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健康科学専攻(修士課程)の新着情報一覧

2020年の健康科学専攻(修士課程)の新着情報一覧

2020.09.23

利用できる手がかりに応じて変化する運動制御時の自他帰属戦略~ニューロリハビリテーション研究センター

動作の中で得られる感覚を自己帰属したとき(自分で自分の運動を制御していると思えるとき)、我々はその感覚に基づいて運動を制御しようとします。この自己帰属は、内的予測や感覚フィードバックといった感覚運動手がかりや、知識や思考といった認知的手がかりなどに基づいて決定されることが報告されています。畿央大学大学院博士後期課程・日本学術振興会特別研究員の宮脇 裕 氏と森岡 周 教授は,運動制御時にこれらの手がかりがどのような関係性で利用され自他帰属が達成されるのかについて検証しました。この研究成果は、Attention, Perception, & Psychophysics誌(Confusion within feedback control between cognitive and sensorimotor agency cues in self-other attribution)に掲載されています.   研究概要 自他帰属(Self-other Attribution)とは、自己由来感覚と外界由来感覚を区別することを指します。この区別が上手くいかなくなると、「自分で自分の運動を制御している」という運動主体感の変容を招いたり、不必要な感覚に基づいて運動を遂行してしまったりすることが明らかにされています。この自他帰属には、運動の内的予測や感覚フィードバックといった「感覚運動手がかり」や、自分の持つ知識や思考といった「認知的手がかり」が関与することが報告されています。そしてこれらの手がかり間の関係性について、最適手がかり統合(Optimal Cue Integration)と呼ばれる仮説が提唱されています。本仮説によると、脳は状況に応じた手がかりの信頼性を計算し、その信頼性に基づいて自他帰属にどの手がかりを利用するか決定すると考えられています。しかしながら、運動に直接関与しない認知的手がかりが運動制御時の自他帰属に影響しうるのかは依然明らかになっていません。 宮脇 裕 氏(畿央大学大学院博士後期課程,日本学術振興会特別研究員,慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室)と森岡 周 教授は、フィードバック制御課題を用いて、自他帰属における認知的手がかりの効果について,感覚運動手がかりの情報量を操作した3つの実験により検証しました。その結果、感覚運動手がかりが十分に利用できる状況では(実験1)、,認知的手がかりは自他帰属に利用されませんでしたが、感覚運動手がかりの情報量が少ない状況では(実験2)、認知的手がかりも自他帰属に利用されることが示されました。そして興味深いことに、感覚運動手がかりが十分利用できないような状況では(実験3)認知的手がかりの効果は認めず、これらの実験から、運動制御では認知的手がかりの効果は特定の状況に限定される可能性が示されました。   本研究のポイント ■ 運動制御時の自他帰属は感覚運動手がかりに基づく。 ■ 運動制御では認知的手がかりは特定の状況においてのみ自他帰属に影響しうる。 ■ 認知的手がかりの効果は利用できる感覚運動手がかりの情報量に依存する可能性がある.   研究内容 参加者(健常大学生)は,モニタ上に表示されたターゲットラインをなぞるようにペンタブレット上で上肢の正弦曲線運動を遂行しました(図1; Asai, 2015)。この際,視覚フィードバックとしてカーソルが表示されました。感覚運動手がかりとして、カーソルの動きには、自分のリアルタイムの運動が反映される条件(自己運動条件)と、事前に記録した運動が反映される条件(フェイク運動条件)がありました。参加者は、自分の実際の運動とカーソル運動の時空間的な一致性に基づき、カーソルが自己運動を反映していると判断できる場合にそのカーソルを操作しターゲットラインをなぞることを求められました。     図1:実験セットアップ    ターゲットラインの前半(Cycle 1と2)では、カーソルの形を動きに対応付け、形に基づき自他帰属させることで形を認知的手がかりとして与えました(図2)。具体的には、前半では●の形のカーソルは自分のリアルタイムの運動(自己運動)を反映し、※のカーソルは事前に記録した運動(フェイク運動)を反映していたため、参加者に形の情報から自他帰属することを求めました。特に、形を基にカーソルを制御する条件を設け、形をプライミングしました。ターゲットラインの後半(Cycle 4と5)まで運動を進めると、この対応関係が変化することがあり、この際に参加者が動きと形どちらの手がかりを用いて自他帰属するかを検証しました。課題中にターゲットラインとペン座標の距離を運動エラーとして測定し、この運動エラーから手がかりの利用度を算出しました。     図2:実験デザイン   実験2と3では、それぞれカーソルを8 Hzと4 Hzで点滅させることで、カーソルの動きの情報量を減少させました。この際,動きの情報量減少により認知的手がかりの効果が変動するかを検証しました。 結果として、実験1の感覚運動手がかり(カーソルの動き)が十分に利用できる状況では、自他帰属において認知的手がかり(カーソルの形)の効果は認めませんでしたが(図3)、実験2の感覚運動手がかりの情報量が少ない状況では、認知的手がかりも自他帰属に利用されるようになりました(図4)。そして実験3の感覚運動手がかりがほとんど利用できない状況では,認知的手がかりの効果は認めませんでした(図5)。     図3:実験1における運動エラー   運動エラーについては、各条件とベースライン条件(視覚フィードバックなし)間の差分を算出しています。また,サイクル3で各条件の運動エラーの値がゼロになるようにロックしています。自己運動条件(青線)とフェイク運動条件(緑線)間の運動エラーにおける差は,参加者が後半にカーソルの動きに基づいて自他帰属を為したことを示します。●条件(実線)と※条件(点線)間の差は、参加者が後半にカーソルの形に基づいて自他帰属を為したことを示します。エラーバーは標準誤差を示します。   図4:実験2における運動エラー   実験2では、カーソルを8 Hzで点滅させることで、実験1に比べて自他帰属に利用できる感覚運動手がかりの情報量を減少させました。   図5:実験3における運動エラー   実験3では、カーソルを4 Hzで点滅させることで、実験2からさらに感覚運動手がかりの情報量を減少させました.   本研究の意義および今後の展開 本研究は、運動制御時の自他帰属が感覚運動手がかりを基になされており、その手がかりを利用できてかつ情報量が少ない状況では認知的手がかりで代償しうるという、健常者における運動制御時の自他帰属戦略を示唆しました。今後は、感覚運動手がかりの利用に問題をきたす可能性がある脳卒中後遺症を有する方々を対象に、その自他帰属戦略について健常者との相違を検証していく予定です。これらの検証による研究の発展は,脳卒中後遺症の病態と運動主体感の関係性を解明する一助となることが期待されます。   関連する先行研究 Asai T. Feedback control of one’s own action: Self-other sensory attribution in motor control. Conscious Cogn. 2015;38:118-129.   論文情報 Miyawaki Y, Morioka S. Confusion within feedback control between cognitive and sensorimotor agency cues in self-other attribution. Atten Percept Psychophys. 2020   問い合わせ先 畿央大学大学院健康科学研究科 博士後期課程 宮脇 裕(ミヤワキ ユウ) Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: yu.miyawaki.reha1@gmail.com 

