健康科学専攻(修士課程)の新着情報一覧
2021.11.05
【スポーツリハ×スポーツ栄養】中日ドラゴンズのドラフト6位指名、福元悠真選手を科学的にサポート!
畿央大学は中日ドラゴンズドラフト6位指名の福元悠真選手(大阪商業大学4回生)とアドバイザリー業務委託契約を結び、スポーツリハならびにスポーツ栄養の面からアスリート支援を行うこととなりました。福元選手は奈良県出身で、高校時代に甲子園に3度出場。4番打者としてセンバツ優勝も経験しているパワーヒッターです。大学でも主将を務め、3回生の秋にはリーグ最優秀選手賞とベストナインを獲得している逸材ですが、怪我に苦しんだシーズンもありました。 理学療法学科の福本貴彦准教授は17年前から奈良県の高校野球に関わっており、福元選手とも面識がありました。今回のプロ野球入りを受け、年明けの入寮とキャンプインに向けて本学教員によるサポートによりプロアスリートになるための体づくりを行うことになりました。2021年10月27日(水)には本学で運動能力の測定やフィジカルチェック、栄養指導を受けました。 【理学療法学科 田平一行教授(専門:呼吸器リハ)からのアドバイス】 心臓や肺機能、体力を測定するために呼気ガス分析器というマシンを使った運動負荷試験を行いました。試験は自転車の負荷(抵抗)を少しずつ上げていき、漕げなくなるまで頑張ってもらい、体に取り入れる酸素の量(酸素摂取量)を測定します。私たちの運動のエネルギーは、ほぼ酸素を燃やして得ていますので、漕げなくなった時の酸素量(最大酸素摂取量)は体力の最も良い指標とされています。福元選手はこの値が一般の人よりも25%も高く、野球選手としてだけでなく体力も非常に優れていることが分かりました。運動負荷試験は体力の判定だけでなく、効果的な運動強度やトレーニングのターゲット(心臓、肺、筋肉等)を決定することにも利用できます。 本学の学生は200ワットくらいの負荷で漕げなくなるのですが、福元選手は300ワットを優に超えて、先生方を驚かせていました。ちなみに、マスクをつけて漕ぎ続けるこの試験は「今年で体力的に一番キツい」体験になったそうです。 【健康栄養学科 中谷友美講師(専門:栄養生理学)からのアドバイス】 現在の食生活について細かくヒアリングを行いながら、栄養面からアスリートの体づくりのアドバイスをします。怪我をしたことがきっかけで食事には気をつかい、大好きだというお菓子も我慢してきたストイックな福元選手も「管理栄養士から指導を受けるのは初めて」とのこと。中谷先生から「食べないと体重は落とせない」など目からウロコのアドバイスに、「めっちゃわかりやすいですね!」と感動されていました。「すぐ忘れてしまうので…」と即座にメモを取る向上心あふれる姿勢も印象的でした。今後は実際にとった食事を報告するなどして、継続的にアドバイスを受けコンディションやパフォーマンスの向上につなげていきます。 【理学療法学科 福本貴彦准教授(専門:運動器リハ・スポーツリハ)からのアドバイス】 普通に立った状態と、バッティングフォームでそれぞれ左右の足型をとりました。 足指握力も非常に強く、足型はしっかりとした土踏まずが観察できる、非常にきれいな足部形状をしていました。バッティングフォームになったとたんに重心位置が変化し、足指で地面をしっかり握っているのが観察されました。この足指の使い方でホームランが打てるのですね!来シーズンはナゴヤドームのバックスクリーンにたくさん打ち込んで欲しいものです。 福元選手からは「プロ入りしても怪我なく、一年間を通してプレイできるように引き続きトレーニングを行い、良い結果を出せるように頑張っていきたいです。」という力強いコメントをいただきました。 これらの測定値を科学的に分析し、弱点を強化しつつ、体への負担が少なく効率の良いトレーニング方法を継続的に指導していきます。強打者として期待されている福元選手が怪我や故障のないように体を整えプロ野球界で活躍してもらえるよう、チームKIOで一丸となって支援していきます! 【左から】中谷先生、福本先生、福元選手、田平先生 ※撮影時のみマスクを外しています。 【畿央大学のアスリート支援関連記事】 第14回理学療法特別講演会「2020東京五輪の活動報告」を開催しました。 「広陵町チャレンジデー2016」に理学療法学科教員とTASKが協力! 認知症啓発の列島リレー「RUN伴」に参加・協力! 宇陀市連携「こどもウェルネス講演会」を開催しました。 広陵町連携 介護予防リーダー養成講座の取り組みが「奈良介護大賞2015」に選ばれました。 鳥人間コンテスト本番で京都大学”Shooting Stars”チームをメディカルサポート! 畿央の学びと研究産学連携 女性専用フィットネスクラブ業界NO.1"カーブス広陵"との共同研究2年目をスタート! 元全日本女子バレーボール監督「柳本晶一先生特別講演会」を開催しました。 鳥人間コンテスト本番出場で間寛平さんをメディカルサポート 関西中央高校応援プロジェクトがすすんでいます。
2021.11.04
大学院生の研究論文が国際誌「Physiotherapy Theory and Practic」に掲載されました~健康科学研究科
