2020年の健康科学専攻(修士課程)の新着情報一覧
2020.02.26
子どものメディア視聴は知覚バイアスと微細運動機能に悪影響を与えるわけではない~ニューロリハビリテーション研究センター
TV、DVD、インターネット、ゲームなどのメディア視聴は、子どもたちの認知発達(注意、言語、記憶、学習、実行機能)や運動発達に良い影響と悪い影響を与えることが知られています。畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターの信迫悟志 准教授らは、中井昭夫 教授(武庫川女子大学)、前田貴記 講師(慶應義塾大学)らと共同で、メディア視聴が子どもにおける知覚バイアスと微細運動機能に与える影響を調査しました。この研究成果は、Brain Sciences誌(Manual dexterity is not related to media viewing but is related to perceptual bias in school-age children)に掲載されています。 研究概要 メディア視聴は、子どもにおいて、肥満や睡眠障害など健康状態の悪化を引き起こすだけでなく、注意力の低下、言語発達の遅れなど認知機能にも悪影響があることが知られています。一方で、メディア視聴であっても、子供の年齢、親の養育態度、メディア・デバイス/コンテンツの種類、親との共同視聴などの要因によっては、認知機能や運動機能に良い影響をもたらすことも明らかになっています。しかしながら、メディア視聴が子どもの知覚バイアスや微細運動機能に与える影響は不明でした。畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターの信迫悟志 准教授らの研究チームは、学童期の子どもにおけるメディア視聴時間、メディア嗜好度、知覚バイアス、微細運動機能との関係を調査しました。その結果、年齢の増加に伴いメディア視聴時間が増加し、メディア視聴時間が増加するほどメディア嗜好度が増加することが確認されましたが、メディア視聴時間/メディア嗜好度は知覚バイアスや微細運動機能とは関連していないことが明らかにされました。一方で、知覚バイアスと微細運動機能との間には重要な関係性があることが示されました。※ ちなみに、ここでいう“知覚バイアス”とは、「身体からの情報(体性感覚)と目からの情報(視覚)のどちらを偏って知覚しやすいか?」についての指標です。 本研究のポイント ■ 学童期の子どもにおいて、メディア視聴は知覚バイアスや微細運動機能とは関連していない。 ■学童期の子どもにおいて、触覚情報と視覚情報がほぼ同時に提示されるときに、視覚情報を優先してしまう特性 (視覚バイアス)は、微細運動機能の低下と関連しているが、それとメディア視聴時間などは関係なかった。 研究内容 6~12歳の学童期の定型発達児100名を対象に、メディア視聴時間、メディア嗜好度、知覚バイアス、微細運動機能を測定しました。メディア視聴時間は、1日あたりの平均視聴時間を抽出し、メディア嗜好度は“とても好き”から“とても嫌い”までの7件法で抽出されました。知覚バイアスは「視覚-触覚時間順序判断課題*(下図左)」用いて測定されました。この課題では、様々な時間間隔で視覚刺激(緑色LEDの点滅)と触覚刺激(振動)が呈示され、子どもたちは視覚と触覚のどちらの刺激が早く(先に)呈示されたのかを回答します。例えば、実際には触覚刺激が先に呈示されたのに、「視覚刺激の方が早かった」と回答すれば、それは視覚バイアスが強いというように、視覚と触覚のどちらに偏り(バイアス)があるかを定量的に表す課題です。微細運動機能は、国際標準評価バッテリー(M-ABC-2)の手先の器用さテストが使用されました。 *Keio Method: Maeda T. Method and device for diagnosing schizophrenia. International Application No.PCT/JP2016/087182. Japanese Patent No.6560765, 2019. 左図:視覚-触覚時間順序判断課題 右図:知覚バイアスと微細運動機能との相関関係 結果として、年齢の増加とメディア視聴時間の増加、メディア視聴時間の増加とメディア嗜好度の増加には、相関関係がありました。しかしながら、メディア視聴時間/メディア嗜好度と知覚バイアス/微細運動機能との間には相関関係は認められませんでした。一方で、相関分析と階層的重回帰分析の結果、視覚への偏り(視覚バイアス)が強くなるほど、微細運動機能が低下するという関係性が認められ、微細運動機能が比較的低い子どもでは、視覚バイアスが強いことが示されました(図右)。 本研究の意義および今後の展開 一般的にも、メディア視聴は、子どもの発達に悪影響を与えると考えられており、実際に肥満、睡眠障害、摂食障害などの健康への影響をはじめ、様々な認知機能・運動機能への負の影響が示されています。しかしながら、本研究では、メディア視聴が子どもの知覚バイアスや微細運動機能に与える悪影響は認められませんでした。興味深いことに、本研究では、メディア嗜好度の7件法において、メディアについて少しでも嫌いと答えた児は皆無であり、子どもにおけるメディア嗜好の高さが窺えました。近年では、アクティブビデオゲームを用いた介入が、脳性麻痺や発達性協調運動障害といった運動障害に効果的であることも報告されています。これらのことは、メディア自体ではなく、メディアの使い方が重要であることを示唆しており、どのような要因が交絡因子となるのかについての更なる研究が求められます。 本研究では、視覚バイアスの増加が微細運動機能の低下と関連していることが示されました。しかしながら、図右の散布図を見ても分かるように、決して触覚バイアスの増加が微細運動機能の向上につながるわけではなく、知覚バイアスがどちらにも偏っていないことが、微細運動機能の向上につながる可能性が示唆されました。 論文情報 Nobusako S, Tsujimoto T, Sakai A, Shuto T, Furukawa E, Osumi M, Nakai A, Maeda T, Morioka S. Manual Dexterity is not Related to Media Viewing but is Related to Perceptual Bias in School-Age Children. Brain Sci. 2020, 10(2), 100. 問い合わせ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター准教授 信迫悟志Tel: 0745-54-1601Fax: 0745-54-1600E-mail: s.nobusako@kio.ac.jp
