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2026.06.12

令和8年度 在外研究員 研究計画説明会を開催しました。

本学には、教育研究水準の向上と国際交流の進展に資するため、学術の研究・調査等のために外国に在外研究員を派遣する制度があります。令和8年度は理学療法学科森岡教授と現代教育学科中垣准教授の2名がこの制度を利用され、在外研究員として赴任されます。海外赴任に先立ち、2026年6月4日(木)に研究計画説明会を開催し、教職員35名が参加しました。       研究課題名:脳卒中リハビリテーションにおける文化的背景の影響:身体的自己の再構築と神経理学療法教育の日仏比較研究 受入研究者:Yves Rossetti 教授 在外研究機関:Centre de Recherche en Neurosciences de Lyon, Université Claude Bernard Lyon 1, Inserm, CNRS 在外研究期間:令和8年7月1日~令和9年3月31日   理学療法学科 森岡 周教授は、2026(令和8)年7月1日から2027(令和9)年3月31日までの期間、フランスのリヨン神経科学研究センターで研究されます。 森岡教授は神経リハビリテーション学・身体性認知科学が専門で、今回の在外研究以前からJST-CREST「Narrabody(ナラティブ・エンボディメント)」プロジェクトを通じて、哲学教育や自己を言語化する文化を持つフランスとの共同研究を進められており、受入研究者の Yves Rossetti 教授はその仏側代表者でもあります。 日本とフランスの文化の違いを踏まえ、脳卒中者の回復過程を「身体機能」だけでなく「自己の再構築(語り)」を含む多層的なプロセスとして捉え、「患者がどう生き直すか」に焦点を当てた新しい回復過程に関する理論を提唱し、それを神経理学療法教育に活かそうとされています。 また、リヨン神経科学研究センターは Inserm・CNRS・リヨン第1大学が共同で運営する「ジョイントユニット(UMR)」という日本にはない仕組みの研究拠点で、森岡教授は客員教授として、大学院生や研究者の指導にもあたられます。   ▼ボジョレーでの日仏国際共同研究CREST会議の様子     研究課題名:児童が主体的に外国語(英語)を学ぶことのできる教材・指導法の開発 -自己調整学習、ISLA、および母語の影響を踏まえた言語学的視点から- 受入研究者:白井恭弘教授 在外研究機関:Case Western Reserve University (アメリカ) 在外研究期間:令和8年8月1日~令和9年7月31日  現代教育学科 中垣准教授は2026(令和8)年8月1日から2027(令和9)年7月31日までの期間、アメリカのCase Western Reserve Universityで研究活動をされます。 中垣先生の専門は英語教育学です。在外研究期間中は、アメリカのCase Western Reserve Universityにおいて、白井 恭弘教授のもと、日本の児童が主体的に英語を学ぶための教材や指導法の開発に関する研究に取り組まれます。 滞在中は、白井教授が担当される「応用言語学」や「第二言語習得論」の授業にも参加し、専門的な知見を深める予定です。また、ホームステイを通して現地での生活を経験しながら、アメリカの文化や教育についての理解も深められるそうです。 お二人の先生方には、日本国内では経験できないような発展的な研究でグローバルにご活躍いただくことを期待しています。

2026.06.05

第1回日本理学療法学会連合学術総会において、森岡 周センター長が「臨床研究学術賞」を受賞します。~ニューロリハビリテーション研究センター

畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター長の森岡周教授が、2026年7月24日(金)~26日(日)に開催される第1回日本理学療法学会連合学術総会において、「臨床研究学術賞」を受賞することが決定しました。 日本理学療法学会連合は、現在20の法人学会・研究会を束ね、理学療法学の多様な専門領域を横断する学術組織です。日本における理学療法が制度的な歩みを始めてから60年を超えた現在、その専門分化した学術領域を「連合」として結び直す第1回学術総会が開催されます。この歴史的な第1回総会において、臨床研究学術賞を受賞することは、本センターが継続してきた臨床研究の歩みにとって、大変意義深い栄誉です。   森岡教授は、1992年に理学療法士免許を取得して以降、臨床現場で生じる問いを研究へと発展させることを一貫して重視し、脳卒中後の運動障害、高次脳機能障害、身体性、慢性疼痛、神経リハビリテーションに関する研究を進めてきました。畿央大学では20年以上にわたり、臨床と研究を往還するニューロリハビリテーション研究を推進し、多くの共同研究者、大学院生、臨床家とともに研究活動を展開してきました。     また、同総会では、基礎研究学術賞を受賞された新潟医療福祉大学の大西秀明先生とともに、「理学療法学術賞受賞記念講演」が行われます。   理学療法学術賞受賞記念講演 日時:2026年7月24日(金) 10:00〜11:00 会場:札幌コンベンションセンター 第1会場(1F 大ホールA) 講師:大西 秀明、森岡 周 座長:網本 和 ※オンデマンド配信あり https://www.gakkai.co.jp/jspt1/program.html#02   今回の受賞を励みに、畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターでは、今後も臨床に根ざした問いを大切にしながら、理学療法学およびニューロリハビリテーションの発展に貢献する研究・教育活動を推進してまいります。