地域在住高齢者の円背姿勢と咳嗽力および呼吸機能の関係 誤嚥の直接的な防御機構は咳嗽(がいそう/せき)であるとされています。また、咳嗽力(せきの力)は加齢や呼吸機能、呼吸筋力と関連があることが報告されています。一方で高齢者の姿勢変化として代表的な円背姿勢は呼吸機能に影響を与えることが報告されていますが、咳嗽力との関係は明らかとなっていません。畿央大学大学院健康科学研究科博士後期課程の武田広道氏と田平一行教授らは、①非円背高齢者と比較して円背高齢者では咳嗽力が低下する。②円背の重症度と咳嗽力、呼吸機能は関連している。という二つの仮説を検証することを目的に本研究を行いました。 ※この研究成果は「Physiotherapy Theory and Practice」に掲載されています。 この研究では地域在住高齢者に対して円背指数(図1)、咳嗽力、呼吸機能、呼吸筋力の評価を行い、円背姿勢と咳嗽力および呼吸機能の関係について分析を行いました。その結果、非円背高齢者と比較して、円背高齢者では咳嗽力、肺活量、呼気筋力、吸気筋力、胸郭拡張差で有意に低い値となっていました。また、円背の重症度と咳嗽力、呼気筋力、吸気筋力、胸郭拡張差には有意な相関関係がありました。さらに年齢と性別の要因を調整した後では、咳嗽力には肺活量や胸郭拡張差が関連していることがわかりました。 図1 円背指数 円背指数は第7頸椎から第4腰椎までの弯曲に沿って自在曲線定規をあて、その弯曲を紙にトレースし、第7頸椎から第4腰椎までの距離(L)と弯曲の頂点からLまでの距離(H)を計測する。そして、H/L×100(%)の式に代入することで算出される。 本研究の知見は、円背高齢者では咳嗽力が低下しており、誤嚥性肺炎のリスクが高いことを示しています。また円背が重症化していくにつれて咳嗽力が低下することから、円背姿勢を予防することが誤嚥性肺炎のリスク要因を減らす可能性を示唆しています。今後は咳嗽力に関連している要因への介入効果について検証していきたいと考えています。 健康科学研究科 博士後期課程 武田広道 【論文情報】 Hiromichi Takeda, Yoshihiro Yamashina, Kazuyuki Tabira Relationship between kyphosis and cough strength and respiratory function of community-dwelling elderly Physiotherapy Theory and Practice, 2021.
2021.10.26
第28回日本物理療法学会で大学院生と卒業生が優秀賞・奨励賞を受賞!~健康科学研究科
2021年10月23日(土)・24(日)にオンラインにて開催された第28回日本物理療法学会学術大会で、本学理学療法学科卒業生の渡邉 梨佳さん(学研都市病院 理学療法士)が優秀賞、本学健康科学研究科修士課程の佐藤 雅浩さん(中洲八木病院 理学療法士)が奨励賞を受賞されました。共同研究者として本学健康科学研究科客員研究員の瀧口 述弘さん(学研都市病院 理学療法士)、徳田 光紀さん(平成記念病院 理学療法士)も名を連ねています。おめでとうございます! 優秀賞 渡邉 梨佳(学研都市病院 理学療法士)※畿央大学理学療法学科 卒業生 「変調正弦波運動経皮的電気刺激が健常人の実験的疼痛に与える影響について」 奨励賞 佐藤 雅浩(中洲八木病院 理学療法士)※畿央大学大学院 修士課程 「非術側高強度高周波TENS が大腿骨近位部骨折術後運動時痛に与える影響」 研究の詳細については抄録集(PDF)をご覧ください。 理学療法学科長 庄本教授コメント 渡邊さんは学生時代から優秀でしたが、職場の上司であり大学先輩でもある瀧口先生という良き指導者に恵まれ、臨床能力はもちろん、研究能力も成長させ、今後が益々楽しみです。 佐藤さんは、徳島県在住ですが、徳田先生、瀧口先生のICT利用も含めた指導も頂き、この1年で大変成長されました。お二人とも更なる目標をめざして努力して欲しいと思っています。
2021.10.22
理学療法特別講演会「2020東京五輪の活動報告」をアーカイブ配信します(在学生・卒業生限定)
11月末までの見逃し配信が決定! 理学療法学科卒業生のリカレント教育として、畿桜会(同窓会)主催で実施されている「理学療法特別講演会」。第14回となる今回のテーマは『2020東京五輪の活動報告~理学療法サービス部門としてのレガシー~』とし、TOKYO2020MEDスタッフとして参加した教員・卒業生3名を講師に招いて、2021年10月13日(水)19時30分よりオンライン開催されました。 都合が合わずに参加できなかったという声を受けて、講演会(約60分)のアーカイブ配信を行うことになりました。お申込みいただいた方(在学生・卒業生・修了生・教職員)にのみメールにて視聴用URLをお送りしますので、希望される方は下記からお申込みください。 ※視聴期間は11月末までです。 ※今後のイベント企画の参考とするため、視聴後にはアンケート回答をお願いいたします。 ※後半の座談会についてはアーカイブ配信の対象外となります。 ▶アーカイブ配信を申込む 【関連記事】 第14回理学療法特別講演会「2020東京五輪の活動報告」を開催しました。 10/13(水)第14回理学療法特別講演会「2020東京五輪の活動報告」を開催します。 東京五輪に理学療法士として本学教員・卒業生4名が参加します。
2021.10.22
第14回理学療法特別講演会「2020東京五輪の活動報告」を開催しました。