2020.07.17

理学療法学科教員および大学院修了生が家庭用低周波治療器「DRIVE-HOME」に開発協力!

本学理学療法学科長・健康科学研究科の庄本康治教授および大学院健康科学研究科博士後期課程修了生で現在は大学院客員研究員を務める生野公貴さん(西大和リハビリテーション病院)が、株式会社デンケンより今月発売された家庭用低周波治療器「DRIVE-HOME」に開発協力しました。     開発に携わったお二人に、機器の特長や臨床・自宅での活用について語っていただきました。   庄本教授(写真左)コメント DRIVE-HOMEは、電気刺激による筋力増強トレーニングを家庭で実施可能に設計したコンパクトな機器です。高齢になると下肢筋の筋力低下が増悪しますが、何らかの疾患、手術後ではさらに顕著になります。自分自身で筋力増強トレーニングを定期的に実施できれば良いのですが、様々な問題で筋力増強トレーニングを実施困難な方が多いのが現状です。そのような方を対象とした我々の研究では、下肢筋に約2ヶ月間DRIVE-HOMEを実施して頂くと、かなりの筋力増強が起こり、結果的に動きやすくなることがわかっています。 機器本体を刺激的な赤色にしてユーザーのやる気を誘発し、機器インターフェースは文字も大きく、操作も簡単です。また、理学療法士などの専門家による指導を定期的に受けることによって、最大の効果を得ることが可能であると考えています。     生野さん(写真右)コメント 脳卒中後に生じる麻痺、骨折後での安静、人工関節手術時の切開による侵襲など様々な要因で著明な筋力の低下が生じてしまいます。この筋力低下によって日常の生活に大きな支障をきたします。その筋力低下に対して、リハビリでは積極的な筋力増強練習を実施しますが、麻痺や骨折後で痛みがあれば十分な負荷をかけることが難しく、よい効果が得られないことをよく経験します。電気刺激療法は麻痺や骨折、人工関節手術後の筋力増強練習により高い効果があることが科学的に証明されています。しかしながら、従来の電気刺激装置は高価なものが多く、かつ管理された医療機器のため患者さんが手軽に扱うことはできず、治療時間は限られたものでした。     DRIVE-HOMEは筋力増強に特化した刺激パターンを搭載しているため、医療現場においても十分実施することが可能です。また小型で携帯性に優れているため、病室などどこでもトレーニングすることが可能です。また、DRIVE-HOMEの強みは、病院で実施した練習をそのまま自宅に退院した後も継続できることです。操作が簡単で、かつ筋肉の萎縮の改善に特化した電気刺激のパターンを搭載しているため、自宅でお手軽に、かつ安全に専門的なトレーニングが実施できます。 DRIVE-HOMEは現状のリハビリ医療における問題点をシンプルに解決しており、より効果的なリハビリを可能にする機器であると期待しています。   ▶理学療法学科 ▶健康科学研究科(修士課程) ▶健康科学研究科(博士後期課程)

