2020年の理学療法学科の新着情報一覧
2020.10.23
教員紹介「信迫先生」編~新入生応援!やさしさを「チカラ」に変えるプロジェクトvol.58
1回生の皆さんを応援する”新入生応援!やさしさを「チカラ」に変える”プロジェクト”。後期からは1回生クラス担任以外の先生方もご紹介します。今回は健康科学研究科・ニューロリハビリテーション研究センターの信迫先生です! 【1】氏名および研究分野・担当科目 信迫 悟志(のぶさこ さとし) ニューロリハビリテーション研究センター准教授 僕が今最も取り組んでいる研究分野は「発達障害のハビリテーション」です。 「ハビリテーション(habilitation)」には、「適応する」という意味があります。通常はそれに「Re(再び)」を加えて、「リハビリテーション(Rehabilitation)再び適応する」と言いますが、発達障害など先天性や幼少時の障害からの発達を促す取り組みはハビリテーションと言います。発達障害など「障害」という言葉は、個人に診断されるものですので、もちろん「障害」は個人が持つものと捉えられますが、本当は「障害」は個人の中にあるわけではなくて、個人と社会(人や物、環境)が相互作用する接点に、結果的に生じてくるものです。その証拠に、例えば欧米の特別支援教育の対象児には、障害を持つ子どもだけでなく、超能力のような特殊な能力を有する子どもたちも含みます。 例えば、通常は人の手腕は2本ありますが、もし3本ある人がいたらどうでしょうか。手腕が3本あれば、日常生活をより豊かに過ごせるかもしれません。しかしながら、2本しかない方から見れば、それは卑怯だということになるのではないでしょうか。結局、圧倒的大多数(2本)の中では、特殊能力(3本)も障害となるわけです。なので、「障害」というより、「個性(特性)」と捉える方が適切なのかもしれません。 そうした個性(特性)を持つ子どもたちの発達を促すハビリテーションとは何か、そしてどのような取り組みが、個性(特性)を持つ子どもたちと社会(人や物、環境)との間の関係を良好にしていけるのかを研究しています。 サークル【子どもの発達と教育を考える研究会(DS&E)】の顧問をさせてもらい、畿央大学の学園祭【畿央祭】では、子どもたちを対象にしたイベントも実施していますので、子どもに興味がある・子どもが好きという方は、是非お声がけください!! 【2】モットーや好きな言葉、大切にしていること 座右の銘「人事を尽くして天命を待つ」 基本的に成功しなくても良いと思っています(笑)人の人生に「完成」なんてないので、その時々を自分の持てる力を精一杯出して走り抜けようと思っています。 【3】趣味・特技など ベタですが、映画です。といっても今は、全く観れてませんが、中高生時代は年間300本以上の洋画を鑑賞し、1コマ試写すれば、誰が撮った映画か分かるぐらいマニアックでした。なので、小中高時代の将来の夢は映画監督でした。要するに中高生時代は勉強していなかったわけですが、おかげで外国の方の名前を覚えるのは今でも得意です。恐らく日本の方の名前より多い外国の方の名前を憶えています。英会話はできませんが…。 それから映画は先端技術の結晶でもあるので、今こうして研究する時のアイデアにも生かされているのかもしれません。昔は洋画と邦画・アジア映画では規模が違い過ぎましたが、今は素晴らしい邦画やアニメ作品がたくさん作られていますね。時間ができたら、また映画の旅に出たいと思っています。映画好きという方がおられましたら、一緒に映画談義しましょう!! 【4】先生から見た畿央大学(または所属学科)や畿央生の印象は? 僕自身は、大学院は畿央大学でお世話になりましたが、専門学校出身で大学生活(キャンパスライフ)というのを送ったことがありません。なので完全に印象でしかありませんが、先生方も職員の方々も、とても情熱的でフレンドリーだと思います。学生の方々も明らかに勉強熱心だと思います。毎年、国家試験や卒業試験のシーズンになると、ニューロリハビリテーション研究センター内でも、連日朝早くから夜遅くまで、机に向かって頑張る学生達の姿を沢山見ます。上に書いたように、僕は勉強より映画だったので、畿央生のその姿に本当に感心しています。でも、くれぐれも無理のないように。 【5】1回生(畿央生)にメッセージを! 僕が障害を持つ子どもたちに関わる時に、最も大事にしているのが、「好き」という心です。つまり、その子の興味・関心ですね。先程、僕が外国の方の名前を覚えるのが得意と言いましたが、それは努力して勉強したからではありません。単純に映画が大好きだったからです。そのように「好き」という心は、険しい人生を歩む上での大きな原動力になります。なので、皆さんには、何でも良いので、自分の心で沸き起こった「好き」という感情を大切にしてもらえればと思います。 今、僕たちは歴史上稀にみる危機的状況に遭遇しています。学校へ行って、勉強するのは常識。カラオケ行って皆ではしゃぐのも常識。人と人が交流するのは常識。この普段の生活の当たり前だと思っていたことが、当たり前ではなくなり、人と人とが直接交流しないのが常識となりました。これは一見、負のパラダイム・シフトのように見えますが、実はそんなことはありません。人類は危機的状況に遭遇するたびに、それを乗り越え、未来を創造し、切り開いてきました。そして、その正のパラダイム・シフトを展開できる力を持っているのが皆さんのような若い世代です。どういう方向であれ、これからの時代を作っていくのは、僕のような中年層でも今の経済を支えている中高年層でもなく、皆さんです。メディアなどでは若い世代の行動が揶揄・批判されることが多いですが、皆さんならきっと正のパラダイム・シフトを創造し実行できると信じています。皆さんの未来が明るいことを心から願っています!! 教員実績
2020.10.23
教員紹介「大住先生」編~新入生応援!やさしさを「チカラ」に変えるプロジェクトvol.57
