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2025.02.28

教職員対象「令和6年度 FD研修会」を開催しました。

2025年2月13日(木)に本学教職員(非常勤教員を含む)を対象とする「FD研修会」を開催しました。 「FD」とはFaculty Development(ファカルティ デベロップメント)の略で、授業の内容や方法を改善し、向上させるための組織的な取り組みの総称です。本学では教職員を対象とした研修会を毎年度開催して日頃の教育活動を振り返り、今後の取り組みに活かすための研鑽を行っています。 今年度は「新学習指導要領における授業および評価方法の現状」をテーマとし、奈良県立高田高等学校教頭の奥村健夫先生、同教務部長の河辺有史先生にご講演いただきました。 高田高等学校様は、「自彊、和敬、創造」を建学の精神として堅実な教育実績を重ねてこられ、令和5年8月には「進学教育重点校」(奈良県教育委員会が「大学へ進学するための学習指導により力を入れ、難関大学への進学実績を向上させることに重点を置く高校」として指定する高等学校)に指定されています。以降、「カリキュラムの見直し」「45分7限授業の実施」「キャリア教育の充実」などの改革に取り組んでこられました。 本学とは高大連携協定を結ぶ間柄であり、多くの生徒さんが本学に入学してくれています。 さて、文部科学省は「社会に開かれた教育課程」「育成を目指す資質・能力」「カリキュラム・マネジメント」「『主体的・対話的で深い学び』の視点からの授業改善」をポイントとする「新学習指導要領」を策定し、段階的に実施してきました。高等学校においては2022年度入学の高校生から実施され、それに基づく教育を受けた生徒の皆さんが2025年度から大学へ入学してこられます。「何を学ぶか」だけでなく「何ができるようになるか」という資質・能力の考え方と、「どのように学ぶか」を重視し主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)を促進する方向性の中で、今の高校生がどんな学びを日々実践しているのかを知ることは、その生徒たちを迎える大学側としても不可欠なことといえます。     ご講演では、この「新学習指導要領」の実施も踏まえ、「単元テスト」「ICTを活用した授業」「総合的な探究の時間」などについて、高校現場で実際に展開されている事例を紹介しながら、動画も交えて分かりやすくお話しいただきました。新しい取り組みを導入するにあたって、生徒たちの学修効果を高めるために先生方が試行錯誤を繰り返しておられる様子や、それを受けてICT機器を使いこなしつつ主体的・対話的で深い学びを実現していく生徒たちの活き活きとした表情は、とても刺激的なものでした。かつての「受け身の授業」とは全く違う高校現場での学びの姿が、そこにはありました。特に自らテーマを決めて調査・探究を進めていき、最終的にその結果をプレゼンテーションに結実させる「総合的な探究の時間」は、主体的・対話的で深い学びの促進を図る新たな教育課程を象徴するものと言えるかもしれません。     もちろん、それらの学びには未だ多くの課題が残されているとのことで、授業運営の方法だけでなく成績評価の公平性や多様化する生徒たちへの適切な対応など、現場の先生方が日々模索しておられることもよくわかりました。 今回の研修会は、本学がこれから入学してきてくれる皆さんに充実した学びを提供し、それぞれの夢や理想の実現をサポートしていくために、知っておくべき多くの事柄を学び取る、大変有意義な機会になりました。ご講演いただいた奥村先生、河辺先生、そして高田高等学校様には、改めて厚く御礼を申し上げます。     【関連記事】 2024年度 「教職課程 FD研修会」を開催しました。 教職員対象「令和5年度 FD研修会」を開催しました。 2023年度 教職課程FD研修会を開催しました。 教職員対象「令和4年度 FD研修会」を開催しました。 令和4年度SD研修を実施しました。 令和2年度 遠隔授業説明会(研修会)を開催しました。 平成30年度FD研修会を開催しました。 平成29年度「FD研修会」を開催しました。 教職員対象「平成28年度FD研修会」を開催しました。 平成27年度FD研修会を開催しました

