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2023.02.22
第21回畿央大学公開講座「うま味とコクの新常識/古都奈良と近代建築」を開催しました。
本学では、地域の皆さまに生涯教育の場を提供することを目的とした「畿央大学公開講座」を毎年開催しています。新型コロナウイルス感染症の影響によりオンラインでの開催が続いていましたが、今年度は3年ぶりに対面での開催となりました。 2023年2月18日(土)には「第21回畿央大学公開講座」を2部制で開催し、大テーマである「衣食住」のうち「食」と「住」を取り扱いました。 【第1部】「おいしさを生み出すうま味とコクの新常識~味覚と脳のメカニズム~」 【講師】健康栄養学科 山本 隆教授 「コクのあるおいしさとは何か?~味覚と脳のしくみ~」をテーマに、健康栄養学科の山本 隆教授が講演しました。生体が活動するために欠かすことのできない「食事」。その食事で感じる“おいしさ”には「生きるためのおいしさ」「快楽のためのおいしさ」の2種類が存在するとして、この“おいしさ”を生み出す「うま味」「コク味」のメカニズムや、味覚と脳との関連を解説しました。 好き嫌いをなくすためには幼少期の食習慣が重要で、実際に「うま味のついた食事」、「ついてない食事」を食べ比べた時の幼児の反応の違いの動画や、またそこから関連して初めて「甘いものを食べたとき」や、「酸っぱいものを食べたとき」の幼児の動画が流れ、会場からはあまりの可愛さに笑いも起こっていました。 講義後の質疑応答では、「一度その味を経験し、嫌いになった食べ物を克服してもらうためには何か良い具体策はないでしょうか」などの具体的な質問も飛び交いました。また「再度スライド資料を見せていただきたい」とリクエストの上、熱心にメモを取られる方もいらっしゃいました。 【第2部】「古都奈良と近代建築」 【講師】人間環境デザイン学科 前川 歩講師 タイトルのとおり、奈良には古代から藤原京、平城京といった都が成立し、また奈良帝室博物館(現在の奈良国立博物館)等の近代建築が存在しています。そういった古くからの歴史が残る奈良ならではの、近代建築の特徴や魅力について、多くの写真とともに詳しく紹介いただきました。 その中で河合町にある「旧豆山荘」も近代建築の一つとして紹介され、河合町ご在住の参加者の方から「自分の住む町にこんな古い建築物があることは知らなかった。ぜひ町内でもワークショップをしてほしい」といった感想もいただきました。 講座終了後のアンケート 「コクが科学的に説明されていて興味深い」「漠然としか知らなかったことを角度から教えてもらえてよく分かった」「長年旧奈良市内に住んでいたので、様々な建築物について非常に興味深かったです。いくつかの懐かしい建物が見ることができました。」といった好評なご感想や、「次はさらに専門的な内容を複数回に分けてぜひ聞きたい」「社会人向けの公開講座をもっと開催してほしい」といったご要望もいただきました。 3年ぶりの対面での開催でしたが、各講座それぞれ70名近くの方にご参加いただき、中には両講座とも受講される方もいらっしゃいました。ご参加いただきありがとうございました。 引き続き、2/25(土)に「衣」を取り扱った内容として、第22回畿央大学公開講座「入浴着にできること~乳ガン患者のQOL向上から入浴着のユニバーサル化まで~」を開催いたします。 お申込みいただきました皆様、ご来場をお待ちしています。 【関連記事】 第20回畿央大学公開講座「コロナ時代におけるこれからの認知症ケア」をオンライン開催しました。 第19回畿央大学公開講座「感染症を知ろう~新型コロナウイルスとこれからの生活~」をオンライン開催しました。 第18回畿央大学公開講座「当事者とともに創る認知症ケア」を開催いたしました。 第17回畿央大学公開講座「認知症の正しい理解」を開催しました。 第16回畿央大学公開講座を開催しました。 第15回畿央大学公開講座B・C(2日目)を開催しました。 第15回畿央大学公開講座 講座Aを開催しました。 第14回畿央大学公開講座を行いました。 第13回畿央大学公開講座を開催しました。 第12回畿央大学公開講座「健康長寿のための食と運動」を開催しました。
2023.02.21
慢性腰痛の運動時痛に対する経皮的電気刺激の効果~理学療法学科・健康科学研究科