2020.07.17

脳卒中患者における運動まひの重症度と歩行速度の関係性~ニューロリハビリテーション研究センター

古くから、脳卒中患者の歩行速度は下肢の運動まひの重症度に依存すると言われています。しかし、個々の症例毎に観察すると、運動まひが軽症であるにもかかわらず、歩行速度が低下している症例が存在しています。畿央大学大学院 博士後期課程 水田 直道氏と 森岡 周 教授らは、運動まひの重症度が軽症であるにもかかわらず、歩行速度が低下している症例の歩行特性について検証しました。この研究成果は、Scientific Reports誌(Walking characteristics including mild motor paralysis and slow walking speed in post-stroke patients)に掲載されています。   研究概要 脳卒中患者の歩行速度は、日常生活能力や生活範囲を担保する重要な要因ですが、下肢の運動まひの重症度に強く影響されています。一方で、運動まひが軽症であっても歩行が遅い症例が存在すると考えられており、運動まひの重症度が歩行速度に関係していないといった乖離している症例が一定数存在していることも臨床上明らかですが、なぜかは分かっていませんでした。博士後期課程の水田 直道氏らは、運動まひの重症度と歩行速度の関係性から、クラスター分析を用いてサブグループを特定し、「運動まひが軽症ながら歩行速度が遅い症例の歩行特性」を明らかにしました。この特徴的なグループにおいては、歩行時における不安定性や下腿筋の同時収縮が高値であることが分かりました(関節を動かす筋と動きのブレーキをかける筋が同時に収縮していて運動効率が悪い状態)。加えて、大脳皮質からの干渉を反映する筋間コヒーレンスが高く、運動まひの重症度からみても過剰な皮質制御が歩行速度を低下させていることが考えられました。   本研究のポイント ■ 脳卒中患者を対象に、下肢の運動まひの重症度と歩行速度は概ね関連するが、この関係性から乖離する症例群が一定数存在することが分かりました。 ■ 運動まひが軽症ながら歩行速度が遅い症例は、歩行時の不安定性や下腿筋の同時収縮、大脳皮質からの過剰な干渉が原因であることが分かりました。   研究内容 介助なく歩行可能な脳卒中患者を対象としました。 対象者は運動まひの重症度評価および快適速度での10m歩行テストを行いました。運動まひの重症度と歩行速度の関係性をもとにクラスター分析を行い、運動まひが軽症ながら歩行速度が遅い症例を抽出しました(図1)。      図1:運動まひの重症度と歩行速度の関係性   運動まひの重症度と歩行速度は正の相関関係を認めましたが、それらの分布を確認すると運動まひの重症度と歩行速度の関係性から乖離している症例が確認されました。そこで階層的クラスター分析を行い、5つのサブグループを抽出しました。 クラスター1 :運動まひは軽症から中等症、歩行速度は低値 クラスター2 :運動まひは重症、歩行速度は低値 クラスター3 :運動まひは重症、歩行速度は中等度 クラスター4 :運動まひは軽症、歩行速度は中等度 クラスター5 :運動まひは軽症、歩行速度は高値    図2:各クラスターにおける体幹加速度と筋活動波形、筋間コヒーレンスの結果   (A)運動まひが軽症から中等症にもかかわらず、歩行速度が低下しているクラスター1は、立脚期(図2のDS1,SS,DS2の区間)の体幹加速度が高値を示し、体幹動揺が大きい状態でした.またクラスター1の前脛骨筋および腓腹筋の筋活動は、歩行周期の各相に応じた筋活動の増減が少なく、同時収縮指数が高いことがわかりました。 (B)beta帯域のコヒーレンスは筋活動の起源が大脳皮質由来であることを示します。コヒーレンスは各クラスターによって大きく異なり、クラスター1が最もコヒーレンスが高いことがわかりました。   本研究の意義および今後の展開 この研究では、運動まひが比較的軽症にもかかわらず、歩行速度が低下している症例の歩行特性について、運動学的ならびに運動力学的に検証しました。結果として、そのような特性を有する症例では、運動機能は比較的残存しているにもかかわらず、体幹の不安定性や下肢筋の同時収縮、過剰な大脳皮質制御によって残存機能がマスクされている可能性が考えられました。今後は、クラスター別に歩行能力の回復へ貢献する要因について調査する予定です。   論文情報 Mizuta N, Hasui N, Nakatani T, Takamura Y, Fujii S, Tsutsumi M, Taguchi J, Morioka S. Walking characteristics including mild motor paralysis and slow walking speed in post-stroke patients. Scientific Reports. 2020   問い合わせ先 畿央大学大学院健康科学研究科 博士後期課程 水田 直道(ミズタ ナオミチ) Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 peace.pt1028@gmail.com