2026.06.01

自他弁別閾値付近での運動経験は運動主体感の感度を向上させる-運動主体感の可塑性-~ニューロリハビリテーション研究センター

この運動は自分自身が引き起こしたと感じる意識経験を運動主体感といい、リハビリテーションにおいて大事な感覚とされています。畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターの林田一輝 客員研究員(宝塚医療大学助教)と同センター長の森岡周 教授らの研究チームは、立教大学の温文 教授との共同研究において、自分の運動かどうかを判断できる境界付近での運動の繰り返し経験によって、運動主体感の感度を向上させることを報告しました。 この研究成果は、Acta psycologica誌(Near the self–other discrimination threshold, experience of goal-oriented movement increases the sensitivity of the sense of agency)に掲載されています。この研究は、CREST(ナラティブ・エンボディメントの機序解明とVR介入技術への応用)の一部として行われています。 研究概要 この運動は自分自身が引き起こしたものだと感じる意識経験を運動主体感といい、身体的な自己感を形成する上で重要な感覚と言われています。そのため運動主体感はリハビリテーションを進める上で大事な意識経験とされていますが、その可塑的変化の可能性についてほとんどわかっていませんでした。畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターの林田一輝 客員研究員(宝塚医療大学助教)と同センター長の森岡周 教授らの研究チームは、立教大学の温文 教授との共同研究において、自分の運動かどうかを判断できる境界付近での目標志向運動の繰り返し経験によって、運動主体感の感度を向上させることを実験的に立証しました。対照実験として、自分の運動であることを容易に判断できる条件下での繰り返し経験では、運動主体感の変化は認められませんでした。この研究成果は運動主体感への介入可能性についての発見であり、リハビリテーション領域のみならず、心理学分野における発展性にも貢献しうる可能性を秘めています。 本研究のポイント ■自分の運動かどうかを判断できる境界付近での繰り返し経験によって運動主体感の感度を向上させる可能性がある 研究内容 この運動は自分自身が引き起こしたものだと感じる意識経験を運動主体感といい、身体的自己(embodiment)を形成する上で重要な感覚と言われています。運動主体感はリハビリテーションを進める上で大事な意識経験とされていますが、その可塑的変化の可能性については不明でした。例えば、脳卒中後の感覚運動障害によって感覚運動不一致が生じた結果、運動主体感は低下しますが、その回復プロセスに応じて改善が期待されます。しかしながら、ごく短期間の可塑的変化についてもわかっていませんでした。本研究では、明確に定義された外部目標を持ち、かつ自他弁別許容範囲内の感覚運動不一致の運動経験を行うことは、運動制御への注意を向けさせ、それによって運動主体感に対する感受性を高める可能性を検証しました。 実験は、健常若年者を対象に行われ、自他弁別閾値付近の運動を経験する中程度不一致群とほとんど自己の運動と判断できる運動を経験する低不一致群に分けられました。事前段階、経験段階、事後段階の3段階で構成されました。事前および事後段階では、自己他者弁別課題を行いました(図1左)。この段階では、マウスカーソルの運動に対する視覚フィードバックが自己運動制御レベル100%(他者運動混入0%)から自己運動制御レベル0%(他者運動混入100%)をランダムに提示され、その視覚フィードバックが自己の運動に基づくかどうかを判断する不一致検出課題でした。この課題によって、運動主体感の感受性の定量化および個々の不一致検出閾値を設定することができました。経験段階では目標到達運動課題を行いました(図1右)この段階で中程度不一致群は、自己運動制御が閾値レベル、閾値より10%低いレベルおよび閾値より10%高い3つのレベルを経験しました。低不一致群は、自己運動制御が80%、90%および100%のレベルを経験しました。 図1.実験課題 実験参加者は連続的に五芒星を書くように求められました。この例でモニター上のカーソルは、実験参加者自身のマウス操作に関して「自己運動制御70%」の条件を表しています。各試行の後、「コントロールできていると感じたか」という質問に対して、動きを制御できていると感じた場合は「はい」と答えるよう指示されました。図1右.目標到達運動課題:上下左右にランダムに提示するターゲットにマウスで到達させる課題です。低不一致群は一貫して自己運動制御80-100%レベルでした。中等度不一致群では、例えば不一致検出閾値が50%の場合、自己運動制御が40%、50%、60%レベルで目標到達運動を遂行しました。 実験の結果、中等度不一致群では事前段階に比べて事後段階で運動主体感の感度が向上しました(図2).これまでは不一致の経験は運動主体感を低下させるというのが定説でしたが、本研究はこれに異議を唱える結果となっています。 図2.運動主体感の感受性の変化 自分の運動か判断できる絶妙なラインでの到達運動の繰り返し経験は、自己の運動制御にほどよい注意をもたらし、運動主体感の感受性をむしろ上げたのではないかと考えられます。これはリハビリテーションにおける運動課題の難易度を設定する上で重要なキーワードとなる可能性があります。運動課題をできるかできないかという視点のみならず、その運動が自己のもと判断できるかどうかという視点も合わせて考慮することで運動学習効果やリハビリテーション効果に寄与するかもしれません。 本研究の臨床的意義および今後の展開 本研究成果によって、運動主体感の可塑的変化の可能性について言及することができました。 今回は短時間での変化でしたが、この継続効果などを検証する必要があります。 論文情報 Kazuki Hayashida, Mizuho Mishima, Miho Ohnishi, Daito Iyanaga, Wen Wen, Shu Morioka Near the self–other discrimination threshold, experience of goal-oriented movement increases the sensitivity of the sense of agency Acta Psychol (Amst). 2026 May 21;267:107095 問い合わせ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 客員研究員 林田一輝   畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 教授 森岡 周 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.morioka@kio.ac.jp