1回生の皆さんを応援する”新入生応援!やさしさを「チカラ」に変える”プロジェクト”。後期からは1回生クラス担任以外の先生方もご紹介します。今回は健康科学研究科・ニューロリハビリテーション研究センターの大住先生です! 【1】氏名および研究分野・担当科目 大住 倫弘(おおすみ みちひろ) ニューロリハビリテーション研究センター准教授 担当科目:学部では看護医療学科1年次配当「脳科学入門」・教育学部3年次配当「発達脳科学」を担当 研究分野は「幻肢痛のリハビリテーション」です。「それなんなん?」ってなると思いますので、簡単に説明すると、事故などで手が切断された後でも “まだ手が残っている感覚があって、その幻の手が痛い” ことがありまして、その幻の痛みを緩和させるためのリハビリテーションを研究しています。目には見えない幻の手を扱っているので、研究として色んな難しさはありますが、それを見える化して、リハビリテーションをしていく研究にとってもやりがいを感じています! そんな研究をしている中で、『身体の不思議さ』に夢中になってしまい、今では身体の錯覚を研究もしています。そして、その錯覚を “経験” した後に、そのヒトが身体をどのように感じるのかについて深く掘り下げようとしています。例えばですね、写真のような傷ついたオモチャの手(偽物ですよ!)をつかって、「(この傷ついた手は)自分の手だ」という錯覚を経験させると、本当に自分の手が痛みだすような面白い現象があります。他にも、写真のような色んな手(偽物ですよ!)で錯覚研究をしていますので、ご興味ある方は是非お声掛け下さい。 ▲ P棟1Fニューロリハビリテーションにて撮影 【2】モットーや好きな言葉、大切にしていること ひとを育てるのは「人、本、旅」 最近、ライフネット生命創業者の出口治明さんの本を読んで、「まさに!」と思った言葉です。もともと、本は好きなほうですが、自分には圧倒的に人・旅が足りていないので、コロナ禍が落ち着けば、色んなところへ出かけて、色んな人と交流したいと思います。 【3】趣味・特技など おいしいコーヒーを淹れるために日々研究を重ねています(温度・蒸らす時間・お湯を注ぐ速度 etc…)最近は、写真のようなモノを買って、それに頼るようになってしまいましたが・・・自分好みの味で淹れることができるようになってきました。 ▲行きつけのコーヒー屋さんで撮影。ここではコーヒーの知識がたくさん得られます。 【4】先生から見た畿央大学(または所属学科)や畿央生の印象は? 実は、僕自身が理学療法学科の3期生なのですが、面白い教員とフレンドリーな職員が多いところは、当時から全く変わらないと思いますし、何と言っても、学生に手厚く多くの時間を割いてくれるというのは他の大学にはないトコと思います。逆に、たくさん勉強をしないといけないかも・・・いずれにしても、多くのことを学べる環境であることは間違いないです! 【5】1回生(畿央生)にメッセージを! 僕が畿央大学へ入学した時には、「え!?大学生ってこんなに勉強しなアカンの!!?? え!?またレポート課題を出すの!?」って率直に思いました。でも、その手厚い教育のおかげで今の自分があると思っていますので、卒業後の自分を想像しながら、コツコツ頑張って下さい!! このような状況なので、まだまだ畿央大学を体感しきれていないとは思いますが、たくさんの友人をつくって、たまには羽目を外して、息抜きしながら、厳しい学びを乗り越えていきましょう! 教員実績
2020.10.22
発達性協調運動障害を有する児の改変された運動主体感~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
予測された感覚フィードバックが実際の感覚フィードバックと時間的に一致する時、その行動は自己によって引き起こされたと経験されます。このように私が自分の行動のイニシエーターでありコントローラーであるという経験のことを運動主体感と呼びます。運動主体感は、ヒトの意欲的な行動に強く関連する重要な経験であり、この経験の重要性は、多くの神経障害・精神障害(脳卒中後病態失認、統合失調症、不安障害、抑うつ、脳性麻痺、自閉症スペクトラム障害)で強調されています。しかしながら、発達性協調運動障害(Developmental Coordination Disorder: DCD)を有する児における運動主体感については、明かになっていませんでした。畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターの信迫悟志 准教授らは、中井昭夫 教授(武庫川女子大学)、前田貴記 講師(慶應義塾大学)らと共同で、DCDを有する児の運動主体感について調べる初めての研究を実施しました。 この研究成果は、Research in Developmental Disabilities誌(Altered sense of agency in children with developmental coordination disorder)に掲載されています。 研究概要 DCDとは、協調運動技能の獲得や遂行に著しい低下がみられる神経発達障害の一類型であり、その症状は、字が綺麗に書けない、靴紐が結べないといった微細運動困難から、歩行中に物や人にぶつかる、縄跳びができない、自転車に乗れないといった粗大運動困難、片脚立ちができない、平均台の上を歩けないといったバランス障害まで多岐に渡ります。DCDの頻度は学童期小児の5-6%と非常に多く、自閉症スペクトラム障害、注意欠陥多動性障害、学習障害などの他の発達障害とも頻繁に併存することが報告されています。またDCDと診断された児の50-70%が青年期・成人期にも協調運動困難が残存し、頻繁に精神心理的症状(抑うつ症状、不安障害)に発展することも明らかになっています。 DCDのメカニズムとしては、運動学習や運動制御において重要な脳の内部モデルに障害があるのではないかとする内部モデル障害説が有力視されており、それを裏付ける多くの研究報告があります。一方で、内部モデルは「その行動を引き起こしたのは自分だ」という運動主体感の生成に関与していることが分かっています。