2020.01.16
令和元年度 神経リハビリテーション研究大会を開催!~健康科学研究科(森岡研究室)
令和2年1月13・14日(月・火)に信貴山観光ホテルにて、神経リハビリテーション研究大会が開催されました。この研究大会は、毎年恒例の合宿形式となっており、今年で14年目を迎えました。 本年度は、ニューロリハビリテーション研究センターの教員と大学院博士課程・修士課程メンバー総勢25名が参加しました。また、大学院修了生の佐藤剛介さん(3期生)と脇田正徳さん(3期生)をお招きし、それぞれ現在進めている研究について紹介して頂きました。 森岡教授の開会の挨拶から始まり、修士課程2年の最終審査に向けた予演会と博士課程3年の研究進捗状況の報告、および上記修了生の研究紹介が行われ、様々な視点から質疑応答や意見交換が繰り広げられました。 修士課程2年の発表では、内容に関する質問はもちろん、スライド構成やプレゼンテーション時の目線の使い方といった自分の考えを伝えやすくするためのアドバイスが活発にされていました。博士課程3年の発表では、細かな研究手続きを行いながら、大量のデータを丁寧に解析されていて、研究の質や精度を上げるための相当な努力を感じました。また、修了生の方は、大学院で学んだことを臨床現場で活かしながら継続して研究に取り組まれていて、自分の今後目指していくべき姿を見させていただき、身が引き締まる思いでした。 夕方には、3グループに分かれて、修士課程1年の研究計画に対するディスカッションが行われました。各グループのメンバーが、朝からの発表・聴講での疲労感を見せることなく、研究計画に対して時間が超過するのを忘れて議論している光景が印象的でした。 1日目終了後の夕食時、入浴時、懇親会においても、それぞれが白熱した議論を継続し、2日目の帰りのバスや畿央大学に戻り解散してからも、研究室で議論が続いている状態でした。 森岡教授からは、修了生の方の研究に取り組む態度に習い、継続的な取り組みを行っていくことの重要性が説明されました。 現状では、博士課程・修了生の方々の研究を深く理解し、意見を述べることは困難でしたが、大学院在学中に知識を深めながら、教えてもらう一方ではなく、共にディスカッションできるように成長していきたいと思いました。 最後になりましたが、このような機会を与えてくださった森岡教授をはじめとする研究センターの皆様、神経リハビリテーション研究大会の開催にご尽力頂きました関係者の方々に深く感謝を申し上げます。 畿央大学大学院 健康科学研究科 修士課程1年 乾康浩 【関連サイト】 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 【関連記事】 ●「平成30年度 畿央大学神経リハビリテーション研究大会」 ●「平成29年度 畿央大学神経リハビリテーション研究大会」 ●「平成28年度 畿央大学神経リハビリテーション研究大会」 ●「平成27年度 畿央大学神経リハビリテーション研究大会」 ●「平成26年度 畿央大学神経リハビリテーション研究大会」 ●「平成25年度 畿央大学神経リハビリテーション研究大会」 ●「平成24年度 畿央大学神経リハビリテーション研究大会」 ●「平成23年度 畿央大学神経リハビリテーション研究大会」 ●「平成21年度 畿央大学神経リハビリテーション研究大会」 ●「平成20年度 畿央大学神経リハビリテーション研究大会」
2020.01.06
同窓会(兼ラボ学会)レポート!~理学療法学科 瓜谷ゼミ
畿桜会(畿央大学・畿央大学短期大学部・桜井女子短期大学同窓会)では、卒業後の同窓生のつながりを活性化することを目的に、一定数以上集まる同窓会の開催を補助しています。 ▶同窓会開催にかかわる補助について(大学ホームページ) 今回は、理学療法学科を卒業した瓜谷先生のゼミ生による同窓会兼ラボ勉強会のレポートをお届けします! 2019年12月22日(日)に毎年恒例になっている、瓜谷ゼミ同窓会兼ラボ学会を開催しました。今回は卒業生であり、現在、関西福祉科学大学で教員をされている幸田先生のゼミ学生と合同ラボ学会でした。幸田ゼミの学生7名、畿央大学の学部生7名、卒業生10名、瓜谷先生の総勢25名での開催でした。 ラボ学会では学部生から卒業研究発表、幸田先生から肩関節の理学療法、7期生の北田元気さんからホンジュラスでの青年海外協力隊での活動報告をお話していただきました。 4回生からは11月に実施した卒業研究の発表をしてもらい、毎年卒業研究の質が高くなっているな、と感心させられました。3回生からは今後の卒業研究の研究計画を発表してもらいました。大変なことも多いと思いますが、研究を通して貴重な経験ができると思うので今後も頑張ってほしいです。 幸田先生からは肩関節の理学療法についてお話していただきました。学部生にもわかりやすくお話していただき、自分の体を動かしながら勉強することができました。 北田元気さんからは2年間のホンジュラスでの青年海外協力隊での活動報告をしていただきました。身近に青年海外協力隊で活動された方はきおなかなかいないため、とても貴重なお話を聞くことができました。 ラボ学会の後は忘年会を兼ねた飲み会を行いました。年代関係なく交流することができ、貴重な会となりました。今後も縦・横のつながりを大切にしていきたいと実感できました。 理学療法学科12期生(2018年3月卒業) 野澤千紘