2026.06.01

進行期パーキンソン病患者における足こぎ車椅子と手動車椅子の持久性および効率性:予備的研究~ニューロリハビリテーション研究センター

進行期パーキンソン病(Parkinson’s disease: PD)患者では、歩行能力の低下により車椅子が必要となります。手動車椅子では直進駆動や方向転換が困難となり、移動が制限される場合がありますが、足こぎ車椅子ではペダリング動作とジョイスティック操作によりそれらの制約が軽減され、効率的かつ持続的な駆動が可能となる可能性があります。しかし、その有用性はこれまで客観的に検証されていませんでした。畿央大学大学院博士後期課程の金蔵満百合氏と岡田洋平教授らは、進行期PD患者を対象に、6分間駆動テストを用いて足こぎ車椅子と手動車椅子の持久性および効率性を比較しました。その結果、足こぎ車椅子は、方向転換を含む走行路において、手動車椅子よりも長距離を効率的に移動できる可能性が初めて示されました。本研究成果はJournal of Movement Disorders誌(Endurance and Efficiency of Cycling and Manual Wheelchairs in Late-Stage Parkinson’s Disease: A Preliminary Study)に掲載されています。 研究概要 進行期パーキンソン病(Parkinson’s disease: PD)では、歩行能力の低下により車椅子での移動が必要となります。手動車椅子では直進駆動や方向転換が困難で、移動が制限される場合がありますが、足こぎ車椅子はペダリング動作とジョイスティック操作によりそれらの制約が軽減され、効率的で持続的な駆動が可能となる可能性があります。しかし、進行期PDにおいて方向転換を含む連続的な移動におけるそれらの比較検証は行われていませんでした。畿央大学大学院博士後期課程の金蔵満百合氏と岡田洋平教授らの研究チームは、Hoehn and Yahr stage 4~5の進行期PD患者9名を対象に、足こぎ車椅子と手動車椅子の持久性および効率性を比較する予備的研究を実施しました。対象者は、方向転換を含む走行路で、足こぎ車椅子と手動車椅子の両方による6分間駆動テストを実施し、総駆動距離、駆動速度、心拍数の変化量、効率性の指標であるPhysiological Cost Index(PCI)を評価しました。PCIは、心拍数の変化量を駆動速度で除して算出しました。 その結果、すべての対象者で、足こぎ車椅子は手動車椅子と比較して、6分間の総駆動距離と駆動速度が有意に高値を示しました。一方で、駆動前後の心拍数の変化量や主観的疲労感には有意差を認めず、より長距離かつ効率的な移動を可能にすることが示されました。 これらの結果から、進行期PD患者において、足こぎ車椅子は、方向転換を含む走行路で持久性と効率性の高い移動手段である可能性が初めて示されました。今後は、対象者数を増やした検証や、生活場面における実際の使用効果を明らかにする研究が期待されます。 本研究のポイント ■進行期パーキンソン病患者9名を対象に、方向転換を含む屋外走行路で、手動車椅子と足こぎ車椅子による6分間駆動テストを実施し、車椅子駆動における持久性と効率性を比較しました。持久性は総駆動距離と駆動速度で評価し、効率性は心拍数の変化量を駆動速度で除して算出されるPhysiological Cost Index(PCI)で評価しました。 ■足こぎ車椅子では、手動車椅子と比較して総駆動距離と駆動速度が大きく、方向転換を含む連続的な走行において、より長距離の移動が可能であることが示されました。Hoehn and Yahr stage 5の患者に限定した解析でも、同様に足こぎ車椅子で駆動距離と速度が大きい傾向が示されました。 ■足こぎ車椅子では、駆動効率を示すPCIが手動車椅子と比較して低く、より効率的な移動が可能であることが示されました。一方で、心拍数の変化量や主観的疲労感には有意差を認めず、足こぎ車椅子は心負荷や疲労感を増大させることなく、進行期PD患者の自律的な移動や生活範囲の拡大に貢献する可能性が示されました。) 研究内容 本研究は、進行期パーキンソン病(Parkinson’s disease: PD)患者における足こぎ車椅子および手動車椅子の持久性と効率性を比較検証することを目的とした予備的研究です。Hoehn and Yahr stage(HY) 4~5の進行期PD患者9名を対象に、足こぎ車椅子と手動車椅子の6分間駆動テストを実施しました。本研究では、屋外の平坦な走行路において、方向転換を含む条件で計測を行いました。すべての対象者は、より症状の軽い側へ方向転換する条件で走行を開始しました。持久性の指標として総駆動距離と駆動速度を評価し、効率性の指標として、心拍数の変化量を駆動速度で除して算出されるPhysiological Cost Index(PCI)を用いました。足こぎ車椅子はペダリングにより駆動し、対象者は利き手でジョイスティックを操作して方向転換しました(図1)。 図1:走行路および手動車椅子と足こぎ車椅子 その結果、足こぎ車椅子は手動車椅子と比較して、方向転換を含む走行路において、より長距離かつ効率的な移動を可能にすることが明らかになりました。一方で、心拍数の変化量や主観的疲労感には有意差を認めず、足こぎ車椅子は心拍数の上昇や疲労感を増大させることなく、より長距離の移動を可能にすることが明らかになりました。 図2:手動車椅子と足こぎ車椅子における総駆動距離および心拍数の変化量,駆動効率の比較 さらに、HY stage 5の6名のPD患者においても、足こぎ車椅子では手動車椅子と比較して駆動距離と駆動速度が大きく、PCIが低い傾向が示されました。これらの結果は、歩行能力が著しく低下した進行期PD患者においても、足こぎ車椅子がより長距離かつ効率的な移動を可能にすることを示唆しています。   以上より、進行期PD患者において、足こぎ車椅子は、手動車椅子と比較して持久性および効率性の高い移動手段である可能性が示され、今後は、対象者数を増やした検証や、生活場面における実際の使用効果を明らかにする研究が期待されます。 本研究の臨床的意義および今後の展開 本研究結果は、進行期PD患者における足こぎ車椅子および手動車椅子の持久性と効率性を明らかにし、移動手段が限られる進行期PD患者の自律的な移動や生活範囲の拡大を支援する上で重要な知見であると考えます。今後は、足こぎ車椅子の実生活場面での有用性を検証するとともに、手動車椅子における運動学的な特性についても検討し、進行期PD患者に適した車椅子移動支援のあり方を進めていく予定です。 論文情報 Mayura Konzo, Masaru Narita, Masaki Naito, Ayumi Ide, Taiyo Kai, Dai Wakabayashi, Wataru Fujita, Tomohiro Shibata, Yohei Okada Endurance and Efficiency of Cycling and Manual Wheelchairs in Late-Stage Parkinson’s Disease: A Preliminary Study J Mov Disord. 2026 Apr;19(2):203-207. 問い合わせ先 畿央大学大学院健康科学研究科 博士後期課程 金蔵満百合   畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 教授 岡田 洋平 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: y.okada@kio.ac.jp