2020.06.01

大学院生の研究が日本理学療法士学会の研究助成に採択されました。

本学大学院健康科学研究科健康科学専攻修士課程の嘉摩尻伸さんが行っている研究が、日本理学療法士学会の研究助成に採択されました。   この研究助成は、理学療法及び理学療法学の発展に資する研究を奨励し、支援するための制度であり、嘉摩尻さんの研究はB:一般研究助成部門の採択7件中(申請 66件)の1件となります。嘉摩尻さんおめでとうございます!   健康科学研究科健康科学専攻修士課程 嘉摩尻伸 研究テーマ「COPDモデルラットに対する軽度高気圧酸素療法が骨格筋に及ぼす影響」     【嘉摩尻さんコメント】 この度、日本理学療法士学会の理学療法に関わる研究助成が採択され嬉しく思います。慢性閉塞性肺疾患(COPD)と骨格筋の研究に対して興味を持ったのは、私が病院で呼吸リハビリテーションを軸に働いている中で、COPDが急増している社会的状況を背景にこの研究をすることは社会的意義があると考えたことがきっかけです。   病院に勤めて7年が経ってから大学院に進学し、入学当初は初めてチャレンジする基礎研究、病院勤務と大学院の両立など、少し不安がありました。しかし本学では遠隔授業の環境が整っており、勤務終わりに講義を視聴することで無理なく学ぶことができています。また私の研究指導教員である今北教授にはいつも親切丁寧にご指導いただき、非常に楽しく有意義な時間を過ごすことができています。   基礎研究の内容はラットを用いた動物実験です。COPDでは、慢性炎症や運動不足などが複雑に絡み合い、筋肉が減少しやすい状態になると言われています。その治療としてリハビリテーション分野では運動療法を行うことがスタンダードになっていますが、低栄養や酸化ストレスなどが原因で運動療法が奏効しにくいことがあります。   そこでCOPDモデルラットを作成し、これまでに報告されていない軽度高圧酸素療法の効果を検証すること、また、軽度高圧酸素療法と運動介入を組み合わせて、骨格筋の変化を細胞および分子レベルで検証しています。呼吸器疾患患者にとって運動は息切れを誘発してしまいますが、軽度高圧酸素療法は息切れを惹起することなく骨格筋機能を改善させることができるのではないか、という仮説のもと実験を行っています。   基礎研究は複雑かつ、実験期間中はかなりの体力も必要です。しかし、大学院で得られる知的財産や、人との繋がりは私にとってかけがえのない財産となっています。社会貢献につながる研究が行えるよう、これからも楽しく、しっかりと学んでいきます。   【関連リンク】 日本理学療法士学会ホームページ(採択結果 令和2年度を参照ください) 畿央大学大学院健康科学研究科 1分ムービー「働きながら通える畿央大学大学院」のヒミツって?