東京五輪に参加した教員・修了生による講演+座談会を開催 講演会の【見逃し配信】も決定! 理学療法学科卒業生のリカレント教育として、畿桜会(同窓会)主催で実施されている「理学療法特別講演会」。第14回となる今回のテーマは『2020東京五輪の活動報告~理学療法サービス部門としてのレガシー~』とし、TOKYO2020MEDスタッフとして参加した教員・卒業生3名を講師に招いて、2021年10月13日(水)19時30分よりオンライン開催されました。 全国的な緊急事態宣言も解除され、徐々に新型コロナウイルス感染者数が減少傾向にありましたが、まだまだ油断のできないコロナ禍であることから、今年はzoomを利用したオンライン開催となりました。例年は卒業生以外の医療関係者にもご参加いただいておりますが、今回は学部学科を問わず、畿央大学の在学生・卒業生・修了生・教職員に限定して募集し、約80名の方々に参加いただきました。 同じく東京五輪にスタッフとして参加し、今回は視聴者として参加した理学療法学科5期生の楠元 史さんに、ご自身の体験も交えながらレポートしていただきます! (左から)唄さん、楠元さん、加納さん、福本先生 ■講演会について 今回はまず、TOKYO2020オリンピック・パラリンピック大会に参加した理学療法学科准教授の福本貴彦先生に、スタッフ選定から実際の現場での活動の様子についてお話いただきました。 2013年9月、アルゼンチンのブエノスアイレスで開かれたIOC(国際オリンピック委員会)の総会にて、56年ぶりに日本にオリンピック・パラリンピックが開催されることが決まりました。その総会にて当時のジャック・ロゲ会長が「TOKYO」と書かれたカードを裏返す姿は、ニュースなどで多くの方々が目にした光景だと思います。 それからの日本は全世界を対象とした「お・も・て・な・し」の体制を整えてきました。しかし、2019年の1月から新型コロナウイルスが世界中で猛威をふるい、その影響は歴史上初のオリンピックパラリンピックの1年延期というところまで及んできました。 世界最大級の大会が日本にやってくるということで、NOC(日本オリンピック委員会)/NPC(日本パラリンピック委員会)から、日本理学療法士協会へ理学療法士派遣の依頼がきて、実際の募集が始まったのは、コロナによるパンデミックが始まる前の2018年でした。 日本理学療法士協会経由で畿央大学関係者から今大会に参加させていただいたのは、福本先生・唄先生・加納先生・楠元(私)の4人でした。その他にも、この大会には畿央大学の卒業生が多く参加したとうかがっています。 スタッフ選定には研修会の参加の有無や英語能力などを問われた書類選考があり、そこから面談形式の選考を経てスタッフとして確定するという長い道のりとなりました。その中で、一番動揺したのが、面談の中で2分間自己紹介を英語でするというものでした。実際の面談が始まった時に告げられた項目ですので、英語で、、、しかも、2分間も自分一人で話し続けなければならないと思うと、逃げ出したくなる気持ちでしたが、なんとかやりきるしかないと腹をくくり、やりきった結果がスタッフとして選ばれるという喜びでした。 2019年の12月にスタッフに選ばれたという嬉しいニュースの一方で、本当にオリンピックパラリンピックが開催されるのかという不安もあったのを覚えています。その不安は的中し、1年延期となった2021年になっても活動日程や活動場所の連絡は一向に来ず、大会組織委員会も大変な時期を過ごしていたことが垣間見えました。 そのような状態でしたが、なんとかオリンピックが2021年7月23日に、パラリンピックが8月22日に開会式を迎えることができました。福本先生はオリンピックパラリンピック両方で修善寺分村(トラックサイクリング選手村)・パラリンピックの河口湖分宿(ロードサイクリング選手村)、パラリンピックの富士スピードウェイ(ロードサイクリング会場)という3つの場所で活動され、唄先生はオリンピックパラリンピック期間のほとんどを東京晴海にある選手村本村(よくテレビに映っていた選手村)で、加納先生はオリンピックパラリンピック両方で伊豆ベロドローム(トラックサイクリング会場)・パラリンピックの富士スピードウェイ(ロードサイクリング会場)の2つの会場で活動されていました。私はパラリンピックの河口湖分宿と東京の本村で活動させていただきました。 ■座談会 その後、座談会として同じくオリパラに参加された客員研究員(理学療法学科卒業生・大学院修了生)の唄大輔先生と加納希和子先生に加わっていただき、事前に皆さんからいただいた質問に答える形式で、オリパラでの貴重な経験や素敵な出会い、それぞれの現場での活動の内容をお話しいただきました。司会は同じく卒業生・修了生で現在は大阪行岡医療大学医療学部理学療法学科で教員を務める山野宏章先生が担当。座談会にいる4名全員が福本ゼミということで、畿央大学らしい一体感の伝わる場になりました。 「選手村や会場ではどのようなことをしていましたか?」という質問が多く出ました。唄先生や加納先生も言及されていた通り、どこに問題があり、どうして欲しいのかということをしっかり聞き、物理療法や運動療法などを行い問題を解決していったり、スポーツの現場で遭遇するようなその場でのアクシデントに対応し、担架で運び出したり、手当てをしたりといった普段の臨床や普段のスポーツ現場での対応をそのまま行っていたという言葉がしっくりくると思います。 