2025.02.22

急性期運動器疾患患者におけるAWGS2019とISarcoPRMによるサルコペニア該当率の比較~健康科学研究科

高齢化の進行に伴い、サルコペニア*が注目されており、世界的にも数多くの研究が実施されています。我が国では、Asian Working Group for Sarcopenia 2019(AWGS2019)に従ってサルコペニアを診断することが推奨されています。しかし、国際リハビリテーション医学会が提唱した新しいサルコペニアの診断基準としてISarcoPRMがあります。両基準の違いとして、サルコペニアの診断に必須となる骨格筋量の評価方法が異なるという点が挙げられます。AWGS2019では、骨格筋量の評価に生体電気インピーダンス法(Bioelectrical Impedance Analysis:BIA)が主に使用されており、四肢の骨格筋量から身長(m2)で除したSkeletal Muscle Index(SMI)がサルコペニアの骨格筋量評価として用いられております。しかし、急性期運動器疾患患者を対象とした場合、BIAでは手術に伴う浮腫や体内の金属インプラントの影響で、SMIが過大評価されることが問題となります。一方で、ISarcoPRMでは、近年注目されている超音波画像診断装置(エコー)で測定した大腿四頭筋の筋厚をBody Mass Index(BMI)で除したSonographic Thigh Adjustment Ratio(STAR)が骨格筋量評価として用いられます。エコーで評価した筋厚は、浮腫の影響を比較的少なく測定できることがわかっており、BIAの欠点を補える可能性があります。そのため、急性期運動器疾患患者におけるサルコペニア診療においてISarcoPRMの有用性を明らかにすることは重要であると考えられます。 そこで、本学大学院健康科学研究科修士課程の池本大輝、健康科学研究科の松本大輔准教授らは、急性期病院に入院された運動器疾患患者を対象に、AWGS2019とISarcoPRMの両基準を用いてサルコペニアの該当率を調査し、各基準で判定されるサルコペニアの特徴を比較しました。その結果、AWGS2019(40.2%)よりもISarcoPRM(59.1%)の方が、サルコペニアの該当率が有意に高く、AWGS2019では低体重群(BMIが18.5kg/m2未満)での該当率が高く(86.7%)、肥満者(BMIが25kg/m2以上)での該当率が低かったが(7.3%)、ISarcoPRMでは、肥満度に関係なくサルコペニアを判定できることが明らかとなりました。その内容が総合リハビリテーションに掲載されました。 *サルコペニア:加齢に伴う進行性の骨格筋量および筋力低下と定義されており、転倒、骨折、入院、死亡のリスクが高い疾患である。   研究概要 急性期病院へ入院された65歳以上の運動器疾患患者164名を対象に、AWGS2019とISarcoPRMを用いてそれぞれでサルコペニアを判定しました。サルコペニアは、SMIあるいはSTARに基づく骨格筋量低下と握力に基づく筋力低下の両方に該当した場合に判定しました。各サルコペニアの判定項目(骨格筋量、握力)とサルコペニアの該当率を各基準で比較しました。さらに、性別と肥満度別でも各サルコペニアの判定項目の該当率を比較しました。   本研究のポイント AWGS2019よりもISarcoPRMの方がサルコペニアの該当率が高いことが明らかとなりました。 また、AWGS2019では、低体重者の該当率が高く、肥満者の該当率が低く、肥満度に影響される結果でしたが、ISarcoPRMでは肥満度に関係なくサルコペニアと判定できることが明らかとなりました。 近年注目されているサルコペニア肥満*を見逃さずに評価できる可能性が示唆されました。 *サルコペニア肥満:サルコペニアに肥満が合併した病態であり、身体機能障害を伴うだけではなく、代謝障害や動脈硬化が進展しており、心血管リスクが高いと考えられている。   表1.各サルコペニアの判定項目の該当率の比較   表2.肥満度(BMI)別の各サルコペニアの判定項目の該当率の比較   本研究の臨床的意義及び今後の展開 本研究は、我が国で初めてISarcoPRMを用いてサルコペニアの該当率を報告した研究です。本研究の結果より、肥満者では、ISarcoPRMを補完的に用いることでAWGS2019では、見逃されやすいサルコペニア肥満を診断できる可能性があります。これらの知見により、サルコペニア診断におけるエコーの有用性を示唆する研究であると考えられます。今後は、ISarcoPRMにおけるサルコペニアと臨床的な機能予後などとの関連について更なる検討を行い、対象者の皆様に還元できる研究を進めてまいりたいと思っております。 謝辞 研究にご協力いただきました対象者の皆様、共同研究者の方々に感謝申し上げます。   論文情報 池本大輝,松本大輔・他:急性期運動器疾患患者におけるAWGS2019とISarcoPRMによるサルコペニア該当率の比較.総合リハビリテーション 2025; 53(2): 197-205.   問合せ先 畿央大学大学院健康科学研究科 修士課程 池本大輝 准教授 松本大輔 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: d.matsumoto@kio.ac.jp