腰痛をもつ日本人は38%程度と推定されており、社会経済に与える影響は少なくありません。腰痛治療の一つに、弱い電流を流して痛みを軽減する経皮的電気刺激(Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation: TENS)がありますが、TENSの慢性腰痛の運動時痛に対する効果を検証した報告は限られていました。そこで、畿央大学健康科学部理学療法学科の瀧口 述弘助教、庄本 康治教授と高松 昇三(健康科学研究科博士課程2年/オムロンヘルスケア株式会社)らは、腰部運動時痛に対してTENSの効果を検証し、周波数を変調したTENSによって慢性腰痛の運動時痛が軽減することを明らかにしました。この研究成果は、物理療法科学誌「慢性腰痛患者の運動時痛に対する経皮的電気刺激の効果:ランダム化比較試験」(https://doi.org/10.57337/jjeapt.21-21)に掲載されています。 研究概要 エビデンスレベルが高いといわれているランダム化比較試験という研究デザインを用いて検証しました。腰部に周波数を変調した(刺激の感覚が変わる)TENSを実施すると、プラセボTENS(電気を流していると説明しているが実際は流していない)と比較して、腰部運動時痛が低下しました。この結果から、周波数を変調したTENSを実施することで、慢性腰痛の運動時痛が軽減されることが明らかになりました。 研究のポイント ・慢性腰痛の運動時痛はTENSで軽減する。 ・周波数を変調させた方が、運動時痛が低下した。 研究内容 慢性腰痛患者80名を高周波数TENS群、変調周波数TENS群、プラセボTENS群に分類して、腰部運動時痛に対して効果を比較しました。腰部運動時痛は、腰部の運動テストでよく用いられる指床間距離を測定し、その時の痛みを運動時痛として測定しました。痛みの程度はVisual Analogue Scale (0 – 100で痛みの程度を示す。0: 全く痛くない 100: 想像できる最悪の痛み)を用いて測定しました。変調周波数TENSはプラセボ経皮的電気刺激と比較して、運動時痛が低下しました。 HF-TENS: 高周波数TENS MF-TENS: 変調周波数TENS 本研究の臨床的意義及び今後の展開 TENSは副作用がほとんどなく、近年では操作が簡単な家庭用の機械も販売されています。本研究の結果から、動作中の痛みを軽減できる可能性が示唆されました。今後は、日常生活場面で経皮的電気刺激を併用し、日常生活動作での腰痛が軽減するかを明らかにする必要があります。 論文情報 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjeapt/advpub/0/advpub_21-21/_article 問合せ先 畿央大学 健康科学部 理学療法学科 助教 瀧口述弘 TEL:0745-54-1601 FAX:0745-54-1600 E-mail: n.takiguchi@kio.ac.jp
2023.02.17
教職員対象「令和4年度 人権教育推進委員会主催学内研修会」を開催しました。
2023年2月16日(木)に本学教職員対象の「人権教育推進委員会主催学内研修会」を開催しました。 前年度と同様、対面と遠隔を同時に開催するハイフレックス型での開催となりましたが、80名を超える教職員が参加しました。今年度は、在日コリアンカウンセリング&コミュニティセンター(ZAC)でセンター長をされている丸一 俊介先生を講師にお迎えし、「日常生活に埋め込まれたマイクロアグレッション」をテーマにご講演いただきました。 “マイクロアグレッション”とは「意図の有無に関わらずマイノリティに侮辱と侮蔑を伝える、日常的で認識しづらい敵意や見下し」を意味し、日常の親しい関係や支援の場でも無意識に生じることがあります。この“マイクロアグレッション”について、身近にみられる様々な事例をもとに、それらが無意識的に起こる背景とその影響について解説いただきました。 例えば、海外出身者と思われる人に対し「日本語が上手ですね」と言ったり、女性がリーダーシップを発揮することに対し、「女性なのに頼りになるね」と言ったりと、発言者は善意や褒めているつもりの言葉の中に無意識的な「見下し」や「けなし」が含まれているケースも多くあります。