すなわち内部モデルにおいて、自分の「行動の結果の予測」と「実際の結果」との間の時間誤差が少なくなると、その行動は自分が引き起こしたものだと感じられ、時間誤差が大きくなると、その行動は自分が引き起こしたものではないと感じられます。したがって、 DCDを有する児では、内部モデル障害のために、この運動主体感が変質している可能性がありますが、それを調査した研究は存在しませんでした。 そこで畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターの信迫悟志 准教授らの研究チームは、定型発達児(Typically developing: TD群)とDCDを有する児(DCD群)に参加して頂き、運動主体感の時間窓を調査しました。その結果、TD群とDCD群の両者ともに、運動とその結果との間の時間誤差が大きくなるのに伴って、運動主体感は減少していきました。しかしながら、その時間窓は、TD群よりもDCD群の方が延長していたのです。このことは、DCDを有する児では、行動とその結果の間に大きな時間誤差があったとしても、結果の原因を誤って自己帰属(誤帰属)したことを意味しました。加えて、TD群では、運動主体感の時間窓と微細運動機能との間に相関関係が認められたのに対して、DCD群では、運動主体感の時間窓と抑うつ症状との間に相関関係が認められました。 この研究は、DCDを有する児の運動主体感が変質していることを定量的に明らかにし、その運動主体感の変質と内部モデル障害、および精神心理的症状との間には、双方向性の関係がある可能性を示唆しました。 本研究のポイント ■ DCDを有する児の運動主体感の時間窓は、TD児よりも延長していた。 =DCDを有する児では、行動とその結果の間に大きな時間誤差があったとしても、結果の原因を誤って自己帰属(誤帰属)した。 ■ DCDを有する児の運動主体感の時間窓は、抑うつ症状と相関していた。 =誤った自己帰属(誤帰属)が大きくなるほど、抑うつ症状が重度化していた。 ■ DCDを有する児において、内部モデル障害、精神心理的症状、および運動主体感との間には双方向性の関係があるかもしれない。 研究内容 8~11歳までのDCDを有する児15名とTD児46名が本研究に参加し、Agency attribution task*(Keio method: Maeda et al。 2012、 2013、 2019)を実施してもらいました(図1)。この課題は、参加児のボタン押しによって画面上の■がジャンプするようにプログラムされています。そして、ボタン押しと■ジャンプの間に時間的遅延を挿入することができ、この遅延時間として100、 200、 300、 400、 500、 600、 700、 800、 900、 1000ミリ秒の10条件を設定しました。そして、参加児には“自分が■をジャンプさせた感じがするかどうか”を回答するように求められ、参加児がどのくらいの遅延時間まで運動主体感が維持されるのか(運動主体感の時間窓)を定量化しました。さらに参加児はDCD国際標準評価バッテリー(M-ABC-2)や小児用抑うつ評価(DSRS-C)などの評価も受けました。 図1:Agency attribution task(Keio method: Maeda et al。 2012、 2013、 2019) *Keio Method: Maeda T。 Method and device for diagnosing schizophrenia。 International Application No。PCT/JP2016/087182。 Japanese Patent No。6560765、 2019。 結果として、DCD群の運動主体感の時間窓は、TD群と比較して、有意に延長しました(図2)。このことは、DCDを有する児では、行動とその結果の間に大きな時間誤差があったとしても、結果の原因を誤って自己帰属(誤帰属)したことを意味しました。この結果には2つの理由が考えられました。一つは、以前の研究(Nobusako et al。 Front Neurol、 2018)から、DCDを有する児では、TD児と比較して、内部モデルにおける感覚-運動統合機能が低下しているためであると考えられました。もう一つは、DCDを有する児では、意図した動きと実際の動きが完全に一致しない状況(すなわち運動の失敗)を頻繁に経験するためであると考えられました。 図2:DCDを有する児とTD児における運動主体感の時間窓の違い 加えて、TD児の運動主体感の時間窓と微細運動機能との間には、有意な相関関係がありました。このことは、内部モデルが、学童期児童の運動主体感の生成に比較的大きな貢献をしていることを示した以前の研究(Nobusako et al。 Cogn Dev、 2020)と一致していました。 一方、重要なことに、DCDを有する児における運動主体感の時間窓と抑うつ症状との間には、有意な相関関係があり、このことは誤った自己帰属(誤帰属)が大きくなるほど、抑うつ症状が重度化したことを意味しました(図3)。 図3:DCDを有する児における運動主体感の時間窓と抑うつ症状との相関関係 本研究の意義および今後の展開 本研究は、DCDを有する児では、運動主体感が変質している(時間窓が延長している)ことを定量的に初めて明らかにし、この運動主体感の変質と内部モデル障害、そして精神心理的症状との間には双方向性の関係があることを強く示唆しました。 今後、本研究で提起されたいくつかの限界点を考慮して、DCDを有する児における改変された運動主体感が、運動の不器用さ、そして精神心理的問題の発生に、どのように関与しているのかを調べるさらなる研究が必要です。 関連する先行研究 ■ Nobusako S, Sakai A, Tsujimoto T, Shuto T, Nishi Y, Asano D, Furukawa E, Zama T, Osumi M, Shimada S, Morioka S, Nakai A. Deficits in Visuo-Motor Temporal Integration Impacts Manual Dexterity in Probable Developmental Coordination Disorder. Frontiers in Neurology. 