2025.02.21

3/26(水)春休み平日ミニオープンキャンパスを開催します。

2025.02.21

3/30(日)春のオープンキャンパスを開催します。

2025.02.14

脳卒中後の特異な空間認知障害を報告-描画時に左側を過剰に表現する症例-~ニューロリハビリテーション研究センター

脳卒中後、多くの患者さんに見られる半側空間無視は、日常生活動作に支障をきたし、リハビリテーションの大きな課題となっています。この症状が改善した後も残る空間認知の障害は、患者さんの生活の質に影響を与える可能性があります。畿央大学大学院健康科学研究科の吉川里彩氏、大住倫弘准教授、森岡周教授らの研究グループは、右視床出血後の症例を詳細に分析し、半側空間無視が改善した後も、描画時に左側の要素を過剰に表現する「Hyperschematia(空間の過剰表象)」が継続することを発見しました。さらに、詳細な画像解析により、この症状が脳の腹側視覚経路の損傷と関連している可能性を明らかにしました。この研究成果は国際学術誌Cureus(Persistent Hyperschematia With Over-Generation Following Recovery From Unilateral Spatial Neglect: A Case Report)に掲載されています。   研究概要 脳卒中後の空間認知障害の一つである半側空間無視は、脳の右側が損傷を受けた際に起こる症状です。この症状により、患者さんは左側の空間を認識することが困難となり、日常生活に大きな支障をきたします。これまでの研究から、半側空間無視には様々な特徴があることが分かっていますが、回復過程での変化については、まだ十分に解明されていない点が多く残されています。 畿央大学大学院健康科学研究科の吉川里彩氏(西大和リハビリテーション病院言語聴覚士)、南川勇二氏、大住倫弘准教授、森岡周教授らは、右視床出血後の症例を縦断的に詳細に分析しました。その結果、半側空間無視が改善した後も、描画時に左側の要素を過剰に表現する「Hyperschematia(空間の過剰表象)」という特異な症状が継続することを発見しました。例えば、星の左部分を拡大して表現したり、時計の文字盤を描く際に必要以上の数字を書いたり、花の絵を描く際に左側に余分な花びらを加えたりする現象が観察されました。 本研究の新しい発見は以下の2点です。第一に、これまで半側空間無視や身体失認に付随すると考えられていた「Hyperschematia」が、必ずしも半側空間無視の症状と同時に改善するとは限らないことを示しました。第二に、詳細な画像解析技術を用いて、この症状が脳の腹側視覚経路の損傷と関連している可能性を明らかにしました。 この成果は、脳卒中後の空間認知障害の理解を深め、より効果的なリハビリテーション方法の開発につながる重要な知見を提供しています。空間認知の障害に対して、より詳細な評価と個別化された対応の重要性を示唆する発見といえます。   本研究のポイント 右視床出血後の症例において、半側空間無視が改善した後も、描画時に左側の要素を過剰に表現する「Hyperschematia」が継続することを見出しました。  画像解析により、この症状が下前頭後頭束(IFOF)および中縦束(MdLF)という腹側視覚経路の損傷と関連している可能性を明らかにしました。 研究内容 本研究の目的は、脳卒中後の半側空間無視の回復過程における空間認知の変化を明らかにすることでした。研究では、右視床出血後の症例について、約6ヶ月間の詳細な観察を行い、従来の評価に加えて最新の脳画像解析を実施しました。     研究グループは、最新の画像解析技術を用いて脳の神経回路を詳細に分析しました。その結果、本症例では、下前頭後頭束(IFOF)および中縦束(MdLF)という腹側視覚経路に90%以上の重度な損傷があることが判明しました。 行動評価では、特徴的な「Hyperschematia」が半側空間無視の改善後も持続することが明らかになりました。下図に示すように、星の左部分を拡大して表現したり、時計描画では文字盤に必要以上の数字を書き加える、花の絵では左側に余分な要素を追加するなどの現象が観察されました。これらの症状は観察期間を通じて持続しました。   このような詳細な観察と画像解析の結果から、研究グループは以下の重要な結論に達しました: 「Hyperschematia」は、半側空間無視の改善後も残存する可能性がある。 この症状は、腹側視覚経路の損傷と関連している可能性が高い。 これらの知見は、脳卒中後の空間認知障害の評価において、従来の半側空間無視の評価に加えて、より包括的な空間認知機能の評価が必要であることを示唆しています。 このように、神経回路の損傷パターンと行動症状を詳細に対応づけた本研究は、脳卒中後の空間認知障害の理解を深め、より効果的なリハビリテーション方法の確立に向けた重要な一歩となりました。   本研究の臨床的意義および今後の展開 この症例研究では、半側空間無視の改善後も「Hyperschematia」が持続する可能性と、その症状が脳の特定の神経経路の損傷と関連している可能性を示しました。これは空間認知障害の評価において新たな視点を提供するものです。 論文情報 Yoshikawa R, Minamikawa Y, Osumi M, Morioka S. Persistent Hyperschematia With Over-Generation Following Recovery From Unilateral Spatial Neglect: A Case Report. Cureus. 2025 Jan 25;17(1):e77951.   問い合わせ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 教授 森岡 周 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.morioka@kio.ac.jp