これらに対し、マイノリティの価値観や属性を理解していくことが大切ですが、個人の意識だけでは変えられない部分も多く、社会的な影響も大きいと指摘。社会と個人の相互採用で認識がつくられる中で、認識が作られる前の介入の必要性なども示唆されました。 ▼質疑応答の様子 またマイクロアグレッションは相談場面でも起こりうることであり、安易な共感や「たいしたことじゃないよ」というような過小評価は支援への障壁となり、相談者にさらに深刻なダメージを与えることにもつながる可能性があるということもお話しいただきました。 改めて自身の発する言葉一つひとつの意味や重みを考える機会となり、教育に関わる立場として大切な気付きにつながる研修会となりました。 【関連記事】 令和3年度 人権教育推進委員会研修会「コロナ禍においてあらためて部落差別について考える」 令和2年度 人権教育推進委員会研修会「コロナ禍における人権問題について」 令和元年度 学園ハラスメント防止委員会・畿央大学人権教育推進委員会 共催研修会「LGBT(ハラスメントと人権)~多様性を認め合う社会をめざして~」 平成29年度 人権教育推進委員会研修会「LGBTって何?ーつながるための第一歩ー」 平成28年度 人権教育推進委員会研修会「子どもの声を聴き権利を守るー子どもアドボカシーとはー」 平成27年度 人権教育推進委員会研修会「ヘイト・スピーチとは何かーだれの、何を傷つけるの?ー」 平成26年度 人権教育推進委員会研修会「発達障害を持つ学生への対応について」
2023.02.10
健康栄養学科の学生が大和茶を使った洋菓子をパティシエと共同開発!奈良銘品館・奈良まほろば館他で販売~ヘルスチーム菜良
大和茶を使用した「緑茶マドレーヌ」「緑茶ヴィーガンクッキー」を共同開発 奈良県内管理栄養士養成課程(畿央大学・近畿大学・帝塚山大学・奈良女子大学)の学生で構成された食育ボランティアサークル「ヘルスチーム菜良(なら)」に所属する畿央nutrition egg team(畿央大学ヘルスチーム菜良)は、社会福祉法人せせらぎ会の田中貴也パティシエと、「Nyu farm」(奈良市丹生町)の大和茶を使用した「緑茶マドレーヌ」「緑茶ヴィーガンクッキー」を共同開発しました。 2月6日より、奈良銘品館奈良公園バスターミナル店、東京にある奈良まほろば館、大和高田市のOhisama・lunchでの販売を実施しております。また3月4日は香芝市のお祭りである「冬彩」でも販売を予定しております。 本商品は畿央大学の学園祭「畿央祭」で販売したところ、すぐに売り切れるほど大好評。ぜひお買い求めください! 販売場所 奈良銘品館奈良公園バスターミナル店(奈良市登大路町76) 奈良まほろば館(東京都港区新橋1丁目8-4 1F・2F SMBC新橋ビル 2階) Ohisama・lunch(奈良県大和高田市神楽3-8-8) 冬彩 ※3/4のみ(今池親水公園・香芝市役所南側:香芝市下田西3丁目9-3) 販売価格 1個 280円(税込) ▼緑茶マドレーヌ ▼緑茶ヴィーガンクッキー 問い合わせ先 畿央大学 健康科学部 健康栄養学科 野原 潤子 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: j.nohara@kio.ac.jp
2023.02.08
感覚運動レベルにおける行為主体感の頑健性~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
行為/運動主体感(sense of agency:SoA)とは「このボールを蹴っているのは私だ」とか「このお皿を割ったのは私だ」など、日常生活で起こる行為の結果を自分に帰属させる主観的な意識のことです。感覚・運動に障害が生じると予測と実際の感覚が一致しないことがあり、それにより行為時の快適さが失われ不快感を訴えるケースがみられます。これは後遺症によって生涯にわたって頑健(つまり「適応できない」)に継続するのかは不明でした。畿央大学健康科学部理学療法学科4回生 三嶋 瑞穂さん、森岡 周教授、ニューロリハビリテーション研究センター 林田 一輝客員研究員らは、東京大学大学院人工物研究センター 温 文特任准教授と共同で、実験的に感覚予測と結果を一致あるいは不一致させる群を設け、一定の期間それに暴露させることで行為主体感が変化するかを調べました。