2018 Mar 5; 9: 114. ■ Nobusako S, Tsujimoto T, Sakai A, Shuto T, Hashimoto Y, Furukawa E, Osumi M, Nakai A, Maeda T, Morioka S. The time window for sense of agency in school-age children is different from that in young adults. Cognitive Development. 2020 Apr–Jun; 54: 100891. 論文情報 Nobusako S,Osumi M, Hayashida K, Furukawa E, Nakai A, Maeda T, Morioka S. Altered sense of agency in children with developmental coordination disorder. Research in Developmental Disabilities. 2020; 107: 103794. 問い合わせ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 畿央大学大学院健康科学研究科 准教授 信迫悟志 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.nobusako@kio.ac.jp
2020.09.29
ルールへの気づきが行為主体感を増幅させる~ニューロリハビリテーション研究センター
自身の行為を制御している感覚を行為主体感といいます。畿央大学大学院博士後期課程の林田一輝 氏と森岡 周 教授はルールへの気づきが行為主体感を増幅させるのかどうかについて検証しました。この研究成果は、Brain Sciences誌(Intentional Binding Effects in the Experience of Noticing the Regularity of a Perceptual-Motor Task)に掲載されています。 研究概要 運動制御は、予測と結果を比較照合する繰り返しによって精緻になります。このモデルは、行為主体感の生成でも同じことが考えられています。行為主体感とは、自身の行為を制御している感覚のことであり、予測と結果の誤差が小さいと「この行為は自分で起こしたものである」という経験をすることができます。我々は過去の研究で、知覚運動能力が高いと行為主体感が増幅することを報告しました(Morioka et al. 2018)。しかしながら、どのような要素が行為主体感に影響したのかは不明でした。本研究では、運動課題中の気づき経験が行為主体感へ与える影響を調査することを目的としました。参加者は、暗黙的なルールを含む知覚運動課題とintentional binding課題(行為主体感を定量的に測定できる方法)を同時に実行しました。実験終了後にルールに気づいたかどうかを聴取することで「気づきあり群」と「気づき無し群」に分けることができました。実験の結果、「気づき無し群」と比較して「気づきあり群」は、intentional binding効果が徐々に増幅しました.つまり,法則性(ルール)への気づきが行為主体感を増幅させることが明らかになりました。 本研究のポイント ■ 気づき経験が行為主体感に影響する可能性がある. 研究内容 29名の健常人が実験に参加しました。参加者は水平方向に反復運動する円形オブジェクトをキー押しによって画面の中央で止める知覚運動課題を行いました。キーを押すとすぐに円形オブジェクトが止まり、そのキー押しから数100ms遅延して音が鳴りました.参加者は,キーを押してから音が聞こえるまでの時間間隔を推定しました。この時間間隔を短く感じるほど行為主体感が増幅していることを示します(intentional binding効果)。知覚運動課題のルールへの気づき経験を与えるために、円形オブジェクトの移動速度を暗黙的なルールに基づいて変更しました。移動速度は5段階(速度1:7.09度/秒,速度2:14.13度/秒、速度3:21.06度/秒,速度4:27.84度/秒,速度5:34.43度/秒)であり、速度は1秒ごとに速度1から速度5に徐々に変更されました。速度5の後,速度は再び速度1に設定されました。このループは、参加者がキーを押すまで繰り返されました。すべての試行終了後、参加者は暗黙の規則性に気づいたかどうか聴取されました。本実験は1ブロック18試行、全10ブロックで構成され、3つの段階(初期、中期、後期)に分けることで運動課題とbinding効果の時系列的な変化を調査しました(図1)。 図1:知覚運動課題とintentional binding課題(行為主体感を定量的に測定できる方法) 「気づきあり群」17名、「気づき無し群」12名に分けられました。「気づきあり群」における高い知覚順応効果は参加者がルールに気づいていた結果であることを示しています(図2a).さらに、「気づきあり群」は徐々にbinding効果が増幅したのに対して,「気づき無し群」は徐々にbinding効果が減少していました(図2b)。 図2a.知覚運動課題の成績:気づきあり群はタスク数を重ねるほど成績が高まっています 図2b.Binding効果(=行為主体感の数値):気づきあり群はタスク数を重ねるほど行為主体感は高まっていきます*緑バーが低くなるほど行為主体感が高くなっていることを意味します 本研究の意義および今後の展開 本研究は,気づきが行為主体感に影響を及ぼす可能性を示唆しました.本研究結果は行為主体感の変容プロセス解明の一助になることが期待されます. 