2025.02.04

脳卒中者の歩行非対称性の特徴-障害と代償戦略の特定-~ニューロリハビリテーション研究センター

脳卒中後、多くの人が体験する歩行の左右非対称性は、転倒リスクを高め、リハビリ期間を長引かせることがあります。この現象は「歩行非対称性」と呼ばれ、日常生活の質に大きな影響を与えます。畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 客員研究員 の 水田直道さん(日本福祉大学健康科学部 助教 )、教授 森岡 周 らを中心とする研究グループは、リズム聴覚刺激を用いた歩行実験を通じて、歩行非対称性の原因が「純粋な障害」と「補償戦略」の2つに分類できることを明らかにしました。さらに、被験者の歩行パターンを詳細に分析することで、歩行非対称性が4つの特徴的なグループに分類できることを明らかにしました。この研究成果はScientific Reports誌 (Identifying impairments and compensatory strategies for temporal gait asymmetry in post-stroke persons)に掲載されています。 研究概要 脳卒中者の歩行の特徴として、歩行時の左右の動きが異なる「歩行非対称性(Temporal Gait Asymmetry, TGA)」があります。この状態は転倒リスクを高め、日常生活の質を低下させるだけでなく、リハビリ期間の延長にもつながります。TGAは、運動麻痺や痙縮などの身体的な要因だけでなく、患者が安全を優先して取る歩行戦略も影響していると考えられていました。しかし、快適歩行条件(CWS)における非対称性は、純粋な障害と代償戦略が混在しており、これらの要因をどのように区別できるかは明らかにされていませんでした。畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 客員研究員 の 水田直道さん(日本福祉大学健康科学部 助教 )、教授 森岡 周 らを中心とする研究グループは、リズム聴覚刺激を用いた歩行実験を通じて、歩行非対称性の原因が「純粋な障害」と「補償戦略」の2つに分類できることを明らかにしました。   クラスター1:過剰な代償戦略 メトロノームの音に合わせて歩行する条件(RAC)では左右対称に歩くことができるにも関わらず、CWSでは非対称的であるクラスター。 身体機能は他のクラスターと差はないが、歩行への自己効力感(modified Gait Efficacy Scale)が低く、「代償戦略」が優位になっていると考えられます。   クラスター2:純粋な障害 CWS・RACともに非対称的な歩行となるクラスター。 運動麻痺や痙縮、体幹機能等が重症であり、「純粋な障害」が優位になっていると考えられます。 本研究は、これまで区別が困難であったTGAの要因を「純粋な障害」と「代償戦略」に分類した点にあります。この成果は、個々の脳卒中者に合わせた、テーラーメイドリハビリテーションの構築に役立つことが期待されます。   本研究のポイント • CWSとRACを用いた2つの条件下で、歩行中の時間的対称性(SI)を評価した。 •「純粋な障害」を特徴とするクラスターは、運動麻痺や痙縮、体幹機能低下などの神経学的要因により歩行が非対称的である特徴がありました。 •「代償戦略」を特徴とするクラスターは、身体機能は他のクラスターと差がないが、歩行への自己効力感が低い特徴がありました。   研究内容 本研究では脳卒中後の患者39名を対象に、Fugl-Meyer Assessment(FMA)、Modified Ashworth Scale(MAS)、Trunk Impairment Scale、modified Gait Efficacy Scale(mGES)を用いて臨床評価を行い、参加者の身体機能や歩行の自己効力感を評価しました。参加者は、快適歩行条件(CWS)とメトロノームの音に合わせて歩行する条件(RAC)の2つの異なる条件下で10m歩行を行いました。RAC条件では、CWS条件で計測されたケイデンスに基づきメトロノームのテンポを設定し、参加者はメトロノームの音に下肢の接地タイミングを合わせて歩行しました。慣性センサーのデータから両下肢の接地・離地のタイミングを同定し、単脚支持時間の対称性指数(SI)を算出しました。CWS条件とRAC条件における単脚支持時間のSIを用いて、混合ガウスモデルに基づくクラスター分析を行い、参加者を4つのクラスターに分類しました。   図1.対称性指数に基づくクラスタリングの結果.© 2025 Naomichi Mizuta   CWSおよびRAC条件における歩行中の単脚支持時間の対称性指数の分布をクラスターごとに示す。黒色のラインプロットは全データの回帰直線を示す。上図と右図は、各条件における平均値、95%信頼区間、各データポイントを示している。 対称性指数が負であるほど、非麻痺側の単脚支持時間が麻痺側と比較して長いことを示す。 CWS条件とRAC条件における単脚支持時間のSIは有意な相関関係が見られませんでした。クラスター分析の結果、4つのクラスターが抽出され、本研究の目的に合致したクラスターは下記の2つです。   クラスター1:過剰な代償戦略 RACでは左右対称に歩けるが、CWSでは非対称的であるクラスター。 身体機能は他のクラスターと差はないが、歩行への自己効力感(modified Gait Efficacy Scale)が低く、「代償戦略」が優位になっていると考えられます。   クラスター2:純粋な障害 CWS・RACともに非対称的な歩行となるクラスター。 運動麻痺や痙縮、体幹機能等が重症であり、「純粋な障害」が優位になっていると考えられます。   本研究の臨床的意義および今後の展開 これまで区別されていなかった快適歩行時のTGAの要因を、「純粋な障害」と「代償戦略」に分類できたことは、個々の脳卒中者に応じた、より効果的なリハビリテーションの立案に役立つと期待されます。今後は、個々の特徴に合わせたリハビリテーション介入の効果を検証する予定です。 論文情報 Naomichi Mizuta, Naruhito Hasui, Yasutaka Higa, Ayaka Matsunaga, Sora Ohnishi, Yuki Sato, Tomoki Nakatani, Junji Taguchi, Shu Morioka. Identifying impairments and compensatory strategies for temporal gait asymmetry in post-stroke persons. Scientific Reports, 2025.   問い合わせ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 客員研究員 水田直道 教授    森岡 周 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.morioka@kio.ac.jp

2025.02.03

大阪・関西万博【ウーマンズ パビリオン】で、シンポジウムを開催!