その結果、短期間では行為主体感は変化しない、すなわち頑健であることが明らかになりました。この研究成果はBehavioral Sciences誌(Adaptability of the Sense of Agency in Healthy Young Adults in Sensorimotor Tasks for a Short Term)に掲載されています。 研究概要 行為/運動主体感(sense of agency)とは「ある運動・出来事を引き起こしている、生み出しているのは自分自身である」という主観的な制御の感覚・意識のことです。行為主体感は感覚予測と実際の感覚結果が一致すれば起こり、それらが一致しなければ低下あるいは喪失すると考えられています。例えば、神経疾患、統合失調症、自閉症スペクトラム障害では行為主体感の低下や喪失が報告されています。こうしたケースは、行為のたびに予測と結果に不一致が生じ、自らの行為への不快感につながることが示唆されます。脳卒中後の運動障害は残りやすく、行為に対する不快感が頑健(すなわち「非適応的」)に継続する可能性が考えられます。しかしながら、一定の期間、感覚予測と実際の感覚結果の不一致に暴露されることによって、行為主体感が適応的に変化するか否かは不明でした。また、行為主体感に影響する抑うつ傾向、統合失調症傾向、感覚過敏などの心理状態の個人差がその適応性に影響するかは不明でした。そこで畿央大学健康科学部理学療法学科4年生 三嶋 瑞穂さん、森岡 周教授、ニューロリハビリテーション研究センター 林田 一輝客員研究員らは、東京大学大学院人工物研究センター 温 文特任准教授が開発した実験課題(PCカーソルの自己制御比を実験的に操作することで行為主体感の変化を検出するもの)を用いて、一定期間、感覚予測と実際の感覚結果の一致(一致群)あるいは不一致(不一致群)の暴露による行為主体感の変化を捉えました。その結果、一致群と不一致群の行為主体感の変化に有意な差はみられず、行為主体感が適応的でなく頑健である可能性を示しました。また一致群のみ、暴露前後の行為主体感の変化が抑うつ傾向と関係することがわかりました。 本研究のポイント ■ 感覚予測-結果の不一致への暴露によって行為主体感は適応的に変化するかを調べた。 ■ その結果、感覚運動水準においては、行為主体感は適応的でない(頑健)であることがわかった。 研究内容 33名の健康な実験参加者を感覚予測と実際の感覚結果の一致群(一致群)と不一致群に分けました。MATLABとPsychtoolbox (MathWorks, USA) を使用して、行為主体感を検出する課題を作成しました。参加者はタッチパッドを使用してPC画面上のドットを4秒以内に自由に操作するように指示されました。なお、ドットの動きを自分の操作0~100%の中で10%ごとにランダムに反映させました。試行数は1試行4秒間の操作を計110試行(0~100%を10%ごとに各10回)とし、「“ドットの動きに違和感があっても”自分が動かしていると感じれば Yes と答える」よう参加者に要求し、個人の行為主体感の閾値を算出しました。図1は実験課題の例ですが、タッチパッドを使用して画面上のドットを操作した際、そのドットが自分によってコントロールできていると感じているかどうかが評価されました(図は100%または50%コントロールの例)。不一致群では算出した個人の閾値より10%低い値を100試行、一致群では完全に自分の動きで100試行実施させました。 図1.行為主体感を捉える実験課題 参加者はタッチパッドを使用して PC 画面上のドットを操作し、4 秒以内にドットを自由に操作するように指示されました。そのドットをコントロールできていると感じるかどうかで行為主体感が評価されました。図は100%または50%コントロールの例を示しています。 行為主体感の曖昧さの指標である傾きと50%の確率で「Yes」と回答する主観的等価点(Point of Subjective Equality:PSE)をロジスティック回帰曲線を使用して算出しました。また、参加者の抑うつ傾向、統合失調症傾向、感覚過敏を各種質問紙を用いて調べました。行為主体感を表すロジスティック回帰曲線の傾き、PSEに群間差はありませんでした(図2)。