関連する先行研究 Morioka S, Hayashida K, Nishi Y, Negi S, Nishi Y, Osumi M and Nobusako S. Changes in intentional binding effect during a novel perceptual-motor task. PeerJ 2018, 6, e6066. 論文情報 Hayashida K, Nishi Y, Masuike A and Morioka S. Intentional Binding Effects in the Experience of Noticing the Regularity of a Perceptual-Motor Task. Brain Sci. 2020 問い合わせ先 畿央大学大学院健康科学研究科 博士後期課程 林田 一輝(ハヤシダ カズキ) E-mail: kazuki_aka_linda@yahoo.co.jp Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600
2020.09.23
利用できる手がかりに応じて変化する運動制御時の自他帰属戦略~ニューロリハビリテーション研究センター
動作の中で得られる感覚を自己帰属したとき(自分で自分の運動を制御していると思えるとき)、我々はその感覚に基づいて運動を制御しようとします。この自己帰属は、内的予測や感覚フィードバックといった感覚運動手がかりや、知識や思考といった認知的手がかりなどに基づいて決定されることが報告されています。畿央大学大学院博士後期課程・日本学術振興会特別研究員の宮脇 裕 氏と森岡 周 教授は,運動制御時にこれらの手がかりがどのような関係性で利用され自他帰属が達成されるのかについて検証しました。この研究成果は、Attention, Perception, & Psychophysics誌(Confusion within feedback control between cognitive and sensorimotor agency cues in self-other attribution)に掲載されています. 研究概要 自他帰属(Self-other Attribution)とは、自己由来感覚と外界由来感覚を区別することを指します。この区別が上手くいかなくなると、「自分で自分の運動を制御している」という運動主体感の変容を招いたり、不必要な感覚に基づいて運動を遂行してしまったりすることが明らかにされています。この自他帰属には、運動の内的予測や感覚フィードバックといった「感覚運動手がかり」や、自分の持つ知識や思考といった「認知的手がかり」が関与することが報告されています。そしてこれらの手がかり間の関係性について、最適手がかり統合(Optimal Cue Integration)と呼ばれる仮説が提唱されています。本仮説によると、脳は状況に応じた手がかりの信頼性を計算し、その信頼性に基づいて自他帰属にどの手がかりを利用するか決定すると考えられています。しかしながら、運動に直接関与しない認知的手がかりが運動制御時の自他帰属に影響しうるのかは依然明らかになっていません。 宮脇 裕 氏(畿央大学大学院博士後期課程,日本学術振興会特別研究員,慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室)と森岡 周 教授は、フィードバック制御課題を用いて、自他帰属における認知的手がかりの効果について,感覚運動手がかりの情報量を操作した3つの実験により検証しました。その結果、感覚運動手がかりが十分に利用できる状況では(実験1)、,認知的手がかりは自他帰属に利用されませんでしたが、感覚運動手がかりの情報量が少ない状況では(実験2)、認知的手がかりも自他帰属に利用されることが示されました。そして興味深いことに、感覚運動手がかりが十分利用できないような状況では(実験3)認知的手がかりの効果は認めず、これらの実験から、運動制御では認知的手がかりの効果は特定の状況に限定される可能性が示されました。 本研究のポイント ■ 運動制御時の自他帰属は感覚運動手がかりに基づく。 ■ 運動制御では認知的手がかりは特定の状況においてのみ自他帰属に影響しうる。 ■ 認知的手がかりの効果は利用できる感覚運動手がかりの情報量に依存する可能性がある. 研究内容 参加者(健常大学生)は,モニタ上に表示されたターゲットラインをなぞるようにペンタブレット上で上肢の正弦曲線運動を遂行しました(図1; Asai, 2015)。この際,視覚フィードバックとしてカーソルが表示されました。感覚運動手がかりとして、カーソルの動きには、自分のリアルタイムの運動が反映される条件(自己運動条件)と、事前に記録した運動が反映される条件(フェイク運動条件)がありました。参加者は、自分の実際の運動とカーソル運動の時空間的な一致性に基づき、カーソルが自己運動を反映していると判断できる場合にそのカーソルを操作しターゲットラインをなぞることを求められました。 図1:実験セットアップ ターゲットラインの前半(Cycle 1と2)では、カーソルの形を動きに対応付け、形に基づき自他帰属させることで形を認知的手がかりとして与えました(図2)。具体的には、前半では●の形のカーソルは自分のリアルタイムの運動(自己運動)を反映し、※のカーソルは事前に記録した運動(フェイク運動)を反映していたため、参加者に形の情報から自他帰属することを求めました。特に、形を基にカーソルを制御する条件を設け、形をプライミングしました。ターゲットラインの後半(Cycle 4と5)まで運動を進めると、この対応関係が変化することがあり、この際に参加者が動きと形どちらの手がかりを用いて自他帰属するかを検証しました。課題中にターゲットラインとペン座標の距離を運動エラーとして測定し、この運動エラーから手がかりの利用度を算出しました。 図2:実験デザイン 実験2と3では、それぞれカーソルを8 Hzと4 Hzで点滅させることで、カーソルの動きの情報量を減少させました。