2026.05.27

発達性協調運動症を有する児の運動イメージ能力の低下を2種類の課題で確認~ニューロリハビリテーション研究センター

運動イメージ(motor imagery: MI)とは、実際の運動を伴わず、運動を脳内でシミュレーションする認知過程のことをいいます。MIは、運動の計画、調整、実行のイメージも含み、これらの点で実際の運動と機能的に同等であると考えられています。先行研究において、2種類のMI課題(手の左右識別課題と両手結合課題)を用いた研究では、年齢が増加するほどMI能力が向上することが分かっていますが、これらの課題を用いた発達性協調運動症(Developmental Coordination Disorder: DCD)を有する子どものMI能力については、十分に検討されていませんでした。畿央大学大学院博士後期課程の橋添健也氏、信迫悟志教授らの研究チームは、2種類のMI課題を用いて、DCDを有する児のMI能力を詳細に検討しました。この研究成果はExperimental Brain Research誌 (Impaired motor imagery in children with developmental coordination disorder: task-specific deficits and links to ADHD and ASD traits)に掲載されています。 本研究のポイント ■DCD児では、両方のMI課題においてMI能力の低下がみられた。 ■HLR課題の正答率は、DCDQおよびADHDの不注意特性と関連していた。 ■BC課題のICEは、ASD特性と関連していた。 ■DCD児では、MIを想起できるものの、その質は低下していることが示された。 研究概要 本研究では、6~11歳のDCD児と定型発達児(Typical Developing: TD)を対象に、子どもたちがどれだけ正確に手のMIを想起できるかを評価するため、2種類のMI課題を実施しました。1つ目は、最も代表的なMI課題である手の左右識別(hand laterality recognition: HLR)課題(図1)で、モニター上に提示されるさまざまな角度・向きの手の画像を見て、それが左手か右手かをMIを用いて判断するものです。この課題では、正反応時間(RT)や正答率、RTを正答率で除したMI効率に加えて、生体力学的制約(身体の動きにくさ)効果や手の姿勢の効果の有無を指標とし、子どもたちのMI使用の程度を測定しました。2つ目は、両手結合(bimanual coupling: BC)課題(図2)で、次の3条件が含まれます。 ・片手条件:利き手でまっすぐな線を繰り返し描く。 ・両手条件:利き手でまっすぐな線を描きながら、他方の手で同時に円を描く。 ・MI条件:利き手でまっすぐな線を描きながら、非利き手で円を描いているところを頭の中でイメージする(実際には非利き手を動かさない)。 BC課題では、利き手で描いた反復直線を計測し、各条件で描かれた線の歪みの程度を楕円化指数(ovalization index: OI)として算出しました。特に、MI条件のOIから片手条件のOIを減算した値(イメージ干渉効果:Imagery Coupling Effect: ICE)は、MIが適切に想起できていることの定量指標となります。さらに、4つの質問紙(Developmental Coordination Disorder Questionnaire日本語版: DCDQJ; Social Communication Questionnaire: SCQ; Attention Deficit/Hyperactivity Disorder Rating Scale-IV: ADHD-RS-IV; Depression Self-Rating Scale for Children: DSRS-C)を用いて、DCD児のDCD、注意欠如多動症(ADHD)、自閉スペクトラム症(ASD)といった神経発達症の特性および抑うつ特性とMIとの関連性も検討しました。     研究内容 6~11歳の子ども(DCD群15名、TD群15名)を対象に、HLR課題とBC課題を実施しました。得られたデータは、DCD群とTD群の群間比較、それぞれの群内での相関分析、HLR課題におけるRT、正答率、MI効率の比較、およびBC課題における片手条件、両手条件、MI条件の群内比較を通じて、DCD児のMI能力を検討するために用いられました。   HLR課題 群内比較では、TD群においてRT、正答率、MI効率のすべてで生体力学的制約効果を認めましたが、DCD群ではRTとMI効率においてのみ認めました(図3)。また、手の姿勢の効果はTD群にのみ認めました(図4)。     図3.生体力学的制約効果   図4.手の姿勢の効果   群間比較では、正答率とMI効率において、DCD群がTD群よりも有意にパフォーマンスが低いことが示されました(図5)。さらに、DCD群において、正答率とDCD特性およびADHDの不注意特性との間に有意な相関関係を認めました。   図5.HLR課題の群間比較結果   BC課題 ICE(BC課題におけるMI能力の指標)についても、DCD群がTD群よりも有意にパフォーマンスが低いことが示されました(図6)。加えて、DCD群において、ICEとASD特性との間に有意な相関関係を認めました。 図6.BC課題の群間比較結果   これらの結果から、DCD児はMIを想起できているものの、その能力は低いことが示されました。また、HLR課題では、視覚刺激がDCD児のMI想起の手がかりとして機能した可能性が示唆されました。それに対し、BC課題では、視覚刺激を用いずにMIを想起することに加え、利き手で反復直線を描きながら、非利き手で円運動を行うイメージをするといった二重注意課題であるため、BC課題の難易度の高さがパフォーマンスの低下に影響した可能性も考えられました。 本研究の臨床的意義および今後の展開 DCD児のMI能力を測定する際には、DCD特性およびADHDの不注意特性が強い子どもにはHLR課題、ASD特性が強い子どもにはBC課題を用いることで、より感度高く測定できる可能性が示唆されました。 MI能力は、前述の通り、実際の運動と認知プロセスのうえで同等の機能を有すると考えられているため、協調運動に困難さを呈するDCD児への評価において、HLR課題やBC課題が有用である可能性があります。また、リハビリテーションにおける介入効果の評価や、運動学習支援への応用も期待されます。 論文情報 Hashizoe K, Nakai A, Nobusako S. Impaired motor imagery in children with developmental coordination disorder: task-specific deficits and links to ADHD and ASD traits. Exp Brain Res. 2026 Mar 17;244(4):73. doi: 10.1007/s00221-026-07265-2.   ・関連する先行研究 Nobusako S, Tsujimoto T, Sakai A, Yokomoto T, Nagakura Y, Sakagami N, Fukunishi T, Takata E, Mouri H, Osumi M, Nakai A, Morioka S. The use of motor imagery in 6-7-year-old children is not robust: Evidence from two motor imagery tasks. Hum Mov Sci. 2025 Jun;101:103362. doi: 10.1016/j.humov.2025.103362. 問い合わせ先 畿央大学大学院健康科学研究科 博士後期課程 橋添 健也   畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 畿央大学健康イノベーション教育研究センター 教授 信迫 悟志 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.nobusako@kio.ac.jp

