御能力」の発達には、前頭−頭頂ネットワーク、前頭前野(実行機能・注意制御)、脳梁を介した左右の大脳半球間の情報伝達・抑制機構、という3つの神経的成熟が関与すると考えられており、本研究結果は、これらの神経基盤の発達過程を行動的に捉えたものと位置づけることができます。 さらに、既存の標準化された協調運動技能検査では、年齢に応じて異なる課題や道具を用意する必要がありますが、BC課題はタブレットと紙、ペンのみで実施可能であり、年齢にかかわらず同一の手順で短時間に評価が可能です。こうした特徴から、BC課題は発達期における両手協調能力の発達段階を簡便かつ定量的に評価できる実用的な手法として有用である可能性が示されました。今後は、この課題を特別な支援を必要とする子どもたちにも応用することで、運動機能のより的確な評価や、リハビリテーション、運動学習支援への実践的な活用が期待されます。   論文情報 Nobusako S, Hashizoe K and Nakai A (2025) Developmental changes in independent bimanual coordination: evidence from the circles–lines coupling task in children aged 5–13 years. Front. Hum. Neurosci. 19:1620941. doi: 10.3389/fnhum.2025.1620941   問い合わせ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 畿央大学大学院健康科学研究科 教授 信迫悟志 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.nobusako@kio.ac.jp

2025.07.23

看護医療学科 紅林准教授、国際学術誌『SAGE Open Nursing』の編集査読委員に就任

看護医療学科 准教授/健康科学研究科 准教授 紅林 佑介 ■ 学術誌『SAGE Open Nursing』について 『SAGE Open Nursing』は2015年に創刊された学術誌です。学術誌の影響度を示す指標の一つにおいて、同誌は看護学の分野で上位25%以内に入る「Q1」というカテゴリーに分類されており、国際的に認知されているトップジャーナルの一つです。   ■ 論文の品質を支える「査読」とは? 学術論文が学術誌に掲載される前には、「査読(さどく)」と呼ばれる、その分野の専門家により審査されます。これは、研究の質と科学的な信頼性を担保するための重要なプロセスです。 ■「編集査読委員」の役割 編集査読委員は、世界中から投稿される論文に対し、専門的な知見からその価値を評価し、掲載の可否を判断するなど、査読プロセス全体に責任を持つ役割を担います。 編集査読委員への就任は、その研究分野における専門性が評価されたものであり、この活動を通じて、同学問分野の発展への貢献が期待されます。   https://journals.sagepub.com/home/SON