2020.05.12

森岡教授の学術論文が「TOP DOWNLOADED PAPER」に選出されました。

  ニューロリハビリテーション研究センター長の森岡 周 教授が筆頭著者の学術論文「Motor-imagery ability and function of hemiplegic upper limb in stroke patients」が、American Neurological Associationのオフィシャルな学術雑誌である「Annals of Clinical and Translational Neurology(Impact factor 4.656)」の2018-2019年で最も多くダウンロードされた論文に選ばれました。日頃から森岡教授は「社会に求められる研究を」と公言されています。畿央大学では、今後も多くの方々に読まれ、使われて、幅広く社会に役立つ研究を実践していきます。 森岡教授、おめでとうございます!   論文情報 Morioka S, Osumi M, Nishi Y, Ishigaki T, Ishibashi R, Sakauchi T, Takamura Y, Nobusako S. Motor-imagery ability and function of hemiplegic upper limb in stroke patients. Ann Clin Transl Neurol. 2019 Feb 17; 6(3): 596-604.   PubMed https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30911582#

2020.05.01

「変形性膝関節症」に関する共同研究が論文として公表されました!~理学療法学科教員

オーストラリアの研究者との共同研究が論文として公表されました! ~変形性膝関節症患者さんの日々の身体活動量と心理的側面の特徴との関係~   この度、オーストラリアのメルボルン大学およびモナシュ大学の研究者との共同研究が、筋骨格系の疾患や障害に関する国際学術誌「BMC Musculoskeletal Disorders」に掲載されました。論文のタイトルは「The association between psychological characteristics and physical activity levels in people with knee osteoarthritis: a cross-sectional analysis」(変形性膝関節症患者における心理的側面の特徴と身体活動レベルとの関係:横断的研究)です。 この研究では、変形性膝関節症(以下、膝OA)の患者さんの心理的側面の特徴と、万歩計を用いて測定した日常の身体活動量との関係について調べています。 心理的側面の特徴については「うつ症状」「膝OAの症状への対処についての自己効力感(注1)」「運動恐怖(注2)」「痛みに対する破局的思考(ネガティブな考え)」を取り上げ、それらの程度と身体活動量との関係を調査しました。 その結果、運動への恐怖心が少ない人や痛みに対するネガティブな考えが少ない人ほど、身体活動量は多くなっていました。うつ症状が少ない人や痛みや症状に対処する自己効力感が高い人ほど身体活動量が多い傾向もみられましたが、今回の研究結果からははっきりと結論づけることはできませんでした。   また、身体活動量は患者さんの心理的な側面だけでなく、患者さんのその他さまざまな内的・外的な要因と関連することが考えられます。今回の研究結果からは因果関係までは言及できませんが、患者さんの状況に応じて、もし運動を過度に避けようとしている方がおられたり、痛みに対して過剰に反応するような方がおられたりする場合には、そういった側面の問題を和らげるような関わりをすることによって、日々の活動量を増やしていくことができるかもしれません。   (注1)自己効力感:自分がある状況において必要な行動をうまく遂行できるという、自分の可能性についての認知や自信。 (注2)運動恐怖:運動することによって現在身体に現れている痛みなどの症状が増悪してしまうのではないかという思いから、運動を避けようとする考え。   Uritani D, Kasza J, Campbell PK, Metcalf B, Egerton T. The association between psychological characteristics and physical activity levels in people with knee osteoarthritis: a cross-sectional analysis. BMC Musculoskeletal Disorders 21. 269. 2020. (無料で閲覧、ダウンロードすることが可能です)   【関連記事】 変形性膝関節症に関する研究の途中経過が学会誌に掲載されました~理学療法学科教員 理学療法学科卒業生の卒業研究が国際学術雑誌に掲載!~理学療法学科 「足趾握力」に関する論文が国際誌に掲載!~理学療法学科教員