しかし、少し違っていたのが、そこには日本中から選出された理学療法士や世界の理学療法士またはドクターがいて、普段の臨床では使わない機器があって、アクシデントの大きさも生命に関わるようなものであった、ということでした。それはこのような大きな大会だからこそ体験できる・感じることができるものでした。 今大会に参加させていただいた中で、普段の臨床でみたことのないような疾患の方でも(特にパラリンピックにおいて)、その場にいる理学療法士が一丸となって意見を交わし、その選手に対して行える最善のリハビリを提供することや、世界の理学療法士と交流すること、世界的な大会に出場している選手でありながらも物理療法の機器やテーピング・リハビリといったものを一度も受けたことがないといった選手がいるということを経験し、現在の自分の理学療法士としての技量や未熟さに気がつくことができただけでなく、日本の理学療法士の立ち位置も確認することができたのではないかと思います。また、日本中から集められた理学療法士の精鋭と繋がれたこと、理学療法士だけでなく全世界の方に対して心からこの大会を楽しんでほしいという思いをもって参加していたスタッフに出会えたことなど、これらはすべて今後に繋がる大切なレガシー(財産・遺産)となっていくのではないかと感じています。 最後になりましたが、このような報告会の場を設けていただき、また、オリンピックパラリンピック参加あたり、参加の前から言語や実技研修会開催や広報の記事を掲載していただくなどサポートいただきました畿央大学や畿桜会、そして、学外におきましても所属病院はじめサポートいただきました皆様に感謝申し上げます。ありがとうございました。 理学療法学科5期生(2011年3月卒) 楠元 史 【アーカイブ(見逃し)配信開始のお知らせ】 都合が合わずに参加できなかったという声を受けて、講演会(約60分)のみアーカイブ配信を行うことになりました。お申込みいただいた方(在学生・卒業生・修了生・教職員)にのみ視聴用URLをお送りしますので、希望される方は下記からお申込みください。視聴期間は11月末までです。 ▶アーカイブ配信申込ページへ
2021.10.05
健康科学研究科の庄本康治教授と冬木正紀准教授の発明が特許を取得しました。
本学大学院健康科学研究科の庄本康治教授と冬木正紀准教授が発明したリハビリテーション用肩装具により、冬木学園が特許権を取得しました。この発明は本学が推進している次世代研究開発プロジェクトにおける萌芽的研究の成果であり、脳卒中片麻痺による肩関節下方亜脱臼に対するリハビリテーションの効果を高める発明です。 特許第6940549号「肩装具、肩装具を用いたリハビリテーション方法」 庄本教授と冬木准教授からのコメント 本発明では、脳卒中片麻痺により亜脱臼した肩関節を整復させる力が飛躍的に向上したリハビリ用肩装具を発明しました。 人間の腕は数kg、重い人では10kg程度の重さが有るため、脳卒中により半身が麻痺すると肩関節の亜脱臼が起きます。多くの場合、脳卒中後一定期間が過ぎると麻痺の程度が軽くなり、自分の筋肉の力で腕を動かすことが出来るようになります。しかし、数十%以上の人が肩関節の痛みを抱えたまま脳卒中片麻痺後の人生を送っています。 この肩の痛みは、脳卒中後に上腕の骨が正常に肩関節にはまっていないまま肩や腕の筋肉が固まってしまうため起こります。この痛みを防ぐためには、脳卒中後のリハビリ期間に麻痺した腕を持ち上げて上腕の骨が肩関節にはまるようにしておく(整復しておく)ことが重要です。しかしながら、従来のリハビリ装具では十分な力で腕を持ち上げることが出来ないため、正常に肩がはまっていない状態で関節が固まってしまい、痛みが残る方も多くいます。 従来のリハビリ装具では腕を持ち上げる力が弱い理由は、ベルトを用いて持ち上げているためです。そこで、人間の筋肉と同じくらい収縮し、はるかに収縮力の強い人工筋肉を導入したのが本発明です。 ▲脳卒中片麻痺を原因とする肩関節下方亜脱臼用のリハビリテーション装具 従来の引っ張りベルトの代わりに複数本の人工筋肉を用いることにより、麻痺している腕を持ち上げるための十分な力を得ることが出来ます。 ▲西大和リハビリテーション病院の患者様による、本発明の試作品の装着風景 現在は、西大和リハビリテーション病院にて本発明の試作品を試験して頂いています。同院の生野公貴リハビリテーション部技師長(本学健康科学研究科 客員研究員)、辻本直秀先生(本学理学療法学科卒業生)、中田佳佑先生(本学健康科学研究科修士課程修了)をはじめとするスタッフの方々の御協力のもと、脳卒中後のリハビリテーションにいらっしゃる患者の方々に試作品を装着して頂き、従来品との比較を行っています。患者の方々による使用感の向上、肩関節の安定による上肢運動スキルの向上、そして歩行の向上等が確認されています。今後は試験数を増やし、改善を重ねながら開発を続ける予定です。 また、本装具を装着した状態において肩周囲の筋肉に機能的電気刺激(FES)を加えることにより、リハビリテーションの質のさらなる向上も期待されます。この相乗効果も今後研究する予定です。 【関連記事】 冬木特任准教授の発明が新たに特許を取得しました~教育学習基盤センター 冬木特任准教授の発明が特許を取得しました。~教育学習基盤センター 教育学習基盤センター
2021.09.24
理学療法学科教員による「東京五輪」参加レポート!