この際,動きの情報量減少により認知的手がかりの効果が変動するかを検証しました。 結果として、実験1の感覚運動手がかり(カーソルの動き)が十分に利用できる状況では、自他帰属において認知的手がかり(カーソルの形)の効果は認めませんでしたが(図3)、実験2の感覚運動手がかりの情報量が少ない状況では、認知的手がかりも自他帰属に利用されるようになりました(図4)。そして実験3の感覚運動手がかりがほとんど利用できない状況では,認知的手がかりの効果は認めませんでした(図5)。 図3:実験1における運動エラー 運動エラーについては、各条件とベースライン条件(視覚フィードバックなし)間の差分を算出しています。また,サイクル3で各条件の運動エラーの値がゼロになるようにロックしています。自己運動条件(青線)とフェイク運動条件(緑線)間の運動エラーにおける差は,参加者が後半にカーソルの動きに基づいて自他帰属を為したことを示します。●条件(実線)と※条件(点線)間の差は、参加者が後半にカーソルの形に基づいて自他帰属を為したことを示します。エラーバーは標準誤差を示します。 図4:実験2における運動エラー 実験2では、カーソルを8 Hzで点滅させることで、実験1に比べて自他帰属に利用できる感覚運動手がかりの情報量を減少させました。 図5:実験3における運動エラー 実験3では、カーソルを4 Hzで点滅させることで、実験2からさらに感覚運動手がかりの情報量を減少させました. 本研究の意義および今後の展開 本研究は、運動制御時の自他帰属が感覚運動手がかりを基になされており、その手がかりを利用できてかつ情報量が少ない状況では認知的手がかりで代償しうるという、健常者における運動制御時の自他帰属戦略を示唆しました。今後は、感覚運動手がかりの利用に問題をきたす可能性がある脳卒中後遺症を有する方々を対象に、その自他帰属戦略について健常者との相違を検証していく予定です。これらの検証による研究の発展は,脳卒中後遺症の病態と運動主体感の関係性を解明する一助となることが期待されます。 関連する先行研究 Asai T. Feedback control of one’s own action: Self-other sensory attribution in motor control. Conscious Cogn. 2015;38:118-129. 論文情報 Miyawaki Y, Morioka S. Confusion within feedback control between cognitive and sensorimotor agency cues in self-other attribution. Atten Percept Psychophys. 2020 問い合わせ先 畿央大学大学院健康科学研究科 博士後期課程 宮脇 裕(ミヤワキ ユウ) Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: yu.miyawaki.reha1@gmail.com
2020.08.12
第62回日本老年医学会学術集会で大学院生と教員2名が発表!~健康科学研究科
2020年8月4日(火)~6日(木)にかけて第62回日本老年医学会学術集会がweb開催されました。今回はコロナウイルス感染症の影響で現地(東京都)での開催は中止となり、畿央大学からは一般演題で発表する予定であった松本大輔准教授と高取研究室の私(博士課程2年 武田)がスライド、ポスターを学術大会サイトに登録することで発表という形式になりました。 また、高取教授は優秀演題候補セッションであったため,オンライン発表をされました。惜しくも優秀演題賞とはなりませんでしたが、非常に関心を集める研究内容でした。 <高取克彦教授> 「後期高齢者におけるフレイル脱却者の特性:2年間の前向きコホート調査より」 高取先生は約3700名の後期高齢者を対象にフレイル脱却者の特性を分析されました。フレイルの脱却要因としては①活動の広がり(IADL、社会参加)、②身体機能の改善(運動、口腔、認知)、③精神・心理機能の改善(主観的健康観)に分類され、フレイル脱却者の特性は「生活空間の広がりによりフレイルサイクルを予防できた者」と結論づけられていました。 <松本大輔准教授> 「後期高齢者における新規要介護発生は小地域間で異なるか?-4年間の前向きコホート調査より-」 松本先生は約5000名の後期高齢者を対象に小学校区間での新規要介護発生率の違いを分析されました。多種の社会参加がリスクを低減させるが、社会参加の要因を調整したとしても、新規要介護発生率が有意に高い地域があるということを明らかにされました。 <健康科学研究科 武田広道> 「要支援・要介護後期高齢者の介護度変化と身体機能の関係 ~リハビリテーション機能特化型通所介護利用者を対象とした2年間の追跡調査~」 本研究はデイサービスを利用されている後期高齢者を対象に身体機能のどの要因が要介護度の改善と関連しているかを分析したものです。要介護度の改善には通常歩行速度と膝関節伸展筋力が有意な関連因子であったという結果を報告しました。 本学会は「健康長寿社会の実現へ向けた老年医学の役割」というテーマで開催されました。講演や演題の内容はフレイル、サルコペニア、認知症、栄養に関連するものが中心の内容となっていました。フレイルは身体的、精神・心理的、社会的な側面があり、それぞれの関連要因や介入効果について明らかになっていることや今後の課題などが報告されていました。高齢化が進む中でフレイル予防、介護予防は非常に重要な社会課題であるため、有用な研究や活動をしていくことが改めて大事だと感じることができる機会になりました。 健康科学研究科 博士後期課程2年 武田広道 【関連記事】 第30回日本老年学会・第59回日本老年医学会の合同総会でプロジェクト研究の成果を発表!~健康科学研究所
2020.07.17
理学療法学科教員および大学院修了生が家庭用低周波治療器「DRIVE-HOME」に開発協力!