2026.05.27

転倒歴のある高齢者を姿勢のゆらぎから捉える-重心動揺の時間的構造に着目した探索的研究~ニューロリハビリテーション研究センター

高齢者の転倒は、けがや活動量の低下、生活の自立度の低下につながる重要な課題です。これまで、重心動揺計を用いた評価では、動揺の大きさや速度などの量的指標が主に用いられてきました。しかし、姿勢制御の変化は、「揺れの大きさ」のみでは十分に捉えられない可能性があります。畿央大学大学院博士後期課程の若林汰氏と岡田洋平教授らは、公開データを用いて高齢者の重心動揺データを解析し、従来の線形指標に加えて、ゆらぎの複雑性や規則性を示す非線形指標を算出しました。さらに、これらの指標と転倒歴との関連を検討しました。この研究成果はSensors誌 (Non-linear Center-of-Pressure Features Associated with Fall History in Older Adults: An Exploratory Analysis)に掲載されています。 本研究のポイント ■高齢者の重心動揺データを用いて、転倒歴と姿勢動揺指標との関連を探索的に検討した。 ■従来の動揺速度や動揺面積に加えて、マルチスケールエントロピーや再帰定量化分析など、姿勢動揺の時間的構造を示す非線形指標を解析した。 ■単一の指標では明確な群間差は認められなかったが、探索的な多変量解析では、非線形指標が転倒歴に関連する情報を補足する可能性が示唆された。 研究概要 高齢者の転倒は、骨折や活動量の低下、生活の質の低下につながる重要な健康課題です。転倒リスクを評価する方法の一つとして、立位時の重心動揺を測定する方法があります。従来は、重心の移動距離、動揺速度、動揺面積など、主に「どれだけ大きく揺れているか」を示す量的指標が用いられてきました。しかし、姿勢制御は視覚、前庭感覚、体性感覚、筋骨格系など複数の要素が相互に関わる動的な制御過程であるため、同じような揺れの大きさであっても、その背景にある制御戦略は異なる可能性があります。 そこで本研究では、公開されている高齢者の重心動揺データを用いて、転倒歴のある高齢者と転倒歴のない高齢者を比較しました。解析では、従来の線形指標に加えて、マルチスケールエントロピー、再帰定量化分析、フラクタル次元、Stabilogram Diffusion Analysis,Sway Density Curveなど、姿勢動揺の時間的構造や複雑性を捉える非線形指標を算出しました。また、年齢や身体特性、疾患、服薬状況などの背景因子の影響をできるだけ調整するため、傾向スコアマッチングを用いた解析も行いました。その結果、マッチング後の単一指標の比較では、転倒歴の有無による有意な差は認められませんでした。一方で、SHAPを用いた探索的な多変量解析では、姿勢動揺の時間的構造や複数の時間スケールに関わる非線形指標がモデル出力に比較的大きく関与する傾向が示されました。これは、転倒歴に関連する情報が、単一の動揺量指標として明確に現れるのではなく、複数の指標を組み合わせた姿勢制御の「質的な特徴」として反映される可能性を示すものです。 研究内容 本研究では、高齢者の転倒歴と立位姿勢動揺との関連を検討することを目的に、公開されている重心動揺データベースを用いました。対象は60歳以上の高齢者で、過去12か月間の転倒歴に基づき、転倒歴あり群と転倒歴なし群に分類しました。解析対象は、硬い床面上での開眼条件および閉眼条件における60秒間の静止立位データとしました。 まず、重心動揺の大きさやばらつきを評価するため、平均動揺速度、95%信頼楕円面積、前後方向・左右方向の速度、速度の標準偏差などの線形指標を算出しました。次に、姿勢動揺の時間的構造を評価するため、マルチスケールエントロピー、再帰定量化分析、フラクタル次元、Stabilogram Diffusion Analysis、Sway Density Curveなどの非線形指標を算出しました。これにより、単なる動揺量だけでなく、動揺がどのような時間的パターンで変化しているのかを評価しました。 背景因子の影響を調整するため、年齢、性別、BMI、ADL、疾患の有無、服薬数、障害の有無、装具使用の有無を用いて傾向スコアマッチングを行いました。その結果、マッチング後の単一指標の比較では、開眼・閉眼条件ともに、転倒歴の有無による有意な差は認められませんでした。一方で、SHAPを用いて各指標がモデル出力にどの程度寄与しているかを検討した結果、動揺速度などの従来指標に加えて、マルチスケールエントロピーや再帰定量化分析など、姿勢動揺の時間的構造を反映する非線形指標が比較的高く寄与する傾向が示されました(図1)。研究グループは、転倒リスクに関わる姿勢制御の特徴は、単一の指標では捉えにくく、動揺量と時間的構造を組み合わせて評価する必要があると考察しています。   図1.SHAP解析による姿勢動揺指標の寄与と安定性 本研究の臨床的意義および今後の展開 本研究の臨床的意義は、高齢者の転倒歴に関連する姿勢制御の特徴を捉えるうえで、従来の動揺速度や動揺面積などの量的指標だけでなく、姿勢動揺の複雑性や規則性といった「ゆらぎの質」に着目する重要性を示した点にあります。一方、本研究は公開データを用いた探索的解析であり、対象者数や転倒歴の情報には限界があります。そのため、本結果は臨床で直ちに使用できる判定指標を示すものではなく、今後の大規模研究に向けた仮説生成的知見として位置づけられます。 論文情報 Wakabayashi D, Okada Y. Non-Linear Center-of-Pressure Features Associated with Fall History in Older Adults: An Exploratory Analysis. Sensors (Basel). 2026 Apr 8;26(8):2298. 問い合わせ先 畿央大学大学院健康科学研究科 博士後期課程 若林 汰 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 教授 岡田 洋平 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: y.okada@kio.ac.jp ページト