2020東京オリンピック・パラリンピックの理学療法サービス部門で「TOKYO2020MEDスタッフ」として参加した理学療法学科の福本先生。「MEDスタッフについて」「スタッフ選定」「研修会」「選手村での活動」「レガシー」の5つの視点から、東京五輪や現地での経験を語っていただきました! 【お知らせ】 在学生・卒業生限定で「2020東京五輪の活動報告」をテーマにした理学療法特別講演会(Zoom)を開催します。もっとくわしく知りたい方は、ぜひお申込みください! 1.MEDスタッフについて オリンピック・パラリンピックは『世界最高峰』に位置づけられる、スポーツの総合競技大会です。それを支えるのは、ボランティアだけでなく、東京2020組織委員会の職員、選手団、警備や交通に関わる人たち、そして大会に携わる多くの企業の方々なども含めた多様な人の集まりです。(field cast noteより) スタッフは大会をサポートするField castと都市ボランティアであるCity cast、ホストタウンなど全国各地で支えるボランティアに細分されます。 MEDスタッフ(医療スタッフ)はField castに分類され、選手村診療所や大会会場の医務業務などを行います。 2.スタッフ選定 ここでは理学療法士のみの選定方法に言及します。 大会に参加するスタッフは各競技団体からの推薦による会場での活動を主に実施する場合と、日本理学療法士協会からの推薦による選手村での活動を主に実施する場合があります。 今回ブログで紹介された福本、唄、楠元、加納は日本理学療法士協会からの推薦で、安浦は競技団体からの推薦でした。 畿央生が見た東京五輪#1~安浦さん編 東京五輪に参加する理学療法士4人に聞きました!#4~福本先生編 東京五輪に参加する理学療法士4人に聞きました!#3~楠元さん編 東京五輪に参加する理学療法士4人に聞きました!#2~唄さん編 東京五輪に参加する理学療法士4人に聞きました!#1~加納さん編 多くの研修会の受講、資格、実務経験が5年以上などのハードルがあり、まずは自薦による応募を行います。その後、書類審査、面接(口頭語学面接含む)を経て日本理学療法士協会or各競技団体から大会組織委員会へ推薦という形になります。 ちなみに私は国際学会での発表業績などから英語スキル5段階のうち最高レベルで申請し、認められることになりましたが、試験官からは大会までに相当の練習をしておくように指示されました…(T_T) 3.研修会 推薦を受けるまでの必須研修として終日研修が合計で6日間、普通救命講習Ⅱ以上取得というハードル、マッチング(推薦を受ける)後も多くの研修が必要でした…が、その多くがコロナ禍によりweb講習という形に変更になりました。 しかし、44単位という膨大なweb講習がありました。詳しくは特別講演会でお伝えします。 4.選手村での活動 オリンピック期間は修善寺サイクリング村で3日間活動しました。 パラリンピック期間は修善寺サイクリング村で9日間、河口湖サイクリング村分宿で5日間、サイクリングロード競技会場である富士スピードウェイで2日間活動しました。 選手村にいる選手が世界のトップ選手であることは言うまでもありませんが、その選手をサポートする各国スタッフも素晴らしい方ばかりで圧倒されました。また、選手村に配置されているMEDスタッフも日本を代表するスタッフばかりで、いつもは教科書や学会でお目にかかっている方から、本拠地が海外という方も多くいらっしゃいました。 診療所では選手はもちろん、各国スタッフも治療に訪れ、多くの方を担当させていただきました。多くの気づきがありましたが、大きくは2点。 まず1点目は、参加国の医療水準の違いです。ある国はテーピングをしたことがない、理学療法を受けたことがないと。ある国では医師と理学療法士が来室され、検査機器・治療機器を貸してほしいと…検査データは即本国に転送し、治療プログラムが返ってくる。その治療データを選手村診療所のスタッフと意見交換し治療方針を決めていく…。違い過ぎました。オリンピック憲章にある平等は『医療サポート』という軸で考えるとまだまだだと痛感するとともに、そのためにこの選手村診療所があるのだということがわかり、初めて治療を受ける方にもしっかりと(かたことの)英語で説明し、世界水準かどうかはわかりませんが、手抜きなしの理学療法を提供することに努めました。 2点目は、選手村のMEDスタッフです。しんどい…やりたくない…というネガティブワードは全く耳にしませんでした。全員が選手の取り合いです。私がみたい!私にやらせて!この方法はどうだろう…その方法を教えて!などなどなどなど、全国から前述のハードルをパスした強者ぞろいですから、私できません…私やりません…なんて人は誰もいませんでした。 もちろん私も例に漏れず、自分の考えも伝えるとともに、多くの先生方から指導を受けました。 キラキラした選手とスタッフに囲まれて、夢のような時間を過ごすことができました。 オリ・パラロスという言葉があるやらないやら、多くのスタッフからこのロス症状について聞きました。燃え尽き症候群に少し似た症状が出るらしく、私もこの症状にいまだに悩まされており、ブログ原稿が遅れた言い訳といたしますm(__)m もちろん休憩時間もありました。 