つまり感覚予測と感覚結果の不一致への非適応性が示され、感覚運動課題を用いた感覚運動レベルにおいては、不一致を受け入れることが難しいことが示唆されました。一方で、一致群のみで暴露前後の行為主体感の変化が抑うつ傾向と有意な相関関係を示しました。この結果は、抑うつ傾向の場合、感覚予測と結果の一致経験によって行為主体感を向上させる可能性が示唆されました。しかし、長期にわたる感覚予測と結果の不一致の暴露の影響は不明なままです。今後は、長期間の暴露による思考の変化といった認知レベルが感覚予測と結果の不一致といった感覚運動レベルにどのように影響するかを調べる必要があります。 図2.行為主体感の変化 行為主体感の指標であるロジスティック回帰曲線の勾配 ( A ) とPSE ( B ) の群別の結果(平均 ± 標準偏差)を表します。検定の結果、交互作用と主効果はどちらも有意ではありませんでした。Congruent group(一致群)、Incongruent group(不一致群) 本研究の臨床的意義および今後の展開 本研究における感覚予測と結果の不一致の暴露プロセスは、脳卒中後の片麻痺プロセスを想定しており、学習された不使用の原因に接近する可能性があると予想しています。一方、感覚予測と結果が一致する課題は抑うつ傾向を改善させる選択肢となる可能性が示唆されました。今後は、感覚運動水準の課題に文脈や思考など認知水準の手続きを加え、柔軟に適応できるかどうかを調べる必要があります。 論文情報 Mizuho Mishima, Kazuki Hayashida, Yoshiki Fukasaku, Rento Ogata, Kazuki Ohsawa, Ken Iwai, Wen Wen, Shu Morioka Adaptability of the Sense of Agency in Healthy Young Adults in Sensorimotor Tasks for a Short Term Behavioral Sciences, 2023 問い合わせ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 畿央大学大学院健康科学研究科 教授 森岡 周 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.morioka@kio.ac.jp
2023.02.03
サーマルグリル錯覚に特徴的な脳波律動~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
温かいモノと冷たいモノを同時に触ると、本当は熱くないはずなのに、それを「痛い」と経験することがあり、この経験は”サーマルグリル錯覚”と呼ばれています。畿央大学大学院 健康科学研究科 修士課程を修了した浦上 慎司さん(現:星ヶ丘医療センター 理学療法士)とニューロリハビリテーション研究センター大住 倫弘 准教授は、サーマルグリル錯覚を経験している時の脳波活動を計測・分析し、特徴的な脳波活動を明らかにしました。この研究成果はNeuroReport誌(Cortical oscillatory changes during thermal grill illusion)に掲載されています。 研究概要 ”サーマルグリル錯覚”とは、温かい棒と冷たい棒が交互に並べられている棒に手を置くと、痛みをともなう灼熱感が惹起される現象です(図1)。この現象は、中枢神経メカニズムによって生じると説明されていますが、そのメカニズムは十分に明らかにされていません。畿央大学大学院 健康科学研究科 修士課程を修了した浦上 慎司さん(現:星ヶ丘医療センター 理学療法士)とニューロリハビリテーション研究センター大住 倫弘 准教授は、健常者を対象に、サーマルグリル錯覚中における脳波活動を計測・分析しました。その結果、サーマルグリル錯覚を経験している時には、痛み関連脳領域/ペインマトリックス(Pain Matrix)の代表である島皮質周辺の脳波律動が特徴的に変化することが明らかになりました。この研究は、サーマルグリル錯覚における中枢神経メカニズムの一端を明らかにしたことになります。 