2026.05.26

【ピザを共同開発】6/13、14イオン「大和郡山フェア」にて「大和丸なす」を主役にしたピッツァ4大学対抗でのPR販売を実施。

大和伝統野菜「大和丸なす」ピッツァを共同開発 イオン「大和郡山フェア」とサンプーペーで販売!   奈良県内の管理栄養士養成課程(畿央大学・近畿大学・帝塚山大学・奈良女子大学)の学生で構成された食育ボランティアサークル「ヘルスチーム菜良(なら)」に所属する各大学ヘルスチーム菜良は、大和の伝統野菜「大和丸なす」を主役にしたピッツアを大和郡山市活性化検討会の依頼のもと、イオンリテール株式会社と共同開発。 「4大学対抗ピザバトル」と銘打ち、イオン大和郡山店「大和郡山フェア」期間中の6月13日(土)・14日(日)に優勝をかけてPR販売いたします。     ↓クリックすると、各コンテンツに移動します。   イベント情報 4大学対抗ピザバトルについて 本学開発メニュー イベント情報(4大学対抗ピザバトル) 日 時 2026年6月13日(土)・14日(日) ・プレゼン:6月13日(土)16:00~ ・表彰式 :6月14日(日)17:00~ 場 所 イオン大和郡山店(大和郡山市下三橋町741) イベント情報(サンプーペーでの販売) 日 時 2026年6月15日(月)~29日(月)※なくなり次第終了 場 所 石窯焼きピッツェリア「サンプーペー」(大和郡山市北大工町12)   4大学対抗ピザバトルについて 大和郡山市三橋地区で戦後まもなくから栽培されている大和の伝統野菜「大和丸なす」は、東京、大阪、京都の料亭などでも用いられる高級食材として好評を得ていますが、地元奈良では販売機会が少なく、知名度アップが課題となっています。また、大和郡山市では地産地消促進計画に基づき、地産地消の推進を、奈良県では特定農業振興ゾーンとして「大和丸なす」の生産地である大和郡山市三橋地区が設定され「新たなレシピ開発による個人消費(大和丸なすファン)の拡大」を目指して取り組んでいます。 本企画は、2017年度から、イオンモール大和郡山で開催される大和郡山フェアにおいて、「大和丸なす」のPRと大和郡山産野菜の摂取量増加をめざし、大和の伝統野菜「大和丸なす」や大和郡山市産野菜を使用したピッツァ開発に取り組んでおり、今回で9回目となります(2020年度はコロナ禍で中止)。4大学対抗ピザバトルでは、独創的かつ個性的、また食育における地産地消をいかに考慮されているかとして、 ①彩り・見た目(SNS映え)の「見栄え」、②新しいアイディア・斬新さ・ネーミングの工夫等の「独創性」、③大和丸なすの素材の良さを生かしているかの「大和丸なす」、④実食による味覚評価の「食味」、⑤ピザのPRの「プレゼン」、⑥「販促物」、の6点について、審査委員が試食等を行った上で採点を行い、優勝ピザを決定いたします。(昨年度の優勝は奈良女子大学) 畿央大学ヘルスチーム菜良考案メニュー 「自然な甘さ広がる林檎と大和丸なすのデザートピッツア」       本ピッツアのコンセプトは「砂糖不使用で野菜と果物素材だけの自然な甘み」が味わえる新感覚のデザートピッツアです。林檎スライスの「シャキッ」、かぼちゃの種の「パリッ」と食感にもこだわりました。大和丸なすとりんご、ミニトマト、クリームチーズ、そして最後にかけるはちみつが絶妙のハーモニーです。そこに生ハムがアクセントになっています。「大和丸なす」を初めて食べる学生も多く、その大きさとしっかりとした食感、美味しさに驚いていました。このピッツアについて、6月15日(月)より、商品開発のご指導をいただいた石窯焼きピッツェリアサンプーペー様でも販売されます。イオンバージョンとは異なったピッツァをお楽しみください。 ポスター レシピ   問い合わせ先 畿央大学 健康科学部 健康栄養学科 野原  潤子 Tel: 0745-54-1601   Fax: 0745-54-1600 E-mail: j.nohara@kio.ac.jp