本学理学療法学科長・健康科学研究科の庄本康治教授および大学院健康科学研究科博士後期課程修了生で現在は大学院客員研究員を務める生野公貴さん(西大和リハビリテーション病院)が、株式会社デンケンより今月発売された家庭用低周波治療器「DRIVE-HOME」に開発協力しました。 開発に携わったお二人に、機器の特長や臨床・自宅での活用について語っていただきました。 庄本教授(写真左)コメント DRIVE-HOMEは、電気刺激による筋力増強トレーニングを家庭で実施可能に設計したコンパクトな機器です。高齢になると下肢筋の筋力低下が増悪しますが、何らかの疾患、手術後ではさらに顕著になります。自分自身で筋力増強トレーニングを定期的に実施できれば良いのですが、様々な問題で筋力増強トレーニングを実施困難な方が多いのが現状です。そのような方を対象とした我々の研究では、下肢筋に約2ヶ月間DRIVE-HOMEを実施して頂くと、かなりの筋力増強が起こり、結果的に動きやすくなることがわかっています。 機器本体を刺激的な赤色にしてユーザーのやる気を誘発し、機器インターフェースは文字も大きく、操作も簡単です。また、理学療法士などの専門家による指導を定期的に受けることによって、最大の効果を得ることが可能であると考えています。 生野さん(写真右)コメント 脳卒中後に生じる麻痺、骨折後での安静、人工関節手術時の切開による侵襲など様々な要因で著明な筋力の低下が生じてしまいます。この筋力低下によって日常の生活に大きな支障をきたします。その筋力低下に対して、リハビリでは積極的な筋力増強練習を実施しますが、麻痺や骨折後で痛みがあれば十分な負荷をかけることが難しく、よい効果が得られないことをよく経験します。電気刺激療法は麻痺や骨折、人工関節手術後の筋力増強練習により高い効果があることが科学的に証明されています。しかしながら、従来の電気刺激装置は高価なものが多く、かつ管理された医療機器のため患者さんが手軽に扱うことはできず、治療時間は限られたものでした。 DRIVE-HOMEは筋力増強に特化した刺激パターンを搭載しているため、医療現場においても十分実施することが可能です。また小型で携帯性に優れているため、病室などどこでもトレーニングすることが可能です。また、DRIVE-HOMEの強みは、病院で実施した練習をそのまま自宅に退院した後も継続できることです。操作が簡単で、かつ筋肉の萎縮の改善に特化した電気刺激のパターンを搭載しているため、自宅でお手軽に、かつ安全に専門的なトレーニングが実施できます。 DRIVE-HOMEは現状のリハビリ医療における問題点をシンプルに解決しており、より効果的なリハビリを可能にする機器であると期待しています。 ▶理学療法学科 ▶健康科学研究科(修士課程) ▶健康科学研究科(博士後期課程)
2020.07.17
脳卒中患者における運動まひの重症度と歩行速度の関係性~ニューロリハビリテーション研究センター
古くから、脳卒中患者の歩行速度は下肢の運動まひの重症度に依存すると言われています。しかし、個々の症例毎に観察すると、運動まひが軽症であるにもかかわらず、歩行速度が低下している症例が存在しています。畿央大学大学院 博士後期課程 水田 直道氏と 森岡 周 教授らは、運動まひの重症度が軽症であるにもかかわらず、歩行速度が低下している症例の歩行特性について検証しました。この研究成果は、Scientific Reports誌(Walking characteristics including mild motor paralysis and slow walking speed in post-stroke patients)に掲載されています。 研究概要 脳卒中患者の歩行速度は、日常生活能力や生活範囲を担保する重要な要因ですが、下肢の運動まひの重症度に強く影響されています。一方で、運動まひが軽症であっても歩行が遅い症例が存在すると考えられており、運動まひの重症度が歩行速度に関係していないといった乖離している症例が一定数存在していることも臨床上明らかですが、なぜかは分かっていませんでした。博士後期課程の水田 直道氏らは、運動まひの重症度と歩行速度の関係性から、クラスター分析を用いてサブグループを特定し、「運動まひが軽症ながら歩行速度が遅い症例の歩行特性」を明らかにしました。この特徴的なグループにおいては、歩行時における不安定性や下腿筋の同時収縮が高値であることが分かりました(関節を動かす筋と動きのブレーキをかける筋が同時に収縮していて運動効率が悪い状態)。加えて、大脳皮質からの干渉を反映する筋間コヒーレンスが高く、運動まひの重症度からみても過剰な皮質制御が歩行速度を低下させていることが考えられました。 本研究のポイント ■ 脳卒中患者を対象に、下肢の運動まひの重症度と歩行速度は概ね関連するが、この関係性から乖離する症例群が一定数存在することが分かりました。 ■ 運動まひが軽症ながら歩行速度が遅い症例は、歩行時の不安定性や下腿筋の同時収縮、大脳皮質からの過剰な干渉が原因であることが分かりました。 研究内容 介助なく歩行可能な脳卒中患者を対象としました。 対象者は運動まひの重症度評価および快適速度での10m歩行テストを行いました。運動まひの重症度と歩行速度の関係性をもとにクラスター分析を行い、運動まひが軽症ながら歩行速度が遅い症例を抽出しました(図1)。 図1:運動まひの重症度と歩行速度の関係性 運動まひの重症度と歩行速度は正の相関関係を認めましたが、それらの分布を確認すると運動まひの重症度と歩行速度の関係性から乖離している症例が確認されました。そこで階層的クラスター分析を行い、5つのサブグループを抽出しました。 クラスター1 :運動まひは軽症から中等症、歩行速度は低値 クラスター2 :運動まひは重症、歩行速度は低値 クラスター3 :運動まひは重症、歩行速度は中等度 クラスター4 :運動まひは軽症、歩行速度は中等度 クラスター5 :運動まひは軽症、歩行速度は高値 図2:各クラスターにおける体幹加速度と筋活動波形、筋間コヒーレンスの結果 (A)運動まひが軽症から中等症にもかかわらず、歩行速度が低下しているクラスター1は、立脚期(図2のDS1,SS,DS2の区間)の体幹加速度が高値を示し、体幹動揺が大きい状態でした.