本研究のポイント ■ 温かい棒と冷たい棒が交互に並べられているグリルの上に手を置くと痛みを感じる ■ サーマルグリル錯覚中では島皮質に特徴的な変化が生じる 研究内容 健常21名を対象にして、サーマルグリル錯覚によって生じる脳波活動を計測・分析しました。具体的には、①暖かい棒だけが並べられているグリルに手を置く条件(コントロール条件)と、②温かい棒と冷たい棒が交互に並べられているグリルに手を置く条件(サーマルグリル錯覚条件)で脳波活動を計測し、それらの脳波活動を比較することによってサーマルグリル錯覚に特徴的な脳波成分を抽出しました。 その結果、痛み関連脳領域/ペインマトリックス(Pain Matrix)の代表である島皮質が、サーマルグリル錯覚を引き起こす脳領域であることが明らかになりました。島皮質は、暖かい/冷たいという感覚が入力されているだけでなく、”痛い”という情動経験にも関与します。加えて、この島皮質は中枢性疼痛をもたらす脳領域としても知られています。今回の結果は、中枢性疼痛のメカニズム解明に役立つ基礎研究になることが考えられます。 論文情報 Uragami S, Osumi M. Cortical oscillatory changes during thermal grill illusion. NeuroReport 2023 問い合わせ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 准教授 大住 倫弘(オオスミ ミチヒロ) Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: m.ohsumi@kio.ac.jp
2023.01.24
令和5年度 在外研究員 研究計画説明会を開催しました。
教育研究水準の向上および国際交流の進展に資するため、学術の研究・調査等のため外国に在外研究員を派遣する制度があります。令和5年度の在外研究員には理学療法学科 松本 大輔准教授が選ばれ、2023(令和5)年4月1日から2024(令和6)年3月31日までの期間、フランス南西部トゥールーズにあるInstitute of Aging, Gérontôpole, Toulouse University Hospitalで研究活動を行われます。これに先立ち、2023年1月19日(木)に在外研究説明会を開催し、教職員24名が参加しました。 研究課題名:Association and interaction between intrinsic capacity and environment factors for functional ability decline 受入研究者:Prof. Philipe de Souto Barreto, Prof. Bruno Vellas 在外研究機関:Institute of Aging, Gérontôpole, Toulouse University Hospital(フランス) 松本先生は、高齢者の介護予防・ヘルスプロモーションに向けた関連要因および地域格差の検討、身体活動およびフレイルに関する行動遺伝学的研究等を専門とした研究をしておられます。チーム医療ふれあい実習、海外インターンシップ等の担当授業のほか、本学が広陵町と連携した「広陵町×畿央大学KAGUYAプロジェクト」の取り組みや健康支援学生チーム「TASK」の活動支援などを通じて地域での介護予防や健康増進に力を入れてこられました。 世界的に高齢化が進み、ヘルシーエイジングに向けた取り組みが重要になってきています。WHO(世界保健機関)では、高齢者の内在的能力の低下を管理するための地域レベルでの介入ガイドラインとして高齢者のための統合ケア(ICOPE)を推奨しています。 受入機関であるToulouse University Hospitalは、WHO Collaborating Centre for Frailty,Clinical & Geroscience Research, and Geriatric Training であり、WHO ICOPEの実装パイロット研究を進めている機関でもあります。松本先生は国際論文も多数執筆しておられる世界的権威Bruno教授、Philipe教授の下で、ブラジルや台湾、メキシコ、スペインからの研究者と一緒に研究されます。 ▼Bruno教授(中央)、Philipe教授(左) 松本先生の研究計画はWHOが提唱する内在的能力の6つのドメインと物理的環境要因とその相互作用や、機能的能力およびウェルビーイングとの関連性などについて検討することとしています。 松本先生には、専門とする高齢者の介護予防・ヘルスプロモーションの専門知識と本学で近隣地域と連携して取り組んでこられた豊富な経験を国際的な場で活かし、日本国内では経験できないような発展的な研究を進めていただくことを期待しています。 【関連記事】 平成29年度在外研究報告会を開催しました。 平成29年度 在外研究説明会を開催しました。 平成28年度 在外研究説明会を開催しました。 畿央大学開学10周年記念プロジェクト研究中間報告会及び在外研究報告会を開催しました。
2023.01.20
小学校教諭85.4%、養護教諭64.7%、公立幼稚園・保育士100%!〜2023年3月卒業生
追加合格で過去最高を更新! 小学校教諭85.4%、難関の養護教諭で64.7%! 公立幼稚園・保育士も全員合格! 2023年度公立学校教員採用試験が終了しました。教育学部現代教育学科4回生のうち、70名が小学校教諭、11名が養護教諭、3名が特別支援学校教諭、2名が中・高校教諭(英語)の採用試験に現役合格をはたしました。また公立幼稚園教諭・保育士採用試験には25名が挑戦し、全員が現役合格を手にしています。 小学校教諭の現役合格率は過去最高だった昨年の77.8%をさらに上回る85.4%となり、コロナ禍でも4年連続7割以上というきわめて高い水準で推移しています。 小学校教諭 2023年卒 2022年卒 2021年卒 2020年卒 現役合格率 85.4% 77.8% 71.2% 75.6% 受験者 82 90 73 82 合格者 70 70 52 62 養護教諭でも過去2番目に高い64.7%と、狭き門ながら着実に現役合格者を輩出しています。 養護教諭 2023年卒 2022年卒 2021年卒 2020年卒 現役合格率 64.7% 35.7 % 36.4% 46.2% 受験者 17 14 22 13 合格者 11 5 8 6 そのほか特別支援学校教諭が100%、中・高教諭(英語)で66.7%、健康栄養学科でも栄養教諭で57.1%が現役合格をはたしました。 また公立幼稚園教諭・保育士も3年ぶりの100%で、5年連続で9割以上が現役合格という快挙を達成しています。 公立幼稚園・保育士 2023年卒 2022年卒 2021年卒 2020年卒 現役合格率 100.0% 97.0% 94.6% 100.0% 受験者 25 33 37 27 合格者 25 32 35 27 教採・公務員対策室では、学科教員と連携した「ダブル担任制」で学生をサポートしています。2回生前期からコロナ禍に突入し、難しい時期も経験しながら走り続けた現4回生の頑張りはもちろん、できる限りの教育と支援を尽くしてくださった先生方にも敬意を表します。 今後は講師等の採用も含め、畿央生を最後の一人まで応援していきます。夢に向かって頑張れ、畿央生! 教採・公務員対策室 公立学校教員採用試験 現役合格率ならびに都道府県・市別の合格者数 公立小学校教諭 85.4% 合格者70名/受験者82名(現代教育学科) ➡過去最高の現役合格率を2年連続で更新! 都道府県・市 1次受験者 1次合格者 (辞退者) 2次受験者 最終合格者 奈良県 37 36 1 35 22 大阪府 14 14 - 14 11 大阪市 12 11 - 11 8 堺市 8 8 - 8 7 京都府 3 3 - 3 2 京都市 1 1 - 1 1 兵庫県 5 5 - 5 2 神戸市 1 1 - 1 1 和歌山県 11 11 5 6 5 滋賀県 29 15 - 15 2 三重県 4 4 1 3 3 愛知県 31 31 3 28 17 岡山県 18 11 10 1 1 鳥取県 20 19 8 11 10 高知県 74 69 13 56 24 千葉県 3 3 - 3 3 公立学校養護教諭 64.7% 合格者11名/受験者17名(現代教育学科) ➡コロナ禍でも過去2番目に高い現役合格率を達成! 都道府県・市 受験者 1次合格者 (辞退者) 2次受験者 最終合格者 奈良県 4 4 - 4 2 大阪市 5 3 1 2 2 京都府 1 1 - 1 1 兵庫県 1 1 - 1 1 北海道 2 2 1 1 1 高知県 18 6 4 2 1 鳥取県 7 6 1 5 4 福岡県 1 1 - 1 1 鹿児島県 1 1 - 1 1 公立特別支援学校教諭 100% 合格者3名/受験者3名(現代教育学科) ➡2年連続で全員合格! 