  いよいよ、4/13(日)~10/13(月)に大阪・関西万博が開催されます。 6/3(火)、万博会場内のカルティエが出展する【ウーマンズ パビリオンin collaboration with Cartier「WA」スペース】で、畿央大学がシンポジウムを開催します。   ©︎Cartier ※ウーマンズ パビリオン建築では、ドバイ万博で使用した日本館のファサード資材をリユースしています。   イベント名 女性が輝く近未来社会とテクノロジー Technologies Driving Women's Advancement for the Near Future 日時 6/3(火) ①11:30-12:30 ②13:30-14:30 ①と②は同じ内容です。 講演1 「女性が輝くテクノロジーと取組み」 冬木正紀(畿央大学) 講演2 「女性が輝く今と未来」 北島知子(マッスル株式会社:招待講演) 会場 大阪・関西万博 ウーマンズ パビリオン2階 「WA」スペース(日本館隣)   世界中で女性の活躍の場が拡大・多様化するなか、出産や授乳など女性特有の事象をサポートするテクノロジーや取組みは、女性の活躍をさらに促進できるものと考えられています。   畿央大学では、人工筋肉・人工知能等を用いて、女性の活躍を様々な場面でサポートするためのテクノロジーの研究開発に取組んでいます。さらに、地域に根差した実践活動としてマタニティクラスやベビークラスを開催し、母子保健向上のためのフィランソロピー等も行っています。   このイベントでは、2026年4月に開設する健康工学部(仮称)※注の就任予定教員(冬木正紀)と招待講演者が登壇し、様々な国や地域からの参加者に対して、畿央大学で開発したもののみならず、女性の活躍をサポートする国内外の様々なテクノロジーや取組みを紹介します。そして、講演者参加者全員で、これからの国際社会において求められるテクノロジーや取組み、社会の在り方について意見交換をする予定です。 (※注 設置計画は予定であり、変更となる場合があります。)       畿央大学健康工学部(仮称)2026年4月開設予定

2025.01.31

教職員対象「令和6年度人権教育推進委員会主催学内研修会」を開催しました。

2025年1月23日(木)、本学教職員対象の「人権教育推進委員会主催学内研修会」を開催し、60名以上の教職員が参加しました。 今年度の研修では、「アルビノ・ドーナツの会」代表の藪本舞先生を講師にお招きし、「素顔の私はダメですか?~多様な見た目が受け入れられる社会にするために~」をテーマにご講演いただきました。     藪本先生は、アルビノ(アルビニズム・眼皮膚白皮症)として生まれ、ご自身の経験からアルビノの人たちが交流するための場所の必要性を感じ、「アルビノ・ドーナツの会」を設立、アルビノの当事者やご家族のネットワークづくりに尽力してこられました。また、「アルビノについて」や「見た目問題」に関する講演を各地で実施し、情報発信に努めておられます。 アルビノの人は、先天的な遺伝性疾患により皮膚や毛、瞳の色素が欠乏し、紫外線過敏や視力低下といった症状を抱えておられます。髪や肌の色が白い(薄い)という「見た目」の特徴から、「外見差別(ルッキズム)」や「見た目問題」に直面し、悩み苦しむ方もおられます。当事者である藪本先生ご自身の経験を交えながら、お話をしていただきました。     