2026.05.22

痛みの性質からみた脳卒中後疼痛のメカニズム~ニューロリハビリテーション研究センター

脳卒中を発症した患者の約40%以上は、運動麻痺だけでなく「痛み」に苦しむことがあります。これは「脳卒中後疼痛」と呼ばれる症状であり、日常生活やリハビリテーションの進行に大きな不利益をもたらします。畿央大学大学院 健康科学研究科 博士後期課程 浦上慎司氏と大住倫弘教授ら は、患者が日常的に表現する痛みの性質(「しびれるような」「うずくような」など)の背景にある脳内の損傷部位や神経ネットワークの断絶パターンが異なることを特定し、それによってリハビリテーションによる回復の予後を推定できることを明らかにしました。この研究成果はEuropean Journal of Pain誌(Lesion and Disconnection Profiles of Pain Quality Subtypes After Stroke: Implications for Prognosis and Rehabilitation)に掲載されています。 本研究のポイント 痛みの性質に基づいたクラスター解析と脳画像解析を実施した 脳卒中後疼痛患者を痛みの性質(しびれ、冷刺激誘発痛、深部痛、圧痛)に基づき4つのグループに分類し、それぞれのグループの責任病巣と神経ネットワークの断絶(Disconnection)を解析しました。その結果、「しびれ・冷刺激痛」タイプは感覚系である上視床放線の断絶と関連し、「圧痛」タイプは運動系である皮質脊髄路の断絶と関連していることが特定されました。  損傷している神経ネットワークによってリハビリ予後が異なることを明らかにした 12週間にわたるリハビリテーション経過を追跡した結果、皮質脊髄路(運動系)の障害に関連する「圧痛」などのグループは改善しやすい一方、上視床放線(感覚系)の断絶を背景に持つ「しびれ」が強いグループは、従来の運動療法では痛みが軽減しにくい難治性の予後を辿ることが判明しました。 研究概要 脳卒中後疼痛は、脳卒中を発症した患者の約40%以上が経験するとされる痛みであり、その症状は、服が触れるだけで痛む感覚過敏から、うずくような痛み、しびれまで多岐にわたります。脳卒中後疼痛は患者の日常生活やリハビリテーション過程に大きな影響を及ぼしますが、その病態メカニズムは複雑であり、どのような患者で痛みが改善しやすいのかという「リハビリ予後」を正確に予測することは困難とされてきました。これまでの研究では,痛みの性質が病態を反映している可能性が示唆されていましたが、それが脳内のどの部位の損傷やネットワークの断絶と関連しているのか、具体的な根拠は十分に示されていませんでした。 そこで、畿央大学健康科学研究科博士後期課程の浦上慎司氏と大住倫弘教授らは、脳卒中後疼痛を有する患者を対象に、痛みの性質に基づく分類と脳画像解析、そしてリハビリテーション経過の縦断的調査を行いました。その結果、患者は「冷刺激誘発痛・しびれ(CL1)」,「深部痛(CL2)」,「しびれ(CL3)」,「圧痛(CL4)」という4つの特徴的なクラスターに分類されることが明らかになりました。さらに、脳画像解析(Lesion/Disconnection Mapping)を用いた検証により、しびれや冷刺激痛を主とするグループ(CL1・CL3)は、視床と皮質を結ぶ「上視床放線」という感覚ネットワークの断絶と強く関連している一方、圧痛などを主とするグループ(CL2・CL4)は、運動機能を司る「皮質脊髄路」の断絶と関連していることが特定されました。 研究内容 脳卒中後疼痛には、冷たさに反応する痛み、しびれ、圧痛など、多様な痛みの性質が含まれます。本研究では、これらの痛みの性質が脳内のどのような損傷部位やネットワーク断絶に関連しているのか、そしてリハビリテーションによる痛みの予後にどう影響するのかを検討するため、脳卒中後疼痛患者114名を対象に、クラスター解析と脳画像解析(Lesion/Disconnection Mapping)を用いた検証を行いました。 まず、痛みの性質に基づいて患者を分類した結果、①冷刺激誘発痛・しびれ(CL1)、②深部痛(CL2)、③しびれ(CL3)、④圧痛(CL4)の4つのクラスターが特定されました。 次に、各クラスターの責任病巣と白質線維の断絶を検討しました。その結果,感覚過敏やしびれを主徴とするCL1およびCL3は、視床、被殻、後部島皮質といった感覚処理領域の損傷、および上視床放線の断絶と強い関連を示しました(図1)。一方で、深部痛、圧痛を主徴とするCL2およびCL4は、前頭葉の運動関連領域の損傷、および皮質脊髄路の断絶と関連していることが明らかになりました(図1)。 図1:痛みの性質からみた脳卒中後疼痛のサブタイプ分類ごとの脳画像解析 脳卒中後疼痛患者を痛みの性質(冷刺激誘発痛,しびれ,深部痛,圧痛)に基づき4つのグループに分類し、脳損傷部位を解析しました。その結果、「冷刺激誘発痛・しびれ」タイプは感覚系である上視床放線の断絶と関連し、「圧痛」タイプは運動系である皮質脊髄路の断絶と関連していることが特定されました。   さらに、12週間にわたるリハビリテーション経過を追跡したところ、運動ネットワークの障害に関連するグループ(CL2・CL4)では痛みの軽減が認められたのに対し、視床ネットワークの断絶を背景に持つ「しびれ」が強いグループ(CL3)では、統計的に有意な痛みの改善が見られず、難治性である傾向が示されました。研究グループは、この結果について、患者が訴える「痛みの性質」が単なる自覚症状にとどまらず、脳内の特定の感覚・運動ネットワークの損傷状態を反映していると考察しています。特に、上視床放線の断絶を伴うしびれタイプは、従来の運動療法では効果が得られにくい予後不良の指標となる可能性があり、早期から非侵襲的脳刺激法や薬物療法を組み合わせた、病態メカニズムに基づく個別化リハビリテーション戦略の必要性を提唱しています。 本研究の臨床的意義および今後の展開 本研究成果は、脳卒中後の痛みという目に見えない主観的な症状に対し、患者が発する言葉を詳細に評価することの重要性を示しただけでなく、その背後にある脳ネットワークの損傷状態やリハビリテーション予後までもが予測可能であることを明らかにしました。今後は、痛みの表現型に応じた個別化リハビリテーションの有効性について検証していきます。 論文情報 Uragami S, Igawa Y, Takamura Y, Iki S, Morioka S, Osumi M. Lesion and Disconnection Profiles of Pain Quality Subtypes After Stroke: Implications for Prognosis and Rehabilitation. Eur J Pain. 2026 May;30(5):e70276. 問い合わせ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 教授 大住倫弘 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: m.ohsumi@kio.ac.jp