都道府県・市 受験者 1次合格者 (辞退者) 2次受験者 最終合格者 大阪府 1 1 - 1 1 愛媛県 1 1 - 1 1 鳥取県 3 3 - 3 3 神奈川県 1 1 - 1 1 公立中学・高校教諭(英語) 66.7% 合格者2名/受験者3名(現代教育学科) 都道府県・市 受験者数 1次合格者数 (辞退者) 2次受験者 最終合格者 大阪府 3 3 - 3 2 公立学校栄養教諭 57.1% 合格者4名/受験者7名(健康栄養学科) 都道府県・市 受験者 1次合格者 (辞退者) 2次受験者 最終合格者 大阪府 3 3 - 3 2 愛知県 4 3 1 2 1 北海道 5 5 2 3 3 公立幼稚園教諭・保育士採用試験 自治体別の合格者数 公立幼稚園教諭・保育士 100% 合格者 25名/受験者 25名(現代教育学科) ➡5年連続で9割以上が現役合格! ➡2023年4月、畿央大学付属広陵こども園開設! 都府県・市(町) 1次受験者 1次合格者 辞退者 最終合格者 奈良県香芝市 14 14 8 5 奈良県生駒市 3 3 - 1 奈良県大和郡山市 14 14 2 4 奈良県天理市 7 6 3 2 大阪府大阪市 9 9 1 8 大阪府東大阪市 2 2 1 1 大阪府八尾市 2 2 1 1 大阪府柏原市 2 2 1 1 大阪府吹田市 7 7 1 2 大阪府豊中市 7 7 2 3 大阪府藤井寺市 3 3 - 2 大阪府河南町 1 1 - 1 京都府京田辺市 2 2 - 2 兵庫県伊丹市 1 1 - 1 滋賀県高島市 1 1 - 1 注1.過年度卒業生を含みません(すべて2023年3月卒業見込者)。 注2.2023年1月20日現在の判明者数です。今後変動する場合があります。 注3.一部試験での1次試験免除者を含みます。 関連リンク 2022年、教育学部が深化します。 小学校教諭77.8%、公立幼・保97.0%、養護教諭40.0%が現役合格!〜2022年3月卒業生
2023.01.16
令和5年1月4日(水)消防訓練(教職員対象)を実施しました。
令和5年の新年のスタートに合わせて、本学の自衛消防隊の組織体制を確認し、消防訓練を実施しました。 C棟1階の調理実習室から出火という設定で、火災報知機を作動させ、構内には非常放送が流れました。実際に消防署へ119番通報する通報訓練、避難誘導班による避難誘導と教職員が中庭へ避難する避難訓練、模擬消火器を使用した消火訓練を行いました。 ▼消火訓練の様子 初期消火時には周囲に火災発生が分かるように「火事だ!」と大きな声を出すことが大切であることを再確認しました。 学生・教職員等の安全確保の為、防災意識の向上、及び防火・防災対策の更なる徹底に努めてまいります。
2023.01.12
2022年度人間環境デザイン学科 卒業研究・作品展を開催します。
2022年度の人間環境デザイン学科 『卒業研究・作品展』は、橿原市にあるミグランス(橿原市役所分庁舎)で行います。 在学生の4年間の集大成となる卒業研究・作品61点が展示される予定です。 みなさまのご来場を心よりお待ちしております。 会 場 ミグランス(橿原市役所分庁舎) (4階コンベンションルーム・10階展望フロア) 奈良県橿原市内膳町1丁目1番60号 【TEL】0744-47-2924 ※近鉄大阪線 大和八木駅より徒歩3分 ※一般来場者用の駐車場はございません。 主 催 畿央大学 健康科学部 人間環境デザイン学科 後 援 橿原市/橿原市教育委員会 日 時 2023年3月4日(土)9:00~17:00 2023年3月5日(日)9:00~16:00 備 考 入場無料 ▲画像はクリックで拡大できます。 《ポスターデザイン 人間環境デザイン学科2回生 山田 汐音》 【関連リンク】 ●人間環境デザイン学科「2021年度卒業研究・作品展」を開催しました。 ●令和2年度 卒業研究講評会および学内展示会を開催しました。 ●人間環境デザイン学科「2018年度卒業研究・作品展」を開催しました。 …コロナ前のイベントレポート ●人間環境デザイン学科 作品ギャラリー …過去の卒業作品をまとめた特設サイト