まじめにPC画面を見ているように見えますが実は…楠元さんと受付で智辯学園×智辯和歌山戦を観戦しています。 智辯学園の監督である小坂さんとは、国際親善事業で海外遠征をした時から10年以上のお付き合いをさせてもらっています。 小坂さんに選手村や競技会場にいる4名全員がそれぞれの場所で智辯戦を観ている写真を送りました。試合の翌日には『この悔しい気持ちを忘れずに今日(決勝翌日)から新チームは頑張っています。また、いいチームを作って日本一をめざして頑張ります!』って返ってきました。頼もしいですね。オリ・パラロスから回復したら高校野球のサポートも頑張りまーす! ▲選手村PC(写真:左)と富士スピードウェイモニター(写真:右) 富士スピードウェイモニタは左がダンロップカーブ(事故が多いところ)とホームストレート(右)の写真ですが、メインの真ん中が智辯戦に変わっています…もちろんレース時間外です(^_^) ▲オリンピック選手と私の太ももの大きさの違い 長さの違いではありません。太さの違いです。選手の右手にはなんと銅メダルが無造作に握られています!! 5.レガシー 今回のスタッフ育成で今後の地方大会、国内大会、国際メガ大会など多くの大会サポートに活かせるものが身につき、スタッフ間のパイプができました。また、問題点も多くあることがわかりました。 ・各競技団体とのパイプ ・スタッフ確保 ・スタッフ教育 ・中核施設の欠如 などです。こちらも詳しくは特別講演会でお伝えできればと思います。 日本理学療法士協会は理学療法士に必要な業務として臨床・教育・研究をあげています。これは職域に限らず、すべての理学療法士に必要な業務とされています。今回得たものを選手に現職者や学生に提供・還元し、問題点として挙がったものなどを研究していこうと思います。健常者と障がい者、性別、年齢など全く関係なく、世界中の方がスポーツによって健康と喜びを得られるよう、広陵町から奈良県から日本から世界へ発信していこうと思います。 以上、少々お堅い内容でお伝えしましたが、特別講演会ではざっくばらんにお伝えしようと思っています。 ▲治療中はこの治療着を来て、ゴーグル・手袋装着で実施します。 ▲河口湖分宿の治療物品の一部の写真です。 修善寺分村はこの倍以上、晴海本村は5倍以上でしょうか…(見た印象で実際の物品量は知りません) ▲スタッフと練習中 ▲出勤途中のバスから撮影 公道で練習中の選手にバスが追い付けない…推定時速40km以上… ▲富士スピードウェイの救急車 モータースポーツ好きの私としては、活動時間外はずっとスピードウェイの設備や備品に感動していました。 ▲富士スピードウェイのメディカルセンターガレージを開ける私。 この奥に処置室や手術室があります。 ガレージを開けるだけでも感動して写真に収めてもらいました。ただガレージを開けるだけの動画も撮りましたので見たい方はご連絡ください。私がただガレージを開けるだけの動画です(^_^) 理学療法学科 准教授 福本貴彦 【関連記事】 畿央生が見た東京五輪#1~安浦さん編 東京五輪に参加する理学療法士4人に聞きました!#4~福本先生編 東京五輪に参加する理学療法士4人に聞きました!#3~楠元さん編 東京五輪に参加する理学療法士4人に聞きました!#2~唄さん編 東京五輪に参加する理学療法士4人に聞きました!#1~加納さん編 東京五輪に理学療法士として本学教員・卒業生4名が参加します。
2021.09.24
腰痛を持つ就労者における体幹運動障害は過去の痛み経験に由来する恐怖心が原因~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
腰痛を有する就労者は、作業動作中に体幹の可動域が狭くなることや、体幹の運動スピードが緩慢となることが明らかとされています。しかしながら、このような体幹の運動異常が、痛みやそれに関連する心理的要因などによって引き起こされているのかは明らかとされていませんでした。畿央大学大学院 博士後期課程 藤井 廉 氏 と 森岡 周 教授らは、腰痛を有する就労者を対象に作業動作中の運動異常と痛み関連因子の評価を行い、重量物を持ち上げる際の体幹の運動速度の低下は、動作中に生じる腰部痛が原因ではなく、過去に生じた痛みの経験によって引き起こされる運動への恐怖心が影響していることを明らかにしました。この研究成果は、PLOS ONE誌(Kinematic analysis of movement impaired by generalization of fear of movement-related pain in workers with low back pain)に掲載されています。 研究概要 腰痛を有する就労者は、重量物を持ち上げる動作などの作業において、体幹の可動域が狭くなることや、体幹の運動速度が低下するなどの特徴を有することが報告されています。この運動範囲の狭小化や運動の緩慢さは、「痛みを回避するための過剰な保護行動」と捉えられており、痛みが慢性化するに至る要因と考えられています。このような腰痛による体幹の運動障害には痛みに対する恐怖心や破局的思考など、様々な痛み関連因子が関与していると考えられていますが、これらの要因がどのように影響しているのかは明らかとされていませんでした。