『外見差別(ルッキズム)』とは、人を外見で判断し、一方のみに不利益を与えること、『見た目問題』とは、病気やケガを理由に見た目に症状を持つ人が生きていく上で直面する様々な問題のことであり、そういった人たちが世の中に受け入れられづらいという社会問題です。藪本先生ご自身も、アルバイトへの応募や就職活動で差別や不利益を受け、「どういう容姿であれば受け入れられるのだろう」と悩み、ファッションやメイクを武装のように考えていたという話を伺いました。また、自身の抱える見た目問題は個人の問題だと考えてしまい、身近な人にも相談できず悩んだ時期を過ごされました。一方で、「自身の素顔を大切にしてもらった」という経験がそれまでの自分を解放してくれたというお話もありました。現在に至る人生の中で、アルビノという見た目の特徴を抱えて揺れ動いてきた心の有り様がとても印象的でした。 また、商業的に作られた「見た目の基準」がメディアやスマートフォン、街中に溢れ、無意識のうちに若者の目に触れているという話もありました。若者の中には、そういった情報に晒されることで、その基準との差に悩み、コンプレックスを抱く人も多くいます。多様性を謳う世の中に逆行し、「人と同じ見た目でないといけない」という価値観を商業優先の社会が生み出し、外見至上主義が作られています。こういった風潮が、色々な見た目の人が受け入れられづらい社会に繋がってしまうことも危惧します。     最後の質疑応答では、見た目問題を抱えている学生への関わり方について、「当事者が困っていることを伝えるには時間が必要。本人が自ら話をするまでは待ってほしい。」というお話がありました。問題解決のためには、当たり前ではありますが、人と人との信頼関係が前提にあり、その上で当事者の方の気持ちに寄り添い、対話の中で時間を掛けて進めていく必要性があります。また、「見た目問題を触れてはいけないものとしてしまうと理解が遠のいてしまう。」というお話もありました。今回の講演のように当事者の方からの話を聞く機会は大変貴重です。当事者のことを正しく知り、理解を深めることが、当事者を含むあらゆる人が生きやすい世の中や環境づくりの礎であると思います。 本学に集う人々が多様な人々を受け入れ、大学があらゆる人にとって安心できる場所になる、そうありたいと強く思うことができた貴重な機会となりました。   【関連記事】 教職員対象「令和5年度人権教育推進委員会主催学内研修会」を開催しました。 教職員対象「令和4年度 人権教育推進委員会主催学内研修会」を開催しました。 令和3年度 人権教育推進委員会研修会「コロナ禍においてあらためて部落差別について考える」 令和2年度 人権教育推進委員会研修会「コロナ禍における人権問題について」 令和元年度 学園ハラスメント防止委員会・畿央大学人権教育推進委員会 共催研修会「LGBT(ハラスメントと人権)~多様性を認め合う社会をめざして~」 平成29年度 人権教育推進委員会研修会「LGBTって何?ーつながるための第一歩ー」 平成28年度 人権教育推進委員会研修会「子どもの声を聴き権利を守るー子どもアドボカシーとはー」 平成27年度 人権教育推進委員会研修会「ヘイト・スピーチとは何かーだれの、何を傷つけるの?ー」 平成26年度 人権教育推進委員会研修会「発達障害を持つ学生への対応について」  