2025.07.02

脊髄損傷によるしびれ感に対するしびれ同調経皮的電気神経刺激の効果 -N-of-1試験による効果検証-~ニューロリハビリテーション研究センター

脊髄損傷患者の多くはしびれ感が併発し、その改善に難渋することから生活の質や治療満足度が低下します。この喫緊の課題に対して、我々はしびれ同調経皮的電気神経刺激(TENS)を開発しましたが、プラセボ効果の影響は検討できていませんでした。畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターおよび長崎大学生命医科学域(保健学系)の西祐樹らは、N-of-1試験によりしびれ同調TENSがプラセボ効果よりも有意にしびれ感が改善することが明らかにしました。この研究成果はThe Journal of Spinal Cord Medicine誌(Tailored transcutaneous electrical nerve stimulation improves dysesthesia in individuals with spinal cord injury: A randomized N-of-1 trial)に掲載されています。 本研究のポイント 脊髄損傷によるしびれ感に対して、しびれ同調TENSおよびプラセボ効果を比較検証した。 集団および個人内ともに、プラセボ効果と比較してしびれ同調TENSはしびれ感を改善した。 しびれ同調TENSはしびれ感のみならず、アロディニアもプラセボ効果より有意に改善した。   研究概要 脊髄損傷患者において、しびれ感は主に両側に生じる一般的な合併症であり、日常生活活動や生活の質が著しく低下します。しびれ感に対する第一選択治療は薬物療法ですが、その効果は限定的で、副作用の報告もあります。そのため、しびれ感は未解決の問題(アンメット・ニーズ)と位置づけられてきました。これに対し、我々は、しびれ同調経皮的電気神経刺激(しびれ同調TENS)を開発しました。本介入は電気刺激のパラメータを個人のしびれ感に一致させるテーラーメイドな介入であり、しびれ感が改善することを先行研究にて報告しています(Nishi et al., Front Hum Neurosci 2022, Front Hum Neurosci 2024)。一方、従来の電気刺激療法では、電気刺激本来の効果のみならずプラセボ効果の影響が報告されており、しびれ同調TENSにおいても同様の作用が推察されます。しかしながら、しびれ同調TENSにおけるプラセボ効果の影響は明らかになっていませんでした。一般的に、プラセボ効果の影響はランダム化比較試験により検証されますが、個人への一般化が制限され、個人内介入効果が不明瞭になる可能性があります。そこで、畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターおよび長崎大学生命医科学域(保健学系)の西祐樹らは、N-of-1試験により、しびれ同調TENSの集団および個人内の効果を検証しました。その結果、集団レベルおよび個人レベルの両方で、しびれ同調TENSはプラセボ効果よりもしびれ感を改善することを初めて明らかにしました。   研究内容 本研究の目的は、脊髄損傷によるしびれ感に対して、しびれ同調TENSとプラセボ効果を集団および個人内で検証することでした。そこで、脊髄損傷患者6名を対象に、無作為化プラセボ対照N-of-1試験を実施しました。各試験はしびれ同調TENSとプラセボ効果を反映するSham-TENS(各7日間、1日60分刺激)の2つの治療で構成され、各介入はランダムな順序で2セット行われました。主要評価としてしびれ感の主観的強度をNumerical Rating Scale(NRS)毎日評価し、副次評価として各期で短縮版マクギル痛み質問表(SF-MPQ-2)を評価しました。統計解析では、プラセボ効果(Sham-TENS)を差分したしびれ同調TENSの介入効果(しびれ感NRS)を集団―個人内で検証するために、階層的ベイズモデルを実施しました。また、しびれ感を含めた疼痛関連症状への波及効果(SF-MPQ-2)はベイズt検定を用いてしびれ同調TENSとSham-TENSで比較しました。その結果、しびれ同調TENSは集団レベルおよび個人レベルの両方で、臨床的に意義のある最小変化量を高確率(96~100%)で上回りました(図1)。また、Sham-TENSと比較して、しびれ同調TENSは触るだけで痛いアロディニア、チクチク感、しびれ感に関するSF-MPQ-2の項目で決定的証拠(Bayes Factor10 > 1000)としてのしびれ感の改善を示しました。以上の結果は、しびれ同調TENSがしびれ感を有する脊髄損傷患者という集団に有効であるとともに、テーラーメイドな治療のため、各個人の多様なしびれ感(ビリビリ・チクチクの内省や強度)にも有効であることを示唆しています。   図1. A)プラセボ効果(Sham-TENS)を差分したしびれ同調TENSにおける改善効果の確率密度関数。 点線は臨床的に意義のある最小変化量であり、臨床的に意味のある治療効果の確率は、点線の右側の曲線領域で表される。B) 改善効果確率の累積プロット。図1Aの確率密度関数を累積的に表現することで、しびれ同調TENSの改善効果を確率として解釈することができる。   本研究の臨床的意義および今後の展開 本研究は、しびれ同調TENSが、非薬物療法としてしびれ感に対する新規標準介入となる可能性があることを支持しています。今後は大規模な介入効果検証や他疾患のしびれ感に対する効果検証を行う予定です。   論文情報 Yuki Nishi, Koki Ikuno, Yuji Minamikawa, Michihiro Osumi, Shu Morioka Tailored transcutaneous electrical nerve stimulation improves dysesthesia in individuals with spinal cord injury: A randomized N-of-1 trial The Journal of Spinal Cord Medicine, 2025.   関連する先行研究 Nishi Y, Ikuno K, Minamikawa Y, Igawa Y, Osumi M, Morioka S. A novel form of transcutaneous electrical nerve stimulation for the reduction of dysesthesias caused by spinal nerve dysfunction: A case series. Front Hum Neurosci. 2022;16:937319. Published 2022 Aug 24. doi:10.3389/fnhum.2022.937319   Nishi Y, Ikuno K, Minamikawa Y, Osumi M, Morioka S. Case report: A novel transcutaneous electrical nerve stimulation improves dysesthesias and motor behaviors after transverse myelitis. Front Hum Neurosci. 2024;18:1447029. Published 2024 Nov 6. doi:10.3389/fnhum.2024.1447029   問い合わせ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 客員研究員 西 祐樹 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 教授 森岡 周 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.morioka@kio.ac.jp

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