畿央大学大学院 博士後期課程 藤井 廉 氏、森岡 周 教授らの研究チームは、三次元動作解析装置を用いて重量物を持ち上げる際の体幹運動の分析と痛み関連因子の評価を行い、媒介分析を用いて運動と痛み関連因子の詳細な関係性を分析しました。その結果、腰痛によって重量物を持ち上げる際に体幹運動速度が緩慢となり、その緩慢さには動作中に腰部に生じる痛みでなく、過去の痛み経験によって引き起こされる運動への恐怖心が影響していることを明らかにしました。 本研究のポイント ■ 腰痛を有する就労者を対象に、重量物を持ち上げる際の体幹の運動障害と痛み関連因子の関係を詳細に分析した。 ■ 腰痛によって、重量物を把持して持ち上げる際の体幹伸展方向への運動速度が緩慢となっていた。 ■ 体幹の運動速度の低下には、動作中に生じる痛みではなく、過去の痛み経験によって引き起こされる運動恐怖が関与していることを示した。 研究内容 本研究は、腰痛のない就労者と腰痛のある就労者を対象にしました。三次元動作解析装置を用いて、床に置かれた重量物を持ち上げる動作を遂行している際の体幹運動を定量的に計測しました。身体各部位に貼付したマーカーの位置情報から、体幹の最大屈曲角速度と伸展角速度を算出しました(図1)。あわせて、「運動恐怖」、「破局的思考」、「不安」などの痛み関連因子の評価について質問紙を用いて行いました。 図1.体幹の運動学的分析方法 「重量物を取りにいく場面」に最大となる体幹屈曲角速度と「重量物を把持して持ち上げる場面」に最大となる体幹伸展角速度を算出した。 分析の結果、「重量物を取りにいく場面」の体幹屈曲角速度は両群で有意な差はありませんでしたが、「重量物を把持して持ち上げる場面」の体幹伸展角速度が腰痛群で低値を示しました。つまり、動作課題中に痛みを訴えた者は1名も存在しなかったにも関わらず、体幹の伸展運動が緩慢となっていたということです。 また、この体幹の伸展方向への緩慢さに影響する痛み関連因子を明らかにするために、媒介分析を用いた変数同士の関係性を分析しました。その結果、過去の痛み経験と体幹伸展角速度を媒介する因子として、「運動恐怖」が抽出されました(図2)。つまり、体幹の運動障害は、動作中に生じる痛みの強さによって影響されるのではなく、過去の痛み経験によって引き起こされる運動恐怖が原因であることが示唆されました。 図2.媒介分析の結果 過去4週間のうちに経験した痛みの強度と体幹伸展角速度は、運動恐怖によって媒介されることを示す(完全媒介モデル) 本研究の臨床的意義および今後の展開 就労者に生じる腰痛は、労働障害や労働生産性に悪影響を及ぼすため、その予防は喫緊の課題と位置付けられています。作業動作中に痛みがないにも関わらず、運動恐怖によって体幹の運動障害が出現している場合、いずれ腰痛の再発や遷延化を予兆するサインかもしれません。今後は、運動恐怖を減ずる介入によって運動障害が改善するかどうかを検証する予定です。 論文情報 Ren Fujii, Ryota Imai, Shinichiro Tanaka, Shu Morioka Kinematic analysis of movement impaired by generalization of fear of movement-related pain in workers with low back pain. PLOS ONE 2021 問い合わせ先 畿央大学大学院健康科学研究科 藤井 廉(フジイ レン) 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 森岡 周(モリオカ シュウ) E-mail: s.morioka@kio.ac.jp Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600
2021.09.15
変形性膝関節症の患者さんは自らの病状とどのように向き合っているのか?~理学療法学科教員
研究成果が、筋骨格系の疾患や障害に関する国際学術誌に掲載されました! ~保存的治療中の日本人変形性膝関節症患者の認識・考え・欲求~ 日本人の変形性膝関節症(膝OA)の患者さんは自分自身の病状をどのように捉え、どのように向き合っているのか?という疑問に対して、質的研究という手法を用いて調査した研究成果が、筋骨格系の疾患や障害に関する国際学術誌「BMC Musculoskeletal Disorders」に掲載されました。 論文のタイトルは「Perceptions, beliefs, and needs of Japanese people with knee osteoarthritis during conservative care: a qualitative study」(保存的治療中の日本人変形性膝関節症患者の認識・考え・欲求:質的研究)です。この研究は本学非常勤講師の香芝旭ヶ丘病院整形外科 藤井唯誌医師、奈良学園大学 池田耕二教授と瓜谷ゼミの学部生と共に行いました。 一般的になじみのある研究は主に「量的研究」と呼ばれるもので、数値化されたデータを収集し、その平均を求めたり、数値を比較したりすることで対象とする事象を明らかにしています。