2026.05.13

台湾・国立台湾科技大学建築学科との学術連携を締結 ― 国際的なデザイン教育のさらなる深化へ ―

2026年5月8日(金)、人間環境デザイン学科は台湾にある国立台湾科技大学 建築学科 (DEPARTMENT OF ARCHITECTURE OF NATIONAL TAIWAN UNIVERSITY OF SCIENCE & TECHNOLOGY)と、学科間提携(MOU/Memorandum of Understanding)を締結しました。   本協定は、学生および教員の相互交流、共同プロジェクトの推進、デザイン・建築分野における教育研究の発展を目的としています。   アジア地域で高い評価を受ける国立台湾科技大学との連携により、多様な文化的背景を踏まえたデザイン教育の充実が期待されます。 環境・建築・プロダクトなど幅広い分野を横断する人間環境デザイン学科にとって、海外大学との連携は、学生の国際感覚や実践力を高める重要な機会となります。 これまでの台湾との交流の発展 畿央大学ではこれまでも、台湾の大学との交流を通じてワークショップや共同学習などを実施し、学生同士が互いの価値観や社会背景に触れる機会を積極的に創出してきました。 これらの取り組みにより、グローバルな視点で地域課題やデザインを考える力の育成が着実に進められています。 今回の国立台湾科技大学 建築学科との学術連携は、これまで築いてきた台湾との関係をさらに深化させるものであり、既存の交流をより体系的かつ継続的なものへと発展させる契機となります。 今後の展望 今後は、共同プロジェクトや国際ワークショップにおける学術交流やオンライン・対面を組み合わせた授業・学生間交流など、多様な教育プログラムの展開を予定しています。 また、持続可能な社会の実現や地域環境の課題解決といったテーマにおいて、国境を越えた協働の可能性が広がることが期待されます。 畿央大学人間環境デザイン学科は、本連携を通じて、世界に通用するデザイン力と課題解決力を備えた人材の育成を推進し、国際社会に貢献してまいります。   【関連記事】 台湾の国立成功大学・国立高雄大学と大学間連携(MOU)を締結しました。 人間環境デザイン学科 海外インターンシップ2026 vol.1 ~事前準備編~ 台湾2大学との国際合同設計演習!「2026年国際木造建築設計プログラム」1日目~人間環境デザイン学科

2026.04.21

令和8年度入学式を行いました。

2026(令和8)年4月2日(木)、健康科学部328 名、教育学部213 名、健康科学研究科36 名(修士課程17 名、博士後期課程19 名)、教育学研究科修士課程4 名、助産学専攻科9 名、臨床細胞学別科10 名、あわせて600 名の新しい畿央生が誕生しました。当日は天候が心配されましたが、柔らかな日差しと春風に恵まれ、無事に入学式を挙行できました。         学部は午前10時から、大学院・専攻科・別科は午後3時からと二部にわけて入学式を行いました。午前の学部生入学式は冬木記念ホールに全5学科の新入生が集まり、保護者の皆様はその様子を中継会場から視聴・参加する形で行われました。         冬木正彦学長が学科ごとの入学許可を行い、学長式辞を述べました。また広陵町長 吉村 裕之 様にもご臨席いただき、ご祝辞を頂戴しました。     新入学生代表として現代教育学科の中道由菜さんが入学生宣誓を行い、また、在学生代表として健康栄養学科3回生松下鈴奈さんから歓迎のことばがありました。         式典後、新入生には冬木記念ホールにてオリエンテーションを実施し、保護者の皆さまには、各学科の教室にて教員よりご挨拶を申し上げました。オリエンテーションの後は、記念撮影をされる方や、在学生からのクラブ・サークル紹介に耳を傾け、交流を深めている姿もみられました。                 午後3時からは大学院健康科学研究科、教育学研究科、助産学専攻科および臨床細胞学別科の入学式が冬木記念ホールにて行われました。 入学許可の後、学長、両研究科長・専攻科長・別科長が祝辞を述べました。     新入生の皆さま、ご入学おめでとうございます! 学生の皆さんが畿央大学で充実した時間が過ごせるよう、教職員一同全力でサポートしていきます。  

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