2025.01.27

3分でわかる「KIO元気塾」ムービーを公開しました~理学療法学科

  週2回ペースで地域の方をお呼びして、教員サポートのもと理学療法学科の3回生主体で運動相談を企画・実施する「KIO元気塾」。コロナ禍を経て今年度復活した課外活動には、3回生のほぼ全員が参加しています。     卒業生が多数在籍する西大和リハビリテーション病院の協力のもと、そこで理学療法士として活躍する卒業生もサポートに駆けつけていただきながら、長期の臨床実習前にコミュニケーション力をみがき、実際に目の前で困りごとのある参加者の皆さんに対して理学療法士としてできることを必死で考えて実践する、大きな学びの場となっています。     今回はKIO元気塾の魅力を、岡田洋平准教授のインタビューと参加者と在学生の声、そして現場の映像で紹介する3分ムービーが完成しました。畿央大学でしか体験できないKIO元気塾の様子を、ぜひご覧ください!  

2025.01.24

顕著な前屈姿勢を示すパーキンソン病患者の歩行不安定性と代償戦略の解明~ニューロリハビリテーション研究センター

パーキンソン病(Parkinson’s disease: PD)患者は、顕著な前屈姿勢(Camptocormia)を示すことがあります。しかし、そのような前屈姿勢が歩行不安定性にどのような影響を与えるのか、またそれをどのように代償しているのかについて客観的に十分明らかにされていませんでした。畿央大学大学院博士後期課程の浦上英之氏と岡田洋平准教授らは、三次元動作解析装置を用いて実験的検証を行うことにより、顕著な前屈姿勢を示す患者は、歩行中の垂直方向の不安定性が高く転倒リスクが高いこと、また重心位置を後方に位置させ、側方への重心移動を増加させる代償戦略をとることを初めて明らかにしました。本研究の知見は、前屈姿勢を示すパーキンソン病患者の歩行安定性を最適化するためのリハビリテーションにおける介入戦略を検討する上で有益な知見となることが期待されます。この研究成果は、Journal of Movement Disorders誌(Gait instability and compensatory mechanisms in Parkinson's disease with camptocormia: An exploratory study)に掲載されています。 研究概要 畿央大学大学院博士後期課程の浦上英之氏と岡田洋平准教授らは、三次元動作解析装置を用いて実験的検証を行うことにより、顕著な前屈姿勢を示すパーキンソン病患者は、歩行中の垂直方向の不安定性が高く、転倒リスクが高いこと、また重心位置を後方に位置させ、側方への重心移動を増加させる代償戦略をとることを初めて明らかにしました。   本研究のポイント ・顕著な前屈姿勢(camptocormia)を示すパーキンソン病患者と顕著な姿勢異常を示さない患者の歩行の不安定性とそれを代償するための戦略について、三次元動作解析装置を用いて実験的に検証した。 ・ 顕著な前屈姿勢を示す患者は、歩行中の垂直方向の不安定性が高く、転倒リスクが高いことと、重心位置を後方に位置させ、側方重心移動を増加させながら歩く代償戦略をとっていることを明らかにした。 ・ また、パーキンソン病患者は前屈姿勢が強くなるにつれて、これらの歩行不安定性と代償戦略が強くなることも示した。   研究内容 本研究では、顕著な前屈姿勢であるCamptocormiaを示すPD患者10名、CamptocormiaがないPD患者30名および健常高齢者27名を対象に、三次元動作解析を用いて歩行不安定性の検証を行いました。対象者には快適歩行速度で5mの歩行路を歩行してもらい、歩行安定性指標(図1)と時空間歩行指標、運動学的指標を計測しました。実験環境における歩行安定性と代償戦略は、個人の特性や心理状況によって異なる可能性があります。