またクラスター1の前脛骨筋および腓腹筋の筋活動は、歩行周期の各相に応じた筋活動の増減が少なく、同時収縮指数が高いことがわかりました。 (B)beta帯域のコヒーレンスは筋活動の起源が大脳皮質由来であることを示します。コヒーレンスは各クラスターによって大きく異なり、クラスター1が最もコヒーレンスが高いことがわかりました。 本研究の意義および今後の展開 この研究では、運動まひが比較的軽症にもかかわらず、歩行速度が低下している症例の歩行特性について、運動学的ならびに運動力学的に検証しました。結果として、そのような特性を有する症例では、運動機能は比較的残存しているにもかかわらず、体幹の不安定性や下肢筋の同時収縮、過剰な大脳皮質制御によって残存機能がマスクされている可能性が考えられました。今後は、クラスター別に歩行能力の回復へ貢献する要因について調査する予定です。 論文情報 Mizuta N, Hasui N, Nakatani T, Takamura Y, Fujii S, Tsutsumi M, Taguchi J, Morioka S. Walking characteristics including mild motor paralysis and slow walking speed in post-stroke patients. Scientific Reports. 2020 問い合わせ先 畿央大学大学院健康科学研究科 博士後期課程 水田 直道(ミズタ ナオミチ) Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 peace.pt1028@gmail.com
2020.06.19
1回生担任紹介「宮本先生」編~新入生応援!やさしさを「チカラ」に変えるプロジェクトvol.22
新型コロナウイルスの影響で大学に来れない1回生の皆さんを応援する”やさしさを「チカラ」に変える”プロジェクトの一環で、先生方に7つの質問に答えていただきました。今回は理学療法学科の宮本准教授です! 【1】氏名・担任クラス 宮本 直美(みやもと なおみ) 理学療法学科1回生 2組担任 【2】研究分野と担当科目 専門は、呼吸器(肺)に疾患がある患者さんに対する理学療法、呼吸リハビリテーションです。慢性閉塞性肺疾患(COPD)や間質性肺疾患など、呼吸器に疾患を持つ患者さんが、疾患やご自身の身体と上手につき合いながら、明るく朗らかに生活していけるようお手伝いさせていただいています。研究分野も、呼吸リハビリテーションに関する研究を継続しています。 1回生では「チーム医療論(オムニバス)」を担当しています。また、1・2回生では、生理学実習や臨床解剖学演習など、実習系の授業もお手伝いさせてもらっています。3回生では「臨床理学療法学」「理学療法研究法」「循環呼吸系理学療法学実習」などを担当しています。 【3】モットーや好きな言葉、大切にしていること 大切にしていること、心がけていることは「今しかできないこと」をするようにしています。もともと優柔不断で、活動的でもないので、色々な経験やチャンスをいただいた時には「今しかできない!」と思って、チャレンジするようにしています。 【4】好きなこと(趣味・特技など) 旅行が好きです。国内も海外旅行も好きで、そこでしか食べられない美味しいものを食べるのも好きです。今年はどこにも行くことができていないですが…、1年に一度は海外に行きたいと思っています。最近は海外に行きたくて、私にとってはハードルが高いですけど、ヨーロッパの学会にチャレンジするようにしています。 ▼フランス、パリ(ヨーロッパの呼吸器学会で) ▼カナダ側から見たナイアガラ滝・・・2月で極寒の季節でしたが、壮大な景色でした! 特技は…ないです。何か一つ、身につけたいなと思ってます。 【5】苦手なことや嫌いなもの 爬虫類、ジェットコースターは苦手です。 【6】先生から見た畿央大学や畿央生の印象は? 学生と教員の距離が近いところは、畿央の良いところだと思います。畿央生は明るくて、物事に一生懸命に取り組む学生が多い印象があります。入学してから卒業するまで、どんどん成長して、逞しくなっていく姿にいつも感動しています。 【7】1回生にメッセージを! 現状の大学生活に慣れないことも多いと思いますが、「今しかできないこと」「今だからできること」もたくさんできたのではないかと思っています。今はオンラインの面談やメールでしかお話しできていませんが、通学できるようになり、皆さんと顔を合わせて、色々なお話をできる日を楽しみにしています! 教員実績
2020.06.15
TASK(健康支援学生チーム)活動レポートvol.79~12月勉強会は「認知症の予防~みんなで脳の活性化~」
こんにちは、健康支援学生チームTASK※の理学療法学科2回生の今井千智です !TASKの2019年最後の活動として12月の勉強会を行いました。 (春休みが終わって大学が始まったら寄稿しよう…と思っていたのですが、気付けば6月になっていました。) ※TASKは、Think、Action、Support、for Health by Kio Universityの略称です。学科の枠を超えて協力し合いながら、地域住民の方々や畿央生の健康支援を目的として活動しています。 テーマは「認知症の予防~みんなで脳の活性化~」でした。今回の勉強会では、特に健康科学部の人たちが将来必ずかかわる「認知症」について学びました。勉強会の最初には、認知症について学び、その後、早期予防として、脳トレを行いました。 ▼脳トレの様子 認知症とは、脳の変性疾患や脳血管障害によって、記憶や思考などの認知機能の低下が起こり、6カ月以上にわたって、日常生活に支障をきたしている状態です。認知症には、脳の働きの低下による中核症状と、環境や体験、気質によってあらわれる周辺症状があります。認知症の予防には、食生活改善、運動習慣の改善、対人接触、知的行動習慣、睡眠習慣などがありますが、最も重要なのは「早期発見」と「早期からの予防対策」です。 今回12月ということもあり、勉強会のあとにはクリスマス会を行いました。 ▼クリスマス会の様子 たくさん話し、笑いながら今年最後のTASKの活動を楽しみました ! ▼最後にTASKの「T」で記念撮影! 理学療法学科2回生 今井千智 ●TASK関連の情報はTASK(健康支援学生チーム)活動レポートで、詳しくご覧になれます。