一方今回の研究は、膝OA患者さん一人一人に実施したインタビューデータを一言一句文字に起こし、患者さんの言動の内容を「質的研究」という手法によって分析しました。 ▲分析中のデータ その結果、インタビュー参加者の方々は、「膝OAになった原因の自己分析」をし、「膝の症状による日常生活での動きや動作に様々な困難」を経験しながら、徐々に活動に対して慎重になったり、他人に迷惑をかけたくないという思いを強めたりしながら、徐々に「心理的なバリア」を形成しておられました。一方でそのような状況に自分自身で対処するために、「痛みや動きにくさに対して自分なりの工夫」もしておられました。そのための情報として理学療法士など「医療専門者からの科学的根拠に基づいた情報」を求めている反面、現実は「メディアからの情報や口コミ」などに頼っていることが分かりました。また、心身の負担を軽減するために「同じような境遇の他者との繋がり」を求めていることも分かりました。 今回の研究成果を基に日々の臨床での患者さんとの関わり方や、今後の患者さんの教育や自己管理の手助けになるような手段を掘り下げて考えていきたいと思います。 Uritani D, Ikeda A, Shironoki T, Matsubata K, Mutsura Y, Fujii T, Ikeda K. Perceptions, beliefs, and needs of Japanese people with knee osteoarthritis during conservative care: a qualitative study. BMC Musculoskeletal Disorders volume 22. 754. 2021. (無料で閲覧、ダウンロードが可能です) 健康科学研究科准教授 健康科学部理学療法学科准教授 瓜谷 大輔 【関連記事】 患者教育プログラムは変形性膝関節症患者さんの自己効力感の向上に有効か?~理学療法学科教員 「変形性膝関節症」に関する共同研究が論文として公表されました!~理学療法学科教員 変形性膝関節症に関する研究の途中経過が学会誌に掲載されました~理学療法学科教員 理学療法学科卒業生の卒業研究が国際学術雑誌に掲載!~理学療法学科 「足趾握力」に関する論文が国際誌に掲載!~理学療法学科教員
2021.09.13
第15回パーキンソン病・運動障害疾患コングレスで優秀演題賞を受賞!~理学療法学科教員
2021年7月1日(木)~3日(土)に開催された第15回パーキンソン病運動障害疾患コングレスで、理学療法学科の岡田洋平准教授が優秀演題賞 臨床部門(シニア)を受賞しました!岡田先生からレポートが届きました。 この学会は、パーキンソン病や運動障害疾患に関する国内の中心的な学会です。第15回は「根治への道標:見えてきた克服への道」という非常に力強いテーマで、対面とオンラインのハイブリッドで開催されました。様々な講演やプログラムは、疾患の原因、進行抑制に迫る非常に最新のトピックスから諸疾患やその診療に関する教育的な内容、数多くの演題発表と、非常に充実したものでした。 私は、「パーキンソン病の運動症状およびレボドパ換算量に対する長期理学療法の効果~メタアナリシス~」という演題で発表し、優秀演題賞 臨床部門(シニア)を受賞いたしました。今回の研究は、私がパーキンソン病の診療に関わり始めたころから長年取り組みたいと考えていたものです。内容は、パーキンソン病患者さんに6か月以上の理学療法を長期間実施することにより、運動症状を改善し、抗パーキンソン病薬の内服量を減少する効果があることに関するエビデンスを示したものです。今回の研究は、日本全国の研究者の先生方と共同で、研究の計画段階から実施まで先生方と話し合いを重ねながら実施しました。先生方と一緒にすることでやり遂げられた研究ですので、共同研究者の先生方には本当に感謝しております。今回の発表の内容は、先日Journal of Parkinson’s Diseaseから出版された論文のメタアナリシスまでの内容です。 パーキンソン病の発症を予防することとともに、発症した方のお身体の状態をいかに良い状態に保っていただくかも非常に重要なことだと考えております。私は理学療法士ですので、リハビリテーションの立場からできることを、他職種の方々と連携、共同しながら模索し、進めることができればと思います。今回の学会は、神経内科の先生方だけでなく、リハビリテーション専門職種、看護師、研究者(臨床、基礎)も参加されています。パーキンソン病・運動障害に関する最新の情報を得て、様々な人とつながることを通して新たなことが創発されうる場だと思います。学会長が、ご挨拶の中で「大事なことは会議室の外で決まる」と述べられた一言がとても印象的でした。COVID-19の影響は続いておりますが、気兼ねなく対面で話し合える日を楽しみにしつつ、今できることに精進したいと思います。 理学療法学科 准教授 岡田洋平 【関連記事】 パーキンソン病患者における長期間の理学療法の有効性-システマティックレビュー&メタアナリシス すくみ足があるパーキンソン病患者における歩行中の前方不安定性