したがって、健常高齢者群と比較して顕著に異なる歩行不安定性の傾向を有する患者を確認したうえで、その者を除外し、3群間比較を実施しました。また、PD患者全体で前屈角度と各歩行指標との関連を検討しました。 図1.歩行安定性指標 前方・側方・垂直方向の歩行安定性指標の算出方法を示す。いずれも歩行中の踵接地時に算出した。速度が考慮されたCOMであるXCOMが支持基底面内に位置する場合はMOS>0、支持基底面から逸脱し物理的に不安定な状態はMOS<0となる。 CamptocormiaがあるPD患者のうち1名は、顕著な前方への歩行不安定性を示しました。異質であったこの1例を除き、解析を行った結果、CamptocormiaがあるPD患者はCamptocormiaがないPD患者と比較して、COMが低位であり、垂直方向の歩行不安定性が高いことが示されました。また、CamptocormiaがあるPD患者は、歩行中のCOMを後方に位置させ、矢状面上の下肢関節運動範囲が減少し、COM側方速度、骨盤側方傾斜の運動範囲、歩隔が増加することが示されました(図2)。   図2.Camptocormiaがあるパーキンソン病患者の歩行の特徴   Camptocormiaがあるパーキンソン病患者はCamptocormiaがないパーキンソン患者と比較して、COM位置は低かった。また、歩行時にCOMを後方に位置させ、矢状面上の運動範囲を減少し、前額面の運動やCOM移動を増加させることも示された。 顕著な前方への歩行不安定性を示した1名は、CamptocormiaがあるPD患者群の特徴であったCOM後位や矢状面上の関節運動範囲の減少、歩隔の拡大を認めませんでした。また、この症例は頻回な前方への転倒歴を認め、転倒恐怖心が乏しく、歩行時の安全性を優先しない発言や行動を認めました。 これらの結果は、Camptocormiaを示すPD患者はCamptocormiaがないPD患者と比較して、垂直方向の歩行不安定性が高く、前屈角度の増加に伴い転倒リスクが高まることを示しています。一方で、Camptocormiaを示すPD患者は、前方への歩行不安定性が生じないように後方重心姿勢をとり、矢状面上での関節運動を減少させ、側方の関節運動を増加させることで、体幹屈曲の慣性モーメントを減少させる代償戦略をとっていると考えられます。   本研究の臨床的意義および今後の展開 本研究の知見により、顕著な前屈姿勢を示すパーキンソン病患者は、垂直方向の歩行不安定性による転倒リスク増加と歩行不安定性の代償戦略について、初めて客観的に解明しました。また、一部の前屈姿勢を示す患者は、実験環境下でも顕著な前方への歩行不安定性を示すことが確認されました。本研究の知見は、前屈姿勢を示すパーキンソン病患者の歩行安定性を最適化するためのリハビリテーションにおける介入戦略を検討する上で有益な知見となることが期待されます。今後は、実際の日常生活場面の歩行不安定性の検証や個人の代償戦略の適用に及ぼす要因についても検証する予定です。   論文情報 Urakami Hideyuki, Nikaido Yasutaka, Okuda Yuta, Kikuchi Yutaka, Saura Ryuichi, Okada Yohei. Gait instability and compensatory mechanisms in Parkinson’s disease with camptocormia: An exploratory study. Journal of Movement Disorders, 2025.   問い合わせ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 准教授 岡田洋平(オカダヨウヘイ) Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: y.okada@kio.ac.jp