2020.04.27

博士後期課程の宮脇さんが日本学術振興会の特別研究員に採用されました。

本学大学院健康科学研究科博士後期課程の宮脇 裕さんが、日本学術振興会の特別研究員に採用されることが決定しました。     「特別研究員」制度は優れた若手研究者に、日本の学術研究の将来を担う創造性に富んだ研究者の養成・確保に資することを目的とする制度です。   本学からは開学以来2人目の採用となりました。 最初の採用は本学博士後期課程を修了された中野 英樹さんで、現在は京都橘大学健康科学部理学療法学科の准教授として活躍されています。 日本の学術研究をリードする若手研究者の育成に大きく貢献できることとなり、研究機関として喜ばしい限りです。宮脇さんの今後の活躍に期待いたします。   日本学術振興会 令和2年度特別研究員採用者 健康科学研究科博士後期課程 宮脇 裕 受入研究者:健康科学研究科 教授 森岡 周 研究課題名:「脳卒中患者における自己・外界由来感覚の自他帰属変容と身体機能回復との関連」         【関連リンク】 日本学術振興会ホームページ(DC2採用者一覧を参照ください) 大学院生の中野さんが日本学術振興会特別研究員に

2020.04.02

令和2年度入学生に学生証を交付しました。

2020年4月2日(木)、令和2年度の入学生に対して学生証等が交付されました。健康科学部349名(理学療法学科76名、看護医療学科99名、健康栄養学科101名、人間環境デザイン学科73名)、教育学部197名、健康科学研究科38名(修士課程35名、博士後期課程3名)、教育学研究科修士課程2名、助産学専攻科10名、臨床細胞学別科5名、あわせて601名の新しい畿央生が誕生しました。     新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するため、今年度は残念ながら式典を見合わせ、学科等の単位で講義室に分かれ、開講に向けて必要な手続きを短時間でおこないました。新入生と教職員だけのこじんまりとした雰囲気の中でしたが、キャンパス周辺の桜とともに、新たな門出を祝う一日となりました。   保護者の皆様、ご親戚の皆様にはお子様の晴れの姿を見届けていただけず、大変申し訳ございませんでした。心よりお詫び申し上げます。   本日、人生の新たな一歩を踏み出すことになった皆さま、おめでとうございます。このような形になりましたが、教職員一同心より歓迎の意を表するとともに、皆さまが入学当初の目標を達成することができるよう、全力を尽くしてまいります。厳しいスタートとなりましたが、夢を力に変えて、ともにがんばりましょう。    

2020.03.19

脳卒中後に自他帰属のエラーが生じることを上肢運動タスクで解明~ニューロリハビリテーション研究センター

私たちが動作の中で得ている感覚は、自分自身の運動により生じた「自己由来感覚」と、他者や外界から生じた「外界由来感覚」に大別できることが知られています。そして、これらの感覚を適切に区別する自他帰属のプロセスは、正確な運動を達成するために不可欠であることが明らかにされています。畿央大学大学院博士後期課程の宮脇裕氏と森岡周教授は、仁寿会石川病院リハビリテーション部の大谷武史室長と共同し、感覚運動障害を有する脳卒中患者が、運動に対する感覚フィードバックを適切に自他帰属できているのかを検証しました。この研究成果は、PLOS ONE誌(Agency judgments in post-stroke patients with sensorimotor deficits)に掲載されています。 研究概要 私たちは、日常生活において常に何らかの感覚刺激を得ながら動作を遂行しています。得られた感覚は、自分自身の運動によって生み出された感覚なのか、または自分が関与していない他者や外界から生じた感覚なのか、脳内で区別されると言われています。この区別は「自他帰属」と呼ばれており、これが上手くいかなくなると、「自分が運動を制御している感じ」である運動主体感が損なわれたり、不必要な感覚に基づいて運動を遂行してしまったりすることが明らかにされています。自他帰属の障害を招く疾患の一つとして脳卒中が疑われていますが、運動麻痺などの感覚運動障害が自他帰属に及ぼす影響は十分に明らかになっていません。 宮脇裕氏(畿央大学大学院博士後期課程、慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室)と森岡周教授は、大谷武史室長(仁寿会石川病院リハビリテーション部)と共同し、上肢運動課題を用いて、感覚運動障害を有する脳卒中患者の自他帰属について検証しました。その結果、健常高齢者に比べ脳卒中患者では、他者運動を自分の運動と判断してしまう誤った自他帰属をすることが示されました。また、興味深いことに、この誤帰属は非麻痺肢における運動でも同様に観察されました。 本研究のポイント ・脳卒中患者は、たとえ高次脳機能障害を有していなくとも、感覚フィードバックの誤帰属を起こしうる ・誤帰属は、非麻痺肢の運動でも起こりうる 研究内容 参加者は、モニタ上に水平に表示されたターゲットラインをなぞるように、ペンタブレット上で水平運動を遂行しました(図1)。この際、視覚フィードバックとしてカーソルが表示されました。カーソルの動きに、自分のリアルタイムの運動が反映されている場合(自己運動条件)と、事前に記録した他者運動が反映されている場合(他者運動条件)がありました。参加者は、自分の実際のペン運動とカーソル運動の時空間的な一致性に基づいて、カーソルが自己運動と他者運動のどちらを反映しているか判断することを求められました。       図1:実験装置   結果として、健常高齢者に比べ脳卒中患者では、他者運動条件において有意に誤帰属(他者運動のカーソルを自分の運動と判断)したことが示されました(図2)。また、この誤帰属は非麻痺肢で運動を遂行したときでさえ観察されました(図3)。     図2:脳卒中患者と健常高齢者間の比較       図3:麻痺肢と非麻痺肢間の比較 本研究の意義および今後の展開 正確な運動制御を達成するためには、適切な感覚の自他帰属が不可欠です。脳卒中患者の誤帰属がなぜ起こっているのか、またその影響はどのようなものなのかさらに精査することで、脳卒中リハビリテーションの新たな可能性を今後も探求していく必要があります。 論文情報 Yu Miyawaki, Takeshi Otani, Shu Morioka: Agency judgments in post-stroke patients with sensorimotor deficits. PLoS One, 2020. 問い合わせ先 畿央大学大学院健康科学研究科 博士後期課程 宮脇裕(みやわき ゆう) E-mail: yu.miyawaki.reha1@gmail.com Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600

2020.03.07

【学生・保護者の皆さまへ】卒業証書等授与式に関するご案内(3/11・12追記)

既にお知らせいたしました通り、新型コロナウイルスによる感染症の拡大を受けて、今年度は卒業生、修了生全体での卒業式典および卒業パーティの実施を見送ることといたしました。   充実した学生生活の最後を飾る皆さんが楽しみにしてくださっている行事を見送ることは、本学といたしましてもまことに残念でなりませんが、現状では何よりも皆様の安全を守ることこそ第一と考え、このような結論に至りました。ご理解を賜れましたら幸甚に存じます。   なお、3月13日(金)には、各学科・専攻科・別科・研究科単位で卒業証書等授与式を、以下の通り実施することにいたしました。いずれも卒業生、修了生、教職員のみの場としますので、保護者等の付き添いの方の登学は控えていただきますようにお願いいたします。   【3月12日追記】 感染拡大防止を鑑み、下記に該当される方は出席をとりやめてください。 ・発熱等の風邪や咳などの呼吸器症状がみられる方 ・中国、韓国、イラン、イタリア、サンマリノなど新型コロナウイルスの感染が確認されている国から帰国して2週間以内の方 ◆3/13(金)卒業証書等授与式 会場◆ 【学部】 健康科学部  理学療法学科  10:00より P301講義室  看護医療学科  10:00より P201講義室  健康栄養学科  10:00より L101講義室  人間環境デザイン学科 10:00より R201講義室 教育学部  現代教育学科  10:00より KB04講義室   【大学院】 健康科学研究科  11:00より P302講義室   【専攻科】 助産学専攻科   11:00より P202講義室 【3月11日追記】 上記、本学会場で実施される卒業証書等授与式にお越しになる方は、遅くとも13:00までに学外へ退出、交通機関が空いている間に帰宅してください。 【別科】 臨床細胞学別科  16:00より 於:CTC梅田   ※本学各講義室は30分前より入室可能です。 ※出席を必須とする式典ではありません。ご自身の判断でお越しください。欠席された場合でも後日、学生支援センター窓口へお越しいただければ、卒業証書等は個別にお渡しいたします。 ※風邪の症状や発熱等がある場合は出席をお控えください。なお、マスク等のご用意もいたしかねますので、ご了承ください。 ※式の終了後は速やかに帰宅し、以後不要不急の外出は控えるようにしてください。 ※本学周辺の道路や、商業施設駐車場への駐停車は、短時間であっても地域住民の皆さまのご迷惑になりますので、厳にお慎みください。 ※在学生も登学の自粛期間ですので、残念ではありますが改めて登学自粛をお願いします。 ※今後、政府の方針を含めた情勢の変化によっては上記の予定の変更が生じる可能性はございます。その際にはホームページ等でお知らせをいたします。   新型コロナウイルスの動向はいまだ予断を許さぬものがあります。